麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第13回 感想あらすじ視聴率「帰蝶のはかりごと」

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麒麟がくる第13回
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土岐頼純を毒殺していたじゃないか……

光安と光秀が利政の元へ向かっております。

鉄砲にしたって30挺ばかりではどうにもなるまい、お飾りだと、光安はぼやいております。

そこへ、「酒が強い、顔色ひとつ変えない」と言いながら誰かが歩いてゆくのでした。

利政は二人に、帰蝶を嫁がせた信長のことを語り出します。

大事な娘を大うつけと噂される男に預けてしもうた。親の気持ちを察してもらいたいと湿っぽく言うわけです。

光安は「ご心中まことに……」と言う。光秀は不信感を覚えています。

信秀の死を契機として、義父と婿で対面をする。喜んでお会いしたいと言われた。

会場は聖徳寺(信長公記では正徳寺)。

期日は十日後。

十兵衛が供として抜擢されます。

信長の顔を知っているので、選ばれた。別人なら見抜けると言うわけです。猜疑心旺盛だから、そこはそういうことを考えると。

困惑し、そんなことがあるのかとうろたえる光秀に、人の心はわからぬものと言う利政。そのうえで、悪趣味なことを言い出します。

わしが信長ならこう思う。美濃の蝮と顔を突き合わせられるのか。ともに茶を飲む時、その茶に毒が入っているかもしれぬ。そして杯の中身を飲み干し、苦しむ真似をします。蝮ジョークかよ!

「大事な娘の婿殿に、誰が左様な悪さをするものか」

いやいや、土岐頼純……。趣味が悪すぎるぞ!

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利政から見ても、信長はギリギリとのころ。先ほどの、尾張清州の織田彦五郎から信長を殺さないかと依頼があったそうです。光安と光英が廊下ですれ違ったのも、河尻殿という家臣だったそうで。

光秀は、帰蝶様からの書状が届いていたと光安に打ち明けます。信長をよしなに頼むと。

利政がドボドボと酒を注ぐ中、会見が迫ってゆきます。

 

駆け引きそのものを楽しむ帰蝶

天文22年(1553年) 4月、聖徳寺での会見が迫ります。

帰蝶は信長に、いつもの服で良いと言う。

古きものより新しきもの、美しきものを好む。その全てをお見せになればお喜びになると。できることはやり、あとはその場の勝負! そしてこう宣言します。

「これは父上と私の戦じゃ」

「わしの戦を横取りするつもりか」

さて、この戦はどうなるのでしょう。

確かにその認識は正しい。会見の時点で、探り合いは始まっている。儒教の観点からすれば、帰蝶が婚家の方に立つのは当然のこと。

ただ、そういう従順な女性視点からひねらねばならない。

帰蝶と信長に愛がないとは思えない。けれども、愛だけではなく、帰蝶は駆け引きそのものを楽しんでいる。

これは難易度が高い。

ゲームそのものを楽しむ気持ちが、帰蝶にはあります。これは珍しいことです。

対照的な存在を考慮すると、考えやすくなるのが本作の特徴。

帰蝶の場合は、深芳野です。

彼女は自我が希薄。自分がないからこそ、夫と我が子への愛を引き裂かれ、ズタズタになるしかないのです。

帰蝶が気になる造形にされてきた。本能寺で散るというのも定番だけれども、夫の死後、マイペースに生きる姿も魅力的かもしれない。

でも、彼女をマクベス夫人だの、無双だの、悪だの、軍師だの、そういう意見には賛同できません。

軍師は定義がよくわからない。まぁ、言いたいことはわかるんですけど。なまじ戦国時代だと、使うことにちょっとためらいがある。

マクベス夫人とマクベスは、帰蝶と信長にはあまりあてはまらないと思います。マクベス夫妻のように、悪事ゆえに神経を損なうような繊細さは、この二人にはないと思います。今回の帰蝶は『ヴェニスの商人』のポーシャあたりですかね。

 

帰蝶とマムシの戦はどちらの勝利か……

そのころ、美濃を出た利政たちは寺の側で待ち伏せをしています。

光秀は、信長を見かけたら遠慮なく利政の肩を叩いてよいとの指示。でも、これってつまらなかったら謀殺する合図でもあり、困るわけではある。しかも兵を800も率いていたとか。

信長の様子次第で事を決するって。殺伐としてますね。

そこへ見張りの者が、織田勢の到来を告げます。

と、歩いてくる織田勢は鉄砲を担いでいます。その数、100……200……いや300!

尾張にいる帰蝶は誇らしげな顔でお茶を飲んでいる。

こういう女性像は、ありそうでなかった。

男勝りとされる女性像はいました。でもそれは、薙刀を振り回し、馬に乗る。ありきたりで男性目線で描いたようなところはあった。

けれども、帰蝶は将棋の駒を動かすように、鮮やかに策を練りました。

信長は馬上で、派手な格好をして瓜を頬張りつつ、進んで来ます。

この戦は、どうやら帰蝶の勝利のようです。

道三と信長の初顔合わせ、その時うつけは~戦国初心者にも超わかる信長公記13話

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MVP:帰蝶と深芳野

帰蝶が文句なし、もう何もいうことはないようで、他の二人のことも。

深芳野が我が子の背中に指を食い込ませるところは、見ていて胸が引き裂かれるような苦しみを感じさせました。

彼女は何も悪くない。問題があるとすれば、危機管理能力の低さでして。

こんな時にドラマを見ている場合なのか。そういう迷いは絶対にある。今後、このまま撮影できるかどうかも不明ではあります。

でも、せっかくだから本作を通して、危機管理について考えてみましょう。

帰蝶は本作でも屈指の危機管理能力の高さがある。

要素をあげてみます。

一、危機に陥っていると認識する

→帰蝶は「私の殿だから大丈夫!」というような、よくわからない信頼は見せていません。父と夫の会見の危険性をまず認識しました。

二、行動を起こすのは自分、その責任を受け入れる

→ 「これは父上と私の戦じゃ」

そう言い切りましたね。責任を取ればいいってわけじゃないとか、そういう逃げは危険です。

三、問題を分析し、明確にすること

→鉄砲の物量作戦が効果的だと思えばこそ、伊呂波太夫に一直線に進んでゆきました。

四、他の人々や集団からの、支援を受け入れる

→伊呂波太夫に即座に救いを求めています。

五、他の人々を問題解決の手本とする

→父・利政は敵であると同時に、彼女なりのロールモデルだと思えます。

六、自我が強い

→これは言うまでもない。自分がしっかりとあります。

七、己を知る

→女性であり、奥方である自分の行動範囲は理解できています。己の性格も。

八、過去の危機体験

→土岐頼純を死なせた体験がある。

九、過去の失敗を乗り越えたこと

→前夫の死を乗り切ったことや、今川との和睦経験がある。

十、性格の柔軟性

→儒教的価値観にそこまで染まっていませんし。

十一、基本的な価値観

→蝮の娘であること。高政と違って受け入れています。

十二、行動が自由

→信長はあまり制限をしていません。それにもし、このとき帰蝶が妊娠中であるとか、病気であれば、そもそも動けないのです。

ワルだの蝮の血だの、そういうことでもない。本作は、帰蝶なり信長が、いかにして革新的な一手を繰り出すか、丁寧に描いてゆきます。

歴史上の人物を尊敬し、真似することが危難に対応できる手段とは思わない。

けれども、本作は最新の知見を元に、そう構築するから見逃せません。

 

総評

こんな大変な状況下ですが、個人的に怒り炸裂したので、ちょっと愚痴らせてください。

「あのさ、あんたさ、なんであんな大河と朝ドラを悪く言えるの?」

「は?」

「それでレビューして飯食ってるなら、手加減しろよ」

「……………………………………………………」

その場では黙っておりました。でも返せるんです。諫言は耳に痛い。クソレビュアーのせいでどんだけ心を痛めるのかという話は、こっちの耳が痛くなるほど聞きました。

けれども、手加減とダルダルした甘さに慣れきったら、堕落ばかりしませんか?

私は滅多にないとはいえ、褒められたコメントはなるべく早く忘れ、罵倒するコメントはきっちりデータベースを作れるくらい記憶するようにする。堕落を防ぐには、それが一番だと思えるので。

もうちょっとだけ続けさせてください。

「あんたが貶したあの大河脚本家が感染したね、喜んだ?」

「………………………………………………………………………………」

反論は即座に思いついたのですが、サイコパス呼ばわりも嫌なので黙ってました。

いや、武士にせよ、何にせよ。自分のはなった一撃が相手に命中して倒れたら武功に数えられる。けれども、流れ矢で倒れた相手に勝ち誇っても、何の名誉でもない。

それ以前に、そんなこと言っている場合ですか?

彼のバッシングが広まっているようですが、心を痛めております。あの大河そのものを好意的に評価するつもりはありません。とはいえ、制約が多い中で不本意なことがあったであろうと推察される点には同情しています。

それより何より、感染と大河の出来は別ものです。そこを叩いてどうする? そういうことはやめましょう。

むしろ同作出演者のとある動画の動向も気になるところではありますが。これも【自我】を濃厚に出さなかったところはあるかもしれない。日頃スタンスをきっぱり示していれば、防げたかもしれない。そこまでの要求は酷でしょうが。

はい、愚痴終わるようで、ちょっと続く。大河の意義についてです。

前述もしたわけですが、せっかくだからこのレビューも、危機管理能力をあげることを考えて書きたいとは思います。

時代は変わりましたよね。

大河ドラマがつまらないだのなんだの言われて、スイーツだの女性視聴者層やスタッフが槍玉にあげられていましたが。

国民的番組という以上、国民の性質の反映だったということは考えないといけない。

ニュースよりバラエティ。勉強して難しいことを言う学者よりも、根性論大好きな営業マン系がウケる。セレブとつながりたい。困っている人のことは無視したい。被災地だの困窮だのの話をした途端、目を逸らしてしまう人は本当に多いものです。

で、大河もその反映だった。

少女漫画の手癖みたいなベタベタな甘いドラマ。昭和の焼き直し。気骨ある大河がふにゃっとなる。

受け止める側も、女性主人公だとその時点で叩きが半端ない。

小学生男子が目立つ女子を叩くメンタリティで叩き始める。『おんな城主 直虎』は最先端の研究も反映して、なかなか渋い要素もありますが。ミソジニーを隠しきれないアンチコメントが常に煮えたぎっていました。

いいからドラマの話をしろってなるのはわかっている。

でも、本作を語る上で、危機への対応意識や革新性は見逃せないわけです。

帰蝶の凄みはMVPだけにもういいとは思う。けれども、藤吉郎もすごかった。あの短い会話で、彼がどれだけ賢いのか、伝わってきました。

このドラマを貫くこと。それは危機への対応のような気がしてきました。

今週の帰蝶にせよ、その他の人にせよ。成功したい人間はこれが実践できていた。

明哲保身――道理をしっかりとわきまえれば、危険を回避し、身を保つことができる。

帰蝶は対処を悟り、テキパキと行動できました。自分なりの道理を理解できねば、そんなことはスタートすら切れない。

先憂後楽――先立って世の中のことを憂い、世の中が落ち着いた後に楽しむこと。

こういう状況で、楽観して騒ぎすぎだという声は聞きます。しかし、やらかして後悔するより臆病だとバカにされたほうがまし。

今回光秀がゴロゴロ悩んだように、まず悩もうと思います。

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
麒麟がくる/公式サイト

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