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【麒麟がくる総集編感想あらすじ】
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【智】新知見を取り入れ、歴史を見直し、新しい判断を下す
智とは? 知識を取り入れ、それを生かすこと。
本作は、三英傑はじめ、歴史上の人物を再構築することを掲げておりました。
これは果断です。
Amazonプライムの『MAGI』を見て、その後の大河出演者が気の毒でなりませんでした。
どうすれば吉川晃司さんの織田信長に勝てる?
緒形直人さんの豊臣秀吉に勝てる?
こういう時は「迂直の計」という概念があります。
従来のルートが曲がりくねったものであれば、まっすぐ突き進むべし!
丹念な研究をもとに、まさしくこの「迂直の計」を行ったのが本作と言えます。
しかしこれが前述の「ハンマーで問題を壊す」問題にも通じるのですが……計略に用いた新研究知見を解くドライバーがないと、解き明かせません。
◆「いい人だけど間が悪い」「パワハラに耐えかねて爆発」…『麒麟がくる』の光秀をもう一度考える――青木るえか「テレビ健康診断」『麒麟がくる』(→link)
「光秀はパワハラに苦しんだだけなの? ちっちゃくない?」
こういう声は出てくるでしょう。似たような反応は、NHKの別の看板ドラマでもありました。
2018年『半分、青い。』と2020年『スカーレット』です。
どちらも主要人物やヒロイン夫妻が離婚します。
ところが、浮気、DV、ネグレクト……そういった決定的な要素がなかったため、NHKが遠慮したのだとか、性描写を避けたとか、そんな推察がありました。
これは【認知科学】とりわけ【認知心理学】というドライバーがないと、読み解けないかもしれません。
決定的な断絶がなくとも、色々と間の悪いことがあったり、神経に触ることを繰り返されると、人間の精神は壊れます。
そんな些細なことが動機でよいのか? いや、その些細なことで破滅が起こる……そんな研究が日々進んでいるんですね。
光秀は間が悪い。それはその通り。光秀は斎藤道三、斉藤高政、朝倉義景にきついことを言い、いらぬトラブルを招きました。
要領がよいとは言えない。どこか“ズレてる”といえばそう。
けれどもこれだって先天的な要素、彼の本質、性格由来のところはあり、「空気読みなよ」と指摘したところで仕方ありません。
直そうにもできない。周囲が理解するなり、サポートの必要がある。
光秀の精神的な均衡は、愛妻・煕子の死によって深刻化しました。周囲の支えや理解があれば、彼はここまで傷つかなかったでしょう。
そこを察していたのか、駒やたまは彼のために薬を調合していましたね。ストレスを察知し、和らげないと彼は危ういと感じるものがあったはず。
光秀は『鬼滅の刃』の炭治郎に通じるところがあります。
ズレている。徳がある。彼は変わっています。先天性で、本人だってつらい。そこは周囲が理解してあげたい。
『鬼滅の刃』竈門炭治郎は日本の劉備だ~徳とお人好しが社会に必要な理由
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同様に織田信長も【認知心理学】をふまえたような造形でした。
それなのに「よくある漫画のサイコパスみたい」で片付けられるのはどうなのか。
信長が裏切られ続けた理由は『不器用すぎた天下人』を読めばスッキリします
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こうした【認知心理学】のアプローチは、陰謀論を一蹴する効能もあります。
なぜ光秀は信長を裏切ったか? 本能寺の変における諸説検証で浮かんでくる有力説
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尽きぬ「本能寺の変」黒幕説。その背景にある人間の心理を考察してみますと……。
「あれほど素晴らしい信長が、そんな油断をするわけがない」
「光秀ほどの人物が、突発的なことをするわけがない!」
「これほどのことだ、きっと奥深い真相があるのだろう」
そういう需要があれば、供給もついてくる。荒唐無稽であろうが、そういう本が売れて、記事が読まれるのであれば、そこは供給されます。
このことは歴史トリビアのみならず、現代にもあてはまります。
なぜ陰謀論ニュースが飛び交うのか?
どうしてあの人は無茶苦茶な陰謀論にハマってしまう?
コロナの時代だからこそ考えたい、そんな問題解決のヒントは【認知心理学】にあります。
◆ バイデン新政権発足で動揺と分裂 陰謀論Qアノン信奉者たち(→link)
こうした【認知心理学】を元にした歴史研究、書物、フィクションは最近増えています。むしろそこを踏まえなければ陳腐になる。
民放のドラマや『鬼滅の刃』といった漫画でも、こうした【認知心理学】を踏まえたアプローチをしているのです。
NHKはその点、Eテレがあるだけに一枚上手です。極めて巧みに【認知心理学】をふまえて歴史を再構築してきた。
それが『麒麟がくる』という作品です。
けれども、この【認知心理学】の話をするとややこしいことになります。
理解されないだけならまだよく、ともすれば嘘をついていると流されかねません。こうしたアプローチは、若年層の方が偏見なく受け入れられる傾向があります。
具体的にいえば、2020年時点での20代以下です。
年代が上の方が、
「この程度でくじけるなんて根性ないよ」
となってしまい、理解が至らない傾向があるんですね。
これだけ精神を痛めつけるいじめ、パワハラ、SNSの誹謗中傷が問題化されているにも関わらず、心を傷つけることを過小評価する傾向には、深い懸念と憂慮を覚えずにはいられません。
僭越ながら
【ニューロ・ダイバーシティ】
【アドボガシー】
といった概念から取り組んでみることをオススメします。
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