麒麟がくる総集編

絵・小久ヒロ

麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる総集編 感想あらすじ視聴率「仁義礼智信」

こちらは4ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
麒麟がくる総集編感想あらすじ
をクリックお願いします。

 


【智】新知見を取り入れ、歴史を見直し、新しい判断を下す

智とは? 知識を取り入れ、それを生かすこと。

本作は、三英傑はじめ、歴史上の人物を再構築することを掲げておりました。

これは果断です。

Amazonプライムの『MAGI』を見て、その後の大河出演者が気の毒でなりませんでした。

どうすれば吉川晃司さんの織田信長に勝てる?

緒形直人さんの豊臣秀吉に勝てる?

こういう時は「迂直の計」という概念があります。

従来のルートが曲がりくねったものであれば、まっすぐ突き進むべし!

丹念な研究をもとに、まさしくこの「迂直の計」を行ったのが本作と言えます。

しかしこれが前述の「ハンマーで問題を壊す」問題にも通じるのですが……計略に用いた新研究知見を解くドライバーがないと、解き明かせません。

◆「いい人だけど間が悪い」「パワハラに耐えかねて爆発」…『麒麟がくる』の光秀をもう一度考える――青木るえか「テレビ健康診断」『麒麟がくる』(→link

「光秀はパワハラに苦しんだだけなの? ちっちゃくない?」

こういう声は出てくるでしょう。似たような反応は、NHKの別の看板ドラマでもありました。

2018年『半分、青い。』と2020年『スカーレット』です。

どちらも主要人物やヒロイン夫妻が離婚します。

ところが、浮気、DV、ネグレクト……そういった決定的な要素がなかったため、NHKが遠慮したのだとか、性描写を避けたとか、そんな推察がありました。

これは【認知科学】とりわけ【認知心理学】というドライバーがないと、読み解けないかもしれません。

決定的な断絶がなくとも、色々と間の悪いことがあったり、神経に触ることを繰り返されると、人間の精神は壊れます。

そんな些細なことが動機でよいのか? いや、その些細なことで破滅が起こる……そんな研究が日々進んでいるんですね。

光秀は間が悪い。それはその通り。光秀は斎藤道三、斉藤高政、朝倉義景にきついことを言い、いらぬトラブルを招きました。

要領がよいとは言えない。どこか“ズレてる”といえばそう。

けれどもこれだって先天的な要素、彼の本質、性格由来のところはあり、「空気読みなよ」と指摘したところで仕方ありません。

直そうにもできない。周囲が理解するなり、サポートの必要がある。

光秀の精神的な均衡は、愛妻・煕子の死によって深刻化しました。周囲の支えや理解があれば、彼はここまで傷つかなかったでしょう。

そこを察していたのか、駒やたまは彼のために薬を調合していましたね。ストレスを察知し、和らげないと彼は危ういと感じるものがあったはず。

光秀は『鬼滅の刃』の炭治郎に通じるところがあります。

ズレている。徳がある。彼は変わっています。先天性で、本人だってつらい。そこは周囲が理解してあげたい。

竈門炭治郎
『鬼滅の刃』竈門炭治郎は日本の劉備だ~徳とお人好しが社会に必要な理由

続きを見る

同様に織田信長も【認知心理学】をふまえたような造形でした。

それなのに「よくある漫画のサイコパスみたい」で片付けられるのはどうなのか。

信長が裏切られ続けた理由は『不器用すぎた天下人』を読めばスッキリします

続きを見る

こうした【認知心理学】のアプローチは、陰謀論を一蹴する効能もあります。

本能寺の変
なぜ光秀は信長を裏切ったか? 本能寺の変における諸説検証で浮かんでくる有力説

続きを見る

尽きぬ「本能寺の変」黒幕説。その背景にある人間の心理を考察してみますと……。

「あれほど素晴らしい信長が、そんな油断をするわけがない」

「光秀ほどの人物が、突発的なことをするわけがない!」

「これほどのことだ、きっと奥深い真相があるのだろう」

そういう需要があれば、供給もついてくる。荒唐無稽であろうが、そういう本が売れて、記事が読まれるのであれば、そこは供給されます。

このことは歴史トリビアのみならず、現代にもあてはまります。

なぜ陰謀論ニュースが飛び交うのか?

どうしてあの人は無茶苦茶な陰謀論にハマってしまう?

コロナの時代だからこそ考えたい、そんな問題解決のヒントは【認知心理学】にあります。

◆ バイデン新政権発足で動揺と分裂 陰謀論Qアノン信奉者たち(→link

こうした【認知心理学】を元にした歴史研究、書物、フィクションは最近増えています。むしろそこを踏まえなければ陳腐になる。

民放のドラマや『鬼滅の刃』といった漫画でも、こうした【認知心理学】を踏まえたアプローチをしているのです。

NHKはその点、Eテレがあるだけに一枚上手です。極めて巧みに【認知心理学】をふまえて歴史を再構築してきた。

それが『麒麟がくる』という作品です。

けれども、この【認知心理学】の話をするとややこしいことになります。

理解されないだけならまだよく、ともすれば嘘をついていると流されかねません。こうしたアプローチは、若年層の方が偏見なく受け入れられる傾向があります。

具体的にいえば、2020年時点での20代以下です。

年代が上の方が、

「この程度でくじけるなんて根性ないよ」

となってしまい、理解が至らない傾向があるんですね。

これだけ精神を痛めつけるいじめ、パワハラ、SNSの誹謗中傷が問題化されているにも関わらず、心を傷つけることを過小評価する傾向には、深い懸念と憂慮を覚えずにはいられません。

僭越ながら

【ニューロ・ダイバーシティ】

【アドボガシー】

といった概念から取り組んでみることをオススメします。

※続きは【次のページへ】をclick!


次のページへ >



-麒麟がくる感想あらすじ
-

×