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【青天を衝け第32回感想あらすじレビュー】
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算盤バトルで「日本スゴイ!」をしたいのか?
本作の栄一って、数字に強い場面がないんですよね。
華流商業ドラマ『月に咲く花の如く』では、ヒロインが暗算をテキパキとしてしまい、即座に儲けを出す。そういうセリフをきっちりと噛み締めて言うから、賢い女性だとわかりました。
しかし本作は、こんな最終盤になって算盤をクローズアップ。
しかもセリフの読み方が、ちゃんと算盤の仕組みを理解していないのではないかと思えるような読み方でした。
経済大河の最終盤で、なぜこんな算盤バトルを見せられているのでしょう?
わかります。
このバトルは、民放で一世を風靡した「日本スゴイ」番組のフォーマットなんですね。
「日本を知らないガイジンが、日本の伝統にケチをつけるけど完敗!」
という流れ。一体何をしているのでしょう。
正確に計算ができて、かつ使い慣れた道具があれば、ガイジンがあんな強硬に止める理由もないでしょう。
算盤なんて学校で習うものだし、定番の習い事でもある。
そういうものを「できてすごーい!」ってどうするんでしょう。
それに、演じる役者が「算盤は手つきがそれっぽければOKが出る」と明かしていますからね。
セリフの読み方も、所作も、算術の達人には到底見えませんでした。
まぁ、せっかく言及された複式簿記も、その素晴らしさは制作サイドで理解してないと見せることができませんしね。
簿記は株式会社……というかすべての中小企業、個人事業主にも欠かせない、本当に素晴らしい発明なんですけどね。同じ幕臣の福沢諭吉を出していればなぁ。
明治の生糸産業はイタリアに学ぼう
成一郎はどうしてイタリアに行ったのでしょうか?
工業では産業革命のイギリスがリードしている。ただし、アパレル関係ならば当時からイタリアが強い。今でもファッションの本場です。
当時社交界でもてはやされたシルクのドレスとなれば、やはりイタリアが一番でした。
日本産シルクをヨーロッパ社交界に売り込んでこそ、外貨が獲得できます。それゆえのイタリア……なのですが、このドラマだけでは到底わかりませんよね。
お蚕ダンスより、シルクドレスを着た紳士淑女ダンスが欲しかった。明治ものならばお約束でしょうに。
ここで考えたいこと。
イタリアへの派遣って勝ち組ならではの話です。
北海道に屯田兵として渡った会津藩士の場合……。
「おまえら、西洋リンゴ育てろ!」
「なじょすて育てればいいんだべ?」
「しらねー!ここで挫けたら会津藩士って所詮その程度なの? って思われるぞ」
と、ノウハウも何もなしにいきなり苗を渡された。
このあたりの会津藩士の血の滲むような努力は2014年下半期朝ドラ『マッサン』で取り上げられました。
余市はリンゴで有名になったからこそ、竹鶴政孝はここで事業を始めた。
「ニッカ」の前身は「大日本果汁」です。
敗者の会津藩士が極寒の北海道余市へ 開拓リンゴ「緋の衣」が誕生
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『青天を衝け』では、北海道のことが全く出てきません。
北海道開拓は、政府が実験感覚と言いますか。制度でも作物でも、当たって砕けろ精神で取り入れたせいで、屯田兵が苦労に苦労を重ねている。
そんな北海道開拓史を踏まえると、このドラマの主人公周辺は本当に甘っちょろい。
豪華どころか過酷だった北海道「食の歴史」米や豆が育たぬ地域で何を食う?
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