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配下にするなら三成♪ 働き過ぎで心配にもなる三成♪『石田三成伝』で戦国能吏の真髄を学ぶ

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「配下にするなら三成~♪ いしだみつ~~なり~~~♪」

衝撃的な歌が耳から離れない、石田三成PRCMからほぼ一年(滋賀県作/上記Youtubeの詳細はねとらぼにて)。

石田三成の決定的な伝記が出ました。

 

五百頁を越える分厚さは、まさに決定版ではないかと思わせる重厚な説得力があります。
これだけの史料を丹念に調べた筆者、そして書いた石田三成の両者には驚嘆するばかりです。

本書の特徴はいくつかあります。
まず、敢えて関ヶ原をクライマックスに持ってきていないこと。全く取り上げていないわけではないのですが、全体からすると比重もさほどではありません。
「三献茶」のような創作とみられる逸話にはふれない。最終章での三成像形成についての部分でふれるにとどまります。

そして何といっても、豊富な一次史料を掲載していること。
石田三成という武将に関して、一次史料を中心としてエピソードを排除し、この価格と厚さで迫るというのも、時代の流れを感じます。十年前には考えられなかったのではないでしょうか。石田三成自身の人気向上もあるでしょうが、それ以上によりマニアックなニーズが増えてきたということかもしれません。

本書は歴史上級者向けです。豊臣政権の政策について頭にある程度入っていないと、読んでいて混乱する可能性があります。ある程度戦国本を読んでから手に取ることをおすすめします。

 

冷酷どころか気配りが細やかすぎるのがアダになったのでは?

本書を読んで感じたことは、ともかく三成はものすごく働いている、ということです。

多忙な戦国大名や武将であっても、例外的に余裕のある時期というものがあります。本書は徹底した一次史料ベースということもあるのでしょうが、三成の人生はどの時期も実務をこなしていて、そういう隙間がないように思えるのです。
没後四百年を経ているのに、三成は働き過ぎではないだろうか、と心配になってきました。

昔、小さな町の史料コーナーに、地元国衆と三成との書状の複製が展示してありました。こんな国衆とまで三成はやりとりがあったのかと驚きましたが、その時のことを思い出しました。
確かにこれは滋賀県CMの通りです。

「配下にするなら三成~ 石田三成~」

しみじみと、そう思いました。この仕事量だけでも超人的です。

三成の動向を一次史料から読み解いていくことで、豊臣政権の政策や外交が読み取れるというのも驚異的です。北は陸奥から、南は九州まで、そして海を越えては朝鮮や明とまで、三成は様々な実力者と交流しています。
こうした重要な役目を、二十代の青年期から三十代にかけてこなしていたというのは、三成の能力がいかに高かったかということではないでしょうか。

フィクションでは無愛想で冷徹に描かれることが多い三成ですが、一次史料にみられる大名らとの細やかなやりとりを見ていると、そうは思えません。むしろ細やかなところまで気がつくできた人という印象を受けます。

これはあくまで個人的な感想ではあるのですが、三成が嫌われたのも、慕われたのも、同じ理由ではないかと思うのです。
ここまで重責を背負い、様々な大名との交渉を行っていれば、その過程で感謝されることもあれば、恨まれることもあるわけです。

三成経由で豊臣政権と交渉して成功した大名からすれば「よくできた方だ、感謝している」となるでしょう。反対に要求を通せなかった大名からすれば「あいつが余計なことを吹き込んだのではないか? 手を抜いたのではないか?」と疑心暗鬼にもなることもあったのではないかと思いました。

 

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どう歪められたのか どう修正されていくのか 正しき三成像の変遷

そんな優秀で働き者の三成が何故貶められたか。その分析は本書最終章で書かれています。

徳川家康に敵対した以上、江戸期に厳しい評価が下されたことは当然のことです。
軍記等では蒲生氏郷を毒殺するように秀吉に進言したといった、荒唐無稽な逸話も創作されました。
豊臣政権の悪事の陰には常に三成がいたかのような、悪意ある記述が頻出します。

明治以降、徳川史観のくびきから逃れた三成像は復権してゆきます。
徳川家康こそが豊臣家にとって害意のある者であり、三成はそれを排除しようとしていたという忠臣としての像、能吏としての像が形成されていったことが、丁寧に説明されています。

石田三成のファンならば是非手に入れたい本書。
三成ファンでなくとも、豊臣政権の外交政策を知るために、手元におきたい保存版の一冊といえます。

戦国ファン注目の一冊であり、今年発売される中でも最重要ともいえると思います(本書は2016年末に発売)。



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