宮本武蔵の幼名「たけぞう」も若い佐々木小次郎も、俺(吉川英治)が創った話です!

 

宮本武蔵の巌流島での佐々木小次郎との対決について「一般常識」としては、ツバメ返しの達人の小次郎を、武蔵はわざと大幅に遅刻することで、じらして勝負を有利にし、船の櫂をけずった木刀で倒した、ことになっている。 ところが、これは史実からは大きく離れている、というのが最近の研究だ。

その”風説の流布”の犯人もわかってて、岩波新書「宮本武蔵」の著者で国際武道大教授(日本思想史)の魚住孝至さんによると、一般常識の巌流島の戦いは、吉川英治の小説『宮本武蔵』とする。

武蔵、巌流島に遅刻してないし

バガボンド(1)(モーニングKC)

もっとも吉川英治も全くオリジナルではなく、元ネタがあって、1776年に書かれた『二天記』をベースにしている。

この年をみるとわかるが、武蔵(1582?~1645年)が死んでなんと約130年も後。つまり史料性は極めて低い。小説をもとに小説を書いたようなものである。

では、もっと信憑性の高い史料はないのか?というと、ある。

それは、武蔵の死後9年目に、武蔵の養子となった宮本伊織が建立した顕彰碑「小倉碑文」だ。
そこには「両雄同時に相合し」とあるから、武蔵が遅刻したということはなかった。

さらに 「岩流三尺の白刃を手にして来り(略)武蔵、木刀の一撃を以て之を殺す。電光猶ほ遅きが如し」 とあり、そもそも「佐々木小次郎」という名前すらなかった! 佐々木の姓がでる(小次郎というのは古くから伝わっていた)のは上の「二天流」がはじめてで、それもその当時の歌舞伎からとったらしい、と魚住教授はこのテーマを特集した新聞の取材にコメントを寄せている。

死後わずか9年後の記録なので、あまりにも大きなウソはないだろうと見られている。

一方、17世紀(1682年)の「沼田家記」には、戦いの後、小次郎は蘇生したが、それを隠れ見ていた武蔵の弟子が殺した。それで怒った小次郎の弟子が武蔵に復讐しようとしたが、武蔵が門司城(巌流島の対岸)の城代の沼田延元に助けをもとめ、武蔵を豊後(大分県)まで送り届けたという。ちと、情けなや。

「たけぞう」も「小次郎の衣装」も全部創作

なお、驚くべきことに「武蔵」の幼年期の呼び名「たけぞう」も吉川氏の創作。

また、小次郎が美少年であるのも、60歳の老人説と20歳前後だったとの両方の説があったのを、後者を選んだ結果だ。

武蔵「吉川英治さん、たのむっすよ~」(くらたにゆきこ・絵)

武蔵「吉川英治さん、たのむっすよ~」(くらたにゆきこ・絵)

 

「吉川英治が捏造・隠蔽していたのか!!!」とS●AP細胞ばりにお怒りになられる人もいるかもしれないが、実は本人もあっさり「作り話だよ~」と公表している。

吉川氏は「どっちにとろうか、迷ったんです。そして結局、小次郎の年齢は若い方をとったんです。そしてああいう扮装のアイデアも僕のデザインで拵えたものですが、(略)今では小次郎スタイルっていうとあれでないと小次郎らしくなくなっちゃった」と、自身の作品「小説のタネ」の中で明かしているのだ。

吉川氏をすごいと褒めるべきか…

なお、マンガ「バガボンド」が、「たけぞう」や「若い姿の小次郎」が吉川英治の世界観にそっくりと思われる人もいるだろう。それはそうである。バガボンドの原作は吉川英治と明記されているのだ。これって意外な盲点だったりする。

川和二十六・記


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コメント

    • 匿名
    • 2016年 7月 14日

    法典ヶ原で百姓仕事してたってのも100%創作で、
    「習志野っていい地名だよね。ここで武蔵に百姓仕事させたいなあ」
    ってのを
    「なりませぬ!習志野は明治天皇が命名した地名で江戸時代にはまだありませぬ!」
    と監修の人の突っ込みを受けて
    「じゃあ、法典ヶ原にしよう」
    となったらしいです。

    • 匿名
    • 2015年 2月 23日

    自分で創作って言っている分、吉川英治は正直ですよ。

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