『おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]』/amazonより引用

おんな城主直虎感想あらすじ

『おんな城主 直虎』感想レビュー第2回「崖っぷちの姫」 丁寧に計算しながら定石ハズす

2017/01/15

第一回の感想もぼちぼち出てきましたが、とりあえずは順調なようです。

子役で一ヶ月間引っ張る本作。子役の熱演は既に話題ですが、それだけではない脚本のおもしろさにも期待がかかります。

さて、視聴率ですが。

◆大河ドラマ『直虎』初回視聴率は16.9% 2000年以降ワースト2位の低発進(→link

ここは視聴率そのものではなく、低いからと叩きが加速することを警戒したいです。BS先行や録画率も合算して報道されるとよいと思います。

『真田丸』の遺産は、先行放送や録画率、SNSでの反応、大河ドラマ館の入場者数など、総合的に判断して扱うようになったことでしょう。

大河の報道といえば、視聴率が下がったことに対する茶化した報道、視聴率アップのためにお色気シーンを投入するのではないかといったしょうもないものが多かったものです。

昨年は初夏までは「きりバッシング」をしつこく繰り返すしょうもない記事が多かったのですが、そのうちそうした記事は減り、内容や史実の検証記事が増えてきています。

今年もそうなることを願います。

 


何気ない会話でもキャラクターがぶれない

物語の背景を説明するアバンのあと、OPを経て本編開始です。

まずは先週のラストで、どうして亀之丞(井伊直親)とおとわ(井伊直虎)が入れ替わっていたかのネタばらしとなります。

とわは亀之丞に笛を返すため、早朝から山中を歩いていました。

そこで亀之丞と出会ったとわは、着物を交換して時間稼ぎのために囮となったのでした。

亀之丞は強くなって必ず帰って来るととわに誓います。ここは気合いを入れて描かないと、とわがどうして亀之丞を待ち続けるのか弱くなりますので、演技や演出にも力がこもります。

今川家の家臣(何かと気になる、キラキラしたおそろいの服です)もこの入れ替わりと、「竜宮小僧を探していた」と答えるとわには困惑するばかりです

。子供相手に本気で怒ることもできない今川の家臣は、かわりに保護者である井伊直盛夫妻に鬱憤をぶつけるほかありません。

幼いながらも今川家を翻弄するとわの姿は、将来の行動を予感させます。

このあと今川家は何度も、あの井伊家の女にしてやられたと歯がみすることになるのでしょう。

曾祖父の井伊直平と直盛はとわの機転、今川の鼻を明かした痛快さを褒めます。

一方で直盛の妻・千賀(新野千賀)は、その場で斬られたらどうするつもりだったかと叱ります。

何気ない会話でもキャラクターがぶれないところが本作の良さです。体幹がしっかりしている人が踊るのを見るような、そんな安心感があります。

ここでのぶれなさは井伊家の男性陣が楽観的で陽性であるのに対して、女性はむしろリアリストであるというところなのです。

千賀はありがちな優しく慈愛に満ちた母親というわけではなく、時に厳しく、時に冷徹にもなって、娘に接します。

我が子の人格や性格を認めつつも、厳しく指導する姿に好感が持てます。

亀之丞は逃げ切って捜索は一段落。討たれた井伊直満の寂しい葬儀がやっと行われます。

この葬儀のあとの酒宴での会話で、各人の立位置を示します。

井伊家の面々は直満の死は仕組まれたものではないかと薄々感じてはいますが、決定的な証拠を出せずに怒るばかりです。このあたりが真田家との違いです。

 


和泉守の主張にも一理あり 直平では今川にソク潰される!?

そこへ小野和泉守政直がやって来ます。

官名で「小野和泉守」と呼ぶあたり、昨年からのよい傾向が継承されていますね。

今川家では千賀の兄である新野左馬助(新野親矩)ではなく、小野政直を目付にすることにしました。

さらに政直の子・鶴丸(小野政次)をとわの婿として、次の井伊家当主に据えると言ってきたのです。

直平は激昂し、政直を斬り捨てようとすらします。これはもう直満を罠にかけたのは政直だと、井伊家の皆にもわかってきます。

しかし繰り返しますが、彼らは決定的な証拠がないというところで詰まってしまいます。それ以上の策は出せないのです。

どうしようもないまま、彼らは死者を弔うために酒を飲むしかありません。

板張りの粗末な屋敷、鶏の声が聞こえる場所で、為す術もなく酒を飲む井伊家の面々。弱小国衆の悲哀を凝縮したかのような場面です。

昨年の真田昌幸は「小国は辛いのう」と嘆いていましたが、今年の井伊家もそれがあてはまります。

全体的に漂う悲哀から井伊家に肩入れしたくはなるものの、台詞だけを検証すると小野政直がさほど間違っていない点にも注目したいところです。

直平の言うように怒りにまかせて今川(今川義元)に叛旗を翻したところで、井伊家を待つのは破滅だけです。それを回避するためには、彼のような有能なパイプ役が必要なのでしょう。

政直は劇中ではわかりやすい悪役とされていますが、家を守るために今川に近づきすぎて邪推され、後世において奸臣扱いされるようになった人物かもしれません。

その「やむにやまれぬ立場から悪役となる」という部分は、政直の次の世代でもっとはっきりするでしょう。

とわは千賀から、直満が残した土産を受け取ります。その中身は鼓です。夫が笛を吹き、妻が鼓を叩く、そんな願いがこめられていました。

この鼓はとわの恋心の象徴となるわけです。笛の音を鼻声で再現しながら鼓を拍つとわの姿は、理屈抜きで健気です。

ここで猫和尚こと南渓との対話タイム。

とわは井伊家初代の伝説「井戸の赤子」の正解を知りたいと尋ねます。

南渓はとわ、亀之丞、鶴丸それぞれの答えを聞き、全て正解だと返します。

「答えは一つとは限らぬからのう」

軽い口調ですが、本作のテーマとなりそうなことを言う南渓和尚なのでした。

 

「死ぬために生かされる」解死人 なかなかヘビーですのぅ

鼓を練習しているとわに、厳しい現実が待っています。

父・直盛の口から、亀之丞ではなく鶴丸と婚約して欲しいと言われるのです。

今川に振り回される現実に、まったく納得がいかないとわです。直盛は目が泳いでいますが、千賀は強い態度で娘を諭します。

鶴丸もまた、父・政直から婚約の話を聞かされていました。

鶴丸は何故こんなことになるのか、これまた全く納得ができないようで父に反論します。

鶴丸の心の中には、父への不信感と、そしておそらく軽蔑とが渦巻いてゆきます。

鶴丸を演じる小林颯さんは台詞の読み方は少し拙くもなりますが、それを補うように目の表情が雄弁です。見開いた目から彼の苦悩や困惑が伝わって来ます。

井戸の近くで、とわと鶴丸は顔を合わせます。

父が井伊直満を罠にかけ、亀之丞を追い出し、亀之丞ととわの婚約を破談にしたのだと鶴丸はとわに言います。

そんな父の子である自分がとわに好かれるはずはないだろうと、諦念をにじませる鶴丸。

しかしとわは、父のしたことと息子は関係ないと言います。

ここが父の罪を息子にまで問う今川家との対比になっています。とわは、今回の縁談を反故に出来ないかと鶴丸に尋ねますが、答えは得られません。

それにしてもとわに悪意は全くないとは思いますが、なかかか残酷ではあります。

父は父、子は子なのだから悪く思わないと言う一方で、鶴丸との結婚は断固として断るつもりなのですから。

ある夜、井伊家からとわの姿が消えます。

皆は「かどわかしではないか」と驚き、捜索隊が出動します。

とわは家を密かに抜け出し、眠るためにあばら屋へ。

藁の中に潜り込んだ矢先に驚いたのは、先に寝ていた男でした。

とわは相手を疑いませんが、見ている側からすると「悪人ではないか」とハラハラするのではないでしょうか。

男は空腹のとわに粥を食べさせるものの、一方ではとわの持ち物を探っており、一体何を考えているのかわかりません。

とわは男に嫁御はいないのかと無邪気に尋ねます。

ここで男は、村に養われているだけだと答えます。

村落同士で争いが起こり、死者が出た場合に、身代わりとして差しだされるために生かされている存在なのです。

『真田丸』の村落間の争いでは、暴力沙汰とはいえ刃物は使わず、相手を追い払う程度にとどめていました。エスカレートして死者が出ると、いろいろ困るからです。

彼の身分についてとわは軽く流していますが、現代人からするとかなり恐ろしい生かされ方だと思います。

彼はいついつまでの命とわかったうえで、最低限の生かされ方をしているわけです。

ほのぼのとした子役の成長物語と見せかけて、昨年同様なかなかヘビーな時代背景を盛り込んできました。

こういうのが私は大好物です。

男はとわを探す人々の姿を見て、相手の正体を悟ります。

これはチャンスだと目を輝かせる男。果たしてどうなるのでしょうか。

 


人の好い直盛ですら簡単に処分しようとするほどの軽い命

翌朝、井伊家の屋敷にあの男がやって来ます。傍らには袋に入れられたとわの姿が。

男が喜んでいると、直盛は男を斬首するよう言いつけます。男は誘拐犯だと思われたのでした。

人のよい直盛も厳しい顔で処断しようとしますが、とわが説明してなんとか止めます。

可哀相だからやめて欲しいではなく、とわが理由をきっちりと説明、粥もくれたと言うところは好感が持てます。

男は礼金をもらい、ほくほく顔で井伊家をあとにするのでした。

とわが家出したことに千賀は怒り、平手打ちをします。

この場面でも直盛より千賀が厳しい態度です。

とわは自分さえいなくなれば婚約が解消できると思い家出したと、涙ながらに思いの丈を語ります。

亀之丞が可哀相だと大泣きするとわ。自分の気持ちよりも、相手の気持ちを考えて無茶をするところはやっぱり好感が持てます。とわへの好感度が上がります。

直盛と千賀は、とわが婚約を受け入れねば井伊家の皆が困るのだと説得します。

子供だから従えと強く言うわけではなく、ちゃんと納得できるように説明するあたりが、直盛の優しさです。

しかしとわは親の心子知らずで、「婚約を解消できないなんて父上も母上も阿呆ではありませんか」と口を滑らせます。

千賀は娘を抱きかかえると、そのまま厳しく部屋に閉じ込め、勝手に開けたら首が飛ぶとまで乳母に言います。

その態度に直盛も厳しすぎるのではないかと戸惑います。やはりこの夫婦、母親の方がリアリストで厳しいようです。

部屋に閉じ込められたとわは、どうすれば婚約を解消できるのか考えあぐねています。

鼓を拍ち、亀之丞を思うとわ。このあと彼女は、ある行動に出ます。

なんととわは、自ら髪を切ってしまっていたのでした。娘の行動に直盛も唖然とする他ありませんでした。

先週に続き、とわの行動に周囲が驚くところで話は終わります。

 

MVP:あばら屋の男=解死人

昨年と今年はセットで二度おいしいと書いて来ましたが、彼は昨年の「農民同士の小競り合い」や「鉄火起請」を補完する存在です。

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『真田丸』では隣村の者同士が、資源をめぐって小競り合いをしていました。

あのような争いでは、武力行使して争うものの、死人は出さないように気をつけています。

もし死人が出てしまった場合、加害者側が人を差しだして話をおさめるほかありません。

他の地域や国では「死者一人につき牛三頭」というように、死者の損失を財産で補うことがありました。

しかし中世の日本では、人の命は命でしか等価交換できないのです。

そうなった際に差しだすために、彼のような流れ者、身よりのない者が村落で養われているわけです。こうした人たちは、「鉄火起請」の際に差しだされることもありました。

もちろんそんな人でしたから命も極めて軽いわけで、一見温厚そうな直盛ですらあっさり首を刎ねようとするわけです。

とわの言葉によって彼の命は救われますが、直盛がもっと厳しい性格であれば斬首されていたと思います。

彼の存在によって命が公平ではないこと、命が軽いこと、そうした厳しい時代背景に深みが出ます。中世世界への案内人として秀逸な存在でした。

編集部注:あばら屋の男=解死人(後の豪商・瀬戸方久

 

総評

今年序盤の見所は子役時代が長いことで、幼いとわはじめとする三人が、どのようにして人格形成されているかがポイントです。

時代背景描写も、肝心の井伊家の動向が昨年ほど大きく動かないので、あまり描けないわけです。

そして二話まで見た感想ですと、この三人の運命や道筋がこの時点でみっちりと、それぞれの小さな心に宿っているのが面白いと思いました。

くどいようですが、昨年と今年は二度おいしい、補完的な構造をしています。

直虎にはまだ幼いながらも、この時点で中身がシッカリとあります。芽吹いた心がこれからOPで映される芽のように、ぐいぐいと伸びてゆく魅力があります。

しかし昨年の真田信繁(幸村)はその点、「魔法の鏡」でした。

彼はあくまで器であって中身はなく、彼は周囲の人から影響を受け、受けた相手の理想通りに動いていました。

石田三成に心酔しているころには豊臣政権による泰平の世をめざし、三成が亡くなったあとは父・昌幸が取り憑いたように乱世の残滓と戦いを求めていました。

中身がない人間というとつまらないように思えるかもしれませんが、それが彼の特徴であり魅力でした。

自分が見たい理想の像が映る鏡なのですから、魅力があるのも当然です。それとは逆で、くるくると変わる人間としての性格が掴みにくいと思う人もいたかと思います。

本来ならば、昨年と今年の主人公は逆でもよいはずです。

男性は確固たる己を求められそれを発揮するのがよしとされがちです。

一方、当時の女性は未婚の時には父親、結婚後は夫、夫が亡くなれば息子の色に染まりきり、彼らの意向に従うことが理想とされます。現代のヒロイン像としても、そんな女性が求められがちです。

ところが昨年も今年も、そうした男女はこうあるべきだという価値観や、定番を外してきています。

こうした定石の外し方が、先週書いたモヤモヤ感の一因かもしれません。

しかし特にひっかかることもなく、さらりと見て流せるドラマよりも、かえってよいのかもしれません。

まだまだこの作品が傑作になるかどうか判断は保留しますが、丁寧でいて計算しながら定石を外すこの味わいには魅力を感じています。


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絵:霜月けい

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【参考】
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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