よかった、うれしい予想外です。
先週初回視聴率が年間最高になると書いた予想が外れました!
とはいえ、視聴率はその回ではなくその全回の評価が反映されますので、まだまだ油断はできません。
今後視聴率が下がったら絶対に「やはり三谷は軽い」とか掌返し来るからな! この表裏比興のマスコミめ!
チラホラと既に「言葉使いが軽い」「現代的」という叩きが出ていますけど、よもや同じ口で『八重の桜』の時「わかりにくいんだよね〜」とか言ってませんでしたよね……?
いやホント、『八重の桜』は辛気くさい、会津訛りも幕末史わからないし〜と文句つけておいて、今年は軽いだの何だの言っていたら本当に制作側が気の毒だと思う次第ですよ。どうしろと。
地元は、湧いています。
レビューや感想では、賛否両論です。どちらの意見も納得できます。
気がついたのは、好評意見でも面白いと思うポイントが結構ずれているところです。
私としては目に余った薫のバタバタぶりが楽しかったという意見も多いのです。
そこで、この作品は万人向けスラップスティックコメディと、「わかる奴だけ、わかればいい」歴史小ネタと、笑いどころでも二種類仕込んでいるのかなと気づきました。
歴史解説も細かいですし、間口は広く作ってある。でも歴史好き、大河好きにもアピールしていますよ、というわけです。
◆NHK大河『真田丸』 男優が牽引も女優がぶち壊しとの評(→link)
こういう意見も理解できますが、女優さんのドタバタでほっとしている人もいるでしょう。
耐えられない層は「女優が出たらトイレタイム」と割り切るのもありだと思います。本筋にあまり関わりありませんしね。
また本作は、スマホ片手に実況し、フォロワーとツッコミネタにしながら鑑賞するスタイルではないかと思いました。
本作が軽いという批判は既に出ていますが、このくらいの軽さだからこそ、ゆるく45分間飽きずに見られるというのも確かだと思います。
昔の大河をリスペクトしつつ(だからこそ、OPの六文銭背景にレトロなフォントが重なるあらすじとか、ダサいスローモーションを使う殺陣とか出てくると)、21世紀型大河にアップデートしようという試みがあるのかなと思います。
2010年代の「大河2.0」を模索する流れとして、頑張っている感じはあるんですよね。
頑張る気持ちがある大河は、少なくともそんなもんがない作品よりおもしろいです。視聴率につながるかは、また別問題として。
始まる前はどうなるかと思われていた「ノブヤボのアレ」も好評のようです。標高差がイメージできるのも便利ですよね。
◆「真田丸」3D地図が話題 「信長の野望」とタッグの意図 制作に約1カ月(→link)
【TOP画像】
『真田丸 完全版ブルーレイ全4巻セット』(→amazon)
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桜舞い散る緑豊かなこの山里に信繁たちが戻ってきた
今日の第三回は「策略」。今年は二文字縛りのサブタイトルでしょうか。
とりあえず「初恋」ではなくてよかったですね!
一月放映回のサブタイトルに「恋」が入るのは嫌な予感しかしないので。
今週は一族が真田郷に戻って来たところからスタート。
のちのち主人公たちが「真田の里に戻りたい」と懐かしむ場所。桜舞い散る緑豊かなこの山里は、とても美しく撮られています。
ここで高梨内記の娘・きりがうっとりと信繁を見つけています。
先週ドヤァと「織田につくぞ!」と宣言していた昌幸ですが、そう簡単にいくはずもありません。
そもそも織田にしてみれば真田と組むメリットもありません……自信満々のわりに、確証はなかったと。
そしてここでおそらく、顔には出さずともガッカリしているのが、昌幸の弟・信尹です。
北条との交渉を担当してきたのに、ギャンブラーな兄によってひっくりかえされたわけですから。
昌幸の叔父・矢沢頼綱は「うちってギャンブル気質だし!」と豪快に笑い飛ばしておりますが、そのギャンブルに振り回される家族は辛いでしょう。
信繁は何かの箱を、綺麗な紐でラッピング中。真田紐への伏線かな。
叔父・信尹と信繁の弟による会話が入ります。
本作は主役が次男ということもあってか、嫡男と次子の立場をきっちり描いております。
嫡男は嫡男で大変だし、次男は次男で苦労があるとわかるんですね。ここの短い会話では、兄を支える弟としての心づもりがあらわれています。
信幸にはこうという妻がおりました。こうは夫同様生真面目ではあるのですが、病弱なようです。
ある意味、一番辛い妻です。
本人は悪い人ではありませんが、武将としてのサポート役や癒やしを求めることはできないわけで、夫としては辛いわけですね。
こうは真田信綱(長篠の戦いで討ち死にした昌幸の兄、信幸の伯父)の娘にあたる清音院殿のことと思われます。いとこ同士の結婚というわけですね。
潔癖症の信長を迎えるため、家康慌てて準備を進める
昌幸の懸案は国衆のこと。一筋縄ではいかない国衆をどう説得しまとめ、織田につかせるか。
ここでノブヤボ地図を使った国衆の解説。小県郡の真田、室賀らの国衆議をどうまとめるかがポイントです。
奥では薫ととりが世間話。薫は朝ドラのよのとよい勝負の天然お嬢様のようで、姑のきつい嫌味も通じないようです。
薫は、別れたままになった夫の小山田茂誠を思い、食事も喉を通らないという松を心配しています。
とりは「茂誠は死んでますね。生きていたとしても、裏切り者ですからもう戻れないでしょう」とバッサリ。
流石乱世の女、容赦ねえな!
髙遠城に入った家康は、潔癖症の信長を迎えるためクリーンアップ作戦中。
慌てた様子でやたらと細かく「馬糞も拾え!」と指示を出す家康の、よい意味での中間管理職的小物感。
正信と歩いていた家康は、本田忠勝の姿を認めます。
演じる藤岡弘さんは本物に近い30キロほどの装備を身につけているとか。ちょっとアイツウザいんだよな、という顔で戻ろうとする家康に対して、忠勝は仁科盛信の自害した跡を見に行きましょうと誘います。
慎重な家康は、城の外に出て武田の残党に襲われたら嫌だと苦い顔。正信に促され、しぶしぶ家康は外に出ます。
家康は盛信の自害跡へ向かいながら、勝頼の手厚い供養をすると宣言。信心深く素直な忠勝はこの気遣いに喜びます。
今年は城内の屍や血の跡など、結構生々しい表現を頑張っております。
感激する忠勝と違い、老獪な正信は、勝頼供養への手厚い供養は武田家の遺臣の人心掌握に役立つと言い、家康も我が意を得たり、という顔をします。
そこへ何者かがやって来て「ひぃ〜〜〜!」「うわあああああああ〜〜〜っ!」と、と家康も闖入者も叫びます。
家康、先ほどまでの落ち着きから一転してのすごい顔芸だ!
逃げる男もすごい顔と声……ん? なんと逃げていたのはすっかり落ち武者化した茂誠兄さんでした!
どうなるんだ、これから!?
「黙れ小童ぁ!」迫力満点、室賀の恫喝
まさかの茂誠に喰われましたが、今週もコント集団三河武士の皆さん、頑張っていました。
家康の人気はここ最近低迷しているように思えます。かつては究極の成功モデルとして、山岡荘八氏の小説などで人気を博した家康。
しかし国民的作家S馬R太郎氏からケチョンケチョンにけなされ、信長や秀吉と比べてあまりに地味で優等生過ぎるおもしろみのない狸親父扱いに落ち着いているように思えますな。
しかし家康だって個性的で実はキャラクターとして面白い。本作にはそんな家康再発見の機会を与える役目があるのではないでしょうか。
出れば出るほど、おもしろくなっています。
思えばここ数作の大河では家康のカンスト問題がありました。つまり、初登場からレベルがカウントストップしている99状態、大坂の陣レベルになっているということです。
いきなり風格あって、いかにも天下人ですと初登場から見せ付けておいて、覚醒も何もあったもんじゃない。そういう作品が続きました。
ちなみに信長の場合これと真逆で、無理矢理尾張のうつけ時代から出し、イケメンイメージを重ねて若くレベルが半端ぽい役者を使うため、「信長がカンストしない」問題がありました。
今年の信長は老けすぎとも言われていますが、私は信忠との兼ね合いも考えると、むしろよいと思います。ちゃんと最終形態の信長です。
さて、その信長がいよいよ信濃入り。昌幸は国衆の説得開始します。
室賀正武は昌幸をまったく信用していないようで、くってかかっております。
室賀の「黙れ小童ぁ!」という叫びは最高。
目つきが鋭く、赤と黒の衣装が格好よい出浦昌相が大物らしさを出しています。ただ者ではなさそうです。
この国衆をちゃんと出すのも本作のよさです。
駄目な作品なら、雑魚モブ処理してしまいそうなところです。皆生きて、自分の領地を守るために必死なのだと感じさせます。
このあと、国衆をまとめるのは皆のため、私欲のためではないのになぜ反発されるのかと悔しがる信幸ですが、「うまくやれば小県全部俺のモンなのになあ」と私欲剥き出しの昌幸。
それにドン引きする信幸……彼にはそっと胃薬を差し出したいです。
山林資源をめぐり村人たちの合戦は石つぶてから
生真面目な兄が胃をキリキリさせつつ、父にドン引きしているころ。弟の信繁は気になるかわいい娘、梅をじっとみつめています。
これが気に入らないのはきりです。このあたりはベタな三角関係で、きりは信繁に片思いをしています。
そんな気持ちに気づかない信繁は、梅にプレゼントを渡してよ、ときりに頼みます。
きりは好きという気持ちが伝えられないらしく、かえってからかう口調で嫌味を言ってしまいます。
一応、きりにも信繁は櫛を用意していますが、しまむらのアクセサリーコーナーで買ったものを、ビニール袋に入れて渡すレベルでした。差が露骨すぎんだろ。
きりに強引に誘われ、梅に会いに行く信繁。黒木華さんが初々しく、これはそりゃ信繁も惚れるよねという可憐さです。
梅へ贈った櫛は、きりがしまむらなら、デパートの婦人フロアで買ったレベルです。
きりは流石にグサッときてしまっているようです。
「薪って広げて乾かすんだ~」と意味不明のことを言いながら、誤魔化そうとするきり。不憫ヒロインポジションでしょうか。
そこへ梅の兄・堀田作兵衛が帰って来ました。
再会を喜び、軽々と信繁を持ち上げくるくる回す作兵衛。そこへ村の者が、室賀の連中が真田の領地で枝打ち(森林伐採)をしていると報告に来ます。
この時代、水源や森林資源をめぐって、村人同士の争いはよく発生しました。
『タイムスクープハンター』などでもおなじみだと思います。
信繁たちは現場をおさえるべく、駆け出しました。こういう戦国を皆生きているという感覚が心地よいです。時空を超えたジャーナリスト沢嶋雄一が紛れ込んでいても、違和感なさそう。
弟が甘酸っぱいリア充ライフを送っているころ、兄・信幸は、昌幸から上杉に密書の返事を届けるという重大な役目を任されていました。
弟が幼なじみ系とツンデレ系、二人のヒロインに挟まれていますが、信幸の妻は病弱でよろよろしていて、トキメキとかそういう感じではちょっと……。この差は何なのか。
信幸の動きは筒抜けで、室賀にも出浦にもバレていました。
信繁らは室賀の村人たちに追いつき、山の上に回り込むと乱闘へ持ち込みます。
信繁たちは相手に石つぶてをぶつけますが、これも当時の立派な戦術です。石つぶてによる闘争も『タイムスクープハンター』でありましたね。
ここで梅、薄倖そうな見た目にあわぬ怪力ぶりを発揮。あの兄の妹ならば当然かもしれません。
悪役にされている室賀の人たちも、自分の土地の山林が焼けてしまって苦労しているんですね。
戦国時代は、相次ぐ戦乱、大規模な建築、製鉄などのために森林も荒れ果てていました。
日本は森林面積の比率が大変高い国ではあるのですが、それでも江戸初期までにかなり減少していたようです。失われた森林資源の回復は、江戸幕府の優れた保護政策によって実現されることとなります。
室賀の者たちを追い払ったあと、一行は下山します。
ツンツンしながらも信繁が気になるきり。わざとらしく「脚やっちゃったかなあ~」(チラッチラッ)と言い、信繁におぶってもらいます。
ニコニコ笑顔ではあるのですが、そこへまた何者かが登場してすぐおろされてしまいます。どこまでもタイミングの悪いきり!
現れたのはすっかりボロボロになった茂誠でした。
それにしても高木渉さんの顔芸、凄いなあ。一体どうやってここまで来たのかはわかりませんが、すさまじい格好になっています。
昌幸が信幸に向かって「おまえ、芝居できないじゃん?」
弟が幼なじみをおぶって青春しているころ、兄は室賀・出浦の手の者に襲われて密書を奪われました……なんなんだよお、お兄ちゃん可哀相すぎるだろ!
しかもこの過程で佐助が斃れてしまいます。
悲痛な声で「佐助!」と叫ぶ信幸。それにしても密書、表に上杉と書いてあって何かわかりやすすぎるような……?
密書を奪われた信幸は、父に報告すると責任を感じて切腹するとまで言います。
しかしここでなんと、室賀と共に密書を奪ったはずの出浦がやって来ます。
「室賀はひっかかったぞ」
と報告する出浦に昌幸は、いい笑顔。そしてここで昌幸がネタばらし。
わざと密書を室賀に奪わせ、織田に上杉からスカウトされるほど真田は重要なのだと思わせる作戦でした。
それにしてもこの親父、ノリノリであります。ここで信幸は何故教えてくれなかったのかと父に詰め寄るのですが、
「だっておまえ、芝居できないじゃん?」
とひどい返事。ひぃーーーー!!
さらに斃れたはずの佐助もフェイクを使ってぴんぴんしていたと知り、信幸ますます唖然。
人間不信の頂点にいるような顔をしています。お兄ちゃん……お兄ちゃん……。
あっ、真田屋敷ってそういえばギミックだらけで忍者屋敷みたいな仕掛けがあって、いいですよね。
一人部屋に戻った信幸は、拳を握りしめつつすすり泣くのでした。
刀を抜いて切腹を迫るストレスフルな信幸兄ちゃん
堀田家に匿われた茂誠は、松と再会しラブラブぶりを見せ付けます。
信繁はとりあえず茂誠をどこかへ匿おうと提案しますが、松は絶対に嫌だと断ります。このあと信繁は出浦とすれ違うのですが、出浦は悩んでいる兄を気遣ってやれと言われます。
ふらふらと歩く信幸は、弟の姿を見つけると父について相談しようとしますが、信繁はそれを遮って相談があると言います。
相談とは茂誠の処遇。愚痴りたいときに新たな難題が立ちふさがる信幸……ついに真面目なお兄ちゃんがキレた!
茂誠に腹を切れと迫り、さらに抜刀し迫る信幸。そのストレスがわかる、わかるぞ。
キレる信幸を周囲がなだめ、この場は何とかおさまります。
これはもう「今夜は疲れた」と言う信幸に同情せざるを得ません。とりあえず信幸は茂誠の処断は明日以降にするということで、暗に逃げるように言いくるめます。
信幸が立ち去ると、信繁は気を利かせて姉夫妻を二人だけにします。
茂誠が「信繁殿!」と言うので、てっきり御礼を言うのかと思ったら「ちと寒い」と言います。何とも愛嬌があるといいますか。茂誠兄さん、愛されキャラになりそうです。
昌幸の計算は当たり、信長から参上するよう書状が届きます。
信繁に同行しろと言う昌幸に、信幸ついにガチ切れ。
「なんで俺、そんなに粗末な扱いなのお!?」と叫ぶと、昌幸は「いや、おまえは大事な嫡男だよ。あとを託すんだからちゃんと留守番しような」と宥めます。
あっさりとこれに納得する信幸。どこまでいいお兄ちゃんなんだ。
こうして、昌幸と信繁は信長の待つ諏訪へと向かうのでした。
今週のMVP:真田信幸
弟が青春しちゃっているのに、兄は一体……騙される演技が気の毒で、見ているだけで胃が痛くなりそうでした。
頑張って、お兄ちゃん!
総評
いいんじゃない? 今週!
と、先週から掌返しして書いてしまいました。
先週はコメディ部分と他の部分の整合性がちょっととれていないとか、コメディ部分が滑っていたかもしれないと思えるところがあったのですが、今週はうまく馴染んできましたぞ。
懸念していた女優陣、特に初登場のきりと梅ですが、個性が出ていてよかったと思います。
退屈になりがちな主人公初恋パートに、隣村の連中との森林資源争奪戦をからめたのがよかった。
戦国時代は侍だけではなく、村人たちもたくましく生きて戦い、彼らなりの秩序で生きている雰囲気が出せました。
そんな中で、意外と怪力の梅とか、脚をくじいちゃったアピールのきりとか、ヒロインの個性を見せたのがうまいです。
そうした甘い青春パートの合間に、信幸騙されパートを挟んだ構成もにくいですね。
弟がレモン味の初恋なら、兄は太田胃散味の苦難ですね。
その背景に、手抜き大河ならわかりにくいからとすっとばす国衆の小競り合いも描かれているわけで、エンタメとしておもしろい味付けをしながら、戦国時代の山里に生きる人々の暮らしをきっちりと設定として見せてくれているわけです。
昌幸が息子をも騙すほど食えない人物だとちゃんと描かれていて、しかも腹黒くても魅力的であることも大きいです。
一昨年の官兵衛は終盤までロンダリングされていましたからね。
ありのままに黒い謀将が描かれているというのは、心地よいものです。
来週の真田父子と信長、家康の出会いが楽しみです。
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