彼は、戦国時代の武将としては珍しく、側室がいなかったことで知られます。
嫉妬が怖いとか。
女性がさほど好きではないとか。
いろいろな理由が考えられますが、黒田夫妻の場合は「おしどり夫婦」という見方で良さそうです。
正室の名は櫛橋光(くしはしてる)で寛永4年(1627年)8月26日が命日。
稀代の名将を支えた女性とは一体どんな人物だったのか?
関ヶ原の戦い勃発時には、大坂で死のピンチに直面しながら、同じタイミングで起きた細川ガラシャの事件で間接的に救われるという数奇な経験もしております。
その出来事も含め、彼女の生涯を追ってみましょう。
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志方城主・櫛橋伊定の娘
官兵衛の正室・光。
大河ドラマ『軍師官兵衛』では中谷美紀さんが演じておりました。
名前の読み方は【てる】が一般的です。
大柄で体の丈夫な健康美人で、しかも賢い女性と評判でした。
教養にもあふれており、夫主催の連歌会に彼女が参加した記録も残されています。
連歌とは、五七五七七の短歌を【上の句・下の句】で複数人の人が詠むものです。
【本能寺の変】直前に明智光秀が意味深な句を詠んだことで知られる「愛宕百韻(あたごひゃくいん)」も連歌会で、当時、官兵衛のみならず、多くの戦国武将がハマっていたことは以下の記事でご覧いただければ幸いです。
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光は志方城主・櫛橋伊定(くしはし これさだ)の娘で、小寺政職(こでら まさもと・ドラマでは片岡鶴太郎さん)の養女とされました。
夫は囚われ留守を守る
結婚したのは、官兵衛22才、光15才の時と伝わります。
ハッキリとした時期は判明しておらず、嫡男・松寿丸(のちの黒田長政)の生年である永禄11年(1568年)から逆算での推定となります。
夫妻の間には、二人の男児が生まれました。
長男の長政、二男の熊之助です。
熊之助は慶長2年(1597年)、朝鮮で戦死を遂げてしまいました。
光にとって痛恨の出来事であったことでしょう。
それと等しく辛かった、人生最大の苦難は、夫・官兵衛が荒木村重によって幽閉された時のことです。
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官兵衛はその説得に向かい、逆に城の中に囚えられてしまいました。
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そして、その状況を聞いた信長は「官兵衛も裏切ったか!」と思い込んでしまい、松寿丸に対して殺害命令を出したのです。
竹中半兵衛の機転で、松寿丸の命は救われ、官兵衛の誤解もほどなくして解かれますが、その間、逆境の黒田家を支えてきたのが妻の光。
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栗山利安(栗山善助)や井上九郎右衛門(井上之房)、母里太兵衛など――官兵衛の忠臣と共に留守を守る。
彼女の人生で、最も結束が必要とされた時期でもありました。
石田方の命令で人質とされそうになり
関ヶ原の戦いの際には、石田三成の命令によって人質とされそうになりました。
ここで、智恵と勇気を総動員された救出作戦が展開されます。
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実は以前から息子の長政は家臣たちに命じていました。
もしも人質に要求されたら、母・光と、妻・栄(えい・黒田長政の継室/徳川家康養女であり【ねね】とも)を脱出させよ。
「もしそれが叶わぬ時は、母と妻を殺害し、そなたらも自害せよ」
生きて辱めを受けるくらいならば、いっそのこと――そんなギリギリの覚悟だったのです。
託された側の家臣も、これには必死にならざるを得ません。
そして、この懸念は的中します。
石田方からの使者が来る前に、黒田家は情報を掴んでいました。大坂城にも、ぬかりなく間者を潜り込ませていたからです。
このとき対応にあたったのが、以下3名の家臣たちでした。
・栗山四郎右衛門利安(濱田岳さん)
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・宮崎助太夫
彼らは、いざというときは商人・納谷小左衛門に匿って貰うところまで打ち合わせ済みです。
そして、そのミッションがいよいよ始まりました。
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