こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【『るろうに剣心』の新選組】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
ガトリング小悪党・武田観柳
新選組モチーフとして土方歳三の次は、武田観柳斎を流用した武田観柳です。
モデルとなった武田観柳斎は、新選組・五番隊組長。
フィクションでは陰険な小悪党として描かれやすく、男色要素を異常性愛として付け加えられていることもあり、マイナス面の吹き溜りになった感があります。
明治期の男色は、出身者ごとにかなりの違いがあります。
近藤や土方といった東日本出身者は嫌悪感があったことでしょうが、薩摩藩出身者は美少年愛好傾向がむしろ標準のような感はあります。
ただ、改めて武田観柳斎について調べてみると、近藤に重用もされており、小悪党と言い切って良いものか……。
そんな武田観柳斎について、名誉回復の契機は、今後なかなか恵まれないでしょう。
理由がこの『るろうに剣心』です。
あの武田観柳のモデルというだけで、もう絶望的と言わざるをえない。
せめて名前なり、設定なり、アレンジがもう少し効いていればよかった。さすがに気の毒なレベルではないでしょうか。
実在の人物を扱うからには、もう少し丁寧なアプローチができたのではないかと思ってしまうのです。
繰り返しますが、これは本作だけの問題ではなく、幕末をモチーフとしたフィクションの宿命ではあります。
ちなみにガドリング砲は、河井継之助の武器として有名ですね。
司馬遼太郎の『峠』です。
儚げで残酷な瀬田宗次郎
志々雄真実配下の瀬田宗次郎は、言うまでもなく沖田総司がモチーフです。
倒幕側の志々雄真実配下で、新選組モチーフというのも、これまたややこしい話。
こうした新選組モチーフのキャラクターは、新選組のカットが出てくると、モデルとなった人物にそっくりな描かれ方をしています。
そうなると、これまたややこしい状況に突っ込みます。
モデルは沖田総司といっても、史実における沖田ではなく、あくまで司馬バージョンです。
儚げな美少年イメージがあるせいか、史実ではそこまで美男でもないとされただけで、
「実はブサイクだったんだよ!」
とネタにされてしまう――沖田はかなり気の毒な状況になりつつありました。
有名税とはいえ、厳しいものがあります。
そんな司馬版沖田から出発し、フィクションで膨れ上がっていく沖田モチーフ像をまとめてみました。
司馬遼太郎『燃えよ剣』『新選組血風録』等
↓
和月伸宏『るろうに剣心』の瀬田宗次郎および『エンバーミング』のレイス=アレン
↓
SNK『キング・オブ・ファイターズ』のクリス
こういうフィクションの沖田キャラを全面否定するわけではなく、実像と違うことは考えてゆきたい。
実像の沖田も十分魅力的かと思うのです。
ちなみに『るろうに剣心』では、突き技が得意な新選組隊士は斎藤一です。
史実では、突き技を得意としていたのは沖田です。
また沖田総司の家庭環境は穏健なもので、瀬田とはあくまで別物です。
沖田総司は新選組の最強剣士だったのか~享年27で夭折した一番隊組長の生涯
続きを見る
なお、原田左之助がモチーフである相楽左之助は、以下の記事に詳細がありますので、よろしければそちらを御覧ください。
『るろうに剣心』相楽左之助が我々の歴史観を変えた? 快男児の快挙に注目だ
続きを見る
新選組十番隊組長・原田左之助~幕末をひたむきに生きた青年剣士29年の生涯
続きを見る
別に『るろうに剣心』が悪いと言いたいわけではありません。
実像と漫画は別だと把握しながら楽しめれば……そこをフックとして歴史を学べるなら、これ以上素晴らしい幕末作品は他になかなかないでしょう。
あわせて読みたい関連記事
『るろうに剣心』倭刀術とは一体何なのか ルーツは倭寇の日本刀だった?
続きを見る
『るろうに剣心』雪代巴&雪代縁を徹底考察~間者やリベンジは妥当か
続きを見る
『るろうに剣心』志々雄真実~魅惑の悪役に漂う90年代ラスボス感がたまらない
続きを見る
『るろうに剣心』相楽左之助が我々の歴史観を変えた? 快男児の快挙に注目だ
続きを見る
『るろうに剣心』高荷恵~色っぽい大人の女設定は会津女性としてどう?
続きを見る
『るろうに剣心』に登場する斎藤一の「牙突」を真面目に考察~元ネタは真サムか
続きを見る
文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
コミック『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―カラー版』(→amazon)
コミック『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』(→amazon)
映画『るろうに剣心』(→amazonプライム)
映画『るろうに剣心 京都大火編』(→amazonプライム)