宋おもてなし

伝統的な中国の庭園である蘇州古典園林「網師園」

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『光る君へ』藤原為時は越前の宋人たちをどうやって“おもてなし”したか?

大河ドラマ『光る君へ』の第21~22回放送で、越前に出向いた主人公まひろとその父・藤原為時

70人もの宋人たちが留め置かれているという「松原客館」へ出向くと、為時は中国語で「静かにせよ!」と一喝し、その後、いよいよ現地で国司としての政務に携わるわけですが……。

為時には、左大臣である藤原道長から密かに伝えられていた指令があります。

宋人たちを穏便に大宰府へ向かわせ、帰国させることです。

そのため為時とまひろは、宋人のリーダーである朱仁聡から宴席に招待され、慣れない羊肉も笑顔で食していましたが、今後は逆に宋人たちをもてなし、気分よく帰ってもらわねばなりません。

では、実際にどうやって歓待すればよいのか?

宋人たちを接待する方法を史実に即して考察してみましょう!

 


言葉の壁をどう超えるか?

何だか揉めている宋人のもとへ藤原為時が向かい、宋語で話かけるとピタッ!と動きが止まった。

すごい、さすが、宋の言葉で話せるんだ!

と感動したくなりますが、言葉としてきちんと通じているかどうかは厳しいところです。

実は、演じる岸谷五朗さんも、あえて発音をあやしくしているとのこと。

当時平安京にいた為時が流暢な宋語を話すというのは想定できないためです。

平安時代前期、まだ【遣唐使】もあったころは真面目にネイティブチェックのある授業がありました。

それがなし崩し的に崩壊し、古い知識のまま身につけておりますので、通じるはずがありません。

では、どうすれば意思疎通ができるのか?

日本には「筆談」という誇るべき特技があります。

実は日本の漢文書き下しというのは、世界史的にみても類を見ない独特かつ、大変優れた読解手段です。

幕末に上海へ密航した高杉晋作も利用したほどで、筆談ならば意思疎通が可能。劇中では海岸で出会ったまひろと周明が利用していましたね。

その本領発揮として、漢詩披露も登場する可能性が考えられましたが、宴会の場で口頭により発表されていましたね。

劇中で宋人たちも「おぉ!」と驚いていましたが、実際のところ為時の漢詩は宋側から「軽薄だ」と辛い評価を受けています。

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「宋語」とは何か?

スタッフロールでは「中国語」ではなく「宋語」指導とされています。

張天翔さんが担当していて、宋代に話していた独特の言葉なのか?というと、そうではありません。

そもそも朱仁聡たちはどの地方出身であるか――問題はそこです。

広大な中国大陸は、地方によって発音や語彙が異なります。

そこまで詳しく再現するとなると、難解なだけでなく中国人が聞いても理解できないとなりかねない。

そもそもまひろだって、当時の京言葉で話してはいません。

現代の中国語は【普通話】(プートンホワ)を話します。

日本と同じく、時代劇特有の言い回しがあります。

日本でも、

「おのれ、許さぬぞ!」

「死せる孔明、生きる仲達を走らすか……」

といった時代劇らしい言い回しがありますよね。

文法も発音も現代語だけれども、内容はその時代特有の言い回しをしている――そういう類の【普通話】だとご理解ください。

2023年末から、中国ではドラマ『繁花』のヒットが契機となった上海語ブームです。

地理的に朱仁聡と周明がその方言を使うことはありえるとは思いますが、そこまで凝らずともよいのではないかと思います。

 


拱手礼

周明とまひろが手と手をあわせる仕草をしていましたね。

朱仁聡も同じ仕草をしていた。

所作指導は京劇俳優であり指導者でもある、張春祥さんが担当。

「拱手」という中国での挨拶です。『パリピ孔明』でも孔明が披露しています。

周代までさかのぼるとされますので、三国時代の孔明も、宋代の周明が用いても間違っておりません。

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職業、状況、男女の別といった細かい要素もある仕草です。広く通じる仕草をしているとみなせます。

コロナ禍の際には、接触せずに挨拶できる仕草として拱手のリバイバルブームが起きました。

中国語圏のアプリでは絵文字やスタンプもあり、ゲームではポーズとして実装されていることも。

日本でもLINE横光三国志スタンプで供手礼のものがありますので、中国語圏の友達に使ってみるとよいのではないでしょうか。

これから流行する兆しを感じますので、皆様もまひろのように学んでみてはいかがでしょうか。スタンプならば気軽にできますね。

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