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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第4回「五節の舞姫」】
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姫君サロンで盗賊トーク
倫子サロンでは、自然、盗賊についての話題で盛り上がります。
「えー怖いわ!」
そう話す姫様たちは能天気と言いましょうか。警護がいたのに、見事なまでに盗まれたそうです。
赤染衛門は、盗賊の話などけがらわしい、みだりに口にしてはならないと戒めると、まひろが黙っていればいいのに「盗んで人に分け与える盗賊もいる」などと言い出します。
なぜそんなことを知っているのか?そう問われたまひろは辻で聞いたと返し、馬にも乗ると続ける。
「馬にも乗る! 盗賊みたーい!」
再び、はしゃぎ始める姫様たち。
実は平安時代末期から、「女騎」という言葉もありました。
文字通り馬に乗る女であり、平安京から外にでて、山に入っていくとその手の女盗賊もいたのです。
そういう存在があってこそ、巴御前もいる。
彼女は、女騎の中でも最上位ということです。
義仲に仕えた巴御前は後に義盛の妻になったのか?時代を反映する伝説的女傑を考察
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ヒロインと乗馬というのも、なかなか興味深いですね。
馬や乗り物に乗れば、ヒロインの行動範囲は必然的に広がる。その時点で、自立精神旺盛な性格だと示す設定にもなります。
ジェーン・オースティン『高慢と偏見』のヒロインは、馬に乗ります。この時点で彼女は一風変わっていると読者に伝わります。
時代がくだると自転車になる。
ホームズシリーズには『孤独な自転車乗り』という作品があり、あの短編に出てくる女性は自転車に乗っていました。彼女にも独立精神があるとわかった。
そして盗賊話を止めた赤染衛門は、『竹取物語』について語ることとします。
かぐや姫はなぜ、五人の公達に無理難題を突きつけたのか?
「好きではなかったから」といった答えが主流の中で、まひろだけが、ぶっ飛んだことを言い出します。
やんごとない人々に対し、怒りや蔑みがあった。
身分が高いだけで威張るものが嫌だから、帝でさえ翻弄するのだろう。
すると倫子は「おそれ多い」と呟きます。「空気読め」という意味かもしれない。
それでもまひろは、身分が高い相手を突っぱねる姫は颯爽としていると熱く語ります。
すると倫子が、私の父が左大臣で、身分が高いことを忘れていないかとチクリ。
空気が凍りつきます。
倫子が、ほんの戯言だからそんな風にに黙らないでくださいと微笑むと、
「申し訳ございませんでした!」
まひろはようやく空気を読んで謝るのでした。
右大臣兼家の野望と結束
さて、ここで身分が高い右大臣一家が出てきます。
父の藤原道兼を前にして、長男の藤原道隆は「家の運が開けてきた」と満足げです。次男の藤原道兼もめでたいと続く。
兼家は満足していません。
まだ若い天皇が長々と即位していたら困る。先に自分の寿命が尽きてしまうからです。
そこで、次の天皇をどう退位させるか?知恵を絞れと息子たちに答えさせる。
返事だけでなく、具体案を引き出そうとする兼家。
果たして答えは?
・道隆の策「流言飛語。無類の女好きで国は滅びるという噂を流す。すでに準備は整えた」
兼家は「それだけか?」と不満げです。
速効性のある策が欲しいとかで、次の道兼は?
・道兼の策「蔵人に採用され、気持ちを取り込み、力不足だと思い込んで譲位するように仕向ける」
兼家は満足し、再度、蔵人になれるようはかると言います。
道長は、聞かれないまま、「三人揃うのは珍しい、宴にするぞ」と兼家。
いかがでしょう。まひろや義賊散楽一味がみたら「やっぱりこいつら悪どい、盗んじまえよ!」と言いたくなりそうです。
その頃まひろは散楽を見ながら、道長が来ないことを気にかけています。
なぜ来ないのか悩みつつ、身分なんてなければいいと考えている。
道長は気もそぞろで、散楽に行きたい。
しかし、兄の道隆がそんな弟を制し、今宵は残って一家の結束を固めるようにと言います。
重なるようで離れていく――そんな運命が見えてくるこの回。
互いが思い合おうと、身分が引き裂いてしまいます。
直秀はそんなまひろに、あいつが来なかったといい、散楽仲間との飲み会に誘います。乗り気のまひろですが、乙丸がなんとか止めました。
詮子が鬼になるとき
藤原詮子がしずしずと内裏に向かい、円融天皇の元へ向かいます。
ここへ来る前、彼女は鏡を覗いていました。帝に寵愛されたころの私はいるのか?と確認するようでしたが……。
「何事じゃ」
と、そっけない円融天皇。
詮子が、いかに素晴らしい治世であったか、長々と褒めたたえ、お上と過ごした内裏での日々の思い出を語ります。
「黙れ! 朕に毒を盛ったのはおまえと右大臣の謀(はかりごと)か? 何もかもお前の思う通りになった!」
そう吐き捨て、懐仁が東宮になることは許しても、詮子のことは生涯許さないと言い切ります。
「二度と顔を見せるな!」
「お上、何を仰せなのかわかりませぬ!」
そうすがりつくように言う詮子を無視し、去れと叫び、扇を投げつける円融天皇。
詮子に当たり、白い頬に血が一筋流れます。
「人の如き血など流すでない、鬼めが!」
そう言われてしまう詮子でした。
詮子は怒りに満ちた形相で、東三条殿に戻ります。
般若というのはこのことかと思うほど、凄絶な美しさを吉田羊さんが体現。初登場時は無理があるという声すらあった彼女ですが、こうなればもうこれ以上の適役はないと思えてきます。
「父上!」
「おお、詮子様」
父も兄も、丁寧に彼女のことを呼びますが、怒り心頭で、帝に毒を盛ったのかと追及。
政治に利用されていることはわかっているけれども、御命までさらすとはどういうことか!と怒りの形相です。
さらりとシラを切り、誰の御命か?と問い返す兼家。
道兼は詮子を宥めようとしますが「はなせ!」と拒まれます。
「懐仁のことも、もう父上に任せませぬ! 私は懐仁を守ります。そうでなければ懐仁とはいえ、いつ命を狙われるか!」
道隆が宥めようとしますが、詮子は止まりません。
兄上は嫡男のくせにご存じないのかと怒りをますます高め、道兼が医師を呼ぼうとすると、詮子はこう言います。
「薬など、生涯飲まぬ!」
何を入れられるかわかりませんからね。
見事な場面です。女性の怒りをこうも鮮やかに見せてくるとは。
そしてこうも父に怒る女性は、詮子だけではありません。後にまた別の女性も怒ります。
父に対し、娘がこうも激怒する大河が見られるとは。感慨深いものがあります。
兼家は、詮子が去ると、ゲスなゴシップ誌かネットニュース、掲示板じみたことを言い出します。
長い間、独り身だからいたましいことだ。これからは楽しい催しなどして、気晴らししてやろう、と。そのうえで飲み直そうときた。
なんてクズ男の解像度が高いドラマなんだ……家族や女性部下が怒っていたら「高めのプリンでもコンビニで買って冷蔵庫に入れて置こうか♪」と言い出す、そんなムカつくおっさんみたいな兼家だな!
道隆は、知らなかったけれども理解したと父に阿りながら、詮子様にはお礼を言わねばならないとのことです。
何か?と言えば、これで父上と三兄弟の結束が高まった、何があろうと父上を支えると思えるからですと。
道兼も素直に頭を下げています。
井浦新さんの気品と、この言葉の下劣さの格差がえげつない。もう、一体、どうしたらいいんですか?
悪事で結束する右大臣家って……どこのヤクザですか?
道長だけが賛同するようで、呆れ切った顔をしています。
しかし、これは『鎌倉殿の13人』序盤で、義時が上総広常を見て笑っていたようなものかもしれない。
娘がどれほど怒り、絶望しようが、父は権力のために強引な手段を押し通す――後半、きっと私たちはまた絶望するのでしょう。
まひろはそのころ、月を見ながら物思いにふけっていました。
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