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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第4回「五節の舞姫」】
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花山天皇の即位と、為時の任官
8月、師貞が即位して花山天皇となりました。
そして藤原忯子(よしこ)が入内します。はんにゃ金田さん演じる藤原斉信の妹です。
見つめ合い、長い黒髪のようにも見える布で互いの手を縛る二人。
深い愛がそこにはありました。
バイオリンの音色が、激しい愛を伝えてきますが、このドラマは日曜夜8時台ですから、ドラマ10『大奥』級の過激描写はありません。
ただし、ギリギリのエロスは読み解き方で出てきます。
女性の黒髪は情欲の象徴です。この場面はBGMといい、照明といい、見つめ合う二人の美しさといい、縛る手といい、十分艶かしい。
花山天皇の何かをじっとこらえて、溢れ出すような目線だけでも攻めてきたと思えます。
これこそが日本の伝統でしょう。
花山天皇の即位により、藤原為時は12年ぶりに官職を得て、祝いの宴をしております。
藤原宣孝には世話になったとしみじみと語る為時。
何もしておらぬ、陰陽師のように予言しただけだと答える宣孝。
師貞親王即位で日が当たると言っただけだと説明すると、そうであったと納得する為時に、宣孝は右大臣家にもお礼を言えと助言します。
酔っ払ったと廁へ向かう為時は、使用人の“いと”によろめいたところを支えられます。
「お前にも世話になった」
そう言われ、ドギマギする、いと。このドラマって、こういう距離が近づく二人をうまく描きますよね。まぁ、為時は廁に向かいますけどね。
元服した弟の藤原惟規は、また三郎のことを考えているのか?と姉に問いかけます。
「今は父上のことを考えていたの」
今宵の父上はご機嫌だったと惟規も同意。
あんな嬉しそうな顔は久々に見たとまひろは昔を思い出します。小さい頃は父上が大好きだった、よく遊んでくれた。なつかしい。
惟規がからかうように大丈夫か?と言うと……。
「人だからそういうこともあるのよ。明日になればまた父上に腹が立つわ、きっと」
父を憎むことが常態というのは、なかなか辛いものがあります。
紫式部の弟・藤原惟規は実際どれほど出世できたのか モテる男だったのか?
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花山天皇の政治改革
内裏では、花山天皇が政治を行なっています。
銅銭の価値変動が激しいのは、関白のせいではないか?と言い出す。
藤原惟成が語るには、なんでも日照りのせいで物の値上がりが続いているんだとか。
すると花山天皇が自ら物価を決めると言い出します。それならば朕を尊ぶだろうと思い込んでいる。
しかし、物価は自ずと決まるものであり、決めることはいかがなものかと兼家が詰め寄ります。
関白の藤原頼忠もこれには困惑するばかり。
一方で、天皇側近の藤原義懐は「帝の仰せの通りにせよ」とせっつく。
聞けば、帝自ら粗食と粗衣を実行していて、模範を示すとのことで、万民に申し伝えよと上から目線で注文を出してきます。
義懐ごときが大きな顔をするな、と不満気な公卿たち。
政治分裂の構図です。
この短い場面はおもしろい。
本作の時代考証の倉本一宏先生は、ドラマによって花山天皇の奔放さばかりが広まることを懸念しています。
この花山は、聡明だし有効性のありそうな政策を考えている。
人気取りのようで、民の暮らしも考えています。円融天皇と比較しても、側近たちに操られるだけではない気の強さがあります。バランスの取れた描き方ですね。
こうした帝の思考は、どこに由来するか?というと、藤原為時に淵源を求めることもできるでしょう。
あのぶっとんだ帝が、万民に模範を示すことを考えるようになるとすれば、何に由来するのか?
為時が読み聞かせてきた漢籍、『墨子』ではないのか? とも思えてきます。
そんな革新的な考え方だからこそ、守旧派には疎まれることも伝わってきて、右大臣兼家は焦っているとも示されました。
平安のF4たちは今日も勤務中に話しています。
藤原公任は、妹が寵愛を受けている藤原斉信にチャンスが巡ってきたと言います。
彼は円融天皇が退位したことで、中宮となった姉・藤原遵子の力を失っています。
「まあね」
余裕の受け答えをする斉信に、公任はさらに続けます。おつきの女官も顔を赤くするほどの激しい寵愛ぶりだとか。
斉信は肯定し、帝の女好きはもはや病と言っていいとまで語る。
にしても、そこまで言っていいんですか?
これは寵愛が別の女に移るまでの好機と冷静に見ているようにも思えます。
今のうちに偉くなっておかねばならないと語る貴公子からは、なんだかゲスな臭いもしますね。
道長は、筆を雑に扱っていて、そういうことだからあんな筆跡になるのだと苦言を呈したくなってくる。
そういう扱いをすると筆がすぐ駄目になってしまいます、藤原行成を見習いましょう、と思わず言いたくなります。
なんて書に気が利いたドラマなのでしょう。
控えめで字が上手な行成は、早く忯子様に皇子を産んでいただかねばと言うと、寵愛が深いからできると道長が続ける。
そこで公任が、そんな呑気なことでいいのかとチクリ。そうなれば道長の甥が東宮でいられなくなると釘を刺します。
「毒を盛られるとか?」
そう口にすると、場が一気にしらけてしまい、
「ごめん」
と謝るしかない道長。彼なりにストレスが溜まっているのでしょうか。
五節の舞姫身代わり計画
源雅信が渋い顔で帰宅します。
穆子と倫子が父を出迎えると、「五節の舞姫」を家から出せと言われたとのことです。
収穫を祝う祭りのあと、未婚の舞姫が踊る。そのための姫で、他の貴族も指名されましたが、倫子は「嫌です!」とキッパリ。
帝は弘徽殿(忯子)に夢中とはいえ、ともかく女好きですから、目に留まったら危険であると雅信もわかっています。
すると、「身代わりがおりますわよ」と、穆子が言い切ります。
身代わりとは、まひろのことでした。
倫子は、まひろに身代わりを頼んでしまうことを、「ごめんなさいね」と謝ります。
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まひろは飄々と、自分は高貴な方の目に留まらない、殿方から文は来ないと、謎の自信を見せます。なんなんですか、この人は。
「ありがとう、まひろさん、一生恩に着るわ」
「そんな、大袈裟です」
シスターフッドを発揮し笑い合う二人。まひろがどこかズレていて変人だから成立する関係かもしれない。
万が一、帝の目に留まったらどうするのか。ドキドキときめくのか、それとも嫌なのか。
しかし、まひろは「絶ッ対、留まらない!」という謎の自信があるため、なんとかなっております。
いるんですよね、こういうモテにさして価値を見出さない剛の女が。認めたくない人は、認めないんでしょうけど。
かわいげのない女と思われても、まひろは動じない。
宣孝にだって「あなたにかわいいと思われなくてもいいし」と言い切っていました。
モテが心底どうでもいい! 清々しいまでに嫌われる勇気を発揮し続け、毎週上書きしてゆく。そんなメンタル剛強ヒロインが育ってゆきます。
ただし、気楽に引き受けたまひろでも、重い役目ではありました。
舞を覚えるのが大変。
何度指導を受けても、不器用なのか逆に回ってしまい、叱られてしまいます。
絵も下手だし、体を動かすことも苦手なのかもしれない。ともかく何かがズレている、ヒロインらしさが常に落第気味で斬新です。
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