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『光る君へ』感想あらすじレビュー第4回「五節の舞姫」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第4回「五節の舞姫」
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宣孝は悩みを聞くモテ男

東宮が帝になれば父親にも光が差すのだから、迷惑をかけるなと藤原宣孝が言います。

「私は迷惑な娘ですか?」

咎人を捕らえず、娘を間者にする父こそおかしい! 驚く宣孝に対して、まひろが続けます。

左大臣家の源倫子が入内するか探って来いと言われた。

学問とはいったい何のために……『論語』も、『荀子』も、『墨子』も、皆人の道を説いているのに、父は誰よりも学があるのに、なぜなのかと訴えかけます。

渋いですね。

まひろは思想をきっちり学んでいます。荀子は前回出てきた孟子の「性善説」と比較される「性悪説」で有名です。

『墨子』は相当上級者、なかなかマニアックですね! 墨子は教えが厳しすぎたのか、弟子が少ない。弟子が少ないとなかなか伝播されず、マイナーな部類に入ります。

宣孝は「父上も人だから」と返すしかない。そのうえで、間者は断ったのだろう?とまひろに問いかけます。

「いいえ」

そうなんです。まひろはおかしい。これだけ父に怒りつつも、間者として従っているのです。

父には震えるほどに腹が立つのに、左大臣家には興味があるのだとか。まひろは善悪混淆型の珍しいヒロインですね。

それでも彼女が困っているのは間違いなく、父と私はこれからどうなるのか?と思うと、時折胸が苦しくなるとのこと。わかることも許すこともできない。

性格的に似た者同士の父と娘に思えます。そして、それが事態ややこしくさせる。

と、宣孝は、モテそうなことを言い出します。

思いを吐き出してみろと。よい策は見つからずとも、心を軽くすることはできると。

そうそう、ここでマウンティングしながら「俺はさァ、こうだと思うよ!」と言っちゃうタイプの男はモテませんよね。

マンスプレイニング(Mansplaining)、略して「マンスプ男」としてむしろ嫌われる。

宣孝が魅力的なのは、イケメンだからだけではなく、振る舞い方が素晴らしいからに尽きるでしょう。

だいたい、墨子まで読みこなしちゃう相手に理詰めで勝てるのか、って話です。理がダメなら、情に訴える。

◆ 男たちはなぜ「上から目線の説教癖」を指摘されるとうろたえるのか(→link

思えば2023年の大河は「イケメンが言えばええ」とばかりに、かっこつけた演出で中身のないセリフを戦国武将が喋り散らすドラマでした。

マンスプ男の妄想ストーリーなど早く忘れたいものです。

 

円融天皇、譲位す

一方で藤原道長は「弄ぶ」という直秀の言葉が忘れられません。

そこへウキウキした様子の姉・藤原詮子がやってきて、「考え事をしているのは下々の女と縁を切ったからなのか?」と聞いてきます。

かわいい弟と話せて嬉しい姉上よ。いきなりキツい言葉を繰り出してきますね。道長は「そういうものはいない」とぶっきらぼうに返すしかありません。

道長もモテる男らしさがありますね。こんなに口の悪い姉だろうが会話をきっちりこなす。めんどくさそうなあしらいをしたら魅力が出ません。

詮子は円融天皇の譲位がいつなのか教えて欲しいのだとか。決まったら内裏に挨拶に行くそうです。

「どう思う?」

詮子がそう何度も聞くと、それはやめて欲しいと道長。

すでに心はお決まりだろうというと、詮子はふくれて「意地悪! もうよい!」と返してしまいます。こういう甘えを引き出せるのだから道長はすごい。

では譲位と即位の日程はどう決めるのか?

安倍晴明が夜通し占いを行い、次の東宮は懐仁と決まりました。

サラリと説明されますが、日本史の特異を目の当たりにしたと思えます。

そもそも君主が、まだ若いのに譲位するというのがおかしい。占いで決めるのは中世ですし、まだ“あり”としましょう。でも、この安倍晴明は買収される人物でもある。

日本史とは何か?という本質を改めて突きつけてくるような作品で凄いですね。

東宮が決まると、女房たちのヒソヒソ話が始まります。

この“ヒソヒソ”で空気を描くというスキルを本作は実装しました。

大嫌いな詮子との間にできた子とはいえ、唯一の皇子だから順当ではある。そんな風にゴシップを繰り広げつつ、忙しくなると慌てています。

国の頂点に立ちながら、最愛の存在との間には子ができない。思えば円融天皇も大変なものです。

そして、そこまで嫌われる詮子も、虚しいものがある。

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実資、断固断る

即位が決まった師貞は、蔵人頭に藤原実資を任じようとします。

すると、きっぱりこうきた。

「畏れながら、それはお許しください」

「あァ?」

露骨なまでに不満を表す師貞。ここまで人間みのある皇族はなかなか大河でお目にかかれない。

実資としては、御世が変われば蔵人頭も変わることが内裏のならわしだと主張します。

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しかし、師貞はそれを破りたい。煩わしいのがいやで、一新したいのです。叔父の藤原義懐(よしちか)、藤原惟成(これしげ/これなり)、藤原為時、そして実資により新体制を固めたい。

「辞退いたします!」

再び実資に強く断られ、師貞は暴れ出します。

実資のきっぱりした断り方が素晴らしいですね。もう、毎回見たい、やみつきになりそうだ。

「うー、なぜじゃ、なぜじゃ、なぜじゃ、なぜじゃ!」

と暴れながら「おじうえー!」と義懐に泣きつく師貞。しまいには被り物をとってしまいます。

すると、すかさずご丁寧にナレーションがはいる。

「当時の被り物をとられることは下着を脱がされる感覚」

【露頂】(ろちょう)と言いますね。

パンツを脱がせてくる上司なんて、そりゃ実資は嫌でしょう。

『鎌倉殿の13人』でも、【亀の前騒動】で牧宗親が被り物を脱がされ、悲痛な声をあげておりました。

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しかし、人事刷新そのものは悪くない。

例えば徳川吉宗は将軍になると、間部詮房ら先代からの【側用人】を罷免しました。

側近政治が嫌だったのか?というとそうでもなく、紀州時代からの気心知れた加納久通と有馬氏倫を【御側御用取次】に任じています。

成功すれば果断となる、なかなかシャープなことをしているのです。こうした改革は、既存勢力介入を防がねばどうにもなりません。

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右大臣・藤原兼家が参内します。

藤原文範はじめ、群臣が丁寧に挨拶していて、源雅信が「賑わっておるのう……」といささか羨ましそうでもある。東宮の孫となる兼家は、また頂点に近づいたのでした。

 

花山天皇に入内したくない倫子

左大臣の家では、源雅信が娘の倫子に向かって「次の帝に入内する気はないか」と尋ねています。

右大臣・兼家が外戚として力を増す中で、隅に追いやられないためには倫子入内が一番。

すると、妻の穆子が呆れたように止めています。倫子を出世の道具にしない、入内させないと仰せになったではないか。

倫子も、次の帝は女好きで名高いと懸念している。果たして入内して幸せになれるのかしら。帝の心が遠ざかって、東三条殿に下がった詮子様のようにはなりたくないのだとか。

即位すれば人が変わるかもしれないと雅信はいうものの、こう否定します。

「ないかな……ないな」

今のは父の独り言だから忘れてくれとあっさり引きます。雅信はうっかり、花山天皇が即位式で女官を引き摺り込んでコトに至っていたことまで話しかけていたのでした……。

なんと娘に甘い父でしょう。

源雅信
なぜ源雅信は愛する娘の倫子を道長に嫁がせたのか?光る君へ益岡徹

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かわいらしくて仕方ないんですね。目の中に入れても痛くないとはこのこと。実際、倫子はかわいいから、それもそうなります。

そんな倫子が抱いているのが、これまたかわいらしい猫。

日本最古の猫というと、諸説あって特定は難しいものですが、この時代「唐猫」(からねこ)というペットが愛好されていたことは確実です。

中国との貿易船に載せられたもので、大変珍しく、セレブの証でした。逃げたら困るため、紐で繋がれたほどです。

源氏物語』では、この紐で繋げた猫が御簾をまくりあげ、そのせいで女三宮の姿が柏木に見えてしまう場面が登場します。

このため、日本では画題として御簾の側に立つ美女と猫が定番となりました。

さて、その晩、散楽一座は盗賊となって左大臣家に忍び込み、家財道具を盗んでゆく。鮮やかな手並みでした。

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