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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第14回「星落ちてなお」】
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麗しき伊周
摂政となった藤原道隆は、初めての公卿会議に挑みます。
それにしても、藤原寧子が言った通り「位が人を作る」というのは道隆にはあてはまるのでしょう。今までのどこか優しげなところは消え、威厳が出てきています。
「蔵人頭、参れ!」
一条天皇がそう言うと、17歳の藤原伊周が、一足飛びで蔵人頭に任じられたと紹介されました。ざわつく女房たち。
お美しい! 漢詩も、和歌も、笛も、弓も、誰にも負けない腕前! 出来過ぎ!
そう、ボーッとしながら見ています。
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一条天皇と定子が双六で遊んでいます。
定子がまた帝の勝ちだというと、一条天皇は甘えるように定子の背中にしがみついていく。
すると、しずしずと母の藤原詮子がやってきました。賑やかで良いと言いながら、帝がそのような姿を見せてはならないと叱る。
定子が「お許しくださいませ」というと、そなたではなく帝に申し上げていると詮子。出直して参るから、それまで心を整えよと言います。
「見苦しや」
そう吐き捨てる詮子でした。
ここで補足を少々。
二人が遊んでいる遊びは「双六」です。平安時代の双六は現在の絵双六とは異なり、バックギャモンのような盤双六でした。
ギャンブル要素が強く、あまり上品な遊びともされにくいもの。『源氏物語』では、残念枠女君の一人である近江の君が、双六で遊びながら早口でまくしたてる様が下劣であると描かれています。
母親からすれば、我が子がそんなものに夢中になっているのかけしからんとなりかねない。
せめて囲碁にしなさい! いいえ、漢詩でも読みなさい!
そう言いたいのかもしれませんね。
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藤原実資は、17歳で蔵人頭になった伊周に不満が止まりません。
まったくもって異常中の異常!
そうぼやいている隣には新たなる妻の婉子がいて、実資の腹を摘んでいます。
恥を知らぬ身贔屓だ、放っておけば内裏の秩序も乱れる、なんとかさねばとブツブツ不満が止まらない実資。
婉子は腹をつかみ、その話は明日の朝、日記に書けばいいと言います。
前妻の桐子と同じことを言っていると実資がしんみりしていると、婉子は自分より身分がずっと低い先妻を懐かしむなど無礼千万と怒った様子です。
懐かしんだのではなく、同じというだけだ……そう弁解しながら実資が慌てて取り繕う。
為平親王の娘で、花山天皇の女御であったそなたこそ、理想の女性だ。
かくして妻に迫られ、実資は寝室へ向かうことに……微笑ましく、実資が面白いと言えばそうなのですが、引っかかることはあります。
実資は妻の身分しか問題にしていません。血筋だけを愛しているようにすら見えます。
確かにこの価値観なら、まひろとの縁談話も「鼻くそのような女」という評価になってしまうのでしょう。
伊周が鯛を口に運び、美味しいと微笑んでいる。母の藤原貴子が、喪中のため祝いとはされなかったものの、淡路から届いたものだと告げる。
これを送った淡路守は、下国から早く京都に帰りたいのだろうと道隆が続きます。
要するに賄賂だと認めたようなものですね。
相手が人事に口利きして欲しいから送ってきたのだと踏まえての言葉でしょう。
ちなみに『鎌倉殿の13人』では、自分に食べ物を贈る相手を露骨に贔屓する北条時政が描かれました。あの時政より見た目こそ上品なようで、実際は下劣な行為というわけです。
貴子が、伊周の婿入り先を決めたいと言い始めました。
道隆に、婿入りを望んでいるのかと問われ、父上と母上に任せると答える伊周。
幼い頃から家のために尽くすことにしていたと語ります。恋心より家のために相手を選ぶということでしょう。
すると「和歌の会」でも開こうかと貴子が言い出しました。
伊周の妻ともなれば、和歌くらいちゃんと詠めねばならない。
そんな貴子に道隆はすべてを任せます。
貴子は既にそう考えていたようで「漢詩の会」の二人も呼ぶとのこと。
道隆は「あの出過ぎる女か」と思い当たったようです。ききょうこと清少納言のことでしょうか。
才女の再会
思えば「漢詩の会」から五年が経過していました。
まひろとききょうの二人も久々に再会。
どうしていたのかと問われたまひろは、何から明かしていいのかわからないと戸惑っています。お父上はどうかと問われ、元気だと返しました。
一方、ききょうの父・清原元輔はこの年の六月に亡くなっていました。
肥後守として下向した先でのこと。さしものききょうも、都を遠く離れた土地で父を死なせたことに悔いがあるようです。
夫のことはどうでもよいものの、都にいなければ取り残されそうだと思って、父についていかなかったことを愚かだったと後悔しています。
生きていると悔やむことばかりだと返すまひろ。
ききょうは伊周の妻選びに私たちが目に留まるわけはないと白けきっています。
清原元輔はかなりの高齢でした。
高齢だろうと、判断力に翳りがあろうと、適切な引退がないような当時の制度には疑念を覚えてしまいます。
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かくして和歌の会が始まります。
姫たちがいる中、御簾の影からその様子を眺めている伊周。ききょうはお題として「秋」を掲げました。
秋風の 打ち吹くごとに高砂の をのへの鹿の 鳴かぬ日ぞなき
【意訳】秋風が吹くたびに高砂の尾上の鹿が鳴かない日はありません
威厳に満ちていながら秋にふさわしい、涼やかな響きがあるとのこと――伊周はその姿を見てうなずいています。
風流なようで、最高権力者が我が子のためにオーディションを開いているような構図。
「漢詩の会」より下劣に思えてきますね。
まひろはこのあと、たねに字を教えて嬉しそうにしています。
たねは「たつじ」と「いわ」と、両親の名前を書く。その賢さに感心し、教えた甲斐があったと喜ぶまひろ。
もう帰らないとかかに怒られると言うたねに、とと様、かか様に名前を書いて教えてあげてと返すまひろです。
そして、また明日と見送るのでした。
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