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『光る君へ』感想あらすじレビュー第14回「星落ちてなお」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第14回「星落ちてなお」
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道隆の独裁、開始

道隆にはもっと重要なことがありました。

それは娘の藤原定子中宮にすること。

しかし、円融院の藤原遵子(公任の姉)が中宮にいて不可能なため、遵子を皇后にし、定子を中宮にするのだと。

皇后と中宮は並立しない。前例がない。

道長がそう困惑すると、前例の一番初めは前例がないと一歩も引かない道隆。弟の道長に対し、公卿を説得せよと言い、さらには相談ではなく摂政の命令だと断じるのでした。

道長は悔しがるほかありません。

しかし、フレキシブルというか、イレギュラーというか。もっときっちり制度を決めておけば、こんな運用で引っ掻き回せなかったのでは?と思ってしまいますね。

まひろは月を見ながら、たつじの吐き捨てた言葉を思い出しています。

「俺らあんた方お偉方の慰みもんじゃねえ!」

道長も月を見ながら、俺は何もしていないと悩んでいる。

両者ともに、己の志について行き詰まっています。

定子を中宮にする件は、実資が「ありえぬ!」として反対しており、他の公卿も同じです。

しかし、道隆は強引に通す。一条天皇はこう言うのです。

「朕は、定子を中宮とする」

公卿は困惑するも、帝の言うことに逆らうわけにもいかない。

かくして、道隆の独裁が始まったのでした。

 


MVP:この時代を生きる女性たち

今回は圧巻でした。

幼く貧しい、農民でしかないたね。彼女のような少女は今も世界中にいます。

文字を習うことすらできず、一日中働かされる。

たねみたいな少女を減らすことなんて無理だと諦めるか?

それとも少しでも役立とうとするか?

それは一人ひとりの選択次第でしょう。

まひろのようにどうにかしたい、そう思うことで世の中は少しづつ良くなってゆく。本をプレゼントしたり、できることはきっとあります。

婿を待つなんてしょうもない! 私は働く!

そんなききょうの野心は爽快痛快であり、これも女の大志です。

愛など求めないと割り切っていたはずが、道長への愛に目覚めたような明子。我が子を失ったけれど、愛に目覚めたようでした。

誰よりも幸せなようで、女の幸せという規範の中で生き、それを基準に世の中を見ている倫子。倫子は幸せなようで、実はそうなのかどうか。

そう突きつけてくるようなニュアンスがあります。

結婚したあと、自ら運命を切り拓くこともできる。道兼に別れを突きつけた繁子は、このあと平惟仲と再婚し、成功した女性となります。

いとは仕えた家が傾き、仕立物の仕事もして、辛いようで、為時の穏やかさに全て報われているような風情があります。

愛なんて過去のこと。我が子の出世だけに生きると割り切っていた寧子。それが恋していたころを、相手の死を前に思い出します。最愛の人が自分の歌を詠んだ瞬間、彼女は何かが蘇ったように見えました。

今まで背景にいて、目立たなかった女性たちの人生。

それがこう見ているだけで、人の数だけ色彩があって、輝きがある。

生きるってなんだろう?

幸福ってなんだろう?

大志って何?

そう考えさせられるこのドラマは、次のステージに立ったと思います。

このドラマの女性たちは、男から与えられる幸せを受け止めるだけでなく、自分で噛み締めるなり、考えるなり、しているからこそ素敵だと思えるのです。

けれども同時に、おそろしくて目障りで仕方ないという人もいるはず。

女性を社会インフラの一種だと思い、意見なんて知りたくないと思っていたらそうなるでしょうね。

 


女を、人を、モノ扱いしてはいけない時代へ

先日、NHKスペシャル「下山事件」のドラマを見ました。

佐藤隆太さん、森崎ウィンさん、溝端淳平さんが出ており、改めてなんて素晴らしい役者なのかと思いました。

主演の森山未來さんも素晴らしい。玉置玲央さんはもはやNHKのお気に入り。

そんな彼らのみならず、2023年『どうする家康』で無駄遣いされた役者が見せる佇まいに圧倒されたのです。

圧倒といえば、始まったばかりの朝の連続テレビ小説『虎に翼』の松山ケンイチさんがすごい。

朝ドラでは数年おきに伝説的な相手役俳優がでます。

周明役の松下洸平さんも『スカーレット』でそんな伝説的な夫役を演じました。その枠に松山ケンイチさんはおさまることが確定しています。

これから先、彼が演じる桂場に全国が悶絶するかと思うと、伝説を見届けることは幸運であると思うばかりです。

彼は改めて声が素晴らしい。この声すら魅力的にできなかった、配役としては最高なのに出来は最低になった『どうする家康』はどうしたものかとため息をついてしまいましたが。

さて、この『虎に翼』と『光る君へ』というNHK二枚看板は、時代を変えるようにひきあっています。

朝ドラは、ヒロインが理想の嫁だとされる不文律のルールがありました。男女双方から従順な女性像が求められたものです。

そこからはみ出すと、いじめではないかと思うほど激烈なアンチが登場するため、そうした状況を恐れてか、近年では『あさが来た』にせよ、『わろてんか』にせよ、モデルから相当丸めたヒロイン像にされていたものです。

今回は、理屈っぽく、理論詰できて、むしろ嫁にしたくないどころか、近くにいたら鬱陶しいくらいのヒロイン像を押し出してきます。

そのうえで女性の人生とは何かを問う姿勢が賞賛されています。

そしてこの間はこんなセリフが出てきました。

「頭のいい女が確実に幸せになるためには、頭の悪い女のふりをするしかないの」

これに大河ファンも反応していました。

なぜか?

紫式部日記』にあったライフハックと通底するんですね。紫式部も職場ではバカのふりをしていたと書き残しています。

時代は変わってきているな!

そう大河と朝ドラを見ていて思えるなんて、素晴らしいことでしょう。NHKは敢えてそうしてきている。嫌われる勇気を感じます。

歴史総合に関する本を最近読んでいますが、ジェンダー史からの見直しは必然だと思えることばかりです。

今年のこうしたドラマには揶揄するような意見も出ることでしょうが、歴史学としては最先端の知見を反映しただけだと言いたいところです。

そして今年の大河は、効果を挙げていることがこうした記事からわかります。

◆吉高由里子『光る君へ』視聴率が『どうする家康』以下でも狙い通りか ドロドロ展開で引き込まれる女性のための大河ドラマ(→link

ドロドロしているのは男性貴族の争いですよね。

それを「女はドロドロが好きなんだー!」と無理にでもしたいような。それしか言うことがないのだとしたら、下の下ですよ。

こちらの記事は

◆「なんて美しく残虐な展開」大河ドラマ「光る君へ」に熱狂の20~40代女性に受信料問題抱えるNHKがほくそ笑む訳 一方、戦国ものが好きな男性は「藤原ばかりで誰が誰かさっぱり分からん」(→link

本文が問題がないどころか良いものですが、タイトルが下の下!

「ほくそ笑む」という言葉には、悪いことをしているという含意はどうしたって感じますよね。

本来、俺たち男の子を喜ばせるのが大河なのに、それをしないなんて卑劣だ! そういうわけのわからない喚き声に聞こえる。

女性や若い層に受けるドラマを作って何がいけないのか?

「藤原ばかりだ!」とはあまりに低レベルな言い分であり、ただただカッコ悪い。

要は、歴史が好きなのではなくて、チャンバラやゲーム、漫画が好きなだけのように思えます。

こういう見方には、こちらの動画でも。

 

大河ドラマは僕達男の子のものだもん! それが女向けのものを作られるなんておかしいんだー!

そういう喚き声のようですが、NHKの受信料は男女同額です。なぜ、女性だけ我慢する必要があるのか。

さらに以下の記事は朝ドラ関連ですが、誘導の仕方が下の下です。

◆NHKの過剰なクレーム対策で『虎に翼』ストーリー崩壊?昭和時代の男尊女卑を描き切れない背景(→link

別にストーリー崩壊していませんし、家族が男尊女卑をしていないわけでもない。

ヒロイン父の口先だけの調子のよさ。ヒロイン兄の恋愛脳の鬱陶しさがちゃんと出ています。

女性差別といえばぶん殴るとか、外で女を買うとか、そこまでしないと含まれないとでも言いたいのでしょうか。

こういう“下の下”な記事を見ると、ある層にダメージが与えられていると浮かび上がってきますね。

最後に、女性をモノ扱いすることは、時代遅れだと改めて指摘させていただきます。

昨年の大河ドラマ『どうする家康』では、幼い茶々が秀吉を誘惑していて最低だと私は批判しました。

未成年俳優に性的な描写を演じさせる負担を考えてのことであり、高嶋政伸さんの気遣いを知って、確かにあれは悪かったのだと再認識できました。

◆「不意に涙が出そうに…」高嶋政伸が明かした“13歳の娘を暴行する役”への葛藤 インティマシーコーディネーターに支えられたNHK『大奥』の裏側(→link

推しが悪ければ糾弾すべきだという映画も公開されているとか。ファンなら受け止めるという姿勢の是非を感じさせますよね。

私は大河ドラマが大事だと思います。だからこそ、耳に痛いことも言い続けたい。

◆女性をモノ扱いした「推し」への怒り。性犯罪者のファンだった「私たち」は加害者か、被害者か。(→link


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文:武者震之助note

【参考】
光る君へ/公式サイト

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