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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第26回「いけにえの姫」】
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宣孝とすれちがうまひろの心
宣孝が、まひろの膝枕で寝ています。
彼女がくしゃみをすると、おもむろに起き出し、気持ちよく寝てしまったという。
まひろが「お風邪を召しますよ」というと、まひろを抱き寄せてこうです。
「ああ、こうしておれば風邪などひかぬ」
セクシーにそう言うわけですが、ここでもう宣孝はマイナス一点つけました。
まひろがくしゃみをしたということは、相手に風邪を引かせかねなかった状況だったとも言える。
贈り物はどんどんあげるのに、どこか思いやりが欠けているような……。
なんでもかんでもセクシーさに持ち込めばよいと思ってないか?
過去の大河にも、こういうダメ男はいました。
『青天を衝け』の渋沢栄一です。
彼は長いこと留守をさせていた妻の千代に再会すると、笑顔で「子作りするべえ!」と語りかけました。
女の不満はエロいことをすればおさまるとでも言いたげな様子で……演じるのがイケメンならば許されると考えたのでしょうか。
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「留守中、苦労をかけてすまなかった」
最初に一言そう言えば良いだけなのに、しみじみと、人の心がないドラマだと呆れたものです。
『どうする家康』もそうで、お市もその娘である茶々も、家康に惚れているという無茶苦茶な設定でした。
まるで恋バナを絡めたら悲劇がロンダリングできると信じているかのようで。ジャニーズ主演ならばそれが通じるとでも考えたのですかね。
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その点、今年は「こういう男はクズだぞ!」と不穏さを滲ませるから良心的だと思います。
『青天を衝け』で千代を演じた橋本愛さんは、来年の『べらぼう』でも主人公の妻を演じます。
あの年齢でもう四度も大河に出て、しかも主人公の妻は三度目。
江戸の女性は気が強い。
役柄的には読書家で内向的なようですが、そうはいっても江戸女です。意志が強く、パンチの効いた妻を演じる、そんな彼女の本領発揮を期待したいところです。
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帝は嘆き、行成は説得する
帝は嘆いています。
政治を疎かにしたせいで多くの民を失ってしまった。このままではよいはずがない。
そう行成相手に嘆き、「譲位して中宮と静かに暮らしたい」とまで言い始めました。
行成は「畏れながら」と切り出しつつ、一生懸命説得します。
仮に譲位しても今のままのように中宮を寵愛したら、中宮も内親王も危うくなる。
ご譲位でなく在位のまま、政治に専念する姿を皆に見せなければならないと。
さらに帝に皇子がいなければ、東宮(のちの三条天皇)の皇子が次の東宮となり、円融院の血が途絶えてしまう。女院様(詮子)はそれを望まない。
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結局、帝は行成の説得に従い、譲位しないと言います。
そして我が皇子は中宮が産むことを望むと言い切るのです。
行成はことの成り行きを道長に伝えています。
譲位は阻止できたものの、中宮を遠ざけることはできなかったと報告。それでも道長は、一歩進んだ、行成のおかげだと労います。
道長の魅力は、この人当たりの良さが大きいと思います。
愛嬌があるので、重い役目を背負わされた行成にしても、やり甲斐を感じるのでしょう。
行成は、公卿たちは左大臣の姫(藤原彰子)の入内を喜ぶと言い、公にすればわかると言います。
しかし、それには時期尚早だと判断する道長。これからも行成の力添えが欠かせぬのだとますます頼りにしています。
せっかくだから、文房四宝でも現物支給してあげていただきたいところです。
中宮定子の懐妊、彰子の入内決定
年があけ、長保元年(999年)となりました。
この正月、帝は秘密裏に、内裏にまで中宮を呼び寄せました。
結果、懐妊したようで、11月には皇子が生まれると晴明が断言します。敦康親王のことですね。
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「皇子なのか」
「呪詛いたしますか?」
愕然とする道長に、晴明はそう言いますが……。
道長が「父上のようなことはしたくない」と断ると、納得する晴明。
試されたのかとムッとする道長に対し、晴明はさらりと、呪詛せよと命じられたらそうしたと言います。
彰子は入内したら幸せになれるのだろうか。続けて道長が不安げに問いかけると、晴明はしれっとこう答えます。
「私の使命は、一国の命運を見定めること。人一人の幸せなど、預かり知らぬことでございます」
思わず舌打ちする道長。
そのうえで「わかった」と告げると、“中宮が子を産む月に彰子の入内をぶつける”と決心し、晴明に日取りを決めさせます。
晴明にせよ、先の実資にせよ、道長を値踏みしているようだ。
あえて道長を突き放すことで、自分で頭を使わせ、効果が出るように誘導したのでしょう。
晴明は人の幸せなど踏み潰してでも、天道を正す使命を果たそうとしているようです。つくづく仕事ができる有能な人物です。
ただ、それにしても、道長は晴明のいいようにされすぎでは……。
かくして11月1日が彰子の入内と決まりました。
道長にそう聞かされた倫子は「中宮様のお加減が悪い、まさかご懐妊だろうか」と尋ねます。
ご懐妊であろうとも入内すると言い切る道長。
ご懐妊ならその子を呪詛してくれと倫子は真顔で伝え、呪詛は殿の御一家の得手であるという、手厳しいことも言い出しました。
「そのようなことはせずとも、彰子が内裏も帝もお清めいたす」
「生贄として?」
「そうだ」
そう言われ、ついには倫子も肝を据えると言い出しました。
中宮様の邪気を祓いのけ、内裏にあでやかな後宮を作る。気弱な彰子が強くなれるよう、力をつける。
こうして彰子の両親が覚悟を固めることで、最高の家庭教師としての座が見えてきました。
人柄と教養を良心と共に熟知しているまひろが選ばれるのも、納得できるわけです。
道長は、彰子の入内を帝に申し入れると、帝も、鴨川の堤の決壊以来、未熟さゆえに左大臣に苦労をかけたと弱気。
左大臣としての務めを果たしたとする道長に対し、帝はその働きに報いるためにも、娘の入内を許すと言います。
「わが舅として末長くよろしく頼む」
「もったいなきお言葉、痛み入ります」
そう語り合う二人は、円融院と兼家の時よりも関係は良好に思えます。
道長としても、娘を姉・詮子のような目に遭わせたくないのでしょう。
彰子の盛大な裳着
入内が決まれば、後はそこへ目がけて突き進むだけ――かくして道長は裳着を盛大に執り行いました。
まひろの裳着とはスケールが違う。
大勢の公卿が居並ぶ中、粛々と進行していく儀式であり、きらびやかで豪華なシーンです。
公卿が居並ぶ中、道長は神仏の守護があり、皆のおかげだと礼を述べる。
その後、源俊賢が「見事な裳着であった」と感想を語っています。
藤原斉信は一番ぼーっとしていた道長が左大臣で、俺らはまだ参議だとぼやいています。
このドラマでは、斉信が話を大きくしたことで長徳の変に発展し、藤原伊周と藤原隆家、そして定子が失脚しました。
そんな事件の糸を引いておきながら、しれっとしていてなかなか恐ろしい男です。
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そして道長は、まんまと人にはめられた経験があるのに、いまだに流されやすいんですね。
藤原公任はむすっと「人の世はそういうものだ」と諦念の表情。
俊賢が「帝の父になるやもしれぬ」と言うと、公任は、そういうことをいうと中宮側に邪魔立てされかねないと警戒心を露わにします。
そして、しみじみと言う。
「左大臣は己のために生きていない、それが俺らと違う、道長には叶わぬ」
聡明な公任が感服するほどに道長は何らかの人徳があるのでしょう。
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行成もしみじみとこれに同意し、俊賢も続きます。斉信はあくびをしておりますが。
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