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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第29回「母として」】
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返り咲きたい伊周は『枕草子』を得る
そのころ道長を憎む藤原伊周は、幼い嫡男の舞を監督していました。
「お家を再興する気はあるのか!」と語気を強めて息子をしごく伊周。
伊周が、父と母に甘やかされていたことを思えば、どういうことなのか……妻の幾子も困惑しています。
弟の藤原隆家はしらけきっていて、兄の気持ちもわかるが左大臣の権勢は揺るがないと呆れた様子です。
揺るがせてみせると強気な伊周に対し、隆家は「内裏に官職を得るまでは逼塞しているほうが利口だ」と全くやる気を出しません。
伊周はこれに怒りました。
「なぜこんなことになったのだ! お前が院に矢を放ったからであろう! お前に説教される謂れはない!」
そうなんですよね。
換言すれば、道長があのやらかしに匹敵するくらいのことでもしない限り、勝ち目はないのです。
中関白家から内裏に送り込める美女でもいれば話は別……実はこのきょうだいには妹がおり、帝の寵愛も受けるのですが、作劇上の都合か今の所でておりません。
しかし伊周の前に、隠し球が登場します。
清少納言です。
伊周が出迎え、定子が世話になったのに何もしてやれず済まないと詫びると、里に下り華やかであった御所の様子を書き連ねていたと清少納言が答えます。
皇后様の素晴らしさが皆の心にとどまるように、宮中にお披露目願いたい。それが清少納言の頼みでした。
「早速、読んでみよう」
新作の原稿を受け取り、目を通す伊周。
隆家は我らも控える身だというものの、伊周は前向きで「なんとかする」と言い出しました。
清少納言から、定子という光る君へ捧げる『枕草子』は、かくして世に出る日々を待つことになるのです。
注目したいのは、和紙の品質と根本先生の文字ですね。
和紙は眼福ものの高品質。そして根本先生はそれぞれの筆跡を書き分けて担当されています。
どれだけ忙しいのかちょっと心配になるほど。
来年『べらぼう』は今年とは異なる書もみどころですので、こちらも注目したいところです。
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詮子、四十の賀
10月9日、詮子四十の賀が、道長主催により華やかに行われました。
定子がああも早くに亡くなったことを思えば、この時代の四十は長生きとわかるものでしょう。
帝も丁寧に母の長寿を祝います。
一方、伊周は呪詛に励んでいます。呪詛を頼むならば、公務員である安倍晴明は無理にせよ、フリーランス呪詛師も存在します。
しかし、それを使うと情報が漏れるかもしれない。機密意識のあらわれでしょうか。
この席で、公卿たちはやや困惑しています。
それというのも、道長は妻の倫子と明子を伴っているのです。しかも、その妻二人が産んだ男子に童舞をさせる。正直、気がしれないと困惑するものもいます。
明子の兄である源俊賢もその一人。お堅い実資と、呑気な道綱は純粋に楽しんでいるようです。
倫子と明子は、表向きは穏やかに笑い合いながら、心中はいかほどか。
最終的に、舞を上手にこなしたのは、倫子を母とする田鶴ではなく、明子を母とする巌君でした。
帝は巌君の舞の師匠を従五位の下とします。
ニッと笑みを浮かべる明子。
困惑する倫子。
泣き出す田鶴。
道長のプライベートに巻き込まれ、祝宴の席が重苦しくなり、泣くのはやめろと田鶴を叱る道長です。
水を差したと詫び、酒宴にすると宣言する道長。
すると姉の詮子が苦しみ始めます。
道長に続き、帝が近寄ろうとする。と、詮子が帝を遠ざけます。
「穢れたら政が滞る! あなた様は帝でございますよ!」
断固として息子を遠ざける、誇り高き詮子です。
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このあと、詮子は薬湯が持ち込まれても「薬はいらぬ」と断ります。道長がなんとか飲ませようとするも、薬は飲まないとキッパリ。
そして道長に頼みを告げます。
伊周の位を戻し、帝と敦康のために、怨念をおさめたいと言うのです。伊周は呪詛をしていましたので、その効果があったように思えます。
しかし、これを最期に彼女は息を引き取るのでした。
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