光る君へ感想あらすじレビュー

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第29回「母として」露わになる道長の欠点とは

長保3年(1001年)正月、天皇に屠蘇を献じて、一年の無病息災を祈る儀式が行われています。

帝が飲みきれなかった薬を飲み干す――名誉の役目を担ったのは藤原宣孝

当時はごく一部の人しか飲んでいなかったお屠蘇が、時代がくだるにつれ庶民にまで広まり、現代ではごく当たり前に普及しているのです。

元々は『三国志』でおなじみ、伝説の名医・華佗が生み出したとされます。

宋代でも、正月に屠蘇を飲む記録があるものの廃れていったようで……打毱、鳴弦の儀、抹茶、下駄、褌など、中国由来でありながら、現在では日本にのみ残された伝統の一つです。

 

受領功過定にて

名誉な役を務め終えた宣孝は、まひろの元へ戻ってきました。

夫妻の娘という名目の賢子も三歳になっています。

まひろが帝の様子を尋ねると、顔色が悪く、覇気がないとのこと。一方で左大臣の道長は息災であったと宣孝は言います。

まひろは賢子が鞠を転がした話をすると、おなごなのに威勢がいいと宣孝は喜ぶのでした。子をあやす宣孝の笑顔はなんとも素敵ですね。

そして次なる除目の季節が訪れました。

新たな除目を行う前に、各国の国司の働きを評価する受領功過定が行われます。要するに評定ですね。

越前守の藤原為時は、滞りなく納税し、帳簿の記載にも誤りや不審点はない。

ただし、宋人帰国という役目は果たせておりません。

藤原斉信は「宋の言葉ができるのに怠慢だ」というと、藤原実資は「真面目なのに怠慢は言い過ぎだ」と反論します。

それでも赴任して四年目だと言葉を濁すのが藤原公任

道長としては続投させたいのでしょうが、結果的に任官はかないませんでした。

それにしても、道長は政治能力があまり高いとも思えないし、賢いかどうかもわかりません。

まひろが越前にいたころ、突如、宋人の脅威を恐れているような発言をしていました。今にして思えば、あれはまひろの安全確保のためだったのでしょうか。

あのとき日本の防衛云々語っておりましたが、本気でそこが気になっているのであれば、何らかの対策はしたことでしょう。日々の業務にかまけて忘れてしまったのでしょうか。

道長以外の公卿も問題外ではないでしょうか。

そもそも、宋人はなぜ越前にいるのか?

金儲けができるからでしょう。ここに居並ぶ公卿たちの中にも、越前経由の唐物を愛好しているものはいます。

今後そういう貿易を阻止する気なのか。

なんなら思い切って実資の邸宅へ乗り込み、あのカワイイ鸚鵡を没収するくらいの果断を示せば貿易がたちゆかなくなり、宋人の滞在理由も消滅します。

そんな対策もなく、ただ「まひろのお父さんに利益誘導できないなんてなぁ」と思うだけならば、政治家としての力量に限りはあるということです。

道長は、付き合う上では好い人なのでしょうけれども。

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『枕草子』は清少納言が「光る君」定子へ捧げた

まひろは『蒙求』を読ませながら育児をしています。

いとは福丸に「殿が戻ってきても来るように」と釘を刺しています。なんでも殿にも会わせるのだとか。

彼女は、正室を亡くした為時にとって、深い仲であったとも思われます。もし、そうであればなかなかすごい人間関係ですよね。

するとここで、清少納言ことききょうがやってきました。

「どうしておられたのか?」

まひろがそう尋ねると、ききょうは定子の遺児の面倒を見ながら、『枕草子』の執筆に励んでいたそうです。

美しく聡明で、キラキラと輝いていた皇后のことを。

この世のものとも思えぬほど素晴らしかった宮中のことを。

書き残しておこうと決意を固めたのです。

ききょうにとっての『光る君へ』とは、定子に捧げる『枕草子』のことなのでしょう。

思えばまひろが書くようにと勧めたことが契機だとして、まずは読ませたいとのこと。まひろが目を通し、生き生きと弾むような書きぶりだと感想を言います。

ただ、まひろは「皇后の影の部分も見たい」と付け加えました。複雑な方が人物として魅力的であろう。そう告げると

「皇后様に影などない!」

ききょうはキッパリとそう言い切り、あったとしても書く気はないと強い口調で返します。

華やかな姿だけを後世に残したい――そんな彼女の願いは通じたのか、藤原定家は『百人秀歌』に定子の辞世を入れ、『百人一首』からは外しております。

そうしたことが積み重なり、今なお定子の像は鮮やかで輝く姿が残っているのでしょう。

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まひろはききょうの想いを悟り、謝ります。

するとききょうは、鬼気迫る顔で「皇后様の命を奪った左大臣に一矢報いてやろうという思いもある」と告白します。

左大臣は皇后の兄弟を失脚させた。

出家を口実にして皇后と帝を引き離した。

まだ幼い娘を中宮にした。

帝にさえ有無を言わせぬ強引なやり口のせいで、皇后は命を縮めたと憎々しげに吐き捨てるのです。

まひろは困惑しながら、夫は感謝していると左大臣こと道長をフォローすると、ききょうは頑なな態度で「騙されてはいけない、恐ろしい人だ」と深刻な表情を崩しません。

あの明るく裏表のない、快活なききょうは、どうやら何かに取り憑かれてしまったようです。

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