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『光る君へ』感想あらすじレビュー第29回「母として」露わになる道長の欠点とは

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第29回「母として」
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物語を書き始めるまひろ

まひろは賢子に『竹取物語』を読み聞かせています。

あの落ち着きのない賢子がじっと聞き取り、続きをせがんでいる。

そのころ、詮子の望み通りに内裏に戻った伊周は、帝に美々しく製本された『枕草子』を差し出しました。

素晴らしい紙質に製本――まさに伊周の気合いを感じさせるものです。

一方、娘が『竹取物語』に興味を持ったことに刺激されたのか、まひろは筆を執り、自ら物語を書き始めました。

できるかどうかはわからない。

でも書く。

我が子のためか、己のためか。まひろは筆を執るのでした。

 


MVP:清少納言

『枕草子』を世に出す――そう誓った彼女は、凄みのある顔になりました。

彼女も裏表がなく、影のない、光あふれる存在でした。

そこに暗い影がさすことで、深みが出ます。

影あるほうが深みがでるとまひろは言いました。確かにこの影ある清少納言の方が魅力があり、ファーストサマーウイカさんの演技にもさらに磨きがかかったように思えます。

苦しくて苦しくて、誰かを恨まずにはいられない。

そんな清少納言と伊周からたちのぼってくる『枕草子』が、光に満ちていて輝いているというのは、なんという皮肉でしょうか。

あくまでドラマはドラマです。これは創作です。

しかし、『枕草子』の成立過程として実にうまくできているのではないでしょうか。

彼女の像が完成したように思える圧巻の演技……なんて悲しいのだろう。

こんな深い悲しみから、あんなに輝く言葉が生まれたのかと思うと、それだけでたまらないものがあります。

 


善良な道長

道長の人の良さが、ますます露わになってきています。

ギラついた権力者像よりも、別の像を模索している本作。

道長は確かに父・藤原兼家のような悪どさはなく、善良で流されやすいからこそ厄介であり、必ずしも有能とは言えない造型に思えてきました。

今週は、宋人対処を現場に投げっぱなしにしていたことがわかりました。

それで失職した為時のフォローに回るところは「善良」です。しかし、根本的な対策を何一つしていません。

問題から逃げ回るところも欠点でしょう。何かあればオロオロして困り果てるようで、政治的課題に対し根本的な対処法を出していません。

そして今週、よりにもよって妻二人を祝宴に同席させ、周囲からも「あれはない」と呆れられています。

良くも悪くも道長は、目の前にいるみんなが笑顔でいればいいと思うタイプなのでしょう。

あの場の妻二人は表向きはニコニコしている。その内面にどれだけ黒い澱がたまろうと、道長は「でも笑顔じゃないか」と片付けてしまうんでしょうね。

この道長の描き方は、善良といえばそう。

しかし、善良なだけでは解決しない問題もあると思える描き方でもある。

道長の欠点も見えるところがこのドラマのよいところです。

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文:武者震之助note

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