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『どうする家康』感想あらすじレビュー第10回「側室をどうする!」

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『どうする家康』感想あらすじレビュー第10回「側室をどうする!」
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どうする同性愛描写

「側室をやめたい」と言われてブチ切れる家康もどうかと思いましたが、その理由に挙げられた同性愛描写も、あまりに突然で言葉を失いました。

『鎌倉殿の13人』との落差が酷すぎます。

源実朝の場合、「自分に原因があって世継ぎはできない」と語り残しているため、男性しか愛せないか、あるいは、そういった欲求のないアセクシャルという解釈ができなくもありません。

実際、劇中ではそこを踏まえて、配慮しながら描かれていると思えました。

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一方、本作はどうか。

家康は側室が多い方ですが、まさか全員が今回ぐらいの尺を取れるわけじゃありませんよね?

はっきり言えば、お葉こと西郡局をこうも大きく取り上げる意味がわかりません。

彼女は北条氏直の正室である督姫一人しか産んでいないのです。

女性の重要性は、産んだ子の活躍によって決まるもの――それが封建制での扱いです。話としても全く面白くありませんし、大きく取り上げる意味もわからない。

そしてSNSでは「百合描写」などと言われる、唐突で雑な設定は何でしょう?

同性愛といっても、男性同士と女性同士では異なります。

近代以前は、男性同士の同性愛が性的なバリエーションとして認められる一方、女性同士の同性愛はないものとして扱われることもしばしばありました。

今回は、ウケ狙いでちょろっと入れたとしか思えない。ありとあらゆる意味でバカにしている。

ならば、どんな表現だったら良かったのか?

というと、これまた『大奥』が参考になるでしょう。

徳川綱吉に対し、忠義を超えた思慕を抱いていた柳沢吉保。そこまで思っていたのか……と見ている者を胸を押しつぶすような苦しくさせるような、彼女の描写は圧巻でした。

それと比較するとため息ばかりが出てきます。

NHKはLGBTやアセクシャルを扱った優秀なドラマも作ってきているのに、肝心の大河でこれでは、局の恥にも繋がるのではありませんか。

 


どうする視聴率

ある写真を見て、驚きました。

大河とコラボしているとある土産菓子が、家康ではなく、侍ジャパンコラボにパッケージを変更していたのです。

WBCの期間だけかもしれませんが、注目は視聴率でしょう。

『鎌倉殿の13人』も、ワールドカップと重なった回は落ち込みましたので、今回もWBCの影響は少なからずあるでしょう。

しかし、問題はそこではないのです。

以降、回復しないこと――。

一回見逃してどうでも良くなり、来週以降もずっとチャンネルを回さなくなる。本作は、そうなる可能性が高いのでは?

視聴率は数字そのものより、推移に注目ですね。

◆視聴率急落! テレビ局は新たなステージへ(→link

日刊ゲンダイも早速記事にしています。

◆松本潤「どうする家康」はNHK大河にあらず? LGBTQ問題絡める意欲作も視聴率1ケタで“悪夢”再び(→link

 


どうするポリアンナ

どれだけ駄作に見えるドラマでも、無理に褒めるポイントを探し出してPV(アクセス数)を狙うポリアンナ記事。

甘い論調のメディアはどんなときでもその手の記事を送り出します。

例えば今回はこちらでしょうか。

◆週刊テレビ評:「どうする家康」が描く名もなき者 物語に権力者とは違う視線=ペリー荻野(→link

なんでも本作は、無名の人物を描くのが上手だそうです。

民衆視点ならば、戦災孤児を出した『麒麟がくる』の方がうまく描けていたと思います。

東庵とセットで、未だに駒のことを「たかが町娘がwww」と腐す意見も見かけますが、ドラマの描写を把握していないからこそ。

当時、最先端だった明由来の医学を身につけた、トップクラスの医者でした。東洋医学では医者が政治的な見立てをすることもあります。

そういう知識抜きにして、先入観でバカにしていると、色々見失ってしまう好例でしょう。

民衆視点の歴史なら『いちげき』や『大奥』の小川笙船の方がよほど秀逸でした。

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次のフシギ記事がこちら。

◆家康、明智、西郷、竜馬、武蔵ではない…2000年以降のNHK大河視聴率で1位に輝いた主人公の名前(→link

ドラマの話題は避け、日本人の歴史観を誉めるという、高度な技術が見られます。

芸能裏話系だと以下の記事も色々とにおいますね。

◆松本潤 大河ドラマ『どうする家康』舞台の浜松まつり出演に出された“キムタク超え”司令(→link

映画『レジェンド&バタフライ』は、思えばキムタクの信長行列がピークでしたね。

赤字は確定のようで、大河も低飛行。

「どうする?」と問うべきは、別の誰かでしょう。

◆番宣23本出演、普段とは違うキムタクを見せたが…木村拓哉“信長映画”がそれでも赤字の理由(→link

「当初は10億円ほどの製作費で撮る予定でした。

古沢さんは低予算で撮れるラブコメを描こうとしたのですが、出来るだけドラマティックに描きたいという監督の思いもあり、製作費が徐々に嵩んでいった」

だから、戦国でラブコメを描こうとするセンスがどうなのか。

映画でやるのはご自由ですが、大河にまでよくわからない世界観を持ち込まれると、致命傷になりそうで怖いのです。

 

どうするNHKの歴史劇

今週はSNSのトレンドが『鎌倉殿の13人』でした。

『大奥』は『鎌倉殿の13人』ロスを癒していて、そのルートを辿った役者さんたちは幸運です。

◆『大奥』が埋める『鎌倉殿の13人』ロス 堀田真由、山本耕史、三浦透子らの安心感(→link

◆堀田真由、『大奥』撮影現場での“比奈”呼びに照れ「『鎌倉殿』のスタッフさんもたくさん」(→link

そして朝ドラでも、期待したいニュースが出てきました。

◆4月開始「らんまん」ディーン・フジオカ 7年ぶり朝ドラ凱旋「光栄」坂本龍馬役“恩人”五代さまと親交(→link

最新研究がいまひとつ最近の大河に反映されていない幕末明治、しかも土佐!

ジョン万次郎も出ますし、自由民権運動も扱う。

楽しみに待っています。

 


衆人皆酔えるに、我独り醒めたり

今年のWEBメディアは、日刊ゲンダイの叩き記事が目立っていましたが、他にもあります。

例えば、

◆『どうする家康』若者ウケ狙いで大失敗!“若者=バカ”の浅い考えに辟易(→link

こちら、まいじつの記事では、「むしろ若者をバカにしていると伝わっているからこそ避けられている」と分析して、同意しかありません。

今週の放送があまりにお粗末でしたので、今後、他のメディアも似たような動きが出てくるのではないでしょうか。

本作は、嫌な煮詰まり方をしてきました。

ファンの間で、

・このドラマは面白い、なぜなら

といった表現ではなく、

・このドラマの面白さがわからないのはバカだ

といった論調がしばしば見られるようになってきたのです。

私は、本作の陳腐な内容について、制作サイドやポリアンナメディアに失意を感じ、大河ドラマ自体が好きで批判の記事を書いていますが、ドラマを楽しんでいる人そのものには何ら感情はありません。

作品についての好き嫌いは誰にでもあり、何を取捨選択しようが個人の勝手でしょう。

例えば私の好きな『魔界転生』なんて、万人受けするものでもないと理解していますから、「この映画がわからないなんてバカ!」とは微塵も思いません。

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それが近年、朝ドラあたりから、どうにもおかしく感じます。

自分の好き嫌いと一致しない人間を見つけると、SNSで一方的に突っかかって喧嘩腰のリプライをつけたり、相手のツイートを勝手にスクリーンショットを取り、罵倒していたりする。

要は、徹底的にバカにしている。

攻撃性が非常に高まっていて、ファン(あるいはアンチ)同士で楽しむというより、反対派を目がけて突撃するような傾向が強まっているんですね。

ときには「意見があるなら論文を書け」とまで迫ってくる方もいます。

そんなもんほっとけ、とも思うのですが、一方で大河ドラマが好きだからこそ非常に危うく感じてしまう。

いったい何が起きているのでしょうか。

まるでSNSに酔っているかのよう。

衆人皆酔えるに、我独り醒めたり。屈原『漁父辞』

みんなが酔っ払っているが、私は一人、シラフでいる。

そう思いたくなるほど、悪意が煮詰まった感じを受けます。

他人を攻撃するような有毒ファンダム現象は、大河というコンテンツすら弱くしかねない、そこが懸念材料なのです。

先日『アカデミズムとジェンダー: 歴史学の現状と課題』という本を読みました。

そこには「今の若者の中には歴史が好きだけれども、SNSでミソジニーを炸裂させ、女性を罵倒し合う日本史界隈を見ていて、選びたくなくなったものもいる」という趣旨のことが書かれていました。

大河でも、くだらない差別を横行させ、ファンダムが荒ぶるとなると、未来の芽が摘まれかねない――そのことを危惧しています。

どんな作品でも好き嫌いがある以上、互いにいがみあうのではなく、それぞれのスタンスで楽しめばよいのではないでしょうか。


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文:武者震之助note

【参考】
どうする家康/公式サイト

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