ドラマ大奥レビュー

ドラマ『大奥』公式サイトより引用

ドラマ10大奥感想あらすじ

ドラマ大奥感想レビュー第8回 空気を読めない吉宗と情緒に敏い藤波

村瀬がコツコツと記録を続けてきた『没日録』。

将軍綱吉の死の噂まで記されている――その真相を究明しようと吉宗が思い立ったその夜、村瀬は何者かに殺害されたようです。

享年は驚きの97。

老衰で死んでもおかしくない年齢の彼に何があったのか?

ドラマ10『大奥』第8回放送の始まりです。

 

村瀬、その怪死

村瀬はなぜ死んだのか?

綱吉の殺害場面では、顔に薄い布が被せられました。布を湿らせておくことで、著しく体力の低い相手は窒息死に至ります。

原作では絞殺だった綱吉の死を変えることで、村瀬の殺害手段をも匂わせる、ミステリ的に高度な描写。

湿らせた布や厚い和紙を被せる暗殺手段は、時代劇のお約束でもあります。

解剖して死因を調べることができない時代だと自然死にしか見えません。

そして、この死から真犯人は見えてきます。

・殺しに慣れたプロの犯行

・右筆部屋に怪しまれず入ることのできる、大奥男性を装った者の犯行

となると実行犯は「お庭番」あたりと推察できます。

この世界でのお庭番には男性もいることが、水野処刑の際にわかっています。

そんなお庭番を使うことができて、かつ権力があり、何か怪しげな人物といえば、冒頭で画面に映っている吉宗以外の者――加納久通と推察できますね。

確定はしていませんが、もしそうだとしたら、彼女の動機は……?

吉宗が『没日録』の続きについて尋ねると、藤波は「ない」と答えます。

村瀬が書いていた『没日録』の続きが無い、あるいは紛失したとなると、その後に書かれた部分を吉宗に読まれては困るということです。

冒頭からフルスロットルで飛ばす今回。はたして真相は?

 

大奥の夢を叶えて欲しいのに

藤波は、話をすっ飛ばし、男の好みを聞いてきます。

中臈はいないし、総触れもできない。大奥入りを目指す者の夢をどうするのか? という彼なりの気配りが感じられます。

これは既視感ありますね。

昨今、ミスコンやレースクィーンの弊害が議論され、いざ廃止となると、こんな反論が出てきます。

「ミスコン女王やレースクィーンになりたい女の子の夢を奪うの?」

こうした言い分が通じるのは、人の心や世間の空気を読める相手のときだけです。

吉宗はできない。

無駄なものは無駄だから嫌いだとでも言いたげに、話を打ち切る。それでは世継ぎはどうなるのかとオロオロする相手に、こうきた。

「たわけ! 総触れなどなくとも、世継ぎは作れる!」

ガッと怒鳴る冨永愛さんの上様は眼福ものでカッコいいですね。

しかし、藤波の立場になってみると、怒鳴られ、パワハラ気分を味わっていてもおかしくない。悔しそうな表情をしています。

今までの彼は、夢のようにゴージャスな大奥をプロデュースしてきた。綱吉時代の元禄バブルを知っている。そんな藤波からすると切ない話ですよ。

やはり吉宗は『没日録』の紛失が気になっています。

何かに引っ掛かると追い求める性格なのでしょう。

紛失したのはここ数年の記録のみということは、犯人は、そこだけは読まれたくなかった。今、大奥にいる誰かにとって都合の悪いことが書かれているのだろう。

そう推理する吉宗に、久通が提案します。犯人は藤波かその周辺ならば、お庭番に調べさせよう。

吉宗は了承します……って、これはますます久通が怪しいぞ!

藤波へと誤誘導していませんか? そんなにすぐ犯人なんてわからないでしょうよ。

そうはいっても、吉宗は久通を信じているわけで……吉宗は続けて“町人・進吉”への連絡を頼むのでした。

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赤面疱瘡の特効薬を探せ

進吉とは他でもありません。第一話に登場した、元御中臈の水野祐之進です。

今は薬問屋・田嶋屋の婿となり、江戸城へは町娘に扮してやって来ました。

店を出た時からずっと女装してきた!

そう困り果てる進吉を笑い飛ばす吉宗。やはり吉宗は、喜怒哀楽がハッキリ出る性格なんですね。

本題は……赤面疱瘡でした。

春日局は赤面ゆえに国が滅ぶと言い残していました。

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吉宗は、キリシタン禁制のために国を閉ざしているが、男がいない国だとわかれば異国に攻められてしまうかもしれない。ゆえに隠している。

進吉は、外国に赤面がないことに驚きます。

いや、それもあるのかないのか、“鎖国”ゆえにわからないと吉宗が返す。

春日局は、男女の腕力差をふまえ、異国に攻められたら国が滅ぶと考えていたのであり、聡明な進吉もその危険性を察知します。そして悩んでいます。

薬は土地によって違うのだとか。

悩んでいる進吉の言葉に被せるように、吉宗は思いついた妙案を語ります。

日本中をくまなく探し、赤面特効薬を見つけろ――婿入りしたばかりだと困惑する進吉をみなまで言わせず、誰のおかげでここにいられるのか!と畳み掛ける吉宗。

せっかく生き返っても国が滅びては元も子もないだろうと、一方的に話を決めてしまいます。

久通が、特効薬を探すための計画書を提出するよう告げると、進吉は、杉下の行方が気になっているようです。

久々の対面は、痛快な場面でした。

しかし、吉宗の性格的な欠点と狡猾さも見えてきます。

自分の考えを強く押し通す。相手の言葉を遮る。自分の頭の中では理解しているから、相手もそうだろうと思い込む。最低限の説明しかしない。

吉宗はよいことばかりをするわけだし、久通という彼女を知る最高のバディもいるから、うまくまとまっております

しかし、何かが欠けたら暴君になりかねない怖さも浮かんできますね。

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世継ぎなぞ半刻でできるのじゃ

進吉が気にかけていた杉下は、大奥でお掃除中でした。

すると吉宗がやってきて、時がないから急ぐと服を脱がされます。

吉宗の悪いところがこうして発揮されるとはなぁ……。「総触れなんかなくとも子作りじゃ!」という彼女なりの合理化だ。

時間は半刻(約一時間)だと告げ、いそいそとしていると、杉下は残念そうな表情を浮かべ「種無しです」として断るのでした。

「なんと」

なんと……じゃないですよ、上様!

杉下は、子作り以外は身を粉にして務めると頭を下げます。水野がいなくなってからは、雑事をしているそうです。

水野の部屋子だったとはちょうどいいと、藤波の右腕に据える吉宗。

しかも、古い着物を身につけている杉下の倹約を見習えとのこと。そんな理由ですか!

上様って、合理性ばかり求めて人の心を見ない人ですよね。ここでも藤波の言葉を遮るし、二人の遺恨を水に流さぬか?と簡単に、しかも一方的に言うし。

さらには藤波の監視まで杉下に任せているのでした。

このあと、吉宗は庭仕事をして脛をあらわにした男に目を止めます。

杉下に別れを告げると、ニヤリと笑い、その男とどこかへ……。

何をするのか?って、そりゃお役目ですね。

肉食系上様にもほどがある。情緒など一切ない子作りだ。家光と有功、綱吉と右衛門佐の切ない恋がはるか遠くに消えていくような……。

それにしても、杉下と会った時点で「あと半刻で表向きに戻る」と吉宗は語っていたわけでして。そこから時間は経過しているとなれば、残りはどのくらいでしょうか。

どんだけ時間を惜しむのですか、上様!

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