「どういうことなんだい?」
女大鼠にドヤ顔で語られ、今週もまた脱力感に包まれながら、冒頭は、大河史上最低だったであろう【本能寺の変】の回想へ。
信長がクローズアップされます。
しかし、眼の前に明智の旗(桔梗)があるのに、気づかず叫び続ける信長の姿がどうにもしょうもない……。
「殿! 水色桔梗は明智の旗ですよ、明智!」
と思わず叫びたくなってしまいます。これが脚本家の狙いだったんですかね。
役者たちの演技力がかえってアダになっているかのような『どうする家康』。
本日は第29回「伊賀を越えろ!」を振り返ってみましょう。
なお、今週からおじさん構文によるあらすじはありませんのでご了承ください。
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どうする説明不足
家康の暗殺計画を強引にぶち込み、時系列をいじくり回したせいか。
とにかく色々とわかりづらかった【本能寺の変】。
それに拍車をかけたのが、堺にやってきた“お市”であり、演じた北川景子さんがSNSでこのような投稿していました。
命懸けで堺まで、兄を射たないで欲しいと嘆願しにいきました。
不器用でなかなか理解されない人でしたが、幼い頃から多くの犠牲を払い、強くなるためだけに生きてきた立派な兄でした。
兄との間にも色々ありましたが、かけがえのない兄を失い無念です。
劇中で彼女の真意をご理解された視聴者はどれだけいたでしょう?
SNSで説明補完するのではなく、劇中でわかるように描くのがドラマではないのでしょうか。
どうする忍者の戦闘
女大鼠が、ドヤ顔で武器を構える時点で、このドラマはつくづく駄目だと頭を抱えたくなります。
最近、歴史を扱う書籍を読んでいると、『鬼滅の刃』の考証はよくできているという記述をよく見かけます。
例えば、音柱・宇髄天元(うずいてんげん)というキャラクターがいます。
音柱・宇髄天元を歴史目線で徹底考察!その魅力の真髄は誠実さにあり『鬼滅の刃』
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彼は身体能力や戦闘能力そのものは、他の柱(組織内最上位の幹部)に劣る部分もあると自覚している。
けれども彼には強みがある。その一つが、上忍としての経験です。
部下を率いて戦う。現場の状況を素早く把握し、各人を適切な位置と行動につけ、最終的に勝機を見出す差配をする。
いわば指揮官(上忍)としての働きに長けているのですが、『どうする家康』では、服部半蔵にせよ、女大鼠にせよ、非常に重要なリーダーの資質がまるで見えてこない。
特に
「どういうことなんだい?」
なんてマヌケな台詞を言わせたらダメでしょう。嘘でも「想定の範囲内」という態度で構えていなければ、部下に動揺が走ってしまい、結果、作戦の成功率が下がってしまう。
脚本を書いている段階で、単に忍者を出しときゃ数字が取れるだろう、ぐらいの感覚だったから、こんな台詞になったのでは?
『鬼滅の刃』の足元にも及ばない。それが今年の大河です。
どうするヘアメイク
毎週のようにつっこんで、さすがに嫌になってきますが、このドラマは月代の作り方がおかしい。
頭がぽこっと膨らんでいたり、つなぎ目があからさまだったり。
もう少し丁寧にできないものでしょうか。
クナイをヘアアクセサリーのように使うのもセンスがなさすぎて辛い。
クナイは投げて使うことがフィクションでは定番化していますが、実際には当たりません。本来はスコップのように土を掘るような使い方もできる、飛び道具というよりは多目的工具扱いでした。
オシャレな人が、スコップをコーディネートアイテムにします?
汚い。要するに、不潔な女です。
わざとらしいボロ笠を被り続ける女大鼠も痛々しい。あのくだらなさが凝縮した髪型はなんなんですか。
どうする本能寺の後
光秀が天下人を名乗っているあたりもどうしようもない。
白兎を焼いて食おうか、煮て食おうかと凄む光秀が、兎も角最低です。
そういう下劣さだけではなく、この余裕ぶっこいた態度から、脚本家が歴史に全く興味がないことが明白で辛くなります。
明智光秀は、味方が少なくて詰んでいた。
とにかく味方が欲しい!と書状を必死に送りまくり、どうしようもないほどあがいていた。
『麒麟がくる』は本能寺がクライマックスであり、その後があっさりしています。
それでも、細川藤孝や筒井順慶の表情から、明智に与しない彼らなりの理由が伝わってきました。
本作は『麒麟がくる』をおちょくるかのように逆張りをするので、「俺ならもっとインパクトのあるセリフ言わせるしwww」ぐらいに考えていたのではありませんか。
その結果、「焼いて食おうか煮て食おうか」なんて陳腐な言葉が使われたのでしょう。
どうする緊迫感と「満身創痍」
わざとらしく歩き、わざとらしく足が痛いと倒れ、わざとらしくカメラを揺らし、わざとらしく戦う。
このドラマのアクションは今までだって十分酷かったのですが、今後ますます酷くなると予想しています。
今年の殺陣、特に織田信長の殺陣が、江戸時代以降の動きに見えておかしいと思っていました。
理由は判明しました。現場でチャンバラの動きが得意な役者さん主導で撮影していたとのこと。そりゃ妙なことになりますよね。
そしてこのドラマは「満身創痍」という言葉の意味すら履き違えている。
汚すという最低限のことすらしない。衣装もメイクも何もしていない。汗一つかいていない。髪の毛一筋乱れていないで「満身創痍」とは?
意味をわかっていないのでしょうか。全身傷だらけということですよ。
ちなみに『真田丸』では、本多忠勝役の藤岡弘、さんが竹で鼻を傷つけてしまったそうで、その傷が確認できます。
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