こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【『どうする家康』感想あらすじレビュー第39回「太閤、くたばる」】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
どうする三成までマザーセナ信徒
かつては多くの作品で悪役であった石田三成に対し、私個人に悪印象はありません。
むしろ、三成の供養をしていた地域の方から話を聞き、なんて素晴らしいのかと感動したこともあるほど。
それなのに、今年の三成は見れば見るほど気持ち悪くて、思わず顔を逸らしてしまいます。
目をウルウルさせて綺麗事を語るんだけど、中身がマザーセナの教えなんですよね。
甘い理想ばかりでフワッフワな軽い言葉と申しましょうか。
どいつもこいつも……なぜこんな薄っぺらい奴らばかりなんだ?
マザーセナの教えって、結局、昭和後期平成くらいの優等生ぶったかわい子ちゃんが語り出す、学級目標みたいなキラキラ感しかないんですよね。
中身は、ほぼ水のように薄味で、具体性の欠片もない。
これは当時の世界観でもなく、ドラマの作り手が考えた精一杯の綺麗事なのでしょう。誤魔化すことしか考えていないから、中身も何もあるわけがない。
どうするセリフの短さとオラオラぶり
死にかけの秀吉――その胸ぐらを掴んで、怒鳴り散らす家康は一体なんなのか。
なぜ誰も止めないのか。
時代考証としても常識としてもおかしい。死にかけの老人を掴んで平然としているなんて、人としての心すらないと思います。
なぜこんなことになるのか?
今年は異例づくしです。
まず、主役の説得に中身がない。
『鎌倉殿の13人』の北条義時は、能弁な軍師タイプではありません。三浦義村、大江広元、梶原景時の方が弁が立つタイプでした。
それでも木簡を数え、米の収穫高から動かせる兵数を算定するところは、理詰めの説得力があって素晴らしかった。
今年の家康は、いつもうわっつらの綺麗事ばかりで、典拠もなければ、データ論証すらありません。
子どもが背伸びして学級目標を語るようなことばかり。
しかもセリフが短い。
大河の主役級や知将が説得するとなれば、セリフは難易度が高く、長くなります。今年はそれが平易なうえに短い。これでは主役の魅力が出るわけもない。
そして粗暴。
この掴みかかる場面もそうですが、本作の家康はやたらと火がつきやすく、すぐに怒鳴ったり、キレたりします。
家康は意外と短気だという史実の裏付けが……とかなんとか、そういう話を今はしていません。
ドラマとしての作り、演出上の問題です。
時代劇としてではなく、現代もののヤンキードラマや、せいぜいが軽薄なオフィスものとして作っているように思えます。
あるいは異世界転生もの。いっそコミカライズして、Webトゥーンにすればよかったですね。
キャッチフレーズはこんなところでは?
戦国という異世界に召喚されてしまい、最弱スキルでハーレムを作る、ただの気弱なプリンス――!
蝿の入った膳は食べる気がしない
大河ドラマは料理に例えるならば和食のお膳でしょう。
それなのに、ファストフード感覚でハッピーセットみたいなおもちゃをつけたり。
ニコライ・バーグマンのフラワーボックスをおまけにつけたり。
タピオカドリンクをつけてみても、ノイズにしかなりません。
それでいて、肝心の刺身はパサパサと乾燥しているし、茶碗蒸しかと思ったらまずいマンゴープリンが入っている。
安くはないお金を払って、そんな膳が出されたら、嘆きたくもなるでしょう。
しかし、それだけではない。
この膳最大の問題点は、デカい蝿が汁物に浮かんでいることです。
「蝿を取り出して食べればよい」とムリヤリ頭の中で納得できたとしても、食欲は失せるでしょう。
そういうデカい蝿をむしろ前面に出しているのが今年の大河です。
蝿を無視して「でも史実というお出汁が効いたこの味わい!」だの、「新説トッピングを使いました!」だの、YouTube配信で言われようが、根本的に間違っているからよろしくない。
デカい蝿を無視して「さすが! 号泣のメニュー!」と語り尽くす食レポなんて、読んだところで呆れるばかりです。
しかも、褒めるレビューは同じ文言ばかり並ぶんだから、どう考えたっておかしい。
ゆえに毎週私は指摘しているのです。
蝿の入った膳なぞ、即刻下げて欲しいと。
麒麟は来ない
最終回に近づいてきたからでしょうか。
こんなニュースが出され、憤った方は少なくないはず。
◆大河「どうする家康」天海を演じるのは誰? ネットには光秀=長谷川博己待望論 「麒麟がくる」最終回からの流れを期待する声続々(→link)
こんなデタラメ大河に、長谷川博己さんを巻き込むなんて、悪夢以外の何物でもありません。
今年の大河は、足利義昭や明智光秀の像があまりに酷く、『麒麟がくる』の逆張りと言えるものでした。
『麒麟がくる』で好演された眞島秀和さんと風間俊介さんは、その後『大奥』に出演されています。
実質的に、あの大河の後継枠は、確かな医療考証も含めて『大奥』です。
今年の大河には、清らかな太平の世をもたらす麒麟はやって来ません。というか今年は思想とかそんな考えなどまるでない、単に幼稚な世界です。
『麒麟がくる』で「来ない」と話題になった――そもそも「麒麟」とは何か問題
続きを見る
ドラマ大奥感想レビュー第8回 空気を読めない吉宗と情緒に敏い藤波
続きを見る
ついでにいえば、再登場は期待しない方がよいでしょう。
「再」がつかない未登場大名も多い。まさか伊達政宗すら出さないとは思いませんでしたね。伊奈忠次だってどうせ使い捨てでしょう。
※続きは【次のページへ】をclick!