鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第6回「悪い知らせ」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第6回「悪い知らせ」
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孫が祖父を攻め殺す世界

必死の思いで頼朝一行が安西景益の館へ向かうと、北条時政が出迎えます。

「佐殿が生きておられると信じておりました!」

時政を嘘つきが!と思いますでしょうか。どうなんでしょう。少なくとも、こう言った瞬間には心底信じていたのかもしれない。

ただ彼は思うことがコロコロと変わり、それを口に出す癖があるのではないでしょうか。

素敵な笑顔の景益が、頼朝を出迎えてくれます。このドラマの坂東武者は笑顔が似合います。

ノーテンキ……と言うと身も蓋もありませんが、実際そうですよね。

いま衣笠では平家方と戦の真っ最中ですし、時政も

「みんな聞いてくれ。誰か三郎を見た奴はおらんか?」

と不安そうではありますが、そうかと思ったら酒を飲み始める。その前にすべきことがある気がするのですが……。

岡崎義実もなんだか素朴な老人ぶりをチラッと見せているんですけどね。彼の嫡男・佐奈田与一義忠は石橋山で討死を遂げています。先週の紀行で解説されておりました。

三浦義澄が、時政に無事で何よりと声をかけてきます。

なんでも三浦一党は、義澄の父である三浦義明が時間稼ぎをしている間に落ち延びたとか。

この義明、驚きの享年89で(諸説あり)。

三浦義明
三浦義明はなぜ孫の重忠に攻められ討死したのか?89歳まで生きた関東有力武士

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だんだん脳みそが溶けそうになってきましたよ。

なんでこの人ら、身内が死んでも割と元気そうなんですか?

和田義盛はギャーギャーと「次郎の奴許せねえ!」と怒っているし。

この衣笠も壮絶で、三浦義明にとって和田義盛も畠山重忠も孫です。高校生くらいの孫が、89歳の祖父を攻め殺す、恐ろしい話なんだってば。

※つまり三浦義村・和田義盛・畠山重忠は従兄弟の関係になりますね

ここで義村は義時と二人になると、ズバリと聞いてきます。

「教えてくれ小四郎。佐殿はまだ戦を続けるおつもりか? どうなんだ?」

ずっとそばにいたのだからわかるだろうと聞いてくる義村。

そして和田義盛はまたなんか猛り狂っています。

「佐殿は関係ねえ! 坂東武者が決める! 大庭も伊東も畠山も許せねえ! とことん戦うしかねえ!」

『鬼滅の刃』の伊之助は、あくまで彼一人が獣だからいいのであって、現実世界では獣の呼吸の使い手がいると困る。そう痛感させてくれる、それが義盛です。精神衛生を悪化させますね。

義村は苛立ちながらさらに義時に言います。

「この戦、勝ち目はないぜ」

「そう思うか?」

大庭にも伊東にも頭を下げるしかねえ。頼朝を差し出すんだよ、それしか手はない。

そしてこう来ました。

「言っておくが、俺は頼朝と心中する気はねえ。早いところ見切りをつけた方がいいって」

義村の大叔父であり、三浦義明の弟である岡崎美実を思い出しましょう。

彼は頼朝に「お前だけが頼りだぞ!」と言われて籠絡されました。義村は違う。頼朝ファンクラブに入るつもりは毛頭ないのです。

でも聡明な義村にも、まだ読めていないことはある。

目の前にいる義時だって、実は頼朝ファンクラブ会員でもない。もっと別の動機あればこそ頼朝を庇っている。

そのことを互いに確認するときが待ち遠しくなってきました。

義時は変わっています。その本心を誰にも明かすことができないでいる。もどかしさと慎重さが入り混じった顔になっています。

小栗旬さんがどう変わるのか、毎週楽しみでなりません。

 


「お前が北条を引っ張っていくんだ」

仁田忠常が義時の元へやって来ました。

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伊豆から北条へ戻ったものの、どこもかしこも伊東の兵でいっぱいで、身を隠すために北条館へ行った。そこでこれを見つけた。

宗時が探しに戻った御本尊こと観音像です。

愕然としてその像を見つめる義時。

時政は義澄と、しんみりと話しています。

話題は親族のこと。宗時が戻らない時政と、父・義明を亡くした義澄です。

「親父殿は無念だったな」と気遣われると、義澄は自分自身に言い聞かせるようにこう言います。

「戦で死んだんだ。本望、本望!」

「だな」

「お互い乗り越えていこうや」

「一緒にすんじゃねえ。三郎は戻ってくるって言ってんじゃねえか」

そう時政が力強く言うところへ、義時が像を手にして近づいてきます。

仁田殿が届けてくれたと語る義時。

ここからは父と子だけの対話になります。

「兄上はこれを取りに館へ戻られました。これが館に残っていたということは……」

「三郎のばか! これからだってのに何やってんだか。小四郎……わしより先に逝くんじゃねえぞ。これからはお前が北条を引っ張っていくんだ」

「私にはできません!」

「三郎がやりかけていたことをお前が引き継ぐんだよ」

そう言うと、時政は「風に当たってくるわ」と言い残します。

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義時の胸にはあまりに重たい兄の声が響いています。

「坂東武者の世を作る! そしてそのてっぺんに北条が立つ!」

すすり泣く義時。

あんな大きな兄を失い、あまりに大きな宿命を託されて、一体どうしろというのでしょうか。こんなに気の毒でよいものかどうか。

義時は頼朝に兄の一件を報告。手を合わせている頼朝に、こう言います。

「お急ぎください。皆広間で待っています」

しかし頼朝はこうだ。

「戦はもうやらん。どうせまた負ける」

「負けませぬ」

頼朝はうんざりした口調でこう振り返ります。

「いつ見つかるかわからん中、飯も食わずずっと息を殺していた。あんな思いはもうたくさんじゃ」

しかし義時はそれを許さない。

「風向きは変わりました」

義時も変わりました。

かつては知恵者の三浦義村の意見を確認していた。その義村が勝てないから見捨てようと言っても、聞かなくなった。

代わりに亡き兄の声を聞いているからこそ、彼自身の知恵で引き留めにかかります。

佐殿は生き延びた。佐殿は天に守られている。そのことはどんな大義名分よりも人の心を突き動かす。

そんな言葉がスラスラと出て来る義時が怖くなってきましたよ。あなたは、その頼朝の運ごと使うんでしょう? そう言いたくなります。

そして義時は、犠牲に手を合わせてしまう頼朝の責任感につけこみます。

このままでは石橋山で佐殿を助けて命を落としたものが救われない。平家の横暴に耐えてきた者たちの思いが今一つになろうとして、佐殿をお守りする。

そして必ず平家の一味を坂東から追い出す。そう語ります。

義時は聡明ではあるけれども、こうも弁が立つのは姉の政子であったはず。義時がメキメキと力をつけています。

「私は諦めてはおりませぬ!」

そう言う相手に気圧されつつ、頼朝はこう皮肉っぽく返します。

「戯言を。お前たちだけで何ができる。この戦を率いるのはこのわしじゃ。武田でも他の誰でもない」

「広間で待っております」

こんなところまで義時は姉に似てきた。

政子は相手の選択だと思わせつつ、自分の思うように誘導することができます。

小骨が多いからアジが嫌いだと言っていた頼朝に、敢えて小骨を抜いたアジを出した。アジそのものでなく小骨が嫌なだけなのだと誘導して、相手の好みすら変えた。

そういう技を義時も覚えつつあります。

頼朝はこう言いました。

「三郎のことはすまなかった。わしがあんなことを頼んだばかりに……」

「兄は戦うために生まれてきた男です。どこかに匿われているのかもしれません」

悲しみと、それを吹っ切った顔を見せる義時。

彼は目標を設定されると、そこへ走り出します。

兄から坂東武者の世を作れと託され、父からは兄のやり残したことを引き継ぎ、北条を引っ張れと言われた。その目的に向かい、悲しみをこらえて走り出します。

 


不気味な上総広常

頼朝が甲冑を身につけ、広間に来ます。

「お主たちの顔を見ると何やら勇気が湧いてくる! 形成はどうなっておるか聞かせてくれ」

頼朝にはどうやら人の心を転がす天性の才能があるようです。広間の坂東武者たちが酔いしれる様が伝わってきます。

大庭勢と武田勢が睨み合っている。千葉常胤上総広常にも書状を送ったとか。

必ずや味方になると自信満々ですが、頼朝は思わず口にしてしまう。

「相変わらず絵に描いた餅だな……」

義時が咳払いをし、頼朝は反省します。

するとまた和田義盛が何か言い出した。

「佐殿、お願い申し上げます!」

この戦で一番活躍するのは俺だから、勝利にぜってー貢献するから! もしも大願成就したあかつきにはそれがしを侍大将にしてちょうだい!

なんなんだよ、子どもか! そう突っ込みたくなりますが、義盛なのでもう仕方ない。

周囲も「何も手柄を立てていないのに褒美をねだっている」と笑い出します。

しかし頼朝は「バカなの?」とは言わない。侍別当にすると約束します。

「ありがたき幸せ!」

大願成就とか。ありがたき、とか。そういうセリフだけでも「義盛くん、難しい言葉を言えたね、がんばったね!」と褒めたくなる程度には、私も慣れて来ました。

しかしこの後、千葉と上総の説得に和田義盛を指名するのは、どうなんでしょう。その辺の木でも切らせておけばいいのに。しかも義時がお供に行かされるそうです。

嫌すぎる……。こんな役目を自分に課されたら泣きますよ。もう無理。嫌な予感しかしない。

ともあれ、ここでひとまず締めます。

「戦はまだまだ始まったばかりじゃ!」

「おー!」

ここで後白河法皇の幻もご機嫌です。

さて、その上総広常は――。

鎧を脱ぎつつ、こう吐き捨てています。

「平家の犬どもめ、口ほどにもない」

そして頼朝からの書状が来ていると差し出されても、ぐしゃりと握り潰します。

広常は知っています。頼朝の運命も、自分の肩にかかっていることを。

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MVP:上総広常・梶原景時・北条義時

誰が源頼朝のキングメーカーになれるか選手権ですね。

キングメーカーというのは王に就く人間を決める者のことで、シェイクスピア作品でおなじみの第16代ウォリック伯リチャード・ネヴィルがそう呼ばれています。

上総広常は己の強大な軍事力で、そうできると信じている。歴史でいえば、献帝を推戴することで権力を得た曹操が典型例です。

ただし、広常は曹操ほどの策士になれるかどうか?

結論から言うと、なれません。

梶原景時のあの顔は、ネズミを見つけた猫のようでした。

景時は「鎌倉本体の武士」と呼ばれました。

畠山重忠が「坂東武士の鑑」と呼ばれたのとは、どうも違うものを感じます。

景時は極めて賢かった。

讒言をして嫌われたとされますが、君主自身の決定に不満があると、往々にしてその側近が「讒言して決断を歪めた!」とされがちです。

嫉妬やそうした歪んだ感情を引き起こすのでしょう。

そういう人物って、敵からすればその側近を打ち破ればいいと狙いを定められるものです。

私が思うに、梶原景時は劉備にとっての諸葛亮みたいなものではないかと思います。

劉備は諸葛亮を迎える前後ではまるで違う。国家建設という具体的なビジョンは、諸葛亮抜きでは建設できない。

梶原景時も、彼を陣営に加えることで何かが大きく変わる。そんな頭脳があったのではないかと。

景時は自分の才知を生かせる場所を見つけたから、猫のように笑ったのです。

彼の知能を持ってすれば、全ての戦場は狩り場になる。

しかし景時は、諸葛亮ほどの人徳や自己正当化できる才知はなかった。ゆえに破滅します。

この二人の強大な軍事力と、明晰な頭脳に対し、まだ若い義時は誠心誠意をこめた語り口で頼朝を導いています。

義時は難しい。

この時期は頼朝のために駆けずり回っているだけで、本当にろくでもない役割を振られている印象すら受けるのです。

そんな、誠意しかない、真心だけでいる男が、最終勝利者になる。

これは恐ろしいことで、こんな面白い事例があったと世界史に向けてでも堂々と発信できる、かなり凄いことではないでしょうか。

誠意にあふれていて、信頼できそうな義時を、疑うことはできますか?

無理でしょう。人智を超えた罠かもしれない。

義時は自分でも無自覚のうちに、謀略を巡らせている。やり口は卑劣だろうと、大目標が仁のためならばよろしい。

そんなひねりにひねった展開が待ち受けているようです。

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