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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第6回「悪い知らせ」】
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休戦協定を結んだ両軍だが
時政と義時は、浜辺で船を見つけました。
そこにいたのは三浦義村です。
「平六ー!」
義時が声を掛けると、義村は頼朝救出作戦に取り組んでいました。
山中にいるから探し出したいけれども、大庭の兵がいてなかなか見つからない。
こんな雑な状況でよくやっていけるわ……と思ったら、義村も内心イヤだったようで、時政と義時を発見して好都合と考えた模様です。
義村って極端なめんどくさがり屋というか。やっても無駄だと思った労力は極力避ける傾向があるんですね。
前回の放送で酒匂川の濁流に行く手を阻まれていたとき、露骨にかったるそうな態度で「父上がよろしければ」を連発していました。
あのときの義村は、父を正しいとは思っていない。しかし、父を翻意するよう説得することがひたすらめんどくさい。
失敗した時「父上が言ったんだ、俺のせいじゃない」と逃げられるし、親には逆らえないとアリバイになるし、色々面倒ですっ飛ばしているだけであって、従順でもなんでもないでしょう。
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義村は、義時とこれまでのことを話し合います。
三浦は三浦で大変だったそうで、石橋山の敗走を聞いて引き返したところ、畠山重忠とでくわしたのです。
重忠が裏切ったのか!と言いつつも、次郎(重忠)の父上は平家と繋がりが深いから……と理解を示し合う二人。
ここ、大事ですよね。
相手の事情も想像できるだけの知性が二人にはある。だからこそ成立する会話です。
そして、その遭遇戦の回想へ。
馬上で出会した畠山と三浦の両軍勢。重忠は、三浦義澄にこう言います。
「戦をするのは本意ではありませぬ。坂東武者同士で争うのは無益です」
「わしも同じじゃ」
「会わなかったことにいたしましょう」
「あいわかった」
万事うまくいくはずだった。
苦々しくそう振り返る義村。彼はそのとき、和田義盛の存在に気付きました。
弓を持った義盛に対し、休戦が決定したばかりの義村は慌てて「おーい!」と手を振ります。
しかし、それを制止ではなく、「かかれ!」と勘違いした和田義盛。
「(矢を)放てー!」
「おおー!」
なし崩し的に戦闘が始まり、重忠は馬上で叫びます。
「謀られた!」
悔恨の表情を馬上で浮かべる重忠――そんなシーンを思い出しながら、義村は義時に対して「あれじゃ騙し討ちだ」と苦々しい顔をしています。
あれ? いま義村は「義盛を早く片付けたい」と思ったんじゃないかな?
義時は不安げな表情で義村に尋ねます。
「次郎(重忠)は死んだのか」
「知らん」
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合戦は大変です。
軍勢をきれいに並べて「さぁ、戦いだ!」なんて展開ばかりではなく、戦いが始まるまで、敵がどこにいるかもわからない。
将にしてみれば、無用な戦いで自軍の損耗は避けたいものです。
その点、義澄と重忠の判断は順当なものでしょうが、とにかく和田義盛のようなタイプは止まりません。
こんなアホな顛末を見たら、戦国武将も『三国志』のみなさんも「ありえない! ストレス溜まる! 洒落になってない!」と大いに嘆くことでしょう。
『三国志』の時代には既に、突出する猛将タイプは叱られました。軍令違反はダメ!という認識があった。
張飛や呂布のように猪突猛進の印象があるかもしれませんが、いくらなんでもここまで酷くありません。和田義盛と比べると、むしろ呂布はインテリに見える。
※呂布は中国本国よりも日本で知略が低く見られているという事情もありますが
要するに、攻撃の合図とか、規律とか、その辺の重要性は理解されていて、和田義盛があまりに原始的なのです。ノリと勢いで合戦しないで……。
と、和田義盛のことを考えるだけで脳が溶けそうになりますので、次のシーンへ。
義時と義村は、安房を目指すことにします。安西景益が味方してくれるとのことで、三浦義澄も向かっているそうです。
そこで船に乗ろうとすると、時政が先に乗っていて、さっそく何かを食べている。
坂東武者さん……食べ物を見つけたからって、即座に食べ過ぎではありませんか? 土肥実平も木の実を食べていたし、空腹なのはわかるけれども。
義村がそれは佐殿の船だと止めようとすると、時政がまたギャーギャー言い出します。
「聞かないでくれ」
そうボソリと言う義時は、頼朝を連れてくると請け負います。
八重の全てを失った絶望
夜、伊豆大権現で政子は目を覚まします。
翌日、りくが八重を政子たちのところまで連れてきました。
よくここがわかったとりくが感心していると、身を隠すならば必ずここだと思っていた八重が答えます。
思えば仙鶴丸を出家させたと言われたのもここですし、目星はついたのでしょう。
八重は熱っぽく、石橋山で敗れた頼朝は生きていると言い出します。なぜそれを存じているのかと聞かれると、昨日の明け方、夢枕に立ったとのこと。
佐殿は「わしは生きている、案ずることはない」と言ったとか。少しやつれているけれどもお達者であったと八重はうれしそうに語ります。
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政子の目がギラギラしてくる。そしてこうだ。
「不思議なこともあるものだわ! 佐殿は昨夜、私のところにも立ってこられました!」
少しやつれているけれども、お達者のご様子だったと同じことを言う。そしてそっちは明け方、こちらは夜中としょうもないマウンティング。
すかさず、りくが
①政子
②八重
と念を押しています。
一応、知らせてくれたことに礼を言いつつ、あとは佐殿が無事に戻るのを待つことを祈ると言い、話し合いは終わります。
その様子を実衣が覗き見していましたが、とにかく政子はお怒りだ。
なんであんな女の夢枕に立つ!
もはや正妻の余裕は無いようで、実衣が、政子のところにも来たでしょ、とフォローをしても、実際は来てないから悔しいのだと明かされます。やっぱり。八重と同じことを言ってましたもんね。
たかが夢と言われようと放っておけない政子は桶を蹴り飛ばし、水を豪快にこぼします。そして実衣が悲鳴をあげるのでした。
いやぁ~、政子の激怒はまだまだこれからですよ。
彼女は暴力も躊躇しません。来週は頼朝の愛妾・亀の前も出るから、今後も期待ですね。
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哀しいのは八重です。
家に帰ろうとした彼女は子どもたちが遊ぶ姿を見かけます。そこには頼朝と政子の娘・大姫もいました。
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八重が思い出すのは、当然、千鶴丸のことです。
ここにいるはずだと僧侶の文陽房覚淵(もんようぼう かくえん)に聞いても、相手は「何かの間違いでは」と返すばかり。
八重も必死で、そんなことでは引き下がれません。
夫が戦に出て、ようやく家を抜け出せた。千鶴丸に一目会わせて欲しい。離れたところから見るだけでも構わない。
そう食い下がる彼女に、覚淵は言います。
「こちらへ」
五輪塔墓があり、合掌する覚淵。ここへ来たときは既に骸(むくろ)なっていた。川で溺れたのだと。
八重は呆然として言います。
「立派なお墓……」
伊東殿たっての願いだと聞かされ、八重は墓石に触れて号泣します。彼女は全て気づいた。千鶴丸が死んでいること。殺したのが父であること。何もかもが砕け散りました。
頼朝の血を引く子を殺した伊東。その家の娘である八重。もうどこにも、彼女の救いはないのかもしれません。
全てを失った絶望。新垣結衣さんのこんな姿を見ることになるとは……また新たな姿を見せています。
大庭陣営に宗時の首
頼朝を探すため、義時が山中を歩いていると、突如、背後から喉元に刃が突きつけられました。
土肥実平です。
目が綺麗で愛嬌があるけど、人殺しには慣れていますね。かわいい猛獣みたい。
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その実平が状況を説明します。
箱根に向かうも、敵がうようよしていて引き返し、無駄足になったとか。頼朝は不貞腐れて寝ています。
こんな絶望的な状況で、義時は「援軍は無理だ」と言わねばなりません。武田のことは忘れろとボソリ……。
この援軍要請は無駄足に終わったため、他のフィクションではあまり扱われません。そもそも武田信義がほとんど扱われません。
八嶋智人さんはいい役を演じたものです。当時の武者らしく粗暴なのに、『ベルサイユのばら』に出てくるポリニャック夫人みたいな腹立たしい傲慢さがありましたよね。面白かった!
まぁ、そんな武田は忘れまして、岩浦から船を出すと告げます。距離は東へ25里で、そこから安房に向かう。
また25里かい!と嘆く頼朝はさておき、兄の宗時が相変わらず戻ってこないと聞かされ、義時は不安げです。
宗時の首は、大庭景親の陣にありました。
手を合わせているのは、伊東祐清。今年の大河は生首率が高くなりますが、父の伊東祐親は頼朝の首がないことを残念がっています。
そして許せんのは三浦!と言い切ります。ギリギリまで味方と思わせて裏切った。
かくして畠山重忠に、本拠地の衣笠を攻めさせることになりました。
中川大志さんがすんなりと膝をついておりますが、甲冑を着てこういう仕草をできるところが素晴らしいと思います。馬上で抜剣する難しい動作もこなしていました。
彼は大河出演歴はあるとはいえ、ほとんどスタジオ撮影だったとか。それなのに、あぁもうまく演じるなんて驚くばかりです。
畠山重忠が馬上で刀を抜く場面は番宣でも使われていました。
理由はわかる。実に絵になります。あの動画を見た時、私は頭が一瞬麻痺したような不思議な気持ちになりました。
まるで彼は絵から抜け出てきたようで、大昔に見た本の挿絵が動いているような気持ちに。
子ども向けの本には綺麗なイラストがつくのは、今に始まったことではありません。
源平合戦が題材の児童書には、カラーで武者の美麗な絵が入りました。
「伊藤彦造 →link」
「高畠華宵 →link」
「石原豪人 →link」
あたりで画像検索(link先)をすれば、雰囲気がわかるでしょう。中川さんの畠山重忠を見ていると、そういうクラシカルな源平の挿絵を思い出してしまうのです。
それだけ立派ではまり役ということでしょう。
配役の時点で勝ち戦――本作には、そう思える方が大勢いますが、中川大志さんもその一人です。
小舟で約60kmの海路という地獄絵図
義村が義時たちを待っていると、ワラワラと山の斜面から坂東武者が降りてきます。
怖っ!
困惑する義村はもう逃げるしかないと言い、慌てて船を出します。
中川大志さんも見事ですが、山本耕史さんも絵のように素晴らしい点では同じです。戸惑う顔から、サッと状況判断して退くところまで、かっちり決まっています。
ただし、彼の場合は山本タカトさんの怖い桃太郎こと『桃太郎鬼ヶ島討伐図』です。何かこう不穏なものがあって、そこがいいんですね。
※怖い桃太郎:『トリビアの泉』で使われたゲス桃太郎といった形容もされる絵のこと。美形だけどゲスな桃太郎像です(画像検索→link)。
義時が頼朝を連れて来るも、一足遅れました。
船がない!
そう慌てていると、土肥実平が真鶴まで行くと土肥の船が使えると言います。少し戻れば目と鼻の先だってよ。
「ならどうして最初からそこへ行かないのだ! もう無理じゃ、歩けん!」
そう嘆くというか駄々をこねる頼朝を、実平は「さぁさぁ参りましょう!」と促します。
ここまで空気を読めないからこそ、実平はよいのかもしれません。どんだけタフなんだか。
それにしても、初回では優雅で教養に溢れ、そりゃ政子も惚れると思えた頼朝がこうも無様になるとは。
所詮京都のボンボンなのかと呆れてしまい……いや、危ない、それは坂東武者の思考回路ですよ。これだけ色々あったら、そりゃ参りますよね。
このあと海上を漂うように進んでゆく小舟。頼朝は、舟に入る海水を汲み出し、その桶の中に後白河法皇の幻を見て慌てています。
「佐殿! あまり一点を見つめない方がよろしいかと!」
思わず心配する盛長ですが、さすがにこの状況は絶望的でしょう。東京湾フェリーがある時代に生まれてよかった!
かくしてボロボロになりつつ、やっと安房の浜辺にたどり着く御一行。
なんだかわからなくなってきましたねえ。なんで頼朝一行は生き延びたんですかねえ。運がいいんですねえ。
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