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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第6回「悪い知らせ」】
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大河ゆかりの地を自転車で回ろう
今周は安西景益役で猪野学さんが出ました。
これまた登場人物一覧が、おもしろ顔グラシリーズ(※『信長の野望』『三国志』シリーズで顔グラが面白い武将のこと・二階堂盛義が代表)のような良い笑顔です。
彼は「坂バカ」、ヒルクライムが大好きなサイクリストとしても有名で『チャリダー!』のレギュラーも務めております。
大河コラボ企画では山本耕史さんとゆかりの地を自転車でめぐり、番組で大河出演を発表したのでした。
◆チャリダー★快汗!サイクルクリニック(→link)
どうやら今年の大河は自転車を推していくそうで、一風変わった企画もあります。
それが伊豆半島サイクルラリーです。
◆伊豆半島サイクルラリー【2022年1月15日〜3月15日】(→link)
38.5キロと90キロという、なかなか気合の入ったコース。25里にうんざりする頼朝気分を味わえますね。
大河でこんな坂東武者になりきる企画をするなんて驚きました。
キツイといっても、馬ではなく自転車に乗るわけだし。大庭、伊東、畠山の敵が襲ってくるわけでもないし。参加してみてはいかがでしょうか。
今年の大河コラボは個性的で実に興味深い。みなさんもチェックしていきましょう!
ナレ死もねえ! ロスもねえ! それが坂東武者だ!
まず突っ込んでおきます。
北条宗時の死についてナレーションがあったことを「ナレ死」とするネットニュースがありましたが、修正されたようです。
本来のナレ死の定義はこうだったはずです。
【最期の瞬間がなく、ナレーションで死んだとされること】
宗時は、刺される場面があったため「ナレ死」には該当しませんね。
そして「まさかの……」「ロス」というニュースも多くあります。
しかし、坂東武者に心がなりきった俺からすればロスはありえねえ! これから死屍累々なのに、たかがこの程度の死でショックを受けてたら身がもたねえ。
だいたいあの登場人物一覧がとんでもねえことになるのよ! 自治体コラボがコレだからな。
◆【タウンニュース横須賀版】三浦一族カレンダー 出陣から滅亡 月めくり 市HPから無料入手(→link)
日にちをめくっていくと滅亡するのかー!
はい、なりきりはやめまして。とにかく坂東武者はこういう価値観です。
「平氏の連中は弱っちくていけねえ。あいつら身内が死んだくれえでメソメソしてやがらぁ。俺らはロスなんて言ってる暇はないぜーッ!」
「和歌ぁ? んな意味のねーもんなんでしやがんだぁ?」
人の死を悼んで文章を書くようなことはまずしないでしょう。そういう心理にならねば今後辛いと思います。
坂東武者って『北斗の拳』のモヒカンとか、『マッドマックス 怒りのデスロード』のウォーボーイズとか、『衛府の七忍』のぼっけもんみたいだな……と感じたとすれば、あながち間違いではないと思います。
ロスと言っている今はマシかもしれない。
感覚が中世になったら、ある意味この作品は完成します。
「感覚が中世って何?」
そう疑念を抱かれた方に、こちらを見ていただきたい。
『ゲーム・オブ・スローンズ』とコラボしたビールメーカーの広告です。
これをファンはネタにして爆笑しました。
ドラマ本編ではそれこそロスを味わっていたのに、人が惨殺されるコラボ広告では笑ってしまう。むしろ惨殺でウケる〜〜となってしまうことこそがおそろしいのです。
『吾妻鏡』には、「アイツの死に方無様でマジウケる〜」とケタケタ笑う坂東武者さんの会話が記録されていまして。宗時お兄ちゃんが死んだ頃は真面目だったよね、うちら……と、こうなったらある意味完成します。
それがいいのか悪いのか。ロスというよりも、読経がおすすめですね、心も落ち着くし。
総評
サブタイトルからして、肉親の訃報というおそろしい事態がもたらされると予測できた回でした。
墓石を前に泣く八重。
絞り出すように、自分より先に逝くなと義時に言う時政。
兄の死を乗り越えるべく奮闘する義時。
そこには悲しみがありました……と言いたいようで、どうでしょうか。
岡崎美実は兄と我が子を亡くしている。三浦義澄は父を亡くしている。三浦義村は祖父を亡くしている。
最もまともそうな畠山重忠が、祖父・三浦義明を討ち取っている。
その割に、悲壮感が薄いとは思いませんか?
なんのかんので安西景益の用意する酒を飲んでいるしな!
彼らを見ていて、ふと考えるのが動物の感情です。
動物は、喜怒哀楽のうち“哀”が薄い。
なぜかというと、“哀”を味わい落ち込んでいると、個体の生存率が下がるから。他の感情は生き抜く上でむしろあった方がいい。
しかし“哀”だけは別。気持ちが沈んで弱くなったら、隙が生じます。
このドラマの坂東武者とは、喜怒哀楽のうち、“哀”以外はむしろ濃厚に思えます。和田義盛なんてその典型でしょう。
むろん、ふざけているのではなく、これは意図的に人間の進化段階として描いているのかもしれない。
“哀”という感情は高度で、かつ宗教や道徳で規定されます。
たとえば儒教では、服喪中はストイックなまでの節制を求められます。
酒はダメ、肉も禁止、薬も飲むな。
服喪期間が長すぎて「やりすぎじゃないか」という批判が定期的に入ります。
正史『三国志』著者の陳寿は儒教の規定する服喪期間に薬を飲んだだけで酷い目にあっています。
そんな儒教規範がまだ、この時代の坂東にはなかったんだな――と痛感させられます。
大河と儒教規範って、それこそ小島毅先生がノリノリで取り上げてもいいと思うのです。ここ数年、なかなか面白いことになっています。
2020『麒麟がくる』:朱子学規範を貫く明智光秀
2021『青天を衝け』:どこか歪んだ日本型陽明学と、水戸学を選んだ渋沢栄一や明治政府の人々
2022『鎌倉殿の13人』:儒教規範がまだ浸透していない坂東武者は、いかにして道徳を身につけるか?
2021年の陽明学は正直食い足りないと思いますが、他は充実しています。
今年の大河が抜群に面白いのは、人類の進化過程の一時期を切り取っていると思えるところでして。
このドラマを見て「わかりみー!」と言える人はむしろ信頼できない。はっきり言って、中世以前の日本人はアナーキーで理解できないんですよ。
人類普遍的なものってなんだろう? そう思ってしまう。
坂東武者たちは源頼朝にメロメロ。彼の口説きテクにやられてます。
幕府というものを立ち上げた時代は、キャラ萌えが重要でした。
『青天を衝け』でも出てきた徳川慶喜を考えてみましょう。
彼は幕臣からすら「あいつってゲスでサイテー」と罵倒されています。人間的にはどうかと思う。
でも幕臣にせよ会津藩士にせよ、慶喜の血筋と立場を守ろうとしました。
慶喜なんて鎌倉の坂東武者なら即座に殺しかねないほど下劣な一面がありますが、武士の認識が変わったからこそ、死にもせず駿河で趣味に生きる余生を過ごせた。
キャラ萌えと感情よりも、権威と忠誠が上になったんですね。
そういう人類の進化を感じさせるから、今年の大河はいい。
登場人物一覧は底抜けに明るい笑顔か、殺気だった顔が多い。
ああ、きっと自分の先祖もこの時代はこういう顔だったんだな。それでがんばって生きていたんだなって、下手に現代人の共感を求めるよりいいなと思えます。
人類が何であるかとか、歴史学を学ぶ意味とか、そういうことを教えてくれていると思えるのです。
今年の大河は、ともかく推せます。
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
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文:武者震之助(note)
絵:小久ヒロ
【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト