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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第12回「亀の前事件」】
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亀はいつでもフラットな性格
喜びに湧く鎌倉では、義時が安達盛長に誘われ、なにやら怪しげな館に向かいます。
と、そこには頼朝がいました。
「ようきた。まあ座れ。いわゆる隠れ家じゃ、はははっ!」
最低最悪の笑いを見せる頼朝。
これは共犯者の笑みというやつで、別の男をゲス行為に巻き込み、暗黙の了解に引き込むものですね。
ちょうどそこへ亀が入ってきます。
「こんなものしかないけど」
「十分じゃ」
そう言い合い、亀は色っぽい仕草と口調で義時にこう来た。
「いらっしゃい」
知らぬ間にこんなことをしているとは……と、驚くばかりの義時。
頼朝にしても見極めたかったんでしょうね。ここで義時がニヤニヤするようだったら悪事の共犯者にもできそうなところ。
それでも義時を信じているからこそ、ゲスな本音を言います。
女は子ができたら、夫のことなぞそっちのけになるってよ。
政子は比企のところへ行き、まぁ、要するに頼朝は息抜きをしている。大勢の視聴者を敵に回しかねない生々しい下劣さが炸裂しております。
亀もシレッと義時に言いのけます。
「八重さんはお達者で?」
「はい」
そして「鎌倉殿には私が尽くしているからご心配なく」と、義時を通じてのマウント宣言。
頼朝もただのゲスではないので、義時に時政のことを聞いてきます。北条が万寿の乳母になれないことをどう思っているか?と。
時政は残念がっていたと義時が言うと、頼朝も理論を展開します。
北条のことは頼りにしているけれども、一つの家が力を持ちすぎるのはよくない――。
発想としてはアリですね。ただ、もっと穏便なやり方はなかったのか。その辺の匙加減は、今後、大江広元に期待っすね。
短いシーンでも、頼朝と亀の関係性は見えてきます。
ぞんざいな口ぶりの亀は、相手に対してフラットなのでしょう。
かしこまるわけでもないし、野心をたぎらせてくるわけでもない。
いつでも初めてあったときのように、軽やかな色香を振り撒いてくる。
何かと熱くて重たい政子にはない、息抜きできる感覚かもしれません……って、頼朝がどう言い訳しようと、このゲスい行動は許されませんわな。
祐親殺しは頼朝だと八重に告げて玉砕
義時は何を思うのか?
それは亀にイジめられた八重さんがかわいそうということだったようで、馬を走らせ、江間へ向かいます。
そして亀との間で何があったのか聞くのですが……。
「忘れました」
むっつりした八重に、何を言ったのかわからないけど忘れましょうと呼びかける義時。だから忘れたんだってば!と突っぱねられています。
何か嫌なことはあったに違いない。
それでも八重は、鎌倉へ戻りたがるから、義時にすればかなりのショックだ。
薄々勘づいているかもしれませんが……と前置きして義時が語り始めます。
八重の父である祐親を殺したのは頼朝である。
確認したわけではないが、おそらくそう。
「あの方は恐ろしい人です」
その言葉を聞いた八重は怒ります。
それを伝えて何がしたいのか。頼朝を怖がると思ったのか。あのお方は千鶴丸の仇を討ったのではないか! そう言い返す。
義時は謝るしかない。
邪念を悟られた。そんなことを言って頼朝との間に距離を置かせたい――そんな汚い策に八重は怒ったのです。
もう放っておくように言われ、謝るしかない義時は確かに誠実で善良だけれども、好意が空回りしてしまうようで、そしてかっこ悪い。
がっかりした顔で戻る義時。
義時の移動で乗馬シーンが多いのがいいですね。気合を入れて訓練されている小栗旬さんだからこそ、こなせる頻度なのでしょう。流石です。
田んぼのヒルか!
比企能員が矢の手入れをしています。
妻の道が慌ててやってきて、何かと思えば、万寿の息が止まったとか。
「またか!」
どうにも生まれつき病弱なようです。
こうした話を全成が聞き、妻の実衣に話しています。
親の不徳が祟るとのことで、実衣は興味津々。全成は口止めしつつ、頼朝に他に女がいることを告げます。
「どこの誰?」
実衣は推理が大好きで、頭を使うことが楽しくて仕方ない。
ふてぶてしく腕組みをする彼女もなかなか個性が強く、ついには亀のところにたどり着きます。
政子が我が子を抱いていました。
息が止まったことを案じると、道が大丈夫だと念押し。普遍的な心理でもありますし、何か不手際があって亡くなったら責任問題です。そこはリカバリをしなくては。
乳をあげる時間を決めないと我慢できないと言い合っています。比企能員は、足が大きいから偉丈夫になると感心の様子。
比企能員はなぜ丸腰で北条に討たれたのか? 頼朝を支えてきた比企一族の惨劇
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そこへ実衣がやってきました。
早く御所に戻ってきた方がいいと伝えるのですが、肝心なことは言えず……。
「言いたい!」
とにかく亀の一件を誰かにぶちまけたい実衣は、源範頼に伝えます。
源範頼が殺害されるまでの哀しい経緯 “頼朝が討たれた”の誤報が最悪の結末へ
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そして範頼は時政に伝える。時政は頼朝の女好きに困ったもんだと呆れています。
時政も結婚回数は多いけれども、重複してはおりません。
北条を軽んじていると憤慨するりく(牧の方)に対し、時政は「政子には言うな」と釘を差します。娘を案じているのですね。
でも……時政は、りくの手綱をちゃんと握れていないんだなぁ。
案の定、りくは政子の元へ向かいます。
政子は我が子の誕生で心がいっぱい。万寿のことばかり語ります。
しかしりくは、気が気でない様子で「あれやこれや」のことを言い、そして思わせぶりに「ごめんなさい、忘れて」と付け加えます。
疑念を抱く政子に、あくまで噂と断りつつ、ひそひそと告げるりく。義時はこの二人を見て辛そうな顔をしています。なぜ自分は毎回こんな目に遭うのか……。
政子は案の定激怒します。
「許せない!」
何に腹が立つって、周囲が見て見ぬふりをして自分に黙っていたことだ!
ここで義時を「特にあなた!」と指名して非難。田んぼのヒルとまで罵倒します。
坂東をみくびったと怒り狂う政子。
「田んぼ……」とショックを受ける義時。
どこの誰かと息巻く政子に「姉上よしましょう」と小さく言うしかない。
「どこの誰?」
りくはわざとらしくしらを切りますが。亀だと漏らされます。
「ハッ! あの薄い顔の女ね!」
そんな政子はもう止められない。居場所まで即座にその迫力で聞き出します。
後妻(うわなり)打ち
困った義時は、盟友の三浦義村に対処法を聞こうとしています。
義村は御台所になった政子が何をするかわからないと懸念し、居場所を知られてはならないと言います。
「平六……教えてしまいました」
引きつった顔でそう返す義時。これはもう駄目かもしれん。
そのころ、案の定と言いますか。りくは「後妻(うわなり)打ち」を提案します。
先妻が後妻の家を打ちこわすと言う都の風習で、死者が出た例もあるとか。江戸時代初期まではあったそうです。
政子は「先妻」という言葉に反発しつつも、都会生まれの習慣に前のめりになっております。
「やります!」
「そうこなくては!」
今週は「女同士のバトル」と言うけれど、りくと政子はむしろ協力して戦っていると言えます。チームプレイですね。
ただ、誰にやらせるか?
りくは夫である時政に頼むと言いますが、政子としては父を巻き込みたくない。
それにしても政子はさすがですね。
この冷徹な横顔の美しさよ。カーッとなるわけではなく、冷徹に駒を進めてゆく。聡明で感情に流され過ぎてもいない。
結果、実行者はりくの兄である牧宗親になりました。
面白くなってきたと京ことばで喜ぶ宗親。丸っこい眉毛、化粧、扇。公家のテンプレート通りで感動すらしてしまいます。
りくはあくまでちょっと壊すだけだと念押しし、いたずらっぽくウインクをしてみせます。その姿の、なんと愛くるしいことか。そりゃ時政も惚れますわ。
一方、義時と義村は、亀を逃そうと隠れ家へ向かいます。
彼女の手を引き、義村はこうきた。
「いっそ俺の女になるか?」
「悪くない」
どんな女でもいいのかと義時が突っ込む。こんな奴と盟友でいられるなんて義時は偉いなぁ。
義村は彼なりの理論展開をします。
誰でもいいわけじゃない。頼朝の女だった亀を俺のものとすることで、そのとき初めて、俺は頼朝を超える――。
真面目な顔をして何を言っているのか。義時も「難しすぎてよくわからん」と、そりゃ戸惑いますって。
これはゲス男がやらかす「コキュ理論」ですね。
要するに自分よりランクの上の男、そういう男が手をつけた女をもののすることで、自分が上だと思い込むことです。
女を狩りの獲物扱いしていると言えばそう。にしても、大河でよくぞここまでやりますなぁ。どういう新境地なのよ。
歴史上の人物でいえば、ナポレオンの後妻であるマリー・ルイーズとナイペルクが有名かもしれません。
ナポレオンの敗北後、母国オーストリアに戻ったマリー・ルイーズ。
その護衛にナイペルク伯という軍人がつけられました。
ナポレオン戦争で片目を失った軍人であるナイペルクは、こういうことを考えたのです。
「よっしゃー、ナポレオンの妻を俺にメロメロにすれば、あいつとの戦争で右目を失ったこともチャラになるぜ!」
かくして誘惑成功♪
……って、そういうもんでしょうか? まあ、そこは本人に聞いてみないと。
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ともかく、そういうゲス理論はあるにはある。理解したくないけどさ。
毎週毎週、こういうわけわかんない心理誘導されて頭が破裂しそうよ。先週クローズアップされた義経による義円抹殺心理もつらかった。
それにしても三浦義村ですよ。
短い出番なりに毎度のようにナゾ理論とゲスさ、友達にしたくない個性を見せつけてきて圧巻です。山本耕史さんでないとこうはいかないと思う。
義経の危険性
亀の住まいを守るにはどうするか。
誰かに守らせるのが一番だけど……というときに義時が思いついたのでしょう。
ゴロ寝をして、スッカリやる気を失っている義経に、隠れ家の見張りを頼み込みます。
亀の安全確保の次は隠れ家を守る――それは正しい判断のようで、取り返しのつかないミスでもありました。
義経という“野獣”がいるとも知らず、宗親は亀の屋敷へ向かいます。
義経が止めると、宗親は亀の屋敷を壊しにきたと言います。これも御台所のためとかなんとか言われ、丸め込まれる義経。宗親を通します。
「ありがとう。手伝うてくれへんか」
義経はここでこう言います。
「武蔵坊、派手にいけ!」
「心得た!」
鎌倉に居て戦うことを許されず、むしゃくしゃした気持ちで、思い切り門を鎚でぶん殴る義経たち。
「やりすぎやぁ!」
宗親が焦っても遅い。気持ちいいほどの破壊が続きます。
見ている方は笑えるようで忘れてしまいますが、義経には危険性があるとまた証明されましたね。
・命令を無視する
→義時のことを所詮は御家人だと思っているのでしょう。命令を無視している。護衛どころか破壊だ。
・オーバーキル傾向
→亀のいない屋敷を破壊しても笑っていられる。先週の義円を思い出してください。これがもし、亀が中にいたにも関わらず破壊をしていたら、義経はまたも命を軽視することになる。
・「ほう・れん・そう」が失敗する
→大して情報を確認しないままに行動に移していて、相当危険です。亀の屋敷相手だからこれで済む。しかし、安徳天皇や三種の神器を乗せた平家の船が相手だったらどうなる?
義経は危険です。
そしてこのことを確信した人物は劇中にもいます。
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