急死ゆえに「殺されたのか?」と聞き返しながら、自分の推理を展開します。
いや、殺して得をする者は鎌倉にいない。
事故……とすれば、隠し通さねばならぬ恥ずかしいこと。
もしかして落馬か?
と呟けば、武家の棟梁でそれはない、と通親が否定します。
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四年前、頼朝が上洛した際に水をよく飲んでいたことを後鳥羽院が思い出す。
飲水の病(糖尿病)といえば藤原道長。
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水が足りぬとめまいを起こし……それで落馬!
一人で理論展開し、納得している後鳥羽院は、あたかも通親と会話をしているようで、実は反射板として使っているだけ。
失礼といえばそうですが、自分とは異なる“普通の”頭の持ち主ならどうするか?と反応を見ている。
そして跡を継ぐのが源頼家だと聞くと、蹴鞠をしながら薄っすらと笑みを浮かべます。
「頼朝の跡目、さぞ重かろう」
『真田丸』の真田昌幸は胡桃を掌で回しながら、息子や家臣たちと会話しながら考えをまとめていました。
『麒麟がくる』の斎藤道三は槍を振りながら光秀と語り合っていた。
なんかこいつ遊んでんのか?
そう思われるようで、そういうことでもない。後鳥羽院も蹴鞠を蹴りながら考えをまとめているのかもしれません。
もしも会話の相手が同等か目上ならば、「何を考えているんだ」となりかねませんが、後鳥羽院であれば問題ない。
【アブダクション(仮説形成)】で思考をまとめている後鳥羽院はかなりできる人物でしょう。
尾上松也さんも生き生きと演じている。
声音にも、表情にも、皮肉げに面白がる響きがあって素晴らしい。
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そのころ後鳥羽院に「荷が重い」と言われた頼家は……。
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義朝の偽骸骨が鎌倉殿の証
源頼家が、母であり尼となった北条政子から送り出されています。
華麗な装束もお似合いでしたが、尼姿となったことで迫力が増してきた小池栄子さんが今週も眩しいですね。
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義時が、頼家に向かって「自分の信じることをのびのびとして欲しい」と伝え、宿老が支えるとフォローします。
彼なりに腹を括ったようですね。
そして政子が“義朝の髑髏“を出してきました。
「この命、お主に賭けよう」
かつて佐殿と呼ばれていた頼朝が、そう言いながら出陣していました。
しかし頼家は「祖父の髑髏は勝長寿院にあるはずだ」と返答してしまう。
政子も偽物だとはわかっています。文覚が持ってきたものですね。
そう、この髑髏から全てが始まった。
たとえ骸骨自体が偽物だとしても、源義朝に対する思い入れがあったからこそ人々の心は突き動かされたのであり、政子にしても、鎌倉殿代々に受け継がれるもの、上に立つ者の証としたいと言い出します。
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うやうやしく手に取る頼家――しかし皮肉を感じてしまいます。
それこそ三種の神器と比較すれば、くだらないとしか言いようがないものですが、証ってそういうものかもしれない。
中世当時に信じられてきた神秘的なものは、実際のところいかほどの由緒があるのか?
これは何も私一人の考え方でもなく、人間が進化の過程で「なんでこんなものをありがたがるのかなぁ?」と疑念に思った聖なるものはたくさんあるのです。
商業が発達すれば、いくらで売れるものなのか?ということが価値になってゆきます。
比企vs北条バトル いきなり勃発
ナレーションが語ります。
権力継承のときはあまりにも突然に訪れた。
頼朝亡きあとの大きな空白。
若き頼家はそれを埋めることができるのか――。
父・頼朝と同じ白と紫装束の身につけた頼家。
鎌倉殿として政治を始めようとすると、いきなり比企能員が割り込んできます。
「私は、父・頼朝が成し遂げてきたこと、また成し遂げることがかなわなかったことを引き継ぐ。その上で父を超える! 方々よろしくお願い致す」
そしていち早く身命を賭して仕えると宣言をするのが北条時政。
能員が、鎌倉殿の判断は自分を経由しろと釘を刺すと、時政が北条がそれをやると言い出し、梶原景時が止める。
早速、争いが生じております。
頼家は血統よりも実力を重視したい。比企や北条を特別扱いをすることはないと言います。
干渉を避けるためか。母・政子には告げてはいないけれども、力のあるものを取り立てるのが頼家の政治であると宣言しました。
時政が、爺様を贔屓しろと言っても、景時が止める。
このあと廊下で、景時は頼家を誉めています。
頼家はそもそも御家人を信じていません。景時は頼朝も最期まで御家人を信じていなかったとして、最後にこう付け加える。
「それがしを除いては……」
「肝に銘じておこう」
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その様子を遠くから見守っているのが北条義時。
頼家は、若き君主として失敗するパターン通りの第一歩を踏み出したように見えます。
いきなり改革を前面に押し出すとスタミナが切れるもの。
本来でしたら、宿老が彼を支えるべきなのに、いきなり権力争いを始めてしまっては、頼家としても自分の足を引っ張る存在としか思えなくなるでしょう。
見た目が幼いから大丈夫
帰宅した比企能員は、妻の道が不満を漏らす声を聞いています。
比企一族の娘であるせつが、子を産みながら頼家の正室から外された。
その上これでは踏んだり蹴ったり!
比企をないがしろにしては鎌倉ではやっていけない、とまで言い出します。
本作の比企一族は、武勇も知性も特に優れていないのに、権力欲だけは人一倍強いからタチが悪い。
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時政は帰宅して、鎌倉殿も知らぬ間に立派になったなぁとノホホン。
それを聞いた妻のりく(牧の方)のほうが、テンションアゲアゲです。
なぜなら鎌倉殿と比企が一枚岩でないとハッキリしたから。これを喜ばずにはいられない!
しまいには面白くなってきたとしてハシャいでいます。
この人は、ただの権力欲が強い方ではないんですね。
策謀が楽しくて美味しくてたまらない、そういう策士。そして、あまりにも魅力がある。
猛毒があるけど、とびきりチャーミング――そんなベニテングダケみたいな個性があって、そりゃあ時政も「ぐふふふ!」と笑っちゃいますよね。
一方、北条義時は、姉の政子にフラットな報告をしていました。
頼家が梶原景時を信じている、と告げると、政子も「景時は私心なく働くからよい」と評価している。
そして太郎こと頼時(北条泰時)に、若くて力ある者を集めるように命じ、ここに五郎こと時連(北条時房)も加わるように告げます。
兄からの突然の通告に戸惑う時連。
年嵩の自分は加わりたくないってよ。なんといっても太郎の叔父だし、悪目立ちしそう。
きょうだいが多いかつての時代は、叔父と甥の年齢差が近い、あるいは逆転していることもよくありました。
そう渋っていると政子はこう、視聴者の思いを代弁します。
「顔立ちが幼いから大丈夫よ」
「おさ……やらせていただきます」
かくして時連は、顔を引きつりさせながらも、姉に従うしかありません。
瀬戸康史さんは年齢がわからなくなるような顔立ちですし、演技もかわいらしいので、納得しかないですね。
幼い見た目で、背伸びしている感がいい。
この時連が後のドラマクライマックスで武功をあげるときが楽しみでなりません。
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鎌倉殿の座に未練たっぷりの実衣
どこか気だるげに、縁側で琵琶を抱えた実衣(阿波局)がいます。
頼家がやる気になった――そう語りながらも、まだまだ鎌倉殿の座に未練たっぷり。跡継ぎはあなただと思っていると阿野全成に語りかけます。
全成が軽く嗜めます。
が、実衣の心には野心の炎が灯されてしまった。
夫が鎌倉殿になって、うちの子が成長した暁には……実衣は鎌倉殿の母になるのです。
「その話は二度とするな!」
全成が強く嗜めます。そう言われて実衣は、琵琶を弾きます。まだ上達はしていないようです。
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実衣はかつて、全成がラッキーカラーと告げた赤い服を着ていました。
そうやって夫の気を惹きつけたい、妻としての心が感じられたものです。
それが今ではどうでしょう。
阿野全成が頼朝に赤を避けるように告げたことをきっかけに、赤以外の服となりました。
頼朝に告げたデタラメなんてどうでもいいのだから、赤に戻ってもよいはず。
しかし、そうではない。加齢もあるにせよ、何か別の意思も感じます。
もう、夫の言うことなんて聞いていない。そのことが服にも現れているようで、こわい。
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