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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第34回「理想の結婚」】
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貝殻から浮かんでくる「毒薬」
後鳥羽院が、結婚をまとめた者たちを労っています。
「これで京と鎌倉の仲は盤石でございまする」
こう返すのは藤原兼子。卿三位とこの頃は呼ばれています。
鈴木京香さんの丹後局も素晴らしかったものですが、シルビア・グラブさんの兼子の美しさよ。
艶やかな声。優雅で堂々とした物腰。江戸時代までは、こういう女官の機嫌を損ねたらどうにもならかったんですね。
すると慈円が、あの男はどうなったかと聞いてきます。
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「あの男」とは、時政とりくの息子・政範か、平賀朝雅のことでしょう。
仲章が平賀殿に「助言」をしておいたと返すと、兼子が慣れたようにまた何か企んでいるのかと微笑します。
後鳥羽院が策を語ります。
実朝を支えるのはやはり京に近い血筋のものでなくてはならない。そして平賀は上皇に気に入られようと必死だと仲章が合いの手を入れると、平賀が執権になれば鎌倉はもっと扱いやすくなると後鳥羽院も語ります。
仲章が「渡したものを使って欲しい」と言えば、「あの男にその度胸があるかどうか」と慈円が続く。
「さてさて、何をお渡しになられたのか」
兼子はそう言いながら、優雅な手つきで貝合わせの貝を拾っています。
貝合わせはおめでたい象徴とされます。その職人がいるのは、嫁入り道具の納品だからでしょう。
蛤の貝殻は、薬入れにも使われていて、怪しげな会話の内容から導き出せる「渡したもの」は何か、ほぼ確定できます。
毒薬です。
その後、慈円は実の兄・九条兼実と会っていました。
兼実は、後白河院崩御のあと、権勢を握りながら土御門通親との権力争いに負け、後鳥羽院に入内した娘も女児しか産めず、政治から身を退いていました。
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一方で歌人として才能を持つ慈円は、後鳥羽院に重用されているのです。
兼実は弟に、鎌倉の行方を尋ねます。
「世の理(ことわり)を鑑みれば、見えざる冥の道理が、必ず鎌倉を潰します……」
「源氏も先はないか」
「諸行無常、盛者必衰……」
「北条も然りか」
「大事なのは朝廷の繁栄……」
「頼んだぞ、慈円」
「かしこまりました」
そう語りあう兄弟です。
久々に会ったのに、話題は権力のことばかり。慈円の胡散臭さがじわじわと浮かび、兼実の出番はここまでです。あとは慈円が兄の意志を継いでゆきます。
不可解すぎる政範の急死
義時が、のえとのお見合いに臨んでいました。
「御所に来られるのは初めてですか」
「さようでございます」
ハキハキと、義時が石橋山の戦いにいたことを確認するのえ。義時はころっと参りつつある。
しかも彼女は、
「動かないで。ここに枯れ葉が」
と肩から落ち葉を拾う。ニヤニヤが止まらない義時。
あの小栗旬さんがですよ。なんだか気持ち悪い……なんだろう、これは。
八田知家に彼女の様子を尋ねても、非の打ち所がないと太鼓判を押されるばかり。気立もよい。賢い。まあ、見栄えも悪くない。
そう言われた義時が「確かに」と返すと、お前が断ったら俺が名乗りを上げたいくらいだと知家が色気を見せる。
それでも心配だったのか。裏の顔があるのではないか?と義時が念を押すと、知家は断言しました。
「裏表なし! あれはそういう女子だ」
「ありがとうございます」
そうデレデレしちゃう義時です。
薙刀を振り回す知家は、今日も胸元がはだけていて、なんだか尤もらしいことを言ってます。
さすがにこうまで、のえのことを褒めると、あまりに出来すぎた話では?と感じた視聴者もいたのではないでしょうか。
元久元年(1204)11月3日、政範たちが京都に入りました。
にこやかに出迎えた朝雅が酒宴の支度を進めています。しかし……。
京について2日後、北条政範が急死してしまいました。
享年16。
訃報を聞いた時政とりくは、突然の悲劇にどうにもならない深い悲しみに落ちるばかり。
そして、なんだか妙です。
この場面と、この後がおかしい。急死したと描かれるのに、時政とりくが、しばらく出てこなくなります。死因や、死の状況のも不明なまま。
きのこと子供にハシャぐ女は大抵怪しい
「のえと申します、よろしくお願いします」
のえが義時の家にやってきて挨拶をします。
「これ、よかったらどうぞ」
義時が彼女に差し出したものは……。
「きのこ! 大好きなんです、ありがとうございます。あらたいへん、お仕事がたくさん」
散らかったものを見つけ、片付け始めるのえ。
時房もまたいい感じにニヤニヤして「いい人に出会いましたねえ」と全力で笑顔です。
いや、さすがにここまで来ると、胡散臭くねーか!
いかにも、いい人ぶってる感は否めないでしょうよー。
しかも、子供たちが来ると、こうだ。
「こんにちは、ごあいさつは? もうっ、怒らせたらお姉さんは怖いんだから! 待たないか〜!」
そう言って、子供たちを無邪気に追いかけ始めるのえ。
いい! とてもいい!
と、時房がニヤニヤしていて、余計に怪しく感じてしまう。
そしてのえは、祖父から色々聞き、義時が辛い決断をしてきたとメンタルケアまで始めました。
「それが私の務めですから」
「気も滅入りますよ。人の一生ってね、一人で生きていくには重すぎる。私はそう思うんです……支えてくれる人がいた方がいい。絶対に。ご迷惑でなければまた来ます。よろしいですか」
「ふっ……子供たちも喜びます」
「では」
秋を彩る萩の花のような、控えめなようで主張がある美しさ。
そしてこの甘くて甘くて甘くて、それでいてちょっと掠れる声。
潤んで上目遣いになる目。
これはとんでもない女ですよ。
りく、丹後局、実衣、亀……そういう危険な女の系譜にまた一人追加です。本作は悪女盤石の体制ですね。
一方、とにかく納得いかないのが泰時です。
「比奈さんを追い出しておいて、もう新しい女子ですか?」
父の報告に困惑を隠さず、義時が二階堂行政に泣きつかれたと言い訳してもこうだ。
「そんなのは言い訳じゃないですか!」
言い訳だ。どれも言い訳。そう怒る泰時に、妻の初が間に入ります。
「義父上だってお寂しいんですよ」
「自業自得だ!」
うん、その通りですね。ここまで言われ、さすがに義時もキレて立ち上がります。
「もう一度申してみよ」
これにはドキッとする泰時。
「父上には人の心がないのですか? 比奈さんが出ていったのだって元はといえば父上が非道な真似をした……」
すると、初が立ち上がり、いきなり夫の頬を引っ叩きました。
「すみません」
「初……」
泰時はドスドスと立ち去り、初は一礼します。
「わかってると思うんです。あの人だって、比奈さんがいてくれたらどんなに助けられたかよく話してくれます。わかってはいるんです」
一生懸命に泰時を庇う初。義村の言う通り、確かにこれはいい女だ。
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何がいいかって、夫にまっすぐ本音でぶつかっていくこと。
初とのえ、泰時と義時。
この関係性は全く違います。義時にはまっすぐぶつかってくれる妻はもういません。
三日間追っていた鹿之助だ!
義時が仕事をしていると、実朝の稽古の様子が聞こえてきます。
知家と義盛は今日も荒い指導。
か細い体では武家の棟梁は務まらないと叱り、稽古を終えると自分についてくるよう義盛が告げます。
「行き先は俺の館! 鹿汁を馳走つかまつる!」
「御所を離れるわけにはいかない……」
実朝がそう困惑していると、「内緒、内緒!」と義盛が答える。部活の帰りに買い食いする先輩後輩みたいですね。
そこへ義時が通りかかり、気まずい空気が流れます。さしずめ顧問の先生ってところでしょうか。
義時は、息抜きも必要だろうとばかりに、
「私も相伴に預かってもよろしいかな」
と、皆で和田義盛の邸へ向かいました。
巴御前が鹿肉を持ってきます。
どうやら実朝は鹿の肉を食べるのは初めてとか。鎌倉時代は肉食をしたものの、このころは仏教由来の「獣肉は穢れ」という発想もあります。
肉をどんどん入れる義盛。
火が通らないと自分がやろうとする巴。
俺がやると言い張る義盛。
そして鎌倉殿もいつか鹿を仕留めて欲しいと言われます。鍛錬すれば必ず仕留められると励ます義盛が、いつものように暑苦しくて素敵だ。
この鹿も、三日がかりで仕留めていた。なんでも鹿之助という名前をつけたそうで、巴に鹿の真似をするよう促すと、彼女が全力で顔芸をします。
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実朝は困惑してかえって食べられない。義時は顔まねなどするからだと嗜めます。
「いや、鹿之助、ありがたくいただこう」
実朝がようやく鹿肉を口にする……すごく微笑ましいけど、突っ込みたい。
義盛は何をしているんですか?
鎌倉にも猟師はいて、肉はそこから買える。それなのに遊び半分で、なに、鹿を追いかけているんですか。
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ただ実朝も、この雰囲気にホッとしたようですね。
あたたかい嘘偽りのない人間関係に憧れがあります。
実朝は歌人として、自分達の日々を生きている人々の生活を見つめました。ずっとこんな日が続けばいよいと願っていました。
そんな感受性が出ている場面です。
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