北条義時が、あの小さな観音像を手にしています。
源頼朝が比企尼から受け取り、髷の中に入れていたあの像で、北条政子の手から義時に託されていました。
義時はそれを息子の北条泰時に託すのです。
頼朝の子と孫を殺めたからには、もはや自分は持つに相応しくないとのこと。
そもそもの贈り主である比企尼ならびに比企一族を滅亡させた北条の者ですから、確かにその通りですね。
ボロボロになった比企尼が善哉の前に現れ「北条を滅ぼせ」と託したことを考えれば、二重に納得できます。
-

頼朝を救い育てた乳母・比企尼|なぜ一族が悲惨な最期を迎えねばならんのか
続きを見る
ところが泰時は断固拒否します。
「いただくわけには参りません!」
側に控えていた鶴丸が、慌てて「もらっておけ、ここまでおっしゃるんだから」とフォローして……。
自邸に戻った泰時が、妻の初に語ります。
私には父の本心がわかる。これを持っていると心が痛む。自分のしたことが責められているようでたまらない。だから私に押し付ける!
そんなふうに思わなくてもよいと困惑する初。
それでも泰時は止まりません。父が持っているべきだと主張し、さらには「自分のしたことに向き合って苦しむべきだ、それだけのことをあの人はした!」と突き放します。
一つ呼吸を置いて、妻の言葉を求める泰時。
初は何を言えば……と戸惑っています。今の話を聞いてどう思った?と促されるとこうだ。
「うーん、義父上のこと嫌いなんだなぁ、って」
「嫌いというのとは少し違う……」
困惑する泰時は、父の義時をどうにかして諌めたいんですかね。
すると初は、話をすり替えるように「義父上は嫁を取るつもりはないのか?」と聞いてきます。子供がまだ小さいのにかわいそう。
まぁ、こんな厳しい長男しか相談できないならば、妻でもいた方がよいでしょう。
泰時はめんどくさい性格です。『鬼滅の刃』の炭治郎と同系統ですね。
-

『鬼滅の刃』竈門炭治郎は日本の劉備だ|徳とお人好しが社会に必要な理由
続きを見る
『麒麟がくる』の光秀もそうでした。彼も放送時に空気が読めないだの、態度が悪いだの、言われていたものです。
現代で言えば、接待カラオケができないタイプと申しましょうか。坂口健太郎さんの端正な個性にもピッタリ。
自分のしたことに向き合って苦しむべきだ!と、ここまで言うとは……。
便所に落ちたのはお前かーい
そんな泰時とは正反対でいたいと宣言していた北条時房は、兄の子である甥を連れて狩りをしてきました。
義時はそんな弟に「いつも申し訳ない」と返しています。
「子供が大好きなので!」
ニコニコする時房ですが、義時がなんだか妙な顔に。なんだか臭うようですが、時房に聞けば、追いかけっこをしていて路地の便所に落ちたとか。
そう言われ、義時は早く洗って来いと息子たちを促します。そして怪我がなかったか?と時房に聞くと、こうきた。
「大丈夫、落ちたのは私ですから!」
おい、お前が落ちたのかーい!
それでもしみじみと、子供だちが比奈が帰ってくると信じていると憐れんでいます。そう考えると何だか切なくなってきたと言いつつ、縁側で寝そべる時房。
「そこでくつろぐな!」
「はい?」
義時が苛立って叫びます。
やはり時房……素っ頓狂で面白い男だなぁ。
賢いのかそうでないのか、鋭いのか鈍感なのか、芯が掴めないというか、いちいち若干ズレている。
癒し系であり、ネタバレしますと、彼は物語の最後まで滅亡or失脚をしません。
時房ファンの皆さまご安心ください。
彼は推せます。殺伐とした世界の中、時房に癒しを見出す限り裏切られることはありません。
瀬戸康史さんのほんわかとした個性にピッタリですな。
-

義時の弟・北条時房|鎌倉殿の13人“トキューサ”は幕府を支えた名将だった?
続きを見る
実朝のびっしり詰まったスケジュール
時房の癒やしの後は、いつものオープニング。
謀反の疑惑とともに頼家は世を去った。
実朝が鎌倉殿として政治の表舞台に立つ。
しかし、実験を狙っていたのは執権・北条時政――。
長澤まさみさんの言葉で一気に緊迫感が戻ってきます。
三代目鎌倉殿・源実朝――。
実朝の隣には、実衣がいて頭を下げています。乳母はそれほどまでに実権を握っているのですね。
実朝もいよいよ御家人同士の諍いを聞いて、どちらに理があるか?を決めることとなりました。
「自分にできるだろうか……」と不安げな実朝に、三善康信は仕切りは我らが行うと言います。
時政が「座っているだけでいい」と露骨に言うと、それをフォローするかのように義時が「しばらく見定め、学んでいただきたい」と告げます。
そして明かされる、実朝の稽古スケジュール。
薙刀指導:八田知家
弓指導:和田義盛
政治学指導:大江広元
処世術指導:三浦義村
いやはや凄まじいメンツに囲まれています。さすがに多すぎないか?と実衣が心配しますが、立派な鎌倉殿になってもらうには、これくらいはやってもらうと大江広元も言い切る。
時政は相変わらずニヤニヤしながら、ゆっくりでいい、鎌倉の面倒はこのじいが見るってよ。
【十三人の合議制】は結果的に大失敗でしたが、新体制も良いとは到底思えません。
よりによって三浦義村に処世術なんて指導させてええのか?
まぁ大事なのは、時政が「孫を傀儡にして好き放題する気である」ということでしょう。
ともかく稽古が始まりました。
義村の処世術とは一体?
まずは薙刀から。
いきなり八田知家の指導が厳しすぎる。
薙刀のような長柄武器は実践的で、中国ではむしろこちらが主流になりました。
関羽の青龍偃月刀をご存知でしょうか?『三国志演義』が成立した明代は、あの手の武器が流行していたのです。
次は弓。
和田義盛の指導に何を期待しているのか?って話ですが……。
ガッと引いてバッ!
本人がどれだけ上手でも、指導者として優れているかどうかは別の話。
よく巨人の長島監督が「スーッと来た球をガーンと打つ」という天才ならではの打撃理論を展開することが語られますが、ミスターは意外と理論的だったという話もあります(→link)。
義盛の指導は……望み薄ですね。
-

なぜ鎌倉武士は弓矢をそこまで重視した?難易度の高い和弓と武士の関係
続きを見る
政治学の指導は、やはり大江広元の他にいないでしょう。
「政(まつりごと)の大意とは何か? それは天下の心を以て心となし、百姓の心を以て心とすれば……無為にして治る」
しかし、あんな激しい武芸稽古の後。まるでプールの後の授業状態です。まじめな実朝も居眠りをしてしまいます。扇をパンと打ちつけ、実朝を起こす広元。
漢籍教養の豊かな人ですので、ここで『論語』「衛霊公」でも。
子曰く、無為にして治まる者は、其れ舜か。夫れ何をか為すや。己を恭しくし、正しく南面するのみ、と。
【意訳】孔子は言った。何もせずともうまく天下を治めたのは舜か。何をなされたのだろうか? 謙虚な態度で、君主として正々堂々振る舞っていたのだ。
北条泰時は「堯舜の再来」と評されていましたが、親の義時に向かって正論をゴリ押しするところも何らかのヒントかもしれませんね。
そして最も問題のありそうな、三浦義村の処世術です。
今日の講義は「後腐れのない女子との別れ方」だってよ。
・相手に自分を選んだことを後悔させたらダメだぞ!
・楽しかった思い出しか残さないんだ、これが一番!
・だから俺は女子の前では力の限りを尽くすぜ!
ホンマかいな。
てか、どうでもいい。この指導は必要なのでしょうか? なんでこんなことを義村は真顔で話しているんだ。
和歌を書き写していた政子
そんな我が子の様子を三善康信から聞いている母の北条政子。
「和歌を詠んでいるか?」と尋ねると、今は源仲章が京都に戻っているからお休みとのことです。
政子としては、三善康信に和歌の指導をお願いしたい。
しかし、無理強いもできず、代わりに和紙の束を持ってきました。
-

頼朝挙兵のキッカケとなった三善康信|鎌倉幕府を支えた良識派文官の生涯
続きを見る
とても綺麗な和紙ですね。当時は貴重な和紙をこれほど大量に入手することは、彼女が若い頃にはできなかったのでしょう。紙の質が格段に上がっています。
鎌倉には、頼朝が京都から贈られた和歌集がありましたが、蔵の中にあり、おいそれと持ち出すことはできないと大江広元に言われたとか。
そこで政子は書き写したのです。
まだ印刷が普及していない時代、書物は写す――これが基本。
彼女は努力を重ねました。我が子が好きそうな歌を選んで、わざわざ写しました。
「これを実朝の目につくところにさりげなく置いて欲しい」
そう告げると、康信も困惑しながら「尼御台が直に渡してはどうか?」と尋ねます。どうやら政子は、実朝を追い詰めるようなことはしたくないようです。さりげなく置いて置いて欲しいと。
「あ……さりげなく」
「よろしく頼みましたよ」
母なりの気遣いですね。
和歌を詠むことで気が晴れるとわかっている。書を読んで理解して、字を書くことを彼女自身が学んだからこそできる。亀の前に「学べ」と言われていた努力が実りました。
-

なぜ亀の前は政子に襲撃されたのか?後妻打ちを喰らった頼朝の浮気相手
続きを見る
清々しいまでの贈収賄
孫の実朝が三代目の鎌倉殿となり、すっかり権力を手中に収めた北条時政。
そのもとには、様々な贈り物が届けられていました。
甲斐国から届いた鷹の羽は矢にピッタリ。
利根川で今日取れたばかりの鮎はりくの大好物だ!
時政はすっかりデレデレして喜色満面とはこのことです。
大江広元だったら眉をしかめそうですがね。
当時、漢籍教養のある人の間では「愛する女の好物を届けられて喜ぶのって、フラグだな……」となりかねない。
唐玄宗は、楊貴妃が大好きな茘枝(ライチ)をわざわざお取り寄せしていました。それが楊貴妃の死後に届いて、号泣したそうです。
好きなものを贈るのが悪いのではなく、権力の濫用という問題ですね。
-

中国四大美人の伝説と史実|西施・王昭君・貂蝉・楊貴妃 それぞれの美
続きを見る
しかし、時政は……。
「んなこたぁ関係ねぇ!」
今度の裁きは俺がうまくやるとノリノリ。相手が泣き寝入りするようなことはしねえ、安心して待ってろってよ。
なんなんでしょう、この清々しいまでの贈収賄は。ダメだという理念が1ミリもねぇ!
殺人や暴力への罪悪感がない坂東武者です。
当然ながら、贈収賄ぐらいでは全く良心も痛まない、絶望的なまでに道義心がない連中が楽しそうに生きています。
りくにしたって、ウキウキワクワクしながら「しい様はこのところ大忙し❤︎ このところよいことばかり❤︎」と浮かれていますからね。
毎日のように御家人と贈収賄三昧です。
-

牧の方は時政を誑かした悪女なのか?鎌倉幕府を揺るがす諸悪の根源疑惑
続きを見る
娘婿の平賀朝雅にしても「舅殿を頼りにしている」とホクホク顔。
りくと時政の愛息子である北条政範が勧めるままに、何ら遠慮もなく土産を受け取っています。
そんな汚れた権勢をより確固たるものとしたいのでしょう。
りくが、実朝の結婚相手について平賀朝雅に尋ねると、どうやら坊門信清の娘である千世との縁談が進んでいるとか。卿三位という方が骨を折ってくれたそうです。
坊門信清の妹が後鳥羽院の母(七条院)にあたりますので、うまくいけば北条は後鳥羽院と縁者になります。
千世は後鳥羽院のいとこ。
北条が絡んでこの結婚が上手くいけば、さらに地位は上がり、実際、りくと時政の息子・政範は、この若さで左馬権介(さまのごんのすけ)に出世しているとか。
朝雅が去ろうとすると、りくは婿殿も鎌倉と京都を結ぶ大事な立場だから、ますます頑張ってと浮かれています。
にしても、この場面はどうでしょうか。
政範は決して悪い少年ではありません。親のすることに疑念はない。
しかしこれが泰時なら「間違っている! 下劣です!」と訴えているのでは?
彼は自然と、贈収賄が悪であり、裁判をそんなことで変えるなんてありえないという結論に達するでしょう。
無為にして治まる者――それはやはり、泰時なのでは?
武蔵に触手を伸ばす時政
ますます調子に乗る北条時政。
訴訟を突き返すも、裁くも、思うがままに振る舞っています。
そんな時政の前に、畠山重忠と足立遠元――武蔵の御家人が座っていました。
「比企がいなくなって武蔵が空いちまった」
そう告げる時政は、続けて俺がもらうと宣言します。
困惑するしかない重忠。
表情が曇る様子に気づいているのかいないのか。時政は、武蔵は変わると宣言し、重忠を武蔵守にすると言い出します。
遠元が「おめでとうございます」と返すと、やはり重忠は浮かない表情で身に余る誉と前置きしながら、代々受け継いできた惣検校職(そうけんぎょうしょく)は譲れないと主張します。
惣検校職とは?
武蔵の武士を束ねる職であり、そうなると武蔵守と惣検校職が兼任できるのかが問題。
時政にはそのことを尋ねたのですが……。
「おもしろいこと言うなあ。武蔵守を支えるのが惣検校職。自分で自分を支えるなんておかしい。そっちは返上!」
「お待ちください!」
「では、新しい惣検校職は……」
遠元がそう言うと、時政はこう言い切ります。
「本日はこれまで、ご苦労様でした」
これまで好々爺な一面もあった時政ですが、もはや悪い癖に呑まれていますね。
-

なぜ北条時政は権力欲と牧の方に溺れてしまった?最後は子供達に見限られ
続きを見る
傀儡政権を作り出し、自分が取り仕切る。それを武蔵でも実行するつもりです。
あまりに理不尽なその主張に対し、重忠は、義時に話すことで乗り切ろうとしました。
義時も、重忠に同情するように「信じらない……」と呆れています。
重忠はどうにか怒りをおさえつつ続けます。
「そんなことを舅殿が一存で決められるのか!」
「鎌倉殿の名で頼んだら通るかもしれない」
こうなると、もはや疑心は抑えられない。
重忠は惣検校職、そして武蔵を奪い取るつもりなのか?と疑心暗鬼になっているのです。
そしてこうきた。
「小四郎殿にはお伝えしておく。武蔵を脅かすようなことになれば、畠山は命懸けで戦う覚悟……」
「父と話してみる」
そう返すしかない義時です。
それにしても重忠の絶望はいかばかりか。
命懸けで戦って鎌倉幕府創建に尽くしておいて、それがかえって先祖代々の武蔵を奪われかけている。
北条は坂東武者のための世を作るどころか、平家より悪どくなってきました。
「畠山と一戦交えるおつもりですか?」
御所で堀小次郎の訴状が読み上げられました。
と、即座に「忘れろ」と時政がぶった切る。
何かと思えば「俺たちが首を突っ込むことじゃねぇ。代わりに鮎をもらったからあとで一緒に食おう」ときたもんだ。
かつて平家方に茄子を届けていた時政が、鮎を届けられて喜ぶようになっている。堕落とはまさにこのことでしょう。
そして義時が注意してもこうだ。
「さっぱりわからねぇ!」
助けてくれと求められたらそーするだろ。何が悪いのか、だってよ。
義時が付け届けのことをダメだと全否定しても、頼ってくる者たちの気持ちに応えたいそうで……。
イライラしながら、義時は武蔵のことを持ち出します。
「次郎(重忠)が何か言ってきたか?」
「畠山と一戦交えるおつもりですか?」
「誰もそんなことは言っとらん!」
息子にどやされ、時政もすっかり不機嫌になっています。
それにしても今年の大河は本当に教育上良いと思います。子供ではなく、大人の教育です。
ここ数年の駄作大河では美化してやりがちな悪弊があった。
それは「職務上の権利を振りかざすこと」であり、自分の贔屓する相手にだけ情けを掛けることを美談扱いするシーンが多々ありました。
例えば『西郷どん』では、西郷隆盛が権力を使ったうえで、我が子に海外留学させることを美談扱いしていた。税金を流用して自分の贔屓する学校に金を回すことをよいことのように扱っていた。
言うまでもなく原資は税金です。
『いだてん』では、関東大震災で被災死したある女性が、オリンピックに思い入れがあったからといって、それを復興支援の大義扱いをしていた。
当時の日本人のどの程度がオリンピックに思い入れがあったのか? そんなことをするくらいなら復興支援をすればよいだけなのに、震災とオリンピックをなぜ結びつけたのか?
現在、芋づる式に露わになってくる五輪の贈収賄を考えると、全く洒落になっていません。
『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一が明治以降に大商人として成功できたのも、長州閥とのテロリスト人脈で結ばれていたから。
ビジネスにおいて適切な競争原理が働いていない。
一部のお友達にだけ利益が流れ、自分にも還流させる――それのどこがよい話なのか。
-

渋沢栄一と伊藤博文は危険なテロ仲間だった?大河でも笑いながら焼討武勇伝
続きを見る
そりゃあ人間、情けってもんがあるからそれに流されるのは仕方ないことです。それも程度の問題で、社会の倫理を歪めてまで強行してよいのか。
感動、美談に仕立て上げ、倫理観の欠如した大河ドラマなど、誰が見たいのでしょう。
その点、今年は愛嬌のある北条時政が、最低最悪の贈収賄を強行し、それが悪しき様で描かれていて実に気持ちがいい。
すべて感情で動くのは危険である。今年はその弊害を描いてくれて、実に爽快です。
結婚話に浮かない実朝
政子が、実朝の妻選びを聞いています。
後鳥羽院のいとこなんて素晴らしいと聞かされ、実衣とりくは「まあ素晴らしい!」と大喜び。
広元も悪い話ではないと言いますが、政子は、頼家を亡くしたばかりで先のことは考えられません。
それでもりくと実衣の猛プッシュで縁談は決まります。
政子も渋々、御家人の家から正室を娶るよりはいいか……と同意せざるを得ません。
はい決まり!
そんな政子を無視するかのように、りくと実衣は軽やかに宣言。結果として女性三人が賛同したことになりますが、むろん真意には大きな差があります。
りくと実衣はステータスに目が眩んでいる。
政子は過去の過ちから学ぼうとしている。
実朝は、自分のために働く泰時に礼を言いつつ、こうおずおずと聞いてきます。
「そなたに妻はいるのか?」
「初と申します」
「仲はいいのか?」
「いつも尻に敷かれております」
そう明るく返してから、泰時は結婚の件を祝って退出。
父・義時のもとへ向かい、鎌倉殿の顔色が優れないと報告しました。
義時は、教育スケジュールが詰め込み過ぎだったか……と気遣ったあと、結婚のことだ、と思い当たります。
実朝は自分の気持ちをあまり語らないため、周囲が察する必要があるとか。
前の鎌倉殿とは真逆だと義時が言葉にしますが、頼家にしても、本心は周囲にあまり理解されていないと思えましたが。
-

風呂場で急所を斬られた源頼家|なぜ鎌倉幕府二代将軍は粛清されたのか
続きを見る
八田知家に見極めを頼む
義時が仕事をしていると、広元が寄ってきました。
婚姻の話を振られ、実朝のことだと思った義時が意見を返すと、相手はこう。
「あなたのことです」
奥方様と別れると色々と困るだろうということで、二階堂行政の孫娘・のえを紹介されます。
どうやら行政も乗り気で、気立が優しい、非の打ち所がない、身内が言っているから間違いないと太鼓判を押してくる。
困った義時が話を断ろうとしても、わしの孫では気に入らんのか、と凄まれ、ともかくデートのセッティングだけは進みます。結論を出すのはそれからにしろってよ。
-

二階堂行政は腹黒の文官に非ず|孫が伊賀氏の変を起こすも本人は超マジメ
続きを見る
義時は八田知家と酒を飲むことにしました。
突如、振られた結婚話の意図はわかる。北条時政の専横を見て、文官たちは息子の義時を引き入れたいのだろう。それだけに無碍には断れずに困っている。
なんでも今度、その孫娘が連れて来られ、仕事の合間に庭で二人で話すとか。
「それを俺に見極めろと?」
「本来こういうことは三浦の平六に頼むのですが、あいつは今ひとつ信じきれない。力を貸して欲しいのです」
「おお、心得た」
三浦義村の胡散臭さに気づいた義時の進歩はよろしい。
しかし、知家はどうなんだ?
こういうとき、頼朝がいればよかったかもしれない。
冷酷で政治力を有していただけでなく、女性を見抜く力量も間違いなかった。政子はもちろん、八重も亀もいい相手でした。
八田知家は、武技に関しては一流なんでしょうけど、だからといって女性や人物を見抜く眼力まで備わっているのか、この時点では不明です。
-

頼朝上洛の日に大遅刻した八田知家|鎌倉ではどんな功績があったのか?
続きを見る
京都では、平賀朝雅が鎌倉の使者を迎える準備をしていました。
と、そこへやってきたのが源仲章。不躾な質問を投げかけます。
北条政範は父の跡を継いで、執権別当になるのか?
朝雅が執権別棟になる気はないのか?
「ふざけたことを!」
慌てて否定する朝雅に、仲章は吹き込みます。
アナタは血筋で言えば鎌倉殿にでもなれる(河内源氏義光流)。
-

源氏の貴種・平賀朝雅|時政と牧の方に担がれ将軍の座を狙っていた?
続きを見る
それなのに北条の言いなりではないか。上皇様は北条がお嫌いである。田舎者が鎌倉殿を思うままにしているのは許せない。
舌をぺろりとさせ、煽る煽る。
「何が言いたい?」
上皇様にとって都合がよいのは、鎌倉殿・実朝と執権別当・平賀朝雅の組み合わせ。
それに対し、政範がいる限りできないと朝雅が答えると、仲章がなんとも不穏な一言を発します。
「じゃあいなければ?」
義時殿もいる。動揺しながら朝雅がそう答えますが、実際に選ぶのは時政。
当てにしていた政範が突然の病で亡くなり、朝雅が千世様を連れて堂々と凱旋すれば、時政は必ず選ぶ。
「政範殿は鎌倉を離れておる……この意味が、おわかりになりますか?」
そう囁く仲章です。
貝殻から浮かんでくる「毒薬」
後鳥羽院が、結婚をまとめた者たちを労っています。
「これで京と鎌倉の仲は盤石でございまする」
こう返すのは藤原兼子。卿三位とこの頃は呼ばれています。
鈴木京香さんの丹後局も素晴らしかったものですが、シルビア・グラブさんの兼子の美しさよ。
艶やかな声。優雅で堂々とした物腰。江戸時代までは、こういう女官の機嫌を損ねたらどうにもならかったんですね。
すると慈円が、あの男はどうなったかと聞いてきます。
-

摂関家出身の高僧・慈円|武者の世を嘆きながら後鳥羽院に重宝された理由
続きを見る
「あの男」とは、時政とりくの息子・政範か、平賀朝雅のことでしょう。
仲章が平賀殿に「助言」をしておいたと返すと、兼子が慣れたようにまた何か企んでいるのかと微笑します。
後鳥羽院が策を語ります。
実朝を支えるのはやはり京に近い血筋のものでなくてはならない。そして平賀は上皇に気に入られようと必死だと仲章が合いの手を入れると、平賀が執権になれば鎌倉はもっと扱いやすくなると後鳥羽院も語ります。
仲章が「渡したものを使って欲しい」と言えば、「あの男にその度胸があるかどうか」と慈円が続く。
「さてさて、何をお渡しになられたのか」
兼子はそう言いながら、優雅な手つきで貝合わせの貝を拾っています。
貝合わせはおめでたい象徴とされます。その職人がいるのは、嫁入り道具の納品だからでしょう。
蛤の貝殻は、薬入れにも使われていて、怪しげな会話の内容から導き出せる「渡したもの」は何か、ほぼ確定できます。
毒薬です。
その後、慈円は実の兄・九条兼実と会っていました。
兼実は、後白河院崩御のあと、権勢を握りながら土御門通親との権力争いに負け、後鳥羽院に入内した娘も女児しか産めず、政治から身を退いていました。
-

九条兼実は道長の子孫でエリートだが平家や後白河や源氏に翻弄され
続きを見る
-

公家から武家の社会へ 混乱期の朝廷を支えた土御門通親は現実主義の貴族
続きを見る
一方で歌人として才能を持つ慈円は、後鳥羽院に重用されているのです。
兼実は弟に、鎌倉の行方を尋ねます。
「世の理(ことわり)を鑑みれば、見えざる冥の道理が、必ず鎌倉を潰します……」
「源氏も先はないか」
「諸行無常、盛者必衰……」
「北条も然りか」
「大事なのは朝廷の繁栄……」
「頼んだぞ、慈円」
「かしこまりました」
そう語りあう兄弟です。
久々に会ったのに、話題は権力のことばかり。慈円の胡散臭さがじわじわと浮かび、兼実の出番はここまでです。あとは慈円が兄の意志を継いでゆきます。
不可解すぎる政範の急死
義時が、のえとのお見合いに臨んでいました。
「御所に来られるのは初めてですか」
「さようでございます」
ハキハキと、義時が石橋山の戦いにいたことを確認するのえ。義時はころっと参りつつある。
しかも彼女は、
「動かないで。ここに枯れ葉が」
と肩から落ち葉を拾う。ニヤニヤが止まらない義時。
あの小栗旬さんがですよ。なんだか気持ち悪い……なんだろう、これは。
八田知家に彼女の様子を尋ねても、非の打ち所がないと太鼓判を押されるばかり。気立もよい。賢い。まあ、見栄えも悪くない。
そう言われた義時が「確かに」と返すと、お前が断ったら俺が名乗りを上げたいくらいだと知家が色気を見せる。
それでも心配だったのか。裏の顔があるのではないか?と義時が念を押すと、知家は断言しました。
「裏表なし! あれはそういう女子だ」
「ありがとうございます」
そうデレデレしちゃう義時です。
薙刀を振り回す知家は、今日も胸元がはだけていて、なんだか尤もらしいことを言ってます。
さすがにこうまで、のえのことを褒めると、あまりに出来すぎた話では?と感じた視聴者もいたのではないでしょうか。
元久元年(1204)11月3日、政範たちが京都に入りました。
にこやかに出迎えた朝雅が酒宴の支度を進めています。しかし……。
京について2日後、北条政範が急死してしまいました。
享年16。
訃報を聞いた時政とりくは、突然の悲劇にどうにもならない深い悲しみに落ちるばかり。
そして、なんだか妙です。
この場面と、この後がおかしい。急死したと描かれるのに、時政とりくが、しばらく出てこなくなります。死因や、死の状況のも不明なまま。
きのこと子供にハシャぐ女は大抵怪しい
「のえと申します、よろしくお願いします」
のえが義時の家にやってきて挨拶をします。
「これ、よかったらどうぞ」
義時が彼女に差し出したものは……。
「きのこ! 大好きなんです、ありがとうございます。あらたいへん、お仕事がたくさん」
散らかったものを見つけ、片付け始めるのえ。
時房もまたいい感じにニヤニヤして「いい人に出会いましたねえ」と全力で笑顔です。
いや、さすがにここまで来ると、胡散臭くねーか!
いかにも、いい人ぶってる感は否めないでしょうよー。
しかも、子供たちが来ると、こうだ。
「こんにちは、ごあいさつは? もうっ、怒らせたらお姉さんは怖いんだから! 待たないか〜!」
そう言って、子供たちを無邪気に追いかけ始めるのえ。
いい! とてもいい!
と、時房がニヤニヤしていて、余計に怪しく感じてしまう。
そしてのえは、祖父から色々聞き、義時が辛い決断をしてきたとメンタルケアまで始めました。
「それが私の務めですから」
「気も滅入りますよ。人の一生ってね、一人で生きていくには重すぎる。私はそう思うんです……支えてくれる人がいた方がいい。絶対に。ご迷惑でなければまた来ます。よろしいですか」
「ふっ……子供たちも喜びます」
「では」
秋を彩る萩の花のような、控えめなようで主張がある美しさ。
そしてこの甘くて甘くて甘くて、それでいてちょっと掠れる声。
潤んで上目遣いになる目。
これはとんでもない女ですよ。
りく、丹後局、実衣、亀……そういう危険な女の系譜にまた一人追加です。本作は悪女盤石の体制ですね。
一方、とにかく納得いかないのが泰時です。
「比奈さんを追い出しておいて、もう新しい女子ですか?」
父の報告に困惑を隠さず、義時が二階堂行政に泣きつかれたと言い訳してもこうだ。
「そんなのは言い訳じゃないですか!」
言い訳だ。どれも言い訳。そう怒る泰時に、妻の初が間に入ります。
「義父上だってお寂しいんですよ」
「自業自得だ!」
うん、その通りですね。ここまで言われ、さすがに義時もキレて立ち上がります。
「もう一度申してみよ」
これにはドキッとする泰時。
「父上には人の心がないのですか? 比奈さんが出ていったのだって元はといえば父上が非道な真似をした……」
すると、初が立ち上がり、いきなり夫の頬を引っ叩きました。
「すみません」
「初……」
泰時はドスドスと立ち去り、初は一礼します。
「わかってると思うんです。あの人だって、比奈さんがいてくれたらどんなに助けられたかよく話してくれます。わかってはいるんです」
一生懸命に泰時を庇う初。義村の言う通り、確かにこれはいい女だ。
-

矢部禅尼(北条泰時の妻)の不思議な魅力|三浦が滅亡するも多くの孫が執権に
続きを見る
何がいいかって、夫にまっすぐ本音でぶつかっていくこと。
初とのえ、泰時と義時。
この関係性は全く違います。義時にはまっすぐぶつかってくれる妻はもういません。
三日間追っていた鹿之助だ!
義時が仕事をしていると、実朝の稽古の様子が聞こえてきます。
知家と義盛は今日も荒い指導。
か細い体では武家の棟梁は務まらないと叱り、稽古を終えると自分についてくるよう義盛が告げます。
「行き先は俺の館! 鹿汁を馳走つかまつる!」
「御所を離れるわけにはいかない……」
実朝がそう困惑していると、「内緒、内緒!」と義盛が答える。部活の帰りに買い食いする先輩後輩みたいですね。
そこへ義時が通りかかり、気まずい空気が流れます。さしずめ顧問の先生ってところでしょうか。
義時は、息抜きも必要だろうとばかりに、
「私も相伴に預かってもよろしいかな」
と、皆で和田義盛の邸へ向かいました。
巴御前が鹿肉を持ってきます。
どうやら実朝は鹿の肉を食べるのは初めてとか。鎌倉時代は肉食をしたものの、このころは仏教由来の「獣肉は穢れ」という発想もあります。
肉をどんどん入れる義盛。
火が通らないと自分がやろうとする巴。
俺がやると言い張る義盛。
そして鎌倉殿もいつか鹿を仕留めて欲しいと言われます。鍛錬すれば必ず仕留められると励ます義盛が、いつものように暑苦しくて素敵だ。
この鹿も、三日がかりで仕留めていた。なんでも鹿之助という名前をつけたそうで、巴に鹿の真似をするよう促すと、彼女が全力で顔芸をします。
-

義仲に仕えた巴御前は和田義盛の妻に?時代を反映する伝説的女傑を考察
続きを見る
実朝は困惑してかえって食べられない。義時は顔まねなどするからだと嗜めます。
「いや、鹿之助、ありがたくいただこう」
実朝がようやく鹿肉を口にする……すごく微笑ましいけど、突っ込みたい。
義盛は何をしているんですか?
鎌倉にも猟師はいて、肉はそこから買える。それなのに遊び半分で、なに、鹿を追いかけているんですか。
-

源実朝は将軍としてどんな実績があった?朝廷と北条に翻弄された生涯
続きを見る
-

鎌倉御家人の宴会は刃傷沙汰にもなる命懸け|一体どんな飲み会なのよ!
続きを見る
ただ実朝も、この雰囲気にホッとしたようですね。
あたたかい嘘偽りのない人間関係に憧れがあります。
実朝は歌人として、自分達の日々を生きている人々の生活を見つめました。ずっとこんな日が続けばいよいと願っていました。
そんな感受性が出ている場面です。
義村と密談する時政
時政が義村と酒を飲んでいます。
話題に出たのは、義村の祖父である三浦義明。
それを討ち取ったのは畠山重忠であり、祖父の仇に恨みはないのかと聞かれて、そつなくこう返します。
「ないといえば嘘になりますが、昔の話です」
確かに衣笠城で義明を討ち取ったのは重忠ですが、当時は平家方にいて致し方ない状況ではあった。しかも義明は重忠にとっても祖父であり、義村とは従兄弟の関係です。
-

孫の重忠に攻められ討死した三浦義明|超長寿な坂東武士の生き様とは
続きを見る
そんな関係も無視してか。時政がおそろしいことを言い出します。
もしも北条と畠山が戦になるとしたら、どちらに加勢する?
「決まってるでしょう」
ニヤリと笑い、酒を注ごうとする義村。
これまで色々な人に味方するよう告げられ、いつも、この不敵な笑みで返してきました。
今度はどっちに転がるつもりなのか?
一方、楽しい夜を過ごした実朝は、義時に婚姻のことを尋ねます。
義時は、のえのことだと思ったのでしょう。こう返します。
「ご存じでしたか。はぁ、悩みましたが、決めてしまおうかと思っております……」
と、ここで己の恥ずかしい勘違いに気づき、忘れるよう促してからこう言います。
政範殿はああいうことになってしまったけれど、ご婚姻は滞りなく進んでいる。
「私はやはりその方を娶らねばならないのか。後戻りはできないということか」
「取りやめにしたいと仰せですか」
「いや、いい」
政子はそのことを義時から聞き、困惑するばかり。
「結婚を無かったことにはできないか」と心配しています。義時に無理だとされても、どうしても大姫の苦い経験が忘れられません。
-

頼朝と政子の娘・大姫|婚約相手を父に殺され 結婚前に夭折してしまう
続きを見る
義時が、今の鎌倉殿はしっかりなされているから心配ないと安心させると、「信じましょう」と同意する政子。
京都から結婚相手を見つけるとなると大姫が頭に浮かび、御家人から選ぶと頼家と重なる。実は八方塞がりかもしれません。
そして義時はおずおずと、前置きしながらこう言います。
「こんなときに何ですが、私、嫁を取ることになりました」
一方、実朝は婚姻話が気が重いのでしょう。
悩んでいる様子でいると泰時が来て、馬の稽古の支度ができたと告げます。
「あいわかった」
泰時が去った後、実朝は政子が写した和歌の紙を見つけました。
それをめくっているだけで、何か美しい旋律が流れる演出。
実朝の歌人としての感受性が花開きます。
泰時が歩いていくと、女房の声が聞こえてきました。
「あ、それ? きのこ。持っていきな」
「えっ、よろしいのですか?」
「どうぞどうぞ、私嫌いだから。わかる? 御所の女房はもうおしまい。小四郎殿に嫁ぐってことは鎌倉殿とも縁者ってこと」
「私たちのことを忘れないでくださいませ」
「控えよ! 控えよ〜!」
「ぎゃはははは!」
まるで女王のように振る舞う女房は、将来の義母であるのえでした。
彼女は、露骨な権力狙いの女であり、御所へ初めてきたという言葉も真っ赤な嘘。
嗚呼、人間の汚い心に触れると毒に当てられたようになる……そんな泰時が、ゲスを極めた醜い本音を見てしまった。
これは衝突します。
泰時がありのままに振る舞うとぶつかります。
MVP:のえ
実朝も素晴らしい。
しかし、今週は何もかも、のえがかっさらってしまった。
それなりのお嬢様なのに御所の女房。あのゲスな本音。過去に何かあったんですかね?
あの振る舞いですから、何も知らない娘ってことはないでしょう。二階堂行政にしても、さっさと片付けたかったんじゃないですか。
それにしても、演じ分けがすごかった。
あの甘ったるい理想のプロ彼女から、一転してゲスな本音。
いやあ、これは教育にいいドラマですよ。
予告のきのこに喜ぶ時点で、これはもうダメだとは思いました。見抜けない義時、もうダメだと。
きのこを嫌がる女は、相手と対等の目線で、ぶつかりあう気持ちがあるんです。
きのこを突き返した初と泰時がそうです。
それをああも芝居っけたっぷりに喜ぶのは、媚びてまで何か欲しがっているということ。
それは彼自身の魅力ではなく、権力や金ってことですね。
「最近、20代の女性部下が微笑んでくるんです。全然好きそうに見えないのに、俺が好きな深夜アニメの話も喜んでくれるし。娘くらい歳が離れているけど、ひょっとしたら……って思います。このときめきをどうすればよいのでしょう?」
「その女性はあなたが上司だから気遣っているだけです」
こんな人生相談めいた哀愁がありましたよね。
また演技がすごいんだ。
甘ったるい恋より、こういう苦くて笑える馬鹿げた恋の方が、演技力は必要かもしれない。
小栗旬さんであるにも関わらず、勘違いしたおっさん全開で気持ち悪い義時。
プロ彼女感からの、ゲスへの落差が激しすぎる菊地凛子さん。声が全然違う!
それにしても、新垣結衣さん、堀田真由さんの後のヒロインとなれば、相当なプレッシャーだと思うんですよね。
しかもこの性格ですよ。
それを「あなたならできる!」と初大河で指名される菊地凛子さんはやはり、それだけのものがあるということでしょう。
泰時の反応も重要です。これも伏線でしょう。この二人は相性が最悪ですので。
-

なぜ義時の妻・伊賀の方は「伊賀氏の変」を起こした?政子が幕府を守る
続きを見る
それにしても、つくづく今年は良心的です。
いくらイケメンの小栗旬さんが演じていても、義時はもういい歳のオッサンの上、人を殺しまくっています。
そんな男に惚れる女はおらんでしょ、という現実を見せつけてきました。
去年の大河も、変に美化せず、そう描いていれば面白かった。
渋沢栄一と兼子の再婚なんて、妊娠期間からして千代の死後間も無く関係があったとしか思えないわけです。
そもそもが出会いは明治の愛人クラブ経由です。
-

渋沢兼子は妾として渋沢栄一に選ばれ後妻となった?斡旋業者の複雑な事情
続きを見る
渋沢栄一は若い頃からイケメンでないと自覚していました。
そんな自分が金と権力でハイスペックの女を手に入れることを自慢していたタイプ。お仲間の伊藤博文や井上馨もそうですね。
-

女遊びが強烈すぎる渋沢スキャンダル 大河ドラマで描かれなかったもう一つの顔
続きを見る
-

女好きがもはや異常レベルの伊藤博文|女を掃いて捨てる箒(ほうき)と呼ばれ
続きを見る
愛人契約を純愛にしたり、史実をあまりに歪めて描くから、ワケがわからなくなる。
なぜ金で女を転がすおっさんを美化せねばならないのか?
その過ちを繰り返さない今年は良心的です。
中年以降の徳川家康にだって、別に純愛など期待されていません。
松本潤さんはイケメンですが、それはそれ。来年もこの調子で頼みますよ。
総評
『鎌倉殿の13人』は、三谷幸喜さんが今までの大河の中でも最も力を発揮しているように思えます。
資料が少ないだけにミステリのような展開ができる。
歴史研究者が推理でバリバリと話を進めると問題がありますが、そこを作家が補う。
昭和に描かれた鎌倉時代となると、永井路子さんの推理は大きな影響を残しましたね。といっても、あくまで作家だという断りは必要ですが、
そういうことをしていると思えたのが、北条政範の死です。
どうです? ミステリでしょう。
確かに、状況的には朝雅が一番臭います。
こうなってくると動機と凶器さえあれば古典ミステリは成立します。それを源仲章が提供しました。
-

源仲章は義時の代わりに殺された?実朝暗殺に巻き込まれた後鳥羽院の忠臣
続きを見る
そして不気味なのは、りくと時政の反応が見えにくいところ。
時政は重忠を討つ気でいますが、その動機がまだ見えてきません。
今週はいわば溜めで、来週どう展開するか引っ張っています。
わかりやすすぎると興醒めだし、同じ週で解決するなんて勿体無い――そういう極上の歴史ミステリにしたいからこそ、ひねりにひねったうえで、ひっかけも用意している。
義時の結婚でわちゃわちゃ盛り上げておくのがそうでしょう。
今週はほっと一休みのようで、来週以降、血の雨が降ることの前ふりに過ぎません。
ただこういうことをすると、好みが分かれますので、そこは悩ましいですね。三谷さんだからこそできると思えます。
覆(くつ)を買わんとして度を忘る
今年の大河は視聴率が低迷しているとして、こんなニュースがありました。
◆「鎌倉殿の13人」が危険水域! 大泉洋、菅田将暉、ガッキー…前半投入の反動か(→link)
ニュースにする以上、何かバリューが必要であり視聴率低下に目をつけたのでしょうが、これは何も今年に限ったことではなく、私は勝手に大河恒例の「夏枯れ現象」と呼んでいます。
中盤となれば主人公の師匠や親にあたる世代が抜ける。
初期キャストは豪華なメンバーが揃うものの、夏ともなればガクッと落ちることは避けられません。
顕著だったのは2015年『花燃ゆ』でしょうか。
役者が本業ではない方が、思い出と話題作りでオファーされ、受けるようになった感があって切ないものがありました。
今年は結構クセのあるキャストが多い。
具体的に言えば、舞台出身者や声優が多いのです。
テレビだけ見ていればそりゃあわからないとなるかもしれませんけれども、そう単純な話でもないでしょう。
そして視聴率低迷の原因を、私なりに考えてみました。
・地上波全体が減衰傾向にある
→あのドラマが低視聴率と煽る記事も増えています。若い世代を中心に、テレビを定時に見る習慣がなくなっているのです。
・時代がそこまで有名でない
→戦国や幕末と違ってなじみがありません。
・毎週鬱展開……
→これですよ。毎週毎週ドンドコドンと人が死ぬ鬱展開。そりゃ好き嫌いは分かれるでしょう。
・難解
→今年は伏線の張り方が複雑です。単純そのものだった昨年と比べると特に顕著です。
時代背景が理解しにくいため、頭に入ってこない。
美味い燻製肉でも、理解できない人からすれば「ただの焦げた肉」になるようなものです。
テレビですから、内容が理解できなければ視聴を止めてしまうのも仕方のない話でしょう。
しかしNHKは本作を失敗とはしないのでは?
理由は以下の通り。
・NHKプラスの視聴回数を重んじる
→昨年放送の朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』が典型例です。
◆「おかえりモネ」NHKプラス朝ドラ歴代最高 期間平均16・3% 大台超え一度もなく苦戦もSNS反響(→link)
前述の通り、地上波視聴率そのものが減衰しているからには、「大台」の基準も変えるべきであり、NHK側も実践しています。
『おかえりモネ』の高評価は『鎌倉殿の13人』のこんな反応でもわかります。
◆「鎌倉殿の13人」“俺たちの泰時”ついに爆誕!義時の珍助言“きのこが大好き”もネット話題(→link)
「俺たちの泰時」は、『おかえりモネ』の「俺たちの菅波」の転用です。
NHKプラスの視聴者数は非公表であるものの、『鎌倉殿の13人』は高いのではないでしょうか。
かくいう私も相当貢献しておりますが。
・関連書籍が出る
→書店に足を運べばわかります。
関連書籍がどんどん出ています。記事も多い。デジタルではなく新聞の紙面で出すものも多い。こういうものは確実にプラスになると確信できなければ通りません。
こういう記事を量産しているメディアにはこんな言葉をどうぞ。
覆(くつ)を買わんとして度を忘る。『韓非子』
【意訳】靴を買おうとしてサイズのメモを忘れた。
ある人が靴を買おうとして店に行った。
「あ、測っておいたのに、サイズのメモを家に忘れてきたわ!」
そう慌ててサイズのメモを持って店に戻ってきたら、閉店していた。
あきれた人が突っ込みます。
「自分の足で靴のサイズを測ればいいんじゃね?」
「でもさ〜、サイズのメモは信じられるけど、自分の足は信じられないでしょ」
これと同じわけのわからない現象がドラマの評価でも起こる。
レビューやSNSのハッシュタグをみる。
フォロワー同士の意見をキョロキョロと読んでみる。
自分では面白い、あるいはつまらないと思っていても、なかなか言い出せなくなて、結局は周りに合わせる。
「でもさ〜、視聴率は信じられるけど、自分の感覚は信じられないでしょ?」
「でもさ〜、大河ハッシュタグの意見は信じられるけど、自分の感覚は信じられないでしょ?」
下手をすればこうなる。
なぜ自分の感覚を大切にしないのか?
視聴率という基準そのものが時代遅れですが、それを信じる自分の感覚も見直すべきところに来ているのかもしれません。
言うまでもなく、ネットの声は発言者が精査できません。
確たる根拠を持っているのか。
それともフワッとした感性か。
それでもこんなネットニュースになれば信憑性が高まるから危険です。
◆【鎌倉殿の13人 主な退場者】善児、頷いた?「ずっとこの時を待っていた」?修善寺の因果にネット考察(→link)
ドラマの感想程度ならまだしも、他に重要なニュースなどでも、ハッシュタグやフォロワーありきの考え方をするのは危険でしょう。
私はしばしばドラマのファン、あるいはアンチから、「自分とドラマ評価一致しない愚か者め! このハッシュタグを見ろ!」とか「私のフォロワーなり大河クラスタ(集団のこと)はこうだ!」と啖呵を切られることがあります。
今回の 『鎌倉殿の13人』についても、当然、ドラマを嫌う方や、気になる点を挙げる人もいます。
彼らが根拠や間違いを指摘し、「だから嫌いだ」「ここは問題だ」とSNSで語っていても気にならない、どころかむしろ参考になります。
100人が100人、面白いと思う作品なんてありません。
理解できないのは、こんな意見が投下されることです。
「このドラマ、嫌いなのって、私だけ?」
「このドラマって、もっと評価されてもいいと思うの、私だけ?」
おそらくや共感を得て安心したいのでしょう。
むろん、ドラマの感想だけで済んでいれば問題ありませんが、自身の生活に関連するニュースも同様の姿勢であれば、さすがに危険と言わざるを得ません。
ハッシュタグなりフォロワーの情報にも、何らかの毒が含まれていないどうか。
自身で見極める時代を私たちは今まさに生きていると思います。
あわせて読みたい関連記事
-

頼朝を救い育てた乳母・比企尼|なぜ一族が悲惨な最期を迎えねばならんのか
続きを見る
-

なぜ義時の妻・伊賀の方は「伊賀氏の変」を起こした?政子が幕府を守る
続きを見る
-

殺伐とした武家社会を乗り切った北条義時|どうやって鎌倉幕府を支えたか
続きを見る
【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト





























