鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第34回「理想の結婚」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第34回「理想の結婚」
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義村と密談する時政

時政が義村と酒を飲んでいます。

話題に出たのは、義村の祖父である三浦義明

それを討ち取ったのは畠山重忠であり、祖父の仇に恨みはないのかと聞かれて、そつなくこう返します。

「ないといえば嘘になりますが、昔の話です」

確かに衣笠城で義明を討ち取ったのは重忠ですが、当時は平家方にいて致し方ない状況ではあった。しかも義明は重忠にとっても祖父であり、義村とは従兄弟の関係です。

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そんな関係も無視してか。時政がおそろしいことを言い出します。

もしも北条と畠山が戦になるとしたら、どちらに加勢する?

「決まってるでしょう」

ニヤリと笑い、酒を注ごうとする義村。

これまで色々な人に味方するよう告げられ、いつも、この不敵な笑みで返してきました。

今度はどっちに転がるつもりなのか?

一方、楽しい夜を過ごした実朝は、義時に婚姻のことを尋ねます。

義時は、のえのことだと思ったのでしょう。こう返します。

「ご存じでしたか。はぁ、悩みましたが、決めてしまおうかと思っております……」

と、ここで己の恥ずかしい勘違いに気づき、忘れるよう促してからこう言います。

政範殿はああいうことになってしまったけれど、ご婚姻は滞りなく進んでいる。

「私はやはりその方を娶らねばならないのか。後戻りはできないということか」

「取りやめにしたいと仰せですか」

「いや、いい」

政子はそのことを義時から聞き、困惑するばかり。

「結婚を無かったことにはできないか」と心配しています。義時に無理だとされても、どうしても大姫の苦い経験が忘れられません。

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義時が、今の鎌倉殿はしっかりなされているから心配ないと安心させると、「信じましょう」と同意する政子。

京都から結婚相手を見つけるとなると大姫が頭に浮かび、御家人から選ぶと頼家と重なる。実は八方塞がりかもしれません。

そして義時はおずおずと、前置きしながらこう言います。

「こんなときに何ですが、私、嫁を取ることになりました」

一方、実朝は婚姻話が気が重いのでしょう。

悩んでいる様子でいると泰時が来て、馬の稽古の支度ができたと告げます。

「あいわかった」

泰時が去った後、実朝は政子が写した和歌の紙を見つけました。

それをめくっているだけで、何か美しい旋律が流れる演出。

実朝の歌人としての感受性が花開きます。

泰時が歩いていくと、女房の声が聞こえてきました。

「あ、それ? きのこ。持っていきな」

「えっ、よろしいのですか?」

「どうぞどうぞ、私嫌いだから。わかる? 御所の女房はもうおしまい。小四郎殿に嫁ぐってことは鎌倉殿とも縁者ってこと」

「私たちのことを忘れないでくださいませ」

「控えよ! 控えよ〜!」

「ぎゃはははは!」

まるで女王のように振る舞う女房は、将来の義母であるのえでした。

彼女は、露骨な権力狙いの女であり、御所へ初めてきたという言葉も真っ赤な嘘。

嗚呼、人間の汚い心に触れると毒に当てられたようになる……そんな泰時が、ゲスを極めた醜い本音を見てしまった。

これは衝突します。

泰時がありのままに振る舞うとぶつかります。

 


MVP:のえ

実朝も素晴らしい。

しかし、今週は何もかも、のえがかっさらってしまった。

それなりのお嬢様なのに御所の女房。あのゲスな本音。過去に何かあったんですかね?

あの振る舞いですから、何も知らない娘ってことはないでしょう。二階堂行政にしても、さっさと片付けたかったんじゃないですか。

それにしても、演じ分けがすごかった。

あの甘ったるい理想のプロ彼女から、一転してゲスな本音。

いやあ、これは教育にいいドラマですよ。

予告のきのこに喜ぶ時点で、これはもうダメだとは思いました。見抜けない義時、もうダメだと。

きのこを嫌がる女は、相手と対等の目線で、ぶつかりあう気持ちがあるんです。

きのこを突き返した初と泰時がそうです。

それをああも芝居っけたっぷりに喜ぶのは、媚びてまで何か欲しがっているということ。

それは彼自身の魅力ではなく、権力や金ってことですね。

「最近、20代の女性部下が微笑んでくるんです。全然好きそうに見えないのに、俺が好きな深夜アニメの話も喜んでくれるし。娘くらい歳が離れているけど、ひょっとしたら……って思います。このときめきをどうすればよいのでしょう?」

「その女性はあなたが上司だから気遣っているだけです」

こんな人生相談めいた哀愁がありましたよね。

また演技がすごいんだ。

甘ったるい恋より、こういう苦くて笑える馬鹿げた恋の方が、演技力は必要かもしれない。

小栗旬さんであるにも関わらず、勘違いしたおっさん全開で気持ち悪い義時。

プロ彼女感からの、ゲスへの落差が激しすぎる菊地凛子さん。声が全然違う!

それにしても、新垣結衣さん、堀田真由さんの後のヒロインとなれば、相当なプレッシャーだと思うんですよね。

しかもこの性格ですよ。

それを「あなたならできる!」と初大河で指名される菊地凛子さんはやはり、それだけのものがあるということでしょう。

泰時の反応も重要です。これも伏線でしょう。この二人は相性が最悪ですので。

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それにしても、つくづく今年は良心的です。

いくらイケメンの小栗旬さんが演じていても、義時はもういい歳のオッサンの上、人を殺しまくっています。

そんな男に惚れる女はおらんでしょ、という現実を見せつけてきました。

去年の大河も、変に美化せず、そう描いていれば面白かった。

渋沢栄一と兼子の再婚なんて、妊娠期間からして千代の死後間も無く関係があったとしか思えないわけです。

そもそもが出会いは明治の愛人クラブ経由です。

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渋沢栄一は若い頃からイケメンでないと自覚していました。

そんな自分が金と権力でハイスペックの女を手に入れることを自慢していたタイプ。お仲間の伊藤博文井上馨もそうですね。

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愛人契約を純愛にしたり、史実をあまりに歪めて描くから、ワケがわからなくなる。

なぜ金で女を転がすおっさんを美化せねばならないのか?

その過ちを繰り返さない今年は良心的です。

中年以降の徳川家康にだって、別に純愛など期待されていません。

松本潤さんはイケメンですが、それはそれ。来年もこの調子で頼みますよ。

 


総評

『鎌倉殿の13人』は、三谷幸喜さんが今までの大河の中でも最も力を発揮しているように思えます。

資料が少ないだけにミステリのような展開ができる。

歴史研究者が推理でバリバリと話を進めると問題がありますが、そこを作家が補う。

昭和に描かれた鎌倉時代となると、永井路子さんの推理は大きな影響を残しましたね。といっても、あくまで作家だという断りは必要ですが、

そういうことをしていると思えたのが、北条政範の死です。

・状況的に見て病死とは思えない

・殺害現場が平賀朝雅

・遺体が人目につかぬよう、早急に処理されている

・政範と同時に別人も死んでいる

どうです? ミステリでしょう。

確かに、状況的には朝雅が一番臭います。

こうなってくると動機と凶器さえあれば古典ミステリは成立します。それを源仲章が提供しました。

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そして不気味なのは、りくと時政の反応が見えにくいところ。

時政は重忠を討つ気でいますが、その動機がまだ見えてきません。

今週はいわば溜めで、来週どう展開するか引っ張っています。

わかりやすすぎると興醒めだし、同じ週で解決するなんて勿体無い――そういう極上の歴史ミステリにしたいからこそ、ひねりにひねったうえで、ひっかけも用意している。

義時の結婚でわちゃわちゃ盛り上げておくのがそうでしょう。

今週はほっと一休みのようで、来週以降、血の雨が降ることの前ふりに過ぎません。

ただこういうことをすると、好みが分かれますので、そこは悩ましいですね。三谷さんだからこそできると思えます。

 

覆(くつ)を買わんとして度を忘る

今年の大河は視聴率が低迷しているとして、こんなニュースがありました。

◆「鎌倉殿の13人」が危険水域! 大泉洋、菅田将暉、ガッキー…前半投入の反動か(→link

ニュースにする以上、何かバリューが必要であり視聴率低下に目をつけたのでしょうが、これは何も今年に限ったことではなく、私は勝手に大河恒例の「夏枯れ現象」と呼んでいます。

中盤となれば主人公の師匠や親にあたる世代が抜ける。

初期キャストは豪華なメンバーが揃うものの、夏ともなればガクッと落ちることは避けられません。

顕著だったのは2015年『花燃ゆ』でしょうか。

役者が本業ではない方が、思い出と話題作りでオファーされ、受けるようになった感があって切ないものがありました。

今年は結構クセのあるキャストが多い。

具体的に言えば、舞台出身者や声優が多いのです。

テレビだけ見ていればそりゃあわからないとなるかもしれませんけれども、そう単純な話でもないでしょう。

そして視聴率低迷の原因を、私なりに考えてみました。

・地上波全体が減衰傾向にある

→あのドラマが低視聴率と煽る記事も増えています。若い世代を中心に、テレビを定時に見る習慣がなくなっているのです。

・時代がそこまで有名でない

→戦国や幕末と違ってなじみがありません。

・毎週鬱展開……

→これですよ。毎週毎週ドンドコドンと人が死ぬ鬱展開。そりゃ好き嫌いは分かれるでしょう。

・難解

→今年は伏線の張り方が複雑です。単純そのものだった昨年と比べると特に顕著です。

時代背景が理解しにくいため、頭に入ってこない。

美味い燻製肉でも、理解できない人からすれば「ただの焦げた肉」になるようなものです。

テレビですから、内容が理解できなければ視聴を止めてしまうのも仕方のない話でしょう。

しかしNHKは本作を失敗とはしないのでは?

理由は以下の通り。

・NHKプラスの視聴回数を重んじる

→昨年放送の朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』が典型例です。

◆「おかえりモネ」NHKプラス朝ドラ歴代最高 期間平均16・3% 大台超え一度もなく苦戦もSNS反響(→link

前述の通り、地上波視聴率そのものが減衰しているからには、「大台」の基準も変えるべきであり、NHK側も実践しています。

『おかえりモネ』の高評価は『鎌倉殿の13人』のこんな反応でもわかります。

◆「鎌倉殿の13人」“俺たちの泰時”ついに爆誕!義時の珍助言“きのこが大好き”もネット話題(→link

「俺たちの泰時」は、『おかえりモネ』の「俺たちの菅波」の転用です。

NHKプラスの視聴者数は非公表であるものの、『鎌倉殿の13人』は高いのではないでしょうか。

かくいう私も相当貢献しておりますが。

・関連書籍が出る

→書店に足を運べばわかります。

関連書籍がどんどん出ています。記事も多い。デジタルではなく新聞の紙面で出すものも多い。こういうものは確実にプラスになると確信できなければ通りません。

こういう記事を量産しているメディアにはこんな言葉をどうぞ。

覆(くつ)を買わんとして度を忘る。『韓非子』

【意訳】靴を買おうとしてサイズのメモを忘れた。

ある人が靴を買おうとして店に行った。

「あ、測っておいたのに、サイズのメモを家に忘れてきたわ!」

そう慌ててサイズのメモを持って店に戻ってきたら、閉店していた。

あきれた人が突っ込みます。

「自分の足で靴のサイズを測ればいいんじゃね?」

「でもさ〜、サイズのメモは信じられるけど、自分の足は信じられないでしょ」

これと同じわけのわからない現象がドラマの評価でも起こる。

レビューやSNSのハッシュタグをみる。

フォロワー同士の意見をキョロキョロと読んでみる。

自分では面白い、あるいはつまらないと思っていても、なかなか言い出せなくなて、結局は周りに合わせる。

「でもさ〜、視聴率は信じられるけど、自分の感覚は信じられないでしょ?」

「でもさ〜、大河ハッシュタグの意見は信じられるけど、自分の感覚は信じられないでしょ?」

下手をすればこうなる。

なぜ自分の感覚を大切にしないのか?

視聴率という基準そのものが時代遅れですが、それを信じる自分の感覚も見直すべきところに来ているのかもしれません。

言うまでもなく、ネットの声は発言者が精査できません。

確たる根拠を持っているのか。

それともフワッとした感性か。

それでもこんなネットニュースになれば信憑性が高まるから危険です。

◆【鎌倉殿の13人 主な退場者】善児、頷いた?「ずっとこの時を待っていた」?修善寺の因果にネット考察(→link

ドラマの感想程度ならまだしも、他に重要なニュースなどでも、ハッシュタグやフォロワーありきの考え方をするのは危険でしょう。

私はしばしばドラマのファン、あるいはアンチから、「自分とドラマ評価一致しない愚か者め! このハッシュタグを見ろ!」とか「私のフォロワーなり大河クラスタ(集団のこと)はこうだ!」と啖呵を切られることがあります。

今回の 『鎌倉殿の13人』についても、当然、ドラマを嫌う方や、気になる点を挙げる人もいます。

彼らが根拠や間違いを指摘し、「だから嫌いだ」「ここは問題だ」とSNSで語っていても気にならない、どころかむしろ参考になります。

100人が100人、面白いと思う作品なんてありません。

理解できないのは、こんな意見が投下されることです。

「このドラマ、嫌いなのって、私だけ?」

「このドラマって、もっと評価されてもいいと思うの、私だけ?」

おそらくや共感を得て安心したいのでしょう。

むろん、ドラマの感想だけで済んでいれば問題ありませんが、自身の生活に関連するニュースも同様の姿勢であれば、さすがに危険と言わざるを得ません。

ハッシュタグなりフォロワーの情報にも、何らかの毒が含まれていないどうか。

自身で見極める時代を私たちは今まさに生きていると思います。

※著者の関連noteはこちらから!(→link

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文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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