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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第44回「審判の日」】
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「頼朝様が作った鎌倉を捨てるのですか」
なんでも公暁に関して、怪しい情報が届けられているとか。馬を用意しているうえに、そばにいる駒王丸はあの三浦平六義村の息子である。
泰時は警戒し、謀反のため三浦館に兵が集まっているのではないか?と義時に訴えます。
しかし義時は式の警護だとそっけない。
それにしては数が多すぎる、式は取りやめた方がいい。
公暁が鎌倉殿を殺そうとしていると泰時が引かないため、三浦義村に直接聞いてみることにしました。
「若君が? 冗談じゃない」
はなから二人の話をいなす義村。信じていいかと義時に問われると、千日参籠の最中だと返す。
その上で、若君は鎌倉殿にとって代わる気持ちなどないと俺が誓ってやるとも言い切った。
しかし、義時は知っています。義村は、本音と建前が分かれていると、襟を立てる仕草をする――。
「やってました!」
確かに、そのシーンはばっちり画面に映っていましたが、果たして?
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義村や公暁の狙いを確信したのでしょうか。義時は、実朝に拝賀中止を提案するも、今更そうはいかぬとそっけなく返されます。
上皇様から遣わされた方がいるのに馬鹿を申すなと仲章も続く。
ならば警護を増やすよう要望しても、自分が責任者だと仲章はそっけない。
そもそも実朝は、公暁が鎌倉を狙う行為を理解できません。挙句の果てには、親王がくだることを喜んでいるのではないか?とまで言い出します。
これには実朝のバイアスも感じます。西から東に来れば喜ぶという先入観がある。
それでも諦めきれない義時。
「人の心は分かりませぬ」
ゆえに誰も信じてはならないとでも、なかなか不穏なことを匂わせますが、実朝は構わず自分の話を続けます。
いずれ京都に移る。右大臣ならば本来は内裏の近くの方が都合がよい。六波羅にしたい。
表情が一気に曇る義時。
「頼朝様が作った鎌倉を捨てるのですか」
腹から絞り出すような言い方で、あらためて強い意志も見て取れますが、そんなことお構いなしにとばかりに仲章が、鎌倉は験が悪いと言い放つ。
「鎌倉殿にお聞きしている」
ふたたび義時が静かに力強く迫るも、実朝は「先の話だ」として重くは捉えていません。
そのうえで義時は太刀持ちを頼むと任されるのでした。
武士の政治が京都に向かう危うさ
鎌倉から離れようとする源実朝に対し、激しい動揺を感じた北条義時について少し考察を。
本作はなかなか難解なところがあります。
義時は武士の世の終焉について考えているようにすら思える。
武士の政治権力が天皇のいる京都に向かうと危うい。
これは幕末の懸念でもありました。
京都守護職である松平容保が、孝明天皇の信任を受けて権限を持ち、将軍後見をつとめる慶喜もこれを利用する。
【一会桑政権】です。
確かに当面の政治的局面は握れたとしても、長い目で見れば将軍の権威に傷がつく懸念があり、幕閣は気を揉んでいました。
2021年『青天を衝け』の冒頭には徳川家康が出てきて、こうした武家政権の構造を表面的にはなぞりますが、どんな行為が江戸幕府にとって致命傷になるか?という情報は得られませんでした。
その家康ができなかったことを義時が説明しているようで、超絶技巧にもほどがある。勉強になります。
それと同時に、不思議なことも。
明治維新で【王政復古】だというけれども、京都が首都になるどころか、武士が作り上げた江戸を東京として、そこに天皇と御所を移した。
これは一体どういうことか。鎌倉時代草創から明治維新まですっ飛ぶような、そんな発想をしてしまうのです。
義時と二人きりになると、仲章はさらにいやらしく笑います。
なんでも北条殿の奥方からおもしろい話を聞いたとか。頼家の真相を知っているとほのめかしてきます。
しかしカマをかけても無駄だと義時。妻は何も知らない。そうは言っても仲章には想定内なのか、「まるで何かあったようだ」とさらに煽ってきます。
主殺しは重い罪、鎌倉殿に知らせねばならないと執拗な仲章に対し、義時は目的を尋ねます。
「何のために鎌倉に来たのか?」
「京都でくすぶっているよりは、こちらで思う存分自分を試したい。望みはただ人の上に立ちたい。それだけのこと。目障りな執権は消え、鎌倉殿は大御所になり、親王を迎え、自分が支える」
「お前には無理だ」
「血で穢れた誰かよりはよほどふさわしい」
もはや勝ちを確信したかのような仲章。慢心して、思ったことはあまり言わぬ方がよいとは思いますが……。
ちなみに京都から鎌倉に来て出世を望むのは、大江広元も近いと言えます。
彼のような文官たちも京都でくすぶっているくらいならば、と東へやってきましたし、実際、広元は上洛した際、そう明かして上機嫌になる場面がありました。
いったい何が彼らを分けるのか?
文官たちは武士に対する「文士」とされましたが、子孫の代となると武士に吸収されていきます。
文士と誇りを持っていられた時代は長くありません。弓すらまともにできないとからかわれ、奮起する文士の子孫たちがいます。
一方で武士も教養を身につけていく。
両者融合して、文官武官の区別があいまいな日本の武士はできあがるのです。
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そんな大江広元に、義時が本音を打ち明けます。
「今にして思えば、頼朝が望んだ鎌倉は、頼朝の死と共に終わった」
しんみりとするようで、嫌な開き直りにも聞こえますが、広元はどう反応するか。
頼朝の建てた鎌倉を放り出すことはできないはずだと語りながら、義時の背中を押します。
「臆することはございません。それがこの鎌倉の流儀。仲章には死んでもらいましょう」
そう言い切る広元は、すっかり精神が武士に染まっています。
京都の貴族は流血を嫌います。ゆえに呪詛が好き。仲章が「血で穢れた」と言っていたように、そんな発想があります。
一方で広元にはありませんね。
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何かと話題となった広元の殺陣。あれもアクションがよいというだけではなく、武士に染まっていったことを示すのかもしれません。
なんといっても大江広元の子孫には、毛利一族がいるわけであり、長州藩は殿ルーツということで、鎌倉にある大江広元の墓整備にかなり手間をかけていました。
徳川の東照宮への対抗意識もあるかもしれませんが。
そこを踏まえ、仲章と対比させると、この大江広元像がより鮮やかになってきたと思えます。
新たな武士を生み出した、そんなルーツとしての輝きが広元にはあります。
広元の真意を確認した義時は、早速トウに仲章の暗殺を指示します。素早い決断ですね。
母のつつじが公暁に訴え
いい歳して派手すぎかと言い訳しながら、実衣が真っ赤な衣装を着ています。
今さら、と返す政子の頭巾はかわいらしいピンク色。
実衣が尼御台も化粧をしたらと言うと、政子は顔を見せてきます。
きれいにお化粧をしています。ちょっと赤を使っているとか。
いいですね。『おんな城主 直虎』の寿桂尼も、化粧、頭巾、袈裟でコーディネートをしていて素敵でした。
尼だってオシャレくらいしたい、という心がうかがえます。
そこへ実衣の息子・阿野時元がやってきました。どうやら雪が降ってきたようで、式には殿上人と御家人だけが参加し、尼御台は残るようにとのこと。
そのころ泰時は三浦館にいました。
そして義村にきっぱりと、儀式に参加しないよう伝えます。
館にいた三浦勢は弓矢を確認している者もおり、不穏な空気が漂っていますが、義村は儀式に参加できない理由を聞き返します。
直衣始の折に三浦のせいで出発が遅れたと泰時。
身内で揉めただけで大したことはないと義村が返すものの、また同じことがあっては困るとして泰時も引きません。
義村も、泰時の強硬な姿勢に何か気づいたのでしょう。
狙いを勘付かれた、今日は取りやめだと公暁に伝えるよう指示を出します。
三浦の館を出た泰時は、義時に警護の増強を訴えました。北条からも兵を出すというと、謀反の証拠はないとつっぱねる義時。
しつこく粘る泰時に対し、ついには「めでたい祝いの日に水を差すな!」と返すのです。
一方、計画を取りやめるよう伝えられた公暁は、もはや三浦をあてにはせず、自分たちだけでも実行すると仲間の僧侶たちに告げています。
そこへ意外な訪問者がありました。公暁の母・つつじです。
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息子の公暁が参籠から出入りを繰り返していると聞いた彼女は、何かおかしなことを企んでいるのではないかと不安に感じた様子。
公暁にその理由を尋ねられると、「あなたの親だから」と返します。
厳しい修行をしている横で、実朝が右大臣になる拝賀が行われ、怨みも募るだろうと状況を理解しています。
空々しく公暁が反論しても、八幡宮の別棟として、鎌倉殿を支えることが天から与えられた道だと諭します。
しかし、これがかえって公暁を反発させてしまいます。
では自分の親の道は何か? 父上を無惨に殺され、暗君の妻と言われる、そんな母上の道とは何なのか?
激昂する公暁に対し、それでも母つつじは冷静。
頼家が授けてくれた我が子、つまり目の前の公暁がいるからそれで幸せだと訴え、千日参籠を成し遂げるべきだと嘆願しています。命をなくしてはいけない、と。
「生きるのです、父上のぶんも」
圧倒的な北香那さんの演技。感動が押し寄せてきてたまりません。
彼女は、権力などどうでもいい。我が子を愛したい。そんな母親です。実衣やりくとは違う。
しかしだからこそ、権力と復讐に取り憑かれた公暁には理解できない。ただ我が子を見守り生きていこうとする母の気持ちがわからない。
人の心は不思議でわからない。
せめてそのことだけでも理解できればいいのに、それができずに破滅する人があまりに多い。そんな世界が繰り広げられます。
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