北条義時の前に座る白い犬。訝しむようにそれを見る義時――。
鎌倉に十二神将の像が届きました。
薬師如来を守護する12体の神像で、本来は干支の数だけいるものですが、戌だけ先に届いたとか。
神将の真似をしておどける弟・北条朝時に「罰が当たるぞ」とつぶやく泰時。そんな夫に妻の初が真面目だとつっこんでいます。
あんたもやりなさい、と北条時房にも振られますが、もういい歳だからと拒んでいる。このトキューサ、実に年齢不詳です。
義時は、スピード感のある仕事だとして運慶に礼を述べています。
なんでも四ヶ月で作ったとか。
今回は京都からの輸送が間に合わず、いきなり全部揃うわけではないようです。
それにしても運慶がこれだけ早く作れるのは分業体制が整っているからでした。
当人が設計図を描き、実際に造るのは弟子。早く作ったほうが喜ばれるし、次の依頼をこなせると打ち明けています。
古今東西、チームで作ったものが代表者一人の名義になっていることはよくある話ですね。
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しかし義時は浮かない表情です。
北条一族を見て、こんなにはしゃいでいいのかと困惑気味。しかし姉の政子は、一族から右大臣が出ているのだから嬉しいとニコニコしています。
「いつまでもこんな時が続きますように……」
そう願う政子です。
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実朝暗殺を義村に打ち明ける公暁
そうなると謀反人になるから、御家人の心が離れないようにすることが肝心だと義村がアドバイス。
集まった御家人の前で読み上げる文言を確認しています。
北条の闇討ち、謀略で頼家が亡くなったことを明確にし、本来誰が鎌倉殿になるべきであるか示すことが肝要。
そう聞かされている義村の弟・三浦胤義も、それで御家人の心が集まると納得していています。
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三浦が打倒北条を叫べば御家人はついてくる――そう自信を見せる義村。
全ては明日だと最終確認に余念がありません。
ともに鎌倉殿の子として生まれながら、別々の道を歩んできた二人。
運命は神仏の前で交錯しようとしている――。
長澤まさみさんがそう告げる中、今週の幕が開きます。
日本人を縛る官位
建保7年(1219年)1月26日――。
政子は義時が信心深くなったと感慨深げです。
なんでも半年前、義時の夢に白い犬が出てきて、妙に心に引っかかっていたとか。夢のお告げは信じない。そう言いつつも、どこか気にはなるのでしょう。
「意外と気にしい」と妹の実衣はからかわれます。
図星だったのか。元々お堂を建てる話はあった、早く建てるように催促しただけだと、少々語気を強める義時。
ついに親王が京都からやってきて、迎えることになります。
大江広元曰く、慶事は同時に進めるのはよくない……と義時が話すと、実衣がまたまた「意外と気にしい」とつっこんでいます。
しかしながら行事は大事ですね。
今年は何かと葬儀が話題に上りました。なぜ、にぎにぎしく開催するのか?というと、国家なり組織なりの荘厳さを知らしめるためでもある。
行事に金を費やすことは、鎌倉という幕府を作る上でも大事なこと。ゆえにそこは「気にしい」でよいのです。
かくいう実衣は、次の鎌倉殿は誰になるのか?ということを気にしている。
先の話はいいと話を逸らそうとする義時に、自分の息子・阿野時元を売り込もうとしますが……義時はキッパリ断る。
実朝が右大臣になることで鎌倉殿の価値が上がった。一方の時元は無位無官。諦めろ。
義時と実衣のギスギスした空気を和ませるためか。そこで政子は、ともかく実朝の出世を祝おうと声をかけます。乳母の実衣なら嬉しくないわけがないだろう、と。
右大臣の母と乳母で支度をしようという話になります。
官位の話は、日本史において避けられないものですね。
伝統的に日本人を縛るものであり、江戸時代の大名だって「あの家よりも高い官位が欲しい!」と贈賄をしてまで買いました。
そうかと思えば、天皇の飼い猫が昇殿のため従五位下とされたり、江戸時代には天皇に謁見するため従四位を与えられた象もいたり、妙なことが起きるものです。
2024年大河ドラマ『光る君へ』でも、官位を貰った猫「命婦の御許」が出てくるかもしれませんね。
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現代人ならば「なにそれ?」となってもおかしくない官位のお話。
こうした思考回路は、2020年『麒麟がくる』の織田信長が体現しておりました。
彼は天皇から与えられるこういった恩恵に対し、途中から無頓着になるという描写でした。
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朝時あっさり機密を漏らす
北条泰時が頭を悩ませています。
なんでも公暁が雨具である蓑を用意しているとか。参籠をするなら不要の品をなぜ持ち込むのであろう。
彼は、妻の初が指摘する通り、とにかく真面目。みんなが浮かれモードなのに暗い。
朝時なんて「左大将の時と一緒でしょ」と呑気なのに、一人でピリピリしています。
しかし、その予感はあながち間違っていなかったのか。
八幡宮の僧侶に列の並びを聞かれた朝時があっさり教えたと教えられ、泰時が愕然とします。
平盛綱も硬直。
朝時は教えたら駄目なのか?といささか狼狽していますが、こやつに警備担当をさせたら駄目すぎますね。機密が全く守れていない。
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泰時らがにわかに緊迫する一方で、実朝は政子に、八幡大菩薩に右大臣になれた礼をしてくると告げています。
そして実朝に子ができないことを、一切触れずにいたことを感謝している。
政子は聞いたところでどうにかなるものではないと返し、それでもありがたかったと改めて礼を言いたい実朝。
血は繋がっていないながら、素晴らしい後継が京都から来ることに政子は満足しているようです。
ドラマ本編では描かれてませんでしたが、実は次の鎌倉殿の妻には、源頼家の娘である竹御所とされていました。女系では血が繋がるという意識があるわけです。
中世は、女系継承の重要性を理解しておくと、理解しやすくなるかもしれませんし、ここでの政子の指摘は重要かもしれません。
伊豆の田舎武士にすぎぬ北条の正統性とは、源氏の血を迎え入れたことにあった。
それにこだわらないと彼女は言ったわけです。
仮面夫婦喧嘩
義時の妻・のえが、源仲章と貝合わせをしています。
つくづくいやらしい大河ですなぁ。貝合わせは夫婦和合の遊びでしょ。
こんなものは実質不貞であり、せめてそこは囲碁や双六ではいけませんかね?
もっとも仲章には北条の内情について探りを入れる狙いがあり、義時の出世には色々あっただろうと気遣う振りして何かを聞き出そうとしています。
仲章の話を認めるのえに対し、さらに話をエグろうとする仲章。
並の苦労ではなかったはずだ、先代の時はどうだったのかと迫りますが、その頃のことは詳しく知らないと誤魔化そうとするのえ。
すると仲章はいやらしく顔を近づけてこうだ。
「聞きたいな……」
「内緒」
彼は、もう一押しとばかりに、頼家は北条にやられたのではないかと言質を取ろうとしています。
のえは繰り返し、これを否定。
「言っておきますけど、うちの人がやったわけじゃありません!」
煽られ、少々激昂してしまうのえ。仲章もわかってはいます。
当時、都にいた慈円の『愚管抄』にも、頼家は惨殺されたと記されていて、それを仲章が知らないわけがない。
このけしからん二人が挨拶しあうところを、目にした義時。
さっそく妻を問い詰め、なぜ自分を追い落とすつもりの男が御所にいるのかと怒っています。
貝合わせをしたいのだと彼女が答えても、魂胆あって近づいたことがなぜわからないのか!と苛立つばかり。
おおかた仲章は、京都から取り寄せた高級品でも貝合わせに使ったんでしょうね。京都の雅で釣ればホイホイ引っかかると踏んだか。
貝合せだけで「手も握っていない」とのえが言うと、義時が爆発。
「そんなことはどうでもいい!」
「どうでもいい?」
思わずのえが言葉を返すと、義時は何を聞かれたか、それだけが気になっています。迂闊なことを漏らしていないかと問い詰められたのえもさすがにキレる。
「私をみくびらないで!」
嗚呼、義時よ……。かわいげがない、愛嬌不足の男です。この点、源頼朝や父の北条時政とは大違いだ。
のみならず、色気もないと証明してしまったこの夫婦のやりとり。艶っぽさがまるでありません。
まだ八重や比奈と一緒にいる時は引き出されていたけれど、もうゼロを通り越してマイナス。
仲章は、自分の色香を把握していた上で、それをふんだんに使いながら彼女に迫った。
それと比べると、なんと無惨なことでしょうか。
のえもハッキリと悟ってしまいました。結局、夫は、自分に魅力も色気も感じていない。かつてはともかく、今はそうなのだと。
男児は産んだ。家の中のことも仕切っている。しかし、それだけしか求められていない。
思い起こせば、自分だって夫の地位を求めて妻になったにも関わらず、逆のことをされて狼狽えていることが見て取れます。
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二人のやりとりが凄いですよね。あの小栗旬さんが色気マイナスだし、菊地凛子さんはカッと心の底に憎悪が宿る瞬間が見えた気がします。
かつて、八重も、比奈も、義時の愛が芽生えるやさしくて暖かい瞬間がありました。
一方でのえは、憎悪という青白い炎。彼女にしか出せない凄絶な美しさがあります。
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