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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第46回「将軍になった女」】
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「死にたくない……」
囚われた妹・実衣の元へ政子が向かいます。
どんなにみすぼらしくなったか見にきたのか?と姉に悪態をつく実衣。
彼女自身も、りくが捕まった時に見にきたと言いながら、
「はい、こんな感じ」
とボロに身をまとった自身の姿を姉の政子に自嘲気味に見せつけます。
「私はどうなるの?」
それでも当然のごとく不安なのでしょう。政子も、女子は首を刎ねられないけれど、今の小四郎なら何をするかわからない警戒しています。
「殺されるの?」
「そうならないように、いまいろいろ手を打っているところ」
「結構です。早く殺して。時元に会って、母のしたことを詫びたいの。今すぐ殺して。首はどこに晒されるのかしら。きちんとお化粧してもらえるんでしょうね。だいたいみんな顔色悪いから、かわいく頬紅につけてあげて」
政子は実衣に、また来ると告げると、その背に実衣が抱きつきます。
「死にたく……死にたくない」
「大丈夫。大丈夫よ」
姉はそっと妹を抱き返す。
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処分の決まらないまま、一ヶ月が経過しました。
京都から返事があったと義時が告げています。
約束通り親王を下向させるも、それは今でもない。なんでもどの親王にするか迷っているとか。
話が、以前の状態に話が戻っていておかしいと気づく面々。私を怒らせるつもりだと義時が悟っています。京都にしても、鎌倉が断るのを待っていて、要は意地の張り合いです。
都人が考えそうなことだ。姑息なやり口だと康信が口を滑らせ、「これはご無礼を」と慌ててます。
京都人の「ぶぶ漬け理論」ですね。
「ぶぶ漬け=お茶漬け」を勧めるということは、この程度のものしか勧められないのだから「はよ帰れ」と婉曲的に表現。
康信がうっかりしているようで、坂東の進化も感じます。
素朴一辺倒だった序盤の頃でしたら、このような駆け引きにはなりません。素朴で正直な北条時政が、後白河院とすっとぼけた双六をしていましたよね。
しかし、そうなると後鳥羽院も気づかないものですかね。
朝廷の権威に恐れ慄いていたならば、こんなしょうもない駆け引きをするはずなかったのに、今では立派に交渉するようになっている。
単純な北条時房は断ろうと言い出し、泰時は上皇様が待てというならそうすべきだと言います。
「太郎! もういい、お前の声は耳に触る、行け」
よほど痛いところを突かれたのか。義時が泰時を追い出す様子は、まるで独裁者のようで、面白くもある。
政子と泰時の繋がり
政子は御所の外を見てみたいと広元に告げています。
「ほう……」
政治においては至極冷酷な広元も、尼御台のこととなると、この好機を逃すまいとばかりに、かすかな興奮を滲ませます。
政子は外の世界を見て、民衆の暮らしを見たいと言い出します。
辛い思いをしている人がいたら励ましたい。私の政をしたい。
そう聞くと広元は嬉しそうに「なるほど」と納得しています。
内心、理想通りでホクホクなんでしょうね。やっぱり俺の尼御台は慈悲深い。嗚呼、たまらん!ってところでしょう。
「だめかしら?」
「では、施餓鬼(せがき)を行うのはいかですか?」
貧しい者たちに施しをする施餓鬼により、民と触れ合う機会を提案する広元。
この瞬間、彼は理想の結実を噛み締めているかもしれません。
そもそも広元が京都から鎌倉へ下向して来たのは、認められたいとか、出世したいとか、そういう野心もあったけれど、本心では「民衆に慈悲を施す政治をしてみたい!」という気持ちもあったのでは?
それを叶えるのがこの尼御台。だからこそ愛を感じているのかもしれません。
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一方、評議の場から追い出された北条泰時が、政所を出てしょんぼりしていると、妻の初がやってきます。
なんでも昨晩書いていた文書を忘れたとかで、うっかりしていたと感謝する泰時に、初は他にも考えることがあるからだろうと理解を示します。
「また義父上とやりあったの?」
「今の父上は何かに取り憑かれたようだ」
そんな父を喧嘩してでも止めたいのに空回りだというと、初はこう言います。
「真面目」
「相変わらず真面目が苦手か」
「苦手とは言ってません。いいんじゃないですか、あなたらしくて」
「初めて褒められた」
「褒めてはない。諦めの境地……真面目にとるな、ふふっ」
そう泰時と初が、ういういしく夫婦愛を確認し合っています。両者ともに愛くるしくて、素敵です。
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そんな二人を廊下に出てきた政子が目に留めます。
「初さん久しぶり」と声をかけ、太郎につきあって欲しいと伝えると、「政所を追い出されて暇だ」と快諾する泰時です。
なんてことはないやりとりのように見えて、ここの場面も重要かもしれません。
泰時は、父が何かに取り憑かれていておかしいとわかっている。諫言をすることこそ使命だと理解している。だから追い出されても真に凹んではいない。
そこへ泰時に声をかけたのが政子。
史書『吾妻鏡』では、北条政子が息子の源頼家に『貞観政要』を勧めていたことが記されています。
ドラマでの泰時は、幼い頃から『貞観政要』を読んでいました。
そんな本書の特徴の一つに「名君は諫言を聞き入れ、気骨ある名臣は諫言を恐れない」という教訓があります。
このコンビは義時が司る独裁とは別の統治を象徴していると思えるのです。
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施餓鬼で逆に励まされる政子
施餓鬼とは死者の供養であり、お供えものが貧しい人々に振る舞われます。
平盛綱と泰時、そして政子が民にお供物を配っていました。
政子が民たちに優しく声をかけます。
素敵な小袖をどこで買ったのかと問いかけると、「三斎市」と返す女性。
「三斎市」とは一月に三回行われる市場のことです。
何気ないようで、鎌倉の商業発展がわかります。定期的に市場を開き、おしゃれな小袖を買うことができる。そこまで安定して発展しているのです。
別の女性は、子どもを3人亡くしたと訴えます。
それでも頑張って生きている、元気を出してくださいと励ますと、すかさずお調子者の男性が、5回妻に逃げられ、家は7回燃え、馬に8回蹴られたと続く。
思わず、上には上があるものですね、と微笑む政子。
「私もがんばらないと。みなさん、今日は本当にありがとう」
政子は礼を言います。
するとここでウメという娘が政子に声をかけてきました。
おずおずと、どうしても言いたいことがあると語りかけてくるウメ。なんでもおっしゃいと政子は返します。
「伊豆の小さな豪族の行き遅れが、こんなに立派になられて、行き遅れが……」
「あんまり言わないで」
思わず、そう止める政子。ウメは政子が苦労したことを気遣っています。そして憧れているとも。
私だけじゃない。みんなだってそう。生きていくのは大変だと政子は返すと、ウメは憧れだと言います。みんなの憧れであると。
「ありがとう」
政子はウメを抱きしめます。
かつて、頼朝が浮気をした亀は政子に言いました。
世の女たちの憧れになれ――。
あれから長い年月が過ぎ去り、亀の言葉は的中することとなったのです。
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これは現実世界とも重なっていると思えます。
政子をどう描くか。現代人が見ても憧れるロールモデルとして描き、演じられるか。その挑戦への答えでもあります。
彼女は新時代の女性を作り上げました。
皇族でも貴族でもない、小豪族の娘。
車の上から見下ろすのでもない。御簾の奥に留まるのでもない。民の顔を見て、声を聞かせ、あたたかく抱きしめる。そんな存在になったのです。
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