麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第5回 感想あらすじレビュー「伊平次を探せ」

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麒麟がくる第5回
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鉄砲抑止論

このあとの久秀は、楽しそうに光秀に語りかけてきます。

なんか怖いぞ、藤英との態度が違うぞ。でも素敵だとは思います。一緒に居酒屋に行きたい戦国武将ナンバーワンになれそう。楽しいおっさんなんですよね。

久秀は、ソウルメイト・斎藤利政が織田信秀を倒した話が楽しくてしょうがないようです。光秀も武功をあげたははずだと言われます。

そうでなければ、二度も京都に派遣するはずもないとまで、きっちりと根拠を提示されるのです。

光秀は、思い切って疑問を尋ねました。

そう、まだ「何故」の答えは完全ではない。

鉄砲はそんなに大事でしょうか? 戦にこのまま使えるとは思えません。なのになぜ本能寺で集めようとしているのか? 鉄砲の玉が弓や刀に倍する威力があることは知っている。玉が当たれば命を失うと。そのうえで、久秀は光秀に鉄砲を向けます。

「動くなー!」

動けば撃つ。弓矢なら躱せる。だが鉄砲の玉は躱せない。玉が当たるかどうかではない! そう言い切り、引き金を引くのです。

ジャキっと音がするものの、玉は出てこない。

「うふふ、ははははは! 玉など入っておらん、あっはっは!」

そのうえで、久秀は語り出します。

お互いに鉄砲の怖さを知っておれば、気軽に攻め込むことはできぬ。戦の有り様は変わるぞ。そう言い切り、こう語るのです。

 

久秀の「鉄砲抑止論」

わしならば、戦う前にこう考える。

敵は鉄砲を何丁持っているのか?
こちらの三倍持っているのか?

ならば戦はやめておこう。

戦は減ると、あの三淵という男はそこに気付いておる。
なかなかの切れ者。公方様が目をかけておる理由だ。あの方は戦がお嫌いだ。

そこまで語られ、光秀は戸惑いつつ、そういう松永様はどうなのかと尋ねます。

久秀は、母上からしゃっくりが三日続くと死ぬと聞かされたそうです。それ以来、しゃっくりが大嫌い。

「わしは死ぬのがおそろしい。そんなわしが、好んで戦をすると思うか?」

斬新だとは思うし、観る側が試されてもいる。

江戸時代に『葉隠』のような死を前提とした武士道が昇華された部分はあるのでしょう。鎌倉時代は命があまりに軽いものがある。そこは再来年『鎌倉殿の13人』ですね。

戦国はその間ではある。それに人間の心理ってそんなにホイホイ死ねるものでもないとは思うのです。

光秀はここで本音を語ります。

お二方ともそうであれば、しばらくこの京は平穏だ。私は去年、戦で焼け出された京の民を見て胸が痛みました。焼け出された子どもたち、年寄り……。

美濃も戦に明け暮れている。負けるわけにはいかぬから、私も戦う。

しかし、終わったあと、数日は口の中に苦さが残る。人を斬るといつも苦さが……これでよいのか。いつも、これでよいのかと。

「今の松永様のお話を伺い、ほっといたしました」

そう安堵を見せる光秀なのです。

「鉄砲の意味も、少しばかりは」

光秀のそんな苦悩を笑い飛ばす久秀。そのうえで、今の都には数多の兵が残っていると返します。

「今はまだ言えぬが、平安はまだ先じゃな」

そう言ってから、伊平次に会いに行こうと言い出しました。三淵様には内緒にしており、すでに居場所は押さえてあるそうです。

本作は、さんざん放送前から突っ込まれている点がありますよね。それは光秀が戦を嫌っていること。平和ボケだの、お花畑だの、そんな武士はありえないというものです。

それはどうでしょう?

平和ボケというのは、むしろ人を殺し、殺されかねない苦痛を想像すらできないことではないかと思います。

第一次世界大戦後に「シェルショック」という概念が認識されました。それ以来、戦闘ストレスと人間の心理研究は進んでゆきます。

ではそれ以前、戦国時代にそういうものがなかったのか?

答えは否。
古来、人間は戦争に傷つき、こんなことはもうしたくないと思いました。文才がある人間は、それを残してもいるのです。

そういう人の思いを「平和ボケ!」と笑うのだとすれば、ありえないと言うのだとすれば、そのことそのものに侮辱を感じます。

曹操『蒿里行』

白骨露於野 白骨 野に 露(さら)し
千里無鷄鳴 千里 鷄鳴 無し
生民百遺一 生民 百に一を遺(のこ)す
念之斷人腸 之を 念(おも)えば 人の腸を断たしむ

白骨が野晒しになっている。
千里にわたり鶏の鳴き声すら聞こえない。
生きている民は、百人に一人のみ。
このことを思えば、胸が張り裂けそうになる。

そしてここで出てきた、鉄砲抑止論。どうしたって、核抑止論を思い出す方も多いことでしょう。そんなものに意味があったのかどうか。歴史を見れば、極めて胡散臭いとわかるはずではあります。

そしてそんな抑止論に翻弄される私たちも、実は戦国の人々と大差ないかもしれない。そう思わせるから、本作はおそろしいものがあるのです。

 

伊平次発見!

はい、そんなわけで伊平次探索だ。

居処をつきとめた理由はわかります。色っぽいお姉さんがいる場所ですよ。

そうそう、これと漢方医学で思い出した。
松永久秀は「房中術」マスター=エロだという誤解があるんですけどね。そこを訂正しておきますと……。

その手の話だけではありません。漢方では、房中術も医学の一環ですから、そこはあくまで健康目的。そういうことにしておくこと! それにこれも陰(女)と陽(男)の話にもなりますので。久秀はジェントルマンですから、多分。

あと色街なんですけど。
まだそこまで広がってはいないと思いますが、当時西洋渡来したものは鉄砲でもない。カトリック、銀もあるし、梅毒もあると。そういう世界史的な流れもあります。

※『MAGI』もおすすめです

「そこの男前のお兄さん〜」

そう誘われる光秀は、戸惑いつつ断ります。真面目だからさ。

「さあさあ、こっちだ!」

そして、そういうお店へ。
真っ赤な襦袢の姉さんらが足相撲をしている場面がありました。細かいなあ。ギャンブルとセクシーが一体化した、当時究極の娯楽がそこにはあります。

衣装の特性も出ています。真っ赤って、やっぱりどうしたって煽情的ですから。

赤い襦袢というだけでも、視線からもう圧倒的に色っぽいものがある。晒しで胸を巻いて襦袢をはだけた遊女もいるぞ!

な、なんだ……これは……?

今やVODで『ゲーム・オブ・スローンズ』の時代。スマホでなんでもありっちゃそうだけど、なんだこの、往年のアレやコレやを彷彿とさせる映像は?

女優をホイホイ脱がせればいいとか。若手女優の水着とか。

そういうことでなくてですね。もっと東洋、日本らしい、そういう艶を考えさせる気合いを感じるわけです。いや、ふざけてない、こっちは真面目に考えています。『色情大名』とか、そういうタイトルがかつてはあったんです。定番題材は徳川家斉ね……。

話が脱線しましたが。
なんか久秀が楽しそうに二階にあがって、アレな男女の部屋にお邪魔しそうになったりしていますが。そこは伊平次探しだからさ!

これでは、公方様の上品な家来は、見つけられないなぁ。納得。

ガラリと一室を開けると、タケという遊女と飲んでいる伊平次を発見しました。

玉置玲央さんは『真田丸』では織田信忠を演じていたのがおもしろい。同じ顔をしていても、かたや織田家の嫡男、かたや飲んだくれの鉄砲鍛冶になる。人間って何かと考えさせられるなぁ。

タケが戸惑う中、久秀は慣れた様子で伊平次に用があると切り出します。

カチコチで居心地が悪そうな光秀と、毒々しい久秀。

可憐なカスミ草と、毒々しい真っ赤な薔薇が並んでいるようでもある。絵面だけでおもしろいので、もはや反則です。

久秀は三好長慶に命じられ、なんとしても20丁欲しいと頼み込むのです。

料金三割増!
本能寺で見たけれど、堺の渡来品にも劣らないし、しかも安いと絶賛しています。ゴーサインがあれば、国友村に鍛治場を作ってもよいって。

それでも伊平次はつっぱねる。
三好が20丁なら細川晴元は30丁。それを知った公方様が50丁の注文が舞い込む――そんなめんどくさいことになるくらいならば、好きな女とグジャグジャしている方がいい。そうタケといちゃつくのです。

ここで光秀は気づきます。

伊平次!
あの伊平次じゃな!

と声をかけ、明智十兵衛だと名乗る。

昔、伝吾の家の裏にある井戸に落ちた。瓜が冷やしてあるから、それを盗み食いしようと思って落ちた。手のつけられない悪童、瓜盗みの伊平次!

伊平次も、あのとき十兵衛様が縄を投げねば死んでいたと思い出すのでした。

なんでも12年前のことだとか。

「待て待て、わしを置いていくな! そのほうたちの昔話はようわかった、用件は終わっていない!」

そう久秀が言いますが、相手は聞いちゃいない。

光秀は、用件である鉄砲の組み分け(分解)を依頼します。堺で出回っている渡来モノであり、よく知れば改良できるはずだと言う光秀なのです。

これに対しは、すぐそこでできるという伊平次。近くの寺に道具を預けてあるそうで、すぐ着替えてくるそうです。タケは不満そうですが。

几帳面な光秀は、去り際に久秀に対して、松永様より先に頼んだことを詫びております。

「気にするなー、よいぞよいぞ〜」

フレンドリー久秀。
ナイスガイ久秀。
なんでもお主たちにそういう縁があったのは、天が与えた僥倖だそうです。

あの様子では、お主が頼めば鉄砲20丁くらいいけるのではないか。そう思っております。コミカルさと、語彙力の高さが噛み合った、きめ細やかな脚本に惚れ惚れとしてしまう。

そのうえで、なんかすごいことを言い出す。

斎藤利政のように大名になる! そうなったら必ずや、お主の恩義にあふれんばかりのお返しをする宣言。そうよくわからんことを言いつつ、去ってゆきます。
なんだこの、キュートな久秀は。

このあと、セクシーなお姉さんをあしらいつつ、光秀は京都の街を歩いてゆきます。そこの近くには、東庵と駒もいるのです。駒は人ごみを見てハッとします。

「どうした?」

「あのお一人が、十兵衛様によく似ていらっしゃったので……」

「ここは京だぞ、十兵衛様がいるわけがあるまい。さっ、いくぞ」

「いらっしゃるわけがないものね……ああ、つまらない」

光秀も駒らしき影に立ち止まり、伊平次に急かされるのでした。

 

MVP:伊平次と三淵藤英

迷ったけれども、二人で。

鉄砲をめぐる回。伊平次は作る側で、藤英は作らせる側です。

両者の思惑、技術。それが噛み合ってこそだとわかる。圧巻の出来でした。いくら藤英が抑止論を掲げようと、伊平次のような民が乗らなければそれまでなのです。

本作のすごいところは、毎週更新されていくよう。

【廟堂】か【江湖】か?
どちらも大事だという瀬戸際で、ずっとゆれ続けるようなゆらめきがあるのです。

 

総評

正正の旗を邀(むか)ふる無く、堂堂の陣を撃つ無し、此れ変を治むる者なり――。

孫子』「軍争篇」ですね。

旗の動きが乱れない軍勢。堂々とした陣。こういう相手とは戦うなって話。士気盛んだとか、気力充実している相手と戦争すんなってことですけど。

もっと単純に考えてもよいかな。
腹が痛いとか、早く家に帰りたいとか、やる気がないとか、バレることが怖い何かがあるとか。そういうものは、どこかに隙が出てくると思うのです。

そういうところがあれば、私はノリノリでぶったたきにいき、周囲の期待を無視してでもボコボコにしがち。
でも今年は怖すぎてできない。
迂闊に撃つと怖い。

本作は前年の視聴率激減、女優交代というものがあっても、旗を堂々と振っているとは思えた。

何か特別で、あっと言わせることをしている? いや、そんな上っ面でなくて、中身まで隙がない。だから強気なのだろうと毎週確信しています。

本作は本当に隙がない。緻密すぎてつらくなってくる。何をどうすればこうなるのか、気が遠くなりそうです。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

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麒麟がくる感想あらすじレビュー

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麒麟がくる全視聴率

 

おまけ:今日の『孫子』

夫兵形象水。水之形避高而趨下、兵之形避實而撃虚。水因地而制流、兵因敵而制勝。故兵無常勢、水無常形。

夫れ兵の形は水に象る。水の形は高きを避けて低きに趨く。兵の形は実を避けて虚を撃つ。水は地に因りて流を制し、兵は敵に因りて勝を制す。故に兵に常勢無く、水に常形無し。

「虚実篇」です。ちょっとおまけです。

ファンとは水のようなものです。

水は高いところは避けて、低いところへ流れえてゆくもの。人は見たくない事実よりも、仲間同士での感情、気持ちのよいニュースや投稿に夢中になる。

水が地形によって流れを決めるように、ファンもその時の感情によって評価を決める。

つまり、作品評価の決定打はありえない。

ただ、愉しめば良いだけですが、ときに他人へ押し付けるような大河論が飛び交ったりします。

本当にドラマのことを話したいのか?
過去のマイベスト作品を挙げて、懐古趣味に入りたいのか?

そんなときは……。
斎藤利政は「何故?」と突っ込んで、光秀を送り出しました。
彼のように、納得や理解のできない意見があったならば「何故?」と突っ込んでみる。相手の言葉の理由を考えると、感情の流れが見えておもしろいかもしれない。

【参考】
麒麟がくる/公式サイト

 



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