麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第33回 感想あらすじ視聴率「比叡山に棲(す)む魔物」

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京都にとって不都合な史実

浅井朝倉や本願寺、比叡山らに包囲された織田軍。

事態は一向に改善しませんでした。

それどころか伊勢長島の一向一揆衆が蜂起して、尾木江城の城主だった織田信興(信長の弟)が討たれてしまいます。

織田信興とは:信長の弟、長島一揆勢に攻められ自害する

本作は合戦シーンが少ないと指摘されますが……合戦そのものというより、快感・爽快感を伴う合戦描写が少ないのでは?と思えます。

そのくせ、死ぬ間際が生々しいもんだから「戦争は嫌だ……」と思える。

そんな信長が退路を断たれたことに、狙い通りだとほくそ笑む二人がいます。

覚恕と摂津晴門です。

晴門は、朝倉も織田も和睦したがっていると公方に言いながら、織田を追い詰めて袋の鼠にしようとしている。京都から織田を一掃し、幕府と比叡山が手を組めば、古きよき都に戻ると確信していると言うのです。

「成り上がり者に夢は見させぬ」

そう意気投合しております。今年は、京都に厳しい大河だ……。

権威も、富も、汚い既成勢力のおかげで成立する。そんな京都にとって不都合な史実に踏み込んできました。

そしてこの密談を、菊丸が床下で聞いております。

宇佐山城に光秀が戻り、覚恕の手紙を出します。

信長はそれを読みます。家康の忍びこと菊丸が聞いた密談内容でした。

摂津晴門と覚恕の結びつきに驚き、公方様の和睦が進まない理由を理解。ここで信長が「公方様はご存知か?」と言うのが怖い。

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光秀が即座に否定し、比叡山に取り入る幕府内のものが悪いと誘導しますが、さて……。

信長は猜疑心旺盛、かつルールの適用が周囲とは違います。管理できないのは知っていたに等しいとして、義昭を断罪することは当然想像できるわけです。

毎週、信長の義昭への不満がじわじわと溜まってゆきます。

信長は、東を藤吉郎と家康が抑えているとしながらも、弟が討たれた尾張に戻ろうとします。

光秀はここで京都をお捨てになるのか、今までの苦労を水の泡にするつもりかと問いかけます。

仕方あるまい――。

そう投げやりになって背を見せる信長。しかし、光秀はそんな信長対応の達人になりつつある。

美濃に戻ってなんと申し上げるのか? 比叡山の坊主に負けて帰ったと?

そんなことを言ったら美濃の衆も帰蝶様も笑う。そう煽ります。

光秀の煽りスキルがぐんぐんと伸びてきましたね。長谷川博己さんでなければ、こういう脚本は受け止めきれない。池端さんが投げるボールを、キャッチャーとしてしっかり受け止める、そんな圧倒的な信頼感がある。

 

童顔で無邪気な残虐性が一番怖い

信長の顔に動揺が広がります。

こういうときの信長は、まるで幼い子どものよう。無邪気そのものに見える。だからこその染谷将太さんなのでしょう。

信長は抵抗する。

尾張のうつけ者が、将軍を支えて3年もいた。帝にも天下一と認められた。帰蝶が笑いたければ笑えばいい。父上が生きていたら褒めてくれる。美濃の者も褒めてくれる。そう言い募るのです。

信長は帰蝶を“母”と言いました。

親は子を褒める。親に褒めてもらえたときのうれしい気持ちが胸にずっとある。そういう気持ちを蘇らせてくれる帰蝶は特別な存在です。

二人の間に子がいるかどうかとか、そういうことは関係ない。

心が通じ合う帰蝶の拒絶がおそろしくて仕方ない。そんな幼い心がそこにはあります。

光秀はそんな信長を、どこか冷たい目で見ている。

帰蝶が“母”ならば、光秀は“父”かもしれない。

「帰蝶は笑うか……」

信長はしおらしくしょんぼりとして座り込み、こう続けます。

「他に手があるか?」

光秀が公方様への和睦を提案すると、信長が一捻りします。

「和睦か……和睦を……帝だな……帝に使いを出すか」

この場面はやはり、信長がとても哀しかった。

これだけのことをしても、認められないことに冷や冷やしている。それは演じる側にもきっと通じるものはあると思えます。

染谷さんは信長を演じることを楽しまないと、きっと大変でしょう。

当初はミスキャストと叩かれ、それをひっくり返せば“天才”オーラが出ているとまで言われるけれども。彼自身は一貫して、自分なりの演技を真摯につきつめているだけでしょうに。

常に一生懸命、全力なのに、叩かれたり、褒められたり。気にしなければよい?

なまじ役者として必要な感受性があるからこそ、きっと伝わってくるものがあってつらいとは思う。

褒められても、それがどれほど虚しいか?

信長を演じていて、常に感じるとは思うのです。

大河で信長ってそういうもんだよな……と割り切るにしたって、毎回綱渡りをしているようなもので。役者は感受性豊かでないとできないけれど、ゆえに辛いこともある。

だったらとことん楽しむしかないし、演じることを極めるしかない。そういう世界に飛び込む心意気が、信長本人に通じるところがあると思えるのです。

しかし、これが大正解かもしれません。

この信長は、後に歴史を変えたと言われるのではないでしょうか。

2010年代半ば以降、ものをやたらと損壊したり、焼いたり、殺戮をする歴史劇の人物は、小柄童顔でかわいらしいタイプが最先端だと思う。

三国志 Secret of Three Kingdoms』の曹操を演じる謝君豪は、背がそこまで高くない。小柄です。童顔で愛嬌があり、かわいらしさすら感じる。

それなのに前置きなしに怒鳴り、声を荒げ、「それならあいつらは皆殺しだな」とさらっと言ってしまう。

そこがいい!

小物のようで、なんだか怖い。ミスキャストのようで、これはこれでおそろしいしありだと思える。『ゲーム・オブ・スローンズ』のデナーリスを演じたエミリア・クラークも同系統ですね。

こういう人物を見ているとしみじみと思えます。

童顔で無邪気な方が、むしろ残虐行為をやらかす様がおそろしいのだと。

 

「朕と弟との戦いやもしれぬ……」

京の御所では、美しき帝が東庵と囲碁を打っています。

信長と覚恕をどうにかしたい。取り上げた領地を返し、都での商いも認めるために和睦したいのだと。

東庵は将軍様が収めたいと案じていたと指摘すると正親町天皇はこう言います。

覚恕は朕の弟ゆえ、何を考えているか全てわかる。はじめから将軍を相手にする気はなく、己の力を誇示し、兄に頭を下げさせたいのだろう、覚恕の胸にあるのはそれだけだろうと。

そして覚恕のことをこう嘆きます。

叡山であれだけあまりある富を蓄えていながら、この御所のやぶれた屋根すら修復しようと申し出たことはない。

叡山で酒を飲み、女色に溺れ、双六、闘鶏にうつつを抜かしておる。

無惨な弟と分析するのです。

これを坂東玉三郎丈が語る残酷さよ。

才能なり美貌があるものが周囲を傷つけると描くうえで、これほど説得力のある人物がいるでしょうか。彼を見ていると、紫式部に謝りたくなる。

『源氏物語』で、中年以降の光源氏は美貌の詳細を省かれて、オーラがともかく美しいと紫式部は主張するわけです。

でも、肉もついたし、それは無理矢理褒めているだけじゃないの? なんだよ、オーラって。

そう思っていたのですが、光源氏がこの坂東玉三郎丈のようだったのではないかと想像すると、納得しかありません。古典理解を深める実にありがたいドラマですね。

彼を美しいというのは簡単だけれど。それだけで済まされるのかどうか。衣通姫という着衣を越えて伝わる美貌の伝せつがあるけれども、それを思い出すほど。常に光がほとばしっているみたい。そりゃ覚恕も歪むでしょう……。

東庵は双六と闘鶏は耳が痛いと言う。

帝はそちは格別だととりなします。

なんでも幼少期から病弱であったために、先帝が案じて呼び寄せた鍼の名医なのだとか。東庵は「恐れ多い限り」と謙遜します。

そして帝の厳しい囲碁の一手に唸るのでした。

東庵がここで叡山をどうするか尋ねると、信長を助けると帝は言い切ります。この館の屋根を直してくれた。そればかりでなく、覚恕は公家たちに金を貸し、領地を奪ってきたと嘆きます。公家たちの苦しみは如何ばかりか。

「これは朕と弟との戦いやもしれぬ……」

大仰な歴史的な出来事の背後に、生々しい人間の心理がある。そう示す言葉でしょう。

これぞ本作の本質だと思えるのです。

本能寺に至るまで、光秀の心の動きを見ていきましょう。これまた世界の歴史学と歴史ドラマの最先端、今挑むべき課題でもあると思います。

 

激怒の松永「これが公方様じゃ!」

近江の三井寺には、二条晴良が来ておりました。

織田、朝倉、浅井、延暦寺に対し和睦を促すよう伝えたのです。信長は延暦寺や朝倉の条件をのみ、本陣を引き払いました。

覚恕と晴門はこの結末に浮かれています。

信長は我らを甘く見ておった、これで都は古き良き姿に戻ると言い合いますが……比叡山の僧侶が女を侍らせ、幼女を金にあかせて買う。比叡山と幕府が癒着し、金を儲ける。公家が借金に苦しむ。

そんな“古き良き姿”を戻してやると思っているのです。

そしてこれを機に、武田信玄を京に迎え入れ、織田信長を潰す段取りをしている。既に信玄とは文を交わしておると語られます。

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家康が大変なことになりそうですね。

でも、同時に家康がどうして情報網をフル回転させているかもわかってきます。

彼は自分の持ち前の思考力で【仮説】を形成したい。そのためにはデータ、データ、データ! これから先がどうなるか読み取るために、菊丸たちを使っているのです。

やはり、家康は強い。素晴らしい!

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そして二条城には、束の間の平安が訪れます。

義昭は、能を見ている。

けれどもご覧ください。大和で火花を散らす筒井順慶松永久秀が同席していて。摂津晴門がほくそ笑んでいます。

このあと、光秀は松永久秀とすれ違います。

カッと久秀の顔に怒りがのぼる。

顔を構成する筋肉ひとすじにまで感情が宿る。

吉田鋼太郎さんの底力を感じる――ここでの彼を見て、演じることが芸術ではないと言い張る人がいるのかどうか? そんな渾身の場面です。

久秀は訴えます。

この席に筒井順慶が招かれている!

長年血に塗れて争っている、あの男がいる!

その祝いの席である!

これは罠じゃ!

あの順慶が公方様の養女を娶る、その前祝い!

血を吐きそうな口調で久秀は訴えます。

大和国は、古くから筒井一族が治めてきた。信長と連携することで、それを変えようとした。

それを知っていながら、公方様は何故、わしを笑いものにするために招いたのか!

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光秀が否定しようとしても、久秀の傷ついた魂には届かない。

「それが公方様じゃ! これが幕府じゃ!」

久秀は幕府を離れると言い切ります。大和に戻り、あの順慶と戦うのだと。

信長様にその旨伝えてくれと言い、彼は去ってゆきます。

光秀は追い縋るも、届かない。先週の鉄砲調達での筒井順慶相手の譲歩が裏目に出ています。

それにしても、吉田鋼太郎さんはどこまですごいのか。抑揚、滑舌、顔の筋肉まできっちりと計算されている。

坂東玉三郎丈の演技はただただひたすら美しいけれど、彼は理詰めで、シェイクスピアを感じさせて、圧倒されました。

大和という複雑な国の歴史に血が通う。劇の底上げをするそんな気合いが圧倒的で、酔いしれるしかない圧巻の演技でした。

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