麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第36回 感想あらすじ視聴率「訣別(けつべつ)」

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麒麟がくる第36回感想あらすじ
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十兵衛は籠から出た鳥じゃ

そう。信長包囲網については、認識がおかしいところがある。

義昭が汚いだの卑劣だの言われますが、そもそも上下関係をぶち壊して指揮系統をぐちゃぐちゃにしているのは、信長です。

これが例えば『三国志』ですと……。

曹操は献帝を担ぎ上げ、漢王朝のためだと言い切っていろいろなことを推し進める。

それに対して、劉備や孫権はじめ他の群雄は「皇帝をむしろ下に見て操っているくせに、とんでもない奸臣め!」と非難するわけです。

皇帝が何かしたとすれば、それに異議を唱える側がおかしい。

幕府という秩序があるからには、信長と義昭の関係もそうなるはず。

三英傑で信長が優れているということから、信長視点で物事を見てしまうのは仕方のないことです。

けれども考えてみれば、ここで義昭が「はかったとは?」と気色ばむのは当然でしょう。

本来、主君が家臣に対してはかったも何もないのだから。

義昭は、上洛の際に信長からはひとかたならぬ恩を受けたと振り返ります。

それなのに、今は帝、帝、御所ばかり。武家の棟梁として振る舞う。そう宣言するのです。

三淵藤英は、光秀にも決断を促してくる。公方様との新しき世のため、馳せ参じていただきたい。

光秀は戦に馳せ参じろと改めて言われて驚いている。信長様と戦えというのか、と驚愕です。

藤英はさらに迫る。

明智様は今や、幕府にとってはなくてはならぬお方。なんとしてもご決心いただきたい!

光秀は涙を滲ませ、こう返すしかありません。

「公方様、どうか今一度、今一度、お考え直しを!」

「決めたのじゃ。わしは信玄とともに戦う。信長から離れろ。わしのためにそうしてくれ」

「公方様! それはできませぬ!」

「十兵衛」

「御免!」

立ち去る光秀。幕臣たちが追いかけようとすると、義昭は「追うな!」と止めます。

「十兵衛は鳥じゃ。籠から出た鳥じゃ。また飛んで戻ってくるやも知れぬ」

そして元亀4年(1573年)3月、将軍・足利義昭は、畿内の大名を集め信長に対して兵をあげたのでした。

 

MVP:鳥としての光秀

珍しき鳥と帝の前でたとえられ、義昭からも鳥と呼ばれる光秀。

麒麟が到来を告げるために飛ぶ鳥は、じっとしてはいられません。

幕府と公方様のもとで、麒麟が到来する世を作る。けれども、この公方様ではそれができない。ゆえに飛び去るしかない。

飛び去るとき、鳴く声は悲しい。けれど追いかけても仕方ない。

そういう人でありながら、鳥である悲しみと虚しさ、見ていて心まで冷え冷えとするほどの深みを、今回も長谷川博己さんが見せてきました。

彼の集大成、ひとつの到達点があります。

そんなわけで、漢籍大好きな本作にあわせて、鳥をテーマにした漢詩でも。

雀を救う誰かがいるのか?

剣を持った人物はいるのか?

剣を手にして救う少年となり得るのか?

それともとらわれた誰かを見ているだけなのか?

そこを踏まえると、光秀の状況にぴったりかもしれませんよ。

『野田黄雀行』曹植

高樹多悲風
高樹 悲風多く
高い木には悲しい風が多く吹きつける

海水揚其波
海水 其の波を揚ぐ
海水が荒い波を立てている

利劒不在掌
利剣 掌(て)に在らずんば
鋭い剣がこの手になければ

結友何須多
友と結ぶに何ぞ多きを須(もち)いん
友を多くもつこともできまい

不見籬間雀
見ずや籬間の雀
見ろ、あの垣根にいるとらわれの雀を

見鷂自投羅
鷂(たか)を見て自ら羅(あみ)に投ず
鷹を見て自ら網に飛び込んでしまった

羅家得雀喜
羅(あみ)する家(ひと)は雀を得て喜び
網を仕掛けた人は雀を得て喜んでいるが

少年見悲雀
少年は雀を見て悲しむ
少年は雀を見て悲しんでいる

抜剣払羅網
剣を抜きて羅網をはらい
剣を抜いて網を切り払い

黄雀得飛飛
黄雀、飛び飛ぶを得たり
雀はやっと飛び去ることができた

飛飛摩蒼天
飛び飛びて蒼天に摩(ま)し
高く飛び去って青空を進み

来下謝少年
来り下りて少年に謝す
くだってきて少年に感謝を告げた

人間の状態や心理を、鳥や虫といった小動物にたとえる――東洋の伝統的な発想であり、漢籍に頻出する考え方です。

これは池端俊策さんが心底漢籍を愛しているがゆえの作風なのでしょう。

アリバイ的に使うのではなく、心の底から愛好していないとなかなか出てこない発想を感じます。

最近「どうして漢文を習うのか?」といった提言を見かけますが、非常に簡単なことです。

漢文を読めないと、日本史も理解できなくなる!

それだけのことです。

 

総評

このドラマは難易度がかなり高い。というのも、漢文解釈という意味でも。

水を渡り 復(ま)た水を渡り

花を看(み) 還(また)花を看る

春風 江上の路

覺えず 君が家に到る

『胡隠君を尋ぬ』
高啓(1336-1374)

何気ないようで、なかなか奥深い。

それどころか、怖い。

というのも、漢籍ではしばしば「友」に深い別の意味があるともされるので。

一例として『論語』の「朋遠方より来る有り、また楽しからずや」があります。

遠くから友達が来ると楽しいよね!

そういう意味だと解釈されてきましたが、それだと前後の文とちょっと意味が合わない。

学んだことを“友”とする。それがまた思い出されてくる。そのことが喜ばしい。かつての自分自身を“古くからの友”とする。自分自身の本質を思い出すこと。それって素晴らしいのではないか? 学びが身につくその喜びよ――。

そういう解釈もできるわけですね。

つまりこの漢詩も、川を渡り、花を見る。そうして自然と親しんで無心に時を過ごすうちに、自分の本質を思い出す。そういう解釈もできるかもしれない。

でも、それって結構怖いかもしれないことも、考えておきたいのです。

たかが詩の解釈のようで、相手の精神性や思考力もわかる。今回は、人間の本質への旅のような問いかけがありました。

義昭が完全に元の自分を見失い、迷走していること。それは光秀や駒への態度からも見えてきます。

三淵藤英は喜ばしいことと受け止めているけれど、光秀からすれば無理矢理別の姿を演じているようで、痛々しくてならないのです。

一方で、譲れない信念がある人物も示される。

帰蝶から十兵衛は十兵衛と言われた光秀。彼は頑固です。

美濃を追い出されて流浪しようと、高政に屈しない。信長の仕官の誘いも断る。帰蝶や駒からの好意もまったく気にしていない。強い信念がある。

義昭が迷走し、目が濁ってきているのに、信長はキラキラとまた透き通った目をしている。

彼はあまりにもぶれなくて、光秀や帝のような迷いすらない。

が、それはそれで怖い。狙いを定めたら一気に噛みつき、血飛沫をあげる。そんな虎の爪と牙を持って生まれてきた、圧倒的な孤独も感じます。

本人は、自分を猫だと思って、遊ぶつもりで周囲にじゃれついてしまう。

そうなったら、どうなるのか?

本能寺まで劇中でも10年を切りました。

だんだんと見えてきましたね。

光秀も、信長も。松永久秀が見抜いたように、同じ根から生えたもの。確固たる己自身があり、それを変えるくらいならば消えた方がよいのでしょう。

義昭のように、偽りの己の仮面をかぶって生きるくらいなら、この世界を去るまで。

そういう譲れない二人が同時に存在することができないとなれば、結末は見えてきます。

光秀と信長のような、ぶれない自我は何か?

今何かと話題、今年最大のヒットである『鬼滅の刃』劇場版にも出てきます。

夢に入り込む鬼は、夢を通して人間の意識に入り込む。その意識の奥にある核を壊せば、人間の意識そのものが破壊されてしまう。

そういう仕組みがあるのですが、稀にいる「我が異様に強い人物」は、無意識下にまで人格が割り込んできて、邪魔してくる。

それが善逸ですね。信長もそうなのでしょう。

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あるいは、無意識下でまで透き通っていて、それゆえかえって相手が参ってしまう人物もいる。

炭治郎ですね。光秀はこちらで。

本人ですら自覚できない、そんな無意識が強固な二人。そのぶつかり合いが、今後待ち受けています。

人間の心、意識そのものをどう描いてくか?

それが2020年代の課題なのでしょう。

『アナと雪の女王』のエルサも「未知の自分を探す!」と旅立つわけです。

人間の精神という深い淵に潜む龍とは何か?

そこを問い詰めることこそが、今、求められているとみた!

私が気になるのは、脚本協力で毎回出てくる岩本麻耶さんですね。

池端さんが素晴らしいことはわかった。けれども、そういう精神領域のブラッシュアップはこの方がしているのかと思うのです。

怖いドラマですね。演じる方もきっと大変だと思います。

作る側が、この役者さんなら引き出せるという台本を渡してくる。自分の内面、無意識下には、こんな性質があったのか、それを引き出されているのか。

そう戸惑い演じていると、その通りだとビリビリしてくる。そういう瞬間があるのではないかと思いますよ。

私も正直、時々おそろしいから本作は勘弁してくれと思います。

信長はまあ、予測範囲内というか、やらかしも含めてわかりやすさがある。一番理解ができる。サイコパスだのなんだの言われていますが、がんばりやさんでしょう。ちょっと手加減できないだけで。

それよりも秀吉が毎回怖すぎて、それこそ「夢に出てきた。おそろしい夢じゃ」と言い出しそうで戦慄しています。

 

オススメの歴史劇

2020年下半期『おちょやん』につきましては、筆者のnoteで掲載することとなりました。そちらをご覧ください。

『麒麟がくる』を理解するうえで、オススメの歴史劇を見つけました。

◆『三国志 Secret of Three Kingdoms』(原題:三国機密之潜龍在淵) BL三国志か、それとも?(→link

BL三国志だのなんだのふざけていますが、こちらが本物の「新解釈・三国志」ですね。

何が新解釈か?

蜀漢正統論に対する疑念をきっちり解釈しているところ。

曹操が皇帝にならかった理由も、劇中で新解釈されています。

美男美女だらけという売り文句もありましてその通りですが、考証や最新学説の繁栄も素晴らしい。

そしてこの作品は、実在するとはいえ女性の人物をほぼオリジナルキャラクターのように動かします。

官渡の戦いも舞台裏から描き、赤壁の戦いに至っては、豪快にすっ飛ばします。

合戦以上に描くものがあると示す。それは人の心、心理状態ではないか? そんな問いかけがある。

今後最先端となる歴史劇であり、かつこれを見れば『麒麟がくる』はじめ大河理解も深まるはずです!

※著者の関連noteはこちらから!(→link

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
麒麟がくる/公式サイト

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