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近衛邸で出会った僧侶に「詔」を頼む!?
西郷どんは薩摩へ戻る途中、近衛邸に立ち寄ります。
やっと出てきたか、近衛邸。
近衛忠煕は割とテンプレ通りの麿ですね。
近衛はさておき、ここで月照も出てきます。
イメージはぴったりです。変なエフェクトはかけなくてもよかった気がしますが。
やっぱり気になるのが、ガバガバのセキュリティというか……。
自分たち(=一橋派)に有利な「詔」をもらうなんて最高機密情報を、西郷どんの前でペラペラ喋っているあたりでしょう。
見れば見るほど一橋派が嫌いになってしまうのは、どうしたものでしょうか。
遊郭に入り浸るアホボン一橋慶喜のために、詔まで利用するとは……と怒りすら湧いてきます。
ちょいちょい出てくる
「この国をよりよくするためにも!」
というセリフについても受け入れ難いものがありまして。それはいくらなんでも。
正助の縁談決まる!お相手は……?
薩摩では、大久保正助に縁談があるそうです。
脚本家先生が大好きなコイバナだよ~(ゲンナリ)。
そして3年4ヶ月ぶりに、西郷どんは薩摩の実家に帰ってきました。
わあ~。なつかしい~、って言いたいんですけど……誰にも思い入れが持てないので、特に感慨はないです。
西郷どんは仲間と飲み会に参加するのですが、仕事の守秘義務があるからとノリが悪い。しまいにはキレてしまいます。
いやいや君ら、そこは雑談すればええやん。
思い出話でもええやん。
なんなんでしょう、薩摩隼人のコンプライアンスは。仕事の話が出来ないのは当たり前でしょうに。
あっという間に場は白けムードで、これは辛いなぁと思っていたら、大久保どんが「結婚するんだ」と話し始めました。
座は再び盛り上がり、酒が進みます。ホッとしました。
翌日、大久保の嫁候補をジロジロと仲間たちが見ています。
もしかしたら「青春の一ページ」というシーンで切り取りたいのかもしれませんが、正直、失礼だし、ゲスだし、武士としてあまりに品格がない。
菓子を盗みに行く、道ばたで小判を見てはしゃぐ、篤姫を見てヘラヘラとスケベ笑いする、磯田屋に入り浸る。
そんな本作だから、もう言うのも虚しいんですけど。
ああ、どうしよう。
江戸編が面白いとは別に思わないのですが、それでおも薩摩編のホームドラマよりははるかにマシだったんだなとしか思えない。
このお殿様、終始、思いつきで語ってる?疑惑
ここで大久保が「結婚する気がない」と強がり、それを相手が聞いてしまい、西郷どんがとりなす――という、かなりどうでもいい場面が挟まります。
ナゼここまでひたすらどうでもいいのか?
キャラクターが全然描かれていないからです。
ファミレスで隣席のカップルが揉めていても、特に感心湧きませんよね。そういうレベルです。
この圧倒的な他人感。
普通、三ヶ月みっちり軌跡を見てきたら、親しみが湧いてくるものですけど……それがない。
西郷どんが祈っていた成果もあったのか、斉彬に男児が生まれました。
その斉彬は写真を撮っていて、山田為久をモデルにします。斉彬は写真機を動かしながら、この国がなくなるかもしれないのに、家のことは小さなことだ、と話しています。
要するに、島津斉彬は「有志大名=国単位で家の利害を超えて働くすごい男」ってことなんだろうなあ、とは思います。
ただ、その辺は、解釈にもよるんでしょうけど、「有志大名=家のことは拘らない」という単純な図式ではないのでは?
斉彬は自分が命を簡単に捨ててでもやる気だというキャラ付けを為されているように思えるのですが、以前、指摘した通りそんな単純なことじゃない。自分が死ぬなり滅びれば、家臣領民が危うくなる。
と、そこまで考えていないのは無責任で異常にすら思えてしまうのです。
ウダウダ書いているんですけど、本作の斉彬って、
【殿様は思いつきでものを言う】
ように見えてしまうんですね。
ケン・ワタナベの圧倒的存在感で押し切っていますけど。
西郷だけじゃない 斉彬もまるで進歩していない
「メリケンが、脅してくる。フランスから軍艦来る」
と言っている斉彬。
なんかこの程度の外交把握で大丈夫なんでしょうか。
一橋派の岩瀬忠震は一生懸命交渉して、アメリカ側のハリスも驚くほどしっかりと条約について煮詰めているわけです。
要は、脅すだのなんだの、そういうフェーズはとっくに通過している、あるいはその前です。
わけわからん攘夷をぶちかました結果、
「やんのかコラァ!」
と逆襲されるわけであり……。
とりあえず、無茶せずに条約に応じれば襲われないことを幕府のトップは理解しています。
とにかく、何がおかしいか?って、斉彬が第一話からまるで進歩していないんです。
本当に開明的ならば、
「これからは貿易の時代だ。メリケン相手にあの薩摩切子を売れば金になる。メリケンから、便利なものも入ってくる。軍艦だって買えるのだ」
くらい言って欲しいです。
ジョン万次郎相手に余裕ぶっこいていましたけど、何も聞いていなかったとしか思えないです。
開国して、そこからどうするか。
徳川斉昭はともかく、島津斉彬と松平春嶽はそこまで進歩していないと一橋派として駄目でしょうが。いつまでビビってばかりなんだか。
これに実はナイスな突っ込みをするのが島津久光です。
「戦して勝てるち思っとるのですか?」
いいぞ久光! 賢いぞ!
「勝つことではなく、つきあうことだ」
……もうわけがわからない。やっぱり開国貿易すべきってわかっていますよね?
斉彬は何が言いたいんですか。
本当にその場の思いつきで、一貫性のないカッコイイことをペラペラ言っているようにしか思えなくて辛いです……。
老中・阿部正弘がナレ死
大久保どんが祝言をあげました。よかったですね。
そして老中・阿部正弘がナレ死。って、えぇえええええ!
これは流石にないでしょうよ。
藤田東湖の紀行死レベルでありえない。
というか冷静になって考えてみると、本作の阿部正弘ってイケメンであること以外特に存在意義を感じないというか、有能さとか、一橋派の工作の中での役割がわからないままでした。
んで、いきなり退場って、一体なんだったんだろう……。
西郷どんは、大久保の祝言に間に合わなかったものの、二人で語り合います。
新婚初夜にやって来て酒を飲む親友ってどうなの、と思わなくもないですが、
「江戸に連れて行こうかと」
上からマウントをとってきた西郷どんに、大久保ガチギレします。
西郷家は貧乏なのに、やたらと金を使いやがって、とのこと。そうだそうだ、もっと言ってやれ!
年貢が重すぎて苦界に身を沈めたフキどんの前で、年貢が原資の酒を飲む西郷どんにもっとガッツリ詰めてやれ!
二人は喧嘩別れしてしまいます。
が、翌朝大久保の新妻・満寿が江戸に行くよう言います。
西郷どんを追いかける大久保。
西郷どんも、忘れ物をしたと駆け戻り、大久保を迎えに行きます。
【わっぜよか場面用BGM】が流れるので、多分いい場面です。
江戸行き(実際は熊本まで)を許可されておきながら断って、でもやっぱり行く、とか。
島津斉彬に直接お願いしたことをそんな簡単にオン・オフ決めていいのですかね。
MVP:阿部正弘
結局よくわからないまま、彗星のようにイケメンが消えた、ってところですかね。
出番が少ないぶん、極端なアホにされなくてよかったです。
総評
なんだろう、この虚無感は……。
尺を使っているのに政治情勢がサッパリわからない。
脚本家は、歴史を知らない人向けにもわかるように書いているそうですが、ある程度、把握していないと意味がわからなくなるんじゃないかと思います。
登場人物の中身も入っていない気がするのです。
やたらとエキセントリックな行動をしているだけで、一番気合いの入っている島津斉彬すら一体この人はなんなんだろう、と毎回戸惑っています。
本作で、斉彬を好きな人が多いのは理解しています。
しかし、個人的には毎回なんだこいつは? と突っ込んでしまう。
いつもカッコつけた態度で、
「俺は外国の脅威をわかっているんだぜ」
アピールしてきます。
それをわかっているのは俺だけアピールしていますけど、では具体的にどうすればいいか、その説明を聞かされたことがない。
俺は命も惜しくないぜ、国のために動くぜ、とかかっこつけて意識高いこと言うばかりで。
あとは新しい物を受け入れる俺カッコイイぜアピールするばっかりで。
もう、アピール馬鹿にしか思えない……。
きついこと言って申し訳ないとは思うんですけど、支離滅裂なんです。
思えば去年の小野政次は、
「私なら戦わぬ道を探ります」
と短い言葉で、簡潔に、そして的確に、直虎の進むべき道を説明していたなぁ、と。
斉彬のように、フワフワした言動が続いているのは、物語の創造神たる脚本家さんやその他の主要スタッフさんたちが「歴史の流れを掴んでいないから」だと思うのです。
たしかに林真理子氏の原作は、丁寧な文章で読みやすく、幕末導入物語の一冊としては悪くはないかもしれません。
しかし、そこには細かな政治事情や流血事情までは描かれてはおりません。
趣味で楽しむ程度であれば問題ない。
そんな原作です。
しかし、大河の世界観を構築するのであれば、もっともっと資料を読み込み、自ら歴史の流れを把握し、そして脚色なり新解釈を工夫したりして、自分なりの幕末フィクション作品へと展開しなければならないはず。
それが、歴史が得意でないからと言って、恋愛だの青春だのに逃げてしまうなんてのは、視聴者に対してあまりに不誠実ではないでしょうか。
まぁ、脚本家さん御本人に取材すれば一発で判明すると思うんですけどね。
さすがに阿部正弘や勝海舟など超一級どころの足跡ぐらいはご存知でしょうけど、知名度1~2級クラスの堀田正睦あたりから危ういかもしれません。
というわけで……。
今週も頑張ってよいところを探したんですけど……何の成果もありませんでした!!
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著:武者震之助
絵:小久ヒロ
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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等