『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第40回「波乱の新政府」


長屋暮らしは警備上からもマズイんですが

そんでもって、西郷どんは長屋暮らしの設定。
これ、美談というより、むしろ大迷惑で非常識なんですよね。

カダフィ大佐は、海外でも自分は質素な生活を送っているのだと、ベドゥインテントで寝泊まりしたそうなんですが……大迷惑なんですよ。

理由は言わずとも、わかりますよね?
警備体制が取りにくいわけです。ホテル最上階のスイートルームにでも宿泊してもらった方が、よほど楽なんです。なにせ、重要人物ですから。

ドラマ内では、大村益次郎が暗殺されるご時世です。

そんな折に、警備体制を満足にできそうにもない長屋に泊まり、子供を含めた周辺住民にまで大迷惑をかける西郷どん。
完全に【庶民アピール】が空回りして、下手すりゃ偽善者と誤解されちゃいますよ。

このあと、新政府が怒鳴っているばかりのどうしもようない会議。
明治維新150周年で、相も変わらず嫌がらせレベルの無能政府が映像化されていきます。

新政府になっても、フードコードで騒ぐヤンキー漫画レベルは据え置きのようです。

 


トータル何回メシ食っとんねん

再び食事シーンへ。
今日だけでトータル何回メシ食っとんねん!!!

なになに?
スタッフで美味しく食べてますって?
知らんがな。

しかも、です。岩倉は女遊びにうつつを抜かすシーン。

アホかっ!
って、いやいや、考えてみりゃ西郷どんだって磯田屋で遊びまくっていましたもんね。

にしても、妾とキャバクラシーンが好きな本作ですよね。

いくら西郷どんが質素アピールしたってもう手遅れ。
この人は、奄美大島から搾取した金を原資に磯田屋で遊んでいたゲスだよな――としか思えなくなっている。

あーあー、もうどうしちゃったのよ。

ここから西南戦争へ向かうはずなのに、
・マイホームパパ
・食事
・キャバクラ
ばっかりで先が見えません。

 


西郷の健康状態にでも注目すりゃいいのに

このあと、大久保と西郷どんが飲酒しております。

西郷どんが酒を飲まないとか、そういう反省モードのアピール(?)なんかより、悪性の下痢とか腫れ上がった睾丸あたりを描いた方がはるかに【深刻で心に刺さる】と思うんですけどね。

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なんせ彼の心身の衰えが、西南戦争の一因とも言われるほどです。

ここで政府の仕事をぶん投げておいた西郷どんが、横山安武の死をネタにして政府批判と大久保への文句をボソボソ言い出します。
それにしても、大久保はえらいなあ。私なら、

「政府の仕事を丸投げしておいて何を言う! チェストォォォォ!!」
とぶん殴っちゃいますよ。
ここまでイラつく大河主人公、初めて。
『花燃ゆ』の文ちゃんに謝りたいくらい。あの人はここまで酷くなかった。

ええ、わかりますよ。
こうやってなんとなく薄っぺらく、西郷どんは政府のやり方になんとなく反発していて死んじゃうんです、可哀想です〜ってやるんですよね?

この調子だと、非常に複雑な【征韓論】や、政府をめぐる事情【明治六年の政変】なんてやらないんだろうなぁ、はぁ……。

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色々すっ飛ばし、はいはい、来ました、廃藩置県

大久保は木戸と面会しました。

ろうそくをつけてなんとなく雰囲気を出していますが、肝心の話は特に中身が特にないまま、
「廃藩置県をやる」
と言い出します。

だから廃藩置県に至る経緯をもっと真面目にやっていればいいんですよ。ヤル気ない?

役者さんではなくて演技指導がポンコツなんでしょうけど、暗い顔をして低い声で喋らせ、怒鳴らせたらなんとなくエエと思っているのは、もう、ヤメましょうよ。
辛い戦場での経験を経て、キャラクターに重厚感が出てきたっていいでしょうに……。

数日後、いろいろすっ飛ばして、はいはい、来ました、廃藩置県。

ヤンキー漫画ですので、ここでも政府官僚は怒鳴ってキレるばかり。よくこんな無能どもが雁首そろえて政府やれたよなぁ、としか思えません。

ここで木戸が、西郷が不在であると言い出します。

「西郷がおらんかったら廃藩はできん!」
ってな趣旨のことを怒鳴りつけるわけですが、ワケわからん。
なぜ、あんな丸投げマイホームパパに、今さら頼らないといかんの?

 


スピリチュアルで意味不明な説得力

ここで、西郷どんが遅刻してやって来ます。

すごいタイミングだ。
めちゃめちゃ揉めるってこたぁ分かってる場に、ノソノソと遅れて登場。下手すりゃ登場前に決裂して終わってたで。
こんな無能を頼るしかない明治政府に、絶望感しか湧いてきません。

しかも西郷どんの言う言葉が、スピリチュアルで意味不明です。

「御親兵はみんな信じてくれているのに! こんな政府でいいの! 戊辰戦争で死んだ8千人に申し訳ないと思わないの!」

おうおうおう!
もとはと言えば、あなたの指図で放火強盗を繰り返し、日本中(特に東日本)を戦場へと巻き込んだあの戊辰戦争――。

自分で殺しておいて、自分で追悼して、自分で利用する。
もはや最低のマッチポンプです。

しかも、このスピリチュアルな説教に乗っかってしまう明治政府ときたら……。

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このあと、西郷どん相手に反省し出す大久保も意味がわかりません。
西郷どんのふざけた態度のほうが、大久保よりはるかに問題ある。

このノリのまま西南戦争に突入すると、もう笑いがこみ上げてくる悪寒しかしなくて、しんどい。

西郷どんがおにぎりを大久保に勧めるわけですが、私にはアレに見えて仕方なかったのです。

「食べたものの視聴率が壊滅するデスおにぎり! 文ちゃんのあの伝説が時を超えて!」
「うまかなあ」
「せわぁない」

廃藩置県やっている場合じゃねえ! これぞ悪夢のコラボだ!!

 

死者の気持ちを勝手に代弁して、脅迫に使うゲスさ

言うまでもなく、私は本作の西郷どんが大嫌いです。
ますます嫌いになってきました。

どこが最低かというと、戊辰戦争マッチポンプ言動と、死人のイタコ気取りというところです。

横山安武にせよ、戊辰戦争の8千人の死者にせよ。
ああいう状況で、よくもまあ、死人の代弁出来ますよね。

自分から「戦の鬼」とかなんとかノリノリで戦争を起こしていて、今になったら死んだ人に申し訳ないと思わないのか?って、どのクチが言うんだ。

そもそも、死人の気持ちなんて生きている人間にはわからないですよね。
いや、死者の思いを背負って生きるのは悪いことじゃない。

最悪なのは、死者の気持ちを勝手に代弁して、脅迫に使うことでしょ。

そういう最低最悪のゲス行為。
西郷どん、死者はアンタの役に立つために死んだわけじゃないんだぞ!
それが、どうすれば、今のようになってしまった?

役者さんが体重を増量させてまでなりきろうとしている努力が虚しいです。
ただのコスプレに見えて来ます。

 


考察:高校の世界史でもバツがつくレベルの歴史観?

こんなブログがありました。

◆地上波テレビ、衝撃の凋落。 - 茂木健一郎 公式ブログ(→link

色々とお騒がせツイートでお馴染みの茂木健一郎氏。
そのブログの中に、こんな表記がありました。

続いて、大河ドラマ『西郷どん』を見ている人、と聞いたら、その結果があまりにも衝撃的だった。
なんと、2000人中、たった「一人」しか見ていなかったのである。

コレをもってして、
「大河は若者から支持されないんだ!」
と判断するのは、ちょっと早い。

以下の記事もご参照いただければ。

◆『おんな城主 直虎』の「好評意見」が「厳しい意見」を上回る 真田丸から2年連続(→link

追悼盤CDがベストセラーになるほど、惜しまれて話題となった第33回「嫌われ政次の一生」。
最終回をぶっちぎって、855件もの意見が届き、しかもそのうち72.4パーセントが「好評意見」だったとか。

特に、20代以下の女性の意見が多かったのが顕著だったようで、
「はじめてドラマを見て泣いた!」
「名前も知らない人物の一生に、ここまで心を動かされるなんて」
そんな熱狂的な意見が多くあったようです。

まさに「神回」でした。

かように若年女性を虜にする大河もあるんです。

しかも、昨年の話。
要は、今年がダメだってことでしょ。

しかし、この若者離れ。
特に受験生が本作を見ないことは吉報なんですね。

その理由を説明させていただきましょうか。
参考にして欲しいのは以下の記事。

◆西郷どんが「革命家」? 大河に違和感を抱く理由(→link

注目したいのは以下の記述です。

ドラマでは、西郷と同じ流罪人だった川口雪篷(1819~90)が、舟で島を出る西郷を、自ら書いた「革命」の旗を振って見送った。雪篷は、蘭学者の小関三英(1787~1839)が翻訳したフランス皇帝ナポレオン(1769~1821)の伝記『那波列翁(ナポレオン)伝初編』を島に持ち込み、西郷にナポレオンの業績を教えている。

雪篷がナポレオンを知っていた証拠はないが、書がうまく、流罪になる前は藩の書物の筆写が仕事だったというから、ナポレオンの伝記を読んでいても、革命の旗を自作してもおかしくはない。ドラマの時代考証を担当した歴史学者の磯田道史さんは『素顔の西郷隆盛』(新潮新書)の中で「西郷は島暮らしで革命思想を育んだ」との見方を示している。このシーンには磯田さんの「革命家・西郷」を印象づける狙いがあったのだろう。

西郷隆盛がナポレオンの伝記を読んでいたことは、史実です。

ただ、それは、
【江戸後期から幕末にかけて、ナポレオンブームだった】
という理由ではないでしょうか。

2015年『花燃ゆ』における吉田松陰は維新側とみなせるとしまして、2013年『八重の桜』でも山本覚馬(ヒロイン兄)が佐久間象山からナポレオンについて聞く場面がありました。
それを言うなら、勝海舟だってナポレオン戦争の戦術を参照にしております。

那波列翁伝初編
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それを、西郷独自の革命路線にしちゃった……。
誰も止めないどころか、もしも時代考証担当者がそういう見方をすすめていたとしたら、ちょっと洒落にならんのでは。

本作のつたなさは、脚本家のせいであるとされます。
それだけはないでしょう。
こんなお粗末な歴史考証、イメージ先行のデタラメをやらされて、うまくいくはずがありません。

ナポレオンは自ら革命を起こしたわけではない。
「抑圧された人々を自由にする」という大義を掲げる一方で、共和制を終わらせ、他国に次々と戦いを仕掛けて皇帝に就いている。彼が率いたフランス国民軍は徴兵制によって編成された「草莽」の集まりだったが、封建領主らの傭兵軍を次々に撃破している。

この考察は、うなずける部分があるにはありますが。
ちょっと不足部分もありまして。

「草莽」と言いますか、国民徴兵制、身分制度によらないフランス軍の組織改革を行ったのは、革命政府の政治家であるラザール・カルノーなのです。
草莽を思いついたのはナポレオンではなく、彼はカルノーの改革に便乗しただけです。

ナポレオン本人の革命家としての活動は、残念ながらさほど目立ちません。
むしろ蜂起した民衆に容赦なく砲撃をくわえ、政治家の愛人であったジョゼフィーヌを引き取り、大敗した東方遠征を誤魔化してクーデターを起こす……そういった、強引な立ち回りのうまさで出世した部分が大きいのです。確かに用兵術は優れておりましたが……。

ともかく、そんなナポレオンを革命家と言い切ったなら、高校の世界史でもバツでしょ。
なにせ、彼の存命当時から、世界一ナポレオンに厳しい目線を見せるイギリス人は、こんなこと言ってはフランス人をコケにしていました。

「ナポレオン? ああ、フランス革命のドタバタに便乗しただけの山師みたいな奴だね!」
「あんだけ大騒ぎして、王様、王妃様、貴族どもをギロチン送りにしておいて、あんなよくわからないナポレオンを皇帝にするとか。フランス人がバカ過ぎてマジでウケるw」
「革命起こしてフランス王族ボコボコにして、オーストリア出身の王妃を斬首しておいて、今度はナポレオンがオーストリア皇女と結婚ッスかw」

現在でも、イギリス人著者のナポレオン伝は容赦が無く皮肉に満ち満ちており、むしろ、
「あのナポレオンというカスを倒したイギリス、マジ素晴らしいよね!
という感覚です。

ま、ナポレオン戦争を終結に導いてから、イギリスは大英帝国への道を邁進するわけですからね。

※イギリス人「俺らの先祖がナポレオンにとどめを刺したワーテルロー、マジで最高だよなぁ!」

イギリスによる紳士的なフランスへの嫌がらせの一例:
イギリス「ユーロスターで、ついにフランスともラクラク往復できるねッ!」
フランス「それはエエんやけど……イギリス側の

ターミナルがウォータールー駅ってどないもんやろか? フランス人にとってはトラウマもんの地名やで(※ナポレオンが大敗した「ワーテルローの戦い」戦勝記念の名前)」
イギリス「ごめんごめん、気がつかなかったぁ! ポスターで告知するねッ!」

イギリス側ポスター掲示:

ナポレオンの絵のセリフ「ワーテルローのことは忘れろ!!」

フランス「わざとやっとんのか!!」

※英語で「ウォータールー(ワーテルロー)」という単語は、「大敗北、壊滅、大失敗、どん底に転落」という意味が。失恋ソングに『恋のウォータールー』なんてありますね。ひでえ!

 

まあ、イギリス人ほど辛辣でなくとも、ヨーロッパ中が、
「革命で王族倒して自分が皇族になるって意味わからない……」
と困惑しきっていたんですね。

自分が帝位についた時点で、革命家と言っちゃいけませんな。

江戸時代の見方だって、頼山陽の漢詩が『仏郎王歌(フランス王の歌)』というタイトルですし、カッコイイ王様扱いされていたわけです。
ナポレオンの伝記を読んだだけで革命家扱いっていう時点で無茶苦茶。
それ以前に、ナポレオンを革命家だと思っちゃう時点でダメ!

もう一つダメだという、大きな理由があります。

幕末当時のフランスは、ナポレオン3世のもとで第二帝政下にありました。
そのフランスは、幕府を支援して徳川慶喜に軍服を贈っております。

西郷が倒した幕府の方が、ナポレオンのフランスによほど近いんですね。

ナポレオン3世から贈られた軍服姿の徳川慶喜

パークスの描き方のお粗末さでも思いましたが、西洋史の先生を連れて来ることは出来なかったんですか……まあ、逃げられたのかもしれませんけど。

こんな高校の世界史でもバツがつけられる歴史認識で、大河をやるのはさすがに危険。
皮肉な見方をすれば、西郷の薩摩および長州中心の明治がやったことは、ある意味ナポレオンに近いですよ。

・最終的に敗北する対外戦争
・言論弾圧
・革命期の民主主義制度や、女性の権利をむしろ後退させた数々の政策ミス

薩摩が武力倒幕のために殺害した赤松小三郎、あるいは会津藩の山本覚馬あたりの方が、よほど改革にふさわしい思想を持っておりました。

赤松小三郎
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まぁ、番組サイドが、ナポレオンという人物についてマトモに調べたとすら思えない。

◆いよいよ革命の表舞台へ!『西郷どん』BD・DVD第参集PV公開(→link

それだけに、こういう宣伝を見るだけで、恥ずかしくって、もう、いたたまれなくなって来ます……勘弁してくれよ。世界史選択者にまで悪影響をおよぼしおって。

今の学生が見ていないと知ってホッとしています。
『西郷どん』は日本史のみならず、世界史専攻者にまで悪影響を及ぼしかねません。


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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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