桜田門外の変と徳川斉昭の死――。
栄一のような若者も「生まれつき身分がある幕府がおかしい」と言い出します。
そういう感慨を持っている人物は他にもおりました。
例えば福沢諭吉はどう言ったか?
「門閥制度は親の敵(かたき)でござる」
やはり史実の幕末人は語彙力が高い。
「胸がぐるぐるする!」とは言いません。
劇中では、先週亡くなった橋本左内が15歳時に執筆した『啓発録』なんて素晴らしいものがあります。
そういう史実と比較すると、劇中の栄一はちょっと物足りないような……。まぁ『麒麟がくる』みたいに小難しいことを言わせたても、どうせ気付かれないということかもしれません。
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「草莽の志士になる!」
世の中をよりよくしたい!
そんな思いを胸に江戸へ来た栄一は、人々の暮らしが苦しくなったと胸を痛めています。
大橋訥庵は江戸は呪われたと嘆く。幕府が無策だからこんなことになる、と栄一も怒りを抱くばかりです。
そんな栄一は留守を守る千代に惚気ています。
本作は夫婦愛にも注目したいようですね。
江戸での栄一は剣術修行にも取り組みます。その場には尾高長七郎も居合わせている。幕末の青春ここにあり。
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そして栄一は「草莽の志士になる!」と高らかに宣言しました。
国をよくしたいという気持ちですね。
しかし家を守る妻は苦しい。千代は不安そうに胸をおさえて夫を待っています。周囲には優しい姑や舅がいて励まされています。
するとそこへ栄一が帰ってきて、バックハグ!
この夫婦の場面はカットもあったそうですが、例によってメディアでは「キュン死」を煽っておりますね。
◆ 『青天を衝け』橋本愛、吉沢亮との夫婦シーン「こっぱずかしい」 3度目の大河出演を語る(→link)
◆ 青天を衝け:キュン死!? 吉沢亮“栄一”、橋本愛“千代”をバックハグ 第10回「栄一、志士になる」明日放送(→link)
老中の暗殺計画
ここでお楽しみの徳川家康が突然登場。
和宮降嫁について説明してくれます。
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そして渋沢家での懸念事項だった千代の妊娠が判明しました。
おめでとうございます。周りも大喜びでほっこりでしょうか。仲睦まじく夫婦も会話し、生まれてくる子のためにもよい世の中にしたいですよね。
一方江戸では、篤姫もニッコリしながら、和宮が来ることを話しております。
政治的な思惑があっての結婚だと語る。
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でも……訥庵の塾はどこか不穏です。何をする気でしょうか。
尾高長七郎が驚くべき計画を打ち明けました。
老中・安藤信正の暗殺です。
武士の本懐に目覚めてしまった長七郎。覚悟を決めていますが、どうなる?
理解を得られずに苦しむ長七郎。そして江戸では安藤信正が襲われる事件が起きました。
【坂下門外の変】です。
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かろうじて一命はとりとめた安藤。
激動の幕末へ時代はどんどん突き進む最中、来週はいよいよ栄一と千代のベイビー誕生でしょうか。
総評
あまりきついことは言いたくありませんが……本作人物の語彙力はどうなったのでしょうか?
「お前が欲しい!」
「胸がぐるぐるする!」
まるで語彙力の低い昭和の小学校低学年ではありませんか。
そんな栄一が賢いと言われたところで、何が何やらサッパリ理解できません。
ついには漢籍引用もやらなくなりました。
『麒麟がくる』は語彙力が高いセリフ回しで、光秀はじめ多くの人物が漢籍や和歌を引用しておりましたが、『青天を衝け』では確実にそのペースが落ちている。
さて、そんな語彙力はさておき。
栄一は言うほど虐げられているかどうか、そこは考えた方がよいかもしれません。
彼は豪農出身で、教養も相当あります。現代で例えたら、私立の名門中高一貫校を経て、名門私大を卒業。
そんな上位数%のエリートなのに、奨学金返済で苦しむ人の前で、ぬけぬけとこう言うような無神経さがある。
「いや、俺、フツーの日本人スから! 俺ら虐げられてますよね!」
あんまりきついことは書きたくないのですが、そうしないとこの先いろいろまずいことになりそうですので、今回はあえて書いておきました。
『八重の桜』の八重と比較してみましょう。
女であるから勉強すらできない中、八重は努力していた。栄一は女のことで胸がぐるぐる。余裕綽々ですね。
同じお札の顔でも、明治の会津出身である野口英世と、関東の豪農出身である渋沢栄一では、階層も環境もまるで違います。
サンデル教授の見解も併せてどうぞ。
◆ サンデル教授が語る「大卒による無意識の差別」 「努力すれば成功できる」という発想の問題点(→link)
そうそう、千代ですが……同じ名前のヒロインが朝ドラ『おちょやん』にもいます。
どちらの千夜も聡明設定だとは思います。
けれども、説得力のある聡明さはどちらが上か? 両方ご覧になっている方は考えてみるのもよろしいかと思います。
「顰(ひそみ)に倣(なら)う」
本作から漢籍引用がすっかり消えてしまいましたので、私が勝手に補わせていただきましょう。
今週の千代は、留守中に胸をおさえておりました。
そこで思い出したのが次の言葉です。
「顰(ひそみ)に倣(なら)う」
中国の絶世の美女・西施は胸を押さえる仕草をした。
それがなんとも美しく、周囲の女性たちも真似をするけど全然イケてない。
形から入ってもダメだな――。
ということでこの言葉が生まれたんですね。
千代は確かに顔は美しいです。でもそれだけ。西施には成りえてません。
どうも千代は、虚なめでボーッと突っ立っている場面が多くて何かが変。不安でもあるのでしょうか?
しょうもない騒音には負けずにがんばっていただきたいのです。
出演者のスキャンダルは気がかりですね。2019年のように呪いなんて言われなければよいのですが。
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前髪クネ尾高と栄一の野望
今週の剣術修行も、またも長七郎の前髪が気になって仕方ない。
おまけに栄一に真剣をいきなり持たせる愚かしさ。
百姓だからダメ……とか言う以前に、人間として何もかもがダメで終わっているとしか言いようがない。栄一くん、バイトでも探していればいいのに。
もう、これからは彼を前髪クネ尾高と呼びます。みんな大好き『あまちゃん』リスペクトですね。
橋本愛さんについて調べていて気づきました。
なぜ『あまちゃん』役者が出ているドラマ評価は高くなるのか?
数多のコメントを読み込んでいると、のんさんが出ると期待する心理を感じます。
『あまちゃん』で朝ドラを改革した奇跡がまた起こる! 自分たちが大好きなのんさんは、きっと大河でも華々しく活躍する……そういうシナリオがあるようです。
ご本人がそう明言したのでもなければ、そこを期待されてもちょっとよくわかりませんが。
それはさておき……前髪クネ尾高に話を戻しますね。
テロ計画を栄一と喜作たちに話す。もう倫理破綻していて意味がわからん。
武士の本懐だ、老中殺して名を残すぜイェーイ!
って、現代人から見てもドン引きですが、福沢諭吉が見たらどうなるのやら。豊富な語彙力で罵倒して欲しい。
しかも栄一まで、幕府なんて役人ぶっ殺すと言い出す。栄一さん……アナタはこの後、慶喜につき、立場を変えますよね……。
渋沢栄一がなぜこれまで大河にならなかったか?
理由は明確。
なぜ、こんな鮫島伝次郎じみた奴の人生をじっくり見なくちゃいけないの?というところでしょう。
テーマも悪いが、描き方も悪い。
しかもここでテロを止める理由が「仲間が死んだら困るから」ときた。
本当にこのあとの【戊辰戦争】なんかを考えるといっそ笑えてきます。
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志士とか気軽に言ってますけど、一説によれば志士の死者は2,480人。そういう危険な思想をワクワク気軽に身につけるんですか。
そして坂下門外の変です。安藤信正が暗殺されかけても、失敗。
今週も殺陣が雑だ。
なぜか?
水面下で『魔界転生』か『柳生十兵衛あばれ旅』でも進んでいるんではないでしょうか。一流の殺陣スタッフはそちらにとられたと。
あるいは2022年の大河かもしれませんね。NHKも番宣に気合入っております。
不祥事にも落とし前をつけたし、あとは進むだけ。そういう潔さは素晴らしい。
しかし、今年は手を抜き過ぎでは?
こういうニュースも出てきました。
◆ NHK大河『青天を衝け』視聴率“大不満”で悪あがき~銭で見えてくる『テレビ・芸能マル秘報告書』 (→link)
ゴシップですので信じてはいませんが、こうして視聴率低下でアクセスを稼げるというのは、黄信号です。
本作関連ネットニュースのコメントも減ってきている。
飽きてきたという意見も。どうにも不穏です。
尊王攘夷とエコーチェンバー
歴史好き、大河好きの皆様なら、もうすでに耳には入っているでしょう。
ベストセラー『応仁の乱』の著者として知られる呉座勇一氏が、数々の問題発言から大河の考証担当を外されました。
その原因を分析する記事、あるいはその手の事象を説明する言葉は複数あります。
◆ツイッターは今や「2ちゃんねる」!気鋭の歴史学者も陥ったエコーチェンバーとは(→link)
◆秦正樹 「正しい知識」が陰謀論を助長する|政治・経済(→link)
◆今日もコロナのデマをラインで…家族が誤情報を信じてしまう「3つの心理」(→link)
では、誤情報を信じさせてしまう「心理的な仕掛け」にはどんなものがあるのか、いくつかあげてみたいと思います。例えば、占いで誰もがあてはまる言葉をいわれているのに、それが自分に特にあてはまることがらだと思うことがあります。これをバーナム効果といいます。
第三者からの情報は信じられるように思えてしまうことを、ウィンザー効果といいます。これは、多くの人が口コミを信頼する心理のことで、マーケティングなどの研究では、口コミが消費行動に影響を与えることが示されています。
あるものが持つ強い特徴により評価がゆがめられることを、ハロー効果といいます。ハロー効果のもっともわかりやすい例として、権威があげられます。誇大広告における「○○大学名誉教授推薦」や、「ノーベル賞の成分」などがこれにあたります。権威のある人の意見であれば、専門外のことがらであったとしても、もっともらしく聞こえてしまいます。
これを踏まえて『青天を衝け』のニュースを見てみますと……。
◆橋本愛が“初夜シーン”巡り謝罪?「青天を衝け」ごっそりカットに呆れた声(→link)
上記アサ芸プラスの読者層は「フェミが悪い!w」「ポリコレ棒!w」と言いたいのでしょう。
自分らの求めた表現がないとそういう何かのせいにする。単純にどうしようもないほどくだらないか、橋本愛さんの口が滑った可能性は考慮しない。
妥当性のある論理を排除し、自分たちの好きな結論ばかりに飛びつく。典型的です。
そして次。
◆井伊直弼さえもチャカポンな弱者として描く 大河『青天を衝け』のもたらす衝撃(堀井憲一郎)(→link)
井伊直弼の「チャカポン!」に驚いている層ばかりかのか?
ざっと調べてみると、歴史に詳しい、幕末史に詳しい層は(この層はそもそも脱落者も多いのですが)、「最低の井伊直弼描写」と呆れ果てている模様です。
要するに、知識が乏しい層が騙されている、と。
それをこういうYahoo!ニュースなんかで流せばますます陰謀論は拡散します。
◆『青天を衝け』草なぎ剛、慶喜として見せた“無言の20秒” 大河ドラマ史に残る桜田門外の変(→link)
次の記事は、わかりやすいのでちょっと引用させていただきますね。
◆『青天を衝け』悲劇の名場面が話題に 「桜田門外の変」を過去の大河と比較(→link)
今後、津田梅子や北里柴三郎や、樋口一葉、夏目漱石、福澤諭吉、岩倉具視、高橋是清、板垣退助、伊藤博文、新渡戸稲造など続々お札の顔になった人たちが出てくることを期待する。そう思うと江戸末期から明治期はお札の顔になった人を多く輩出している。
お札の顔にせよ、首相経験者にせよ、爵位の数にせよ。
「幕末から明治期はお札の顔になった人が多いんだね! ドラマに出て欲しいなぁ」ではちょっと突っ込みが甘いのではないでしょうか。
出身階層、地域……そういうものをデータ照合して、格差や政治背景を読み取ると面白い。
ついでに言いますと、有名人がカメオ出演しまくるフィクションがお好きなら山田風太郎明治小説集でもどうぞ。
あんまりいい形で出てこなかったりしますけど。
川路利良はフランスの列車でやらかす場面が出てきます。
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さらには【桜田門外の変】について。
対して『西郷どん』と同じく西郷隆盛が主役の『翔ぶが如く』(1990年 直弼役は神山繁)では第14回の中盤の見せ場になっていた。薩摩藩士が「チェスト!」と叫んで活躍する。同じ桜田門外の変でも描き方はいろいろで、『青天を衝け』では最後のひと太刀は「きえええい」だった。
これは主役が薩摩閥ということでなく、史実でもとどめを刺したのが薩摩藩士だからだと思います。
むしろ今年は不正確ですし、今後の展開を考えるとよろしくない描き方です。
「きえええい」は一応示現流猿叫とわかりますが、それにしたって実際の稽古と比べるとお粗末すぎてもう。
『ゴールデンカムイ』の鯉登役・小西克幸さんを見習いましょう。それを言い出したら構えや何やらがもう。
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そして同記事の中で、かなりよろしくない書き方をしていたのがここでしょう。
折り合いをつけながら激務に向き合う直弼、強引に見えて、敵を作ってしまったことを気にする斉昭、尊皇攘夷の気運のなかふと考える栄一……誰もが少しずつ揺れている。誰ひとり正解をもっていない。より良い世の中をどうしたら作ることができるか、迷いながら先に進んでいく。その姿はまるでタイトルバックの墨の滲んだような軌跡のようだ。ちりちりと揺れる人生の道筋にこそ魅力があるように感じる。
【桜田門外の変】では、揺れるどころか日本人の善悪正邪のタガが外れます。
アメリカ議会襲撃事件がありました。あれが成功して、Qアノンが「ウェーイ! 俺ら暴力で世直しできるぅ!」と思った世界をご想像ください。
◆ 米議会襲撃、FBIがこれまでに逮捕した人々(→link)
その結果が、大久保利通、伊藤博文……こうした大物政治家の寿命を縮めたと言えなくもありません。
伊藤博文の暗殺犯は日本人ではない。しかし、弁護する日本人の中に「義士ではないか」とみなす者がいたことは重要です。
そのあたりは一坂太郎氏『暗殺の幕末維新史』(→amazon)でもどうぞ。
尊王攘夷でウェイウェイしていた連中が出世して「まぁあれも青春だったね!」とごまかした。
それにコロっと丸め込まれているだけ。精神構造は危険です。
さらに本記事では、徳川斉昭が死を前にしてキスするシーンについても言及しております。
例えば、「案ずるべきはこの水戸ぞ」と言う斉昭。彼が亡くなる直前、妻・吉子(原日出子)に「ありがとう」と口づけをしたこともSNSを沸かせた。この時代に日本にも口づけは存在していたとされるが、欧米のように挨拶のようにカジュアルに用いられてはいないはずで、別れ際にすることは欧米的と考えられる。開国をあんなに反対し強引過ぎるほどだった斉昭が欧米的な別れの挨拶を行うこと、妻への愛をあったことを示すことが極めて興味深く、斉昭の人物として深みがいっそう増したように感じる。さすが竹中直人。
そもそも「欧米のように」という括りも雑だな……と思ってしまいます。
これを東洋と置き換えてみたらわかりやすいでしょう。
「神秘の東洋、京都にあるテコンドーの本場・の少林寺」みたいに言われたらどう思います?
当たり前ですがイギリスとフランスではキスへの捉え方も違う。だからこそ“フレンチキス”なんて呼び方もあるわけです。
そしてもうひとつ。
キスって病気感染の危険性があります。口内に切り傷なんてあると大変。粘膜と体液の接触は慎重になりましょう。
体液って?この場面では唾液ではありません。血液です。これは後述でも。
先週の桜田門外の変は、私としてはとてもジューシーでフルーティに思えました。
雪にばら撒かれた血のりが、いちごシロップかき氷みたい。あのあとスタッフがおいしくいただいていても納得です。
不潔感と乙女ゲー感漂う下半身大河
さて、先週の場面ですが。
◆ 青天を衝け:烈公・徳川斉昭の最期はキスシーン まさかの“チュー死”?「さすが竹中直人」「記憶に残る退場」(→link)
◆ <青天を衝け>“衝撃キス”シーンに感動の声!「ラストに全部持ってった」(→link)
なにが「まさか」って、この直前に斉昭は吐血していたと思うのです。
瀕死の症状で病気感染の可能性すら無視してキスって、ちょっと正気を疑います。本当に愛がない。相手を思う気持ちがない。自分が気持ちよくなりたい。
このドラマってそういう自我と欲求ばかりですね。
呼吸器系の喀血なら論外。消化器系の吐血でも気持ち悪い。口から血を流してキスって……ゾッとしすぎて忘れられそうにない場面でした。コロナ時代にこの意識ですか。
そんなにキスが大事ですか?
そのうえで指摘しますが。
自分の欲求ばかりを重んじ、最愛の妻を病気感染リスクに晒すような男の愛って何でしょうね。自己愛でしょうか。
そして今週はこれ。
◆モデルプレス - <青天を衝け>吉沢亮“栄一”、橋本愛“千代”をバックハグ!「お前に会いたかった…」(→link)
バックハグを見どころにするあたり、本気で時代劇を潰したい誰かの陰謀としか思えなくなってきた……。
韓流や華流の時代劇では、ヒロインがブランコをこぐ場面が定番です。これは少女漫画由来とかそういうことでなく、伝統。それこそ文学や画材の定番ですね。
こういう場面を見ると、
「ああ、こういう伝統があるんだ。当時の人は風流だなぁ」
と思えるわけです。
『麒麟がくる』では、温石や当時の歌謡を使っていてそこがきっちりできておりました。
それを20世紀以降の少女漫画の影響であるキスシーンをアドリブでぶっこんだりして……風情も何もあったものじゃない。時代劇をぶち壊しています。
そうそう、本作のキスシーンがアドリブであれば、ハラスメント面でも問題がありますよね。
往年のハリウッドでも「役者が戸惑う演技がみたい!」とぶっつけ本番をやらかし、問題視されています。
それを踏まえた対応をしてこそ2020年代なのに、大河が絶望的だと思われかねませんね。
本作関連ニュースって、何なのでしょう?
秘訣にせよ、痔の話である必要が全くない。今週も妊娠を喜ぶ場面がむしろ不気味だった……そういえば『西郷どん』でも妊娠出産描写が気持ち悪かったですね。
なぜこうも不潔感が漂うのか。しかもそれを喜ぶ反応をネットニュースで流すので、もう下劣度が半端ない。
栄一13歳が無意味に褌姿を披露するだの。
栄一と慶喜が並んで排尿だの。
栄一が千代相手に「お前が欲しい!」だの。
死ぬ間際にキスをする斉昭だの。
そして、初夜の場面でオナゴが泡吹くだの。
◆ 橋本愛「土下座」 「青天を衝け」で「キュンキュンを100%背負い込んだセリフ」まさかのカットに謝罪(→link)
橋本は取材で「夫婦になって、初夜のシーンで、栄一さんが『抱いていいか?』みたいなセリフを言う。なんだこりゃ!?と思った。テレビの前のおなごたちが泡を吹いて倒れるんじゃないかという、キュンキュンを100%背負い込んだセリフだと思った」とコメントしていたが、そのシーンはなかった。
これに「まさかまさかの、取材でたくさん取り上げていただいたシーンが、見事にごっそりカットされていましたので、盛大にお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。土下座」と謝罪した。
おかしいとは思っていました。おなご泡吹きタイムですね。橋本さんがあげているセリフがちっとも出てこないと。
気の毒です。こういう放送されるかわからない乙女ゲーじみていて、プロットにさして関係ない、そういう場面を見どころだと話す姿勢にも疑念を感じます。
この薄っぺらさは何でしょう。
『麒麟がくる』での芦田愛菜さんは、演じる細川ガラシャへの思い入れを語っていて、流石だと思いました。そういう役作りを今年求めるのは高望みなのでしょうか。
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とりあえず、ここまで不潔感が漂ってくると、本作出演者が食品や衛生用品の広告に起用されて欲しくないとすら思ってしまう。
初夜に泡吹きだのなんだの語る女優さんが進める歯磨き粉なんて、子供たちには渡せないですよね……。
長谷川博己さんが宣伝するビールは購買意欲が湧くのに。
こういうニュースを見ている今時の若い女性が、
◆ 1億円のギャラ格差、#MeToo…ハリウッドは女性差別とこう闘ってきた【アカデミー賞】(→link)
初夜だのバックハグだの、そんなしょうもないことで喜ぶわけないでしょ。
老いを知らぬ強い心を持つためには
すべての黄金が光り輝くわけではない
彷徨う者全員が行き先を知らぬわけでもない
強き老人は枯れることはない
深き根に霜は届かない
炎は灰から立ち上がり
影を穿ち光は立ち上がるだろう
折れた刃はまた研がれ
無冠のものこそまた玉座へ登る
J・R・R・トールキン
◆BS1スペシャル 「渋沢栄一に学ぶSDGs“持続可能な経済”をめざして」(→link)
一体どうしちゃったのでしょう?SDGsという概念は渋沢栄一の時代はおろか、20世紀ですらなかったと思います。トランプ前大統領だって否定していましたよね。
古河市兵衛の足尾銅山開発に出資して支援し、その結果、銅の鉱毒による公害を引き起こした。
池端俊策さんが脚本を手がけた『足尾から来た女』を放送したNHKが知らないはずもない史実です。
あんな公害を引き起こしておいてSDGsですか。
それに、その時代にありえない概念を先取りしていたともっともらしく紐づけることはしてはなりません。
『麒麟がくる』の光秀や駒は、太平の世を望んでいました。
そのことを「現代人みたいに平和とかw」と嘲笑する意見も見かけましたが、文学芸術作品のテーマにおける平和への希求は定番中の定番です。
戦争は人を殺し合うこと。それが嫌だと思うことは、生き物として極めて単純明快、当たり前の感覚です。
とはいえ、光秀が「人権的にも戦争はいけません!」と言ってはおかしい。光秀が人権派戦国武将というキャッチコピーで紹介されてよいはずがない。
当時、儒教の教えとしてあった「麒麟の到来=仁政の実現」で表現したからこそ、あのドラマは成立するのです。
そういう良識がNHKから蒸発しつつあるらしい。何が起きているのでしょうか?
◆ 『青天を衝け』のマニアックな題材に対しての工夫 『あさが来た』のヒットに続くか?(→link)
毎回、渋沢が様々なミッションに挑むことで少しずつ成長していく様はRPG(ロールプレイングゲーム)のようでもある。前作の大河ドラマ『麒麟がくる』もそうだが、RPG的な導入を用意することで、ゲームで言うところのチュートリアル(操作方法の説明)に成功しており、視聴者を置き去りにすることなく、物語の中に誘導できている。
RPGも何も……ああいうゲームには下地になる話がある。神話や伝説でも読んでみましょうか。
そういうファミコンみたいにしないと入り込めないとか、大人が真剣な顔をして言うことではありません。
何でもかんでも台詞で解説されるのは世界観のぶち壊しで見ていて興ざめだが、かといって映像で全てを語る映画的演出が続くのは、テレビを観ている視聴者にとって負荷が強すぎる。特に歴史劇の場合、知らないことが多すぎると物語に入り込めない。
私は昔から歴史ものが好きで、自分で調べるところまで含めて楽しんでいました。
そういう昔のような楽しみ方をどうすれば再現できるか考え、自分にとって未知の時代を扱った歴史ものを鑑賞することを心がけるようにしています。
物語に入り込めるかどうか。それは自分自身で決めることではないでしょうか?
昨年も「忙しいから難しい話は見たくないでしょ?」というレビュー記事を見かけてガッカリしたことを思い出します。
まるで
「ステーキは食べられないからハサミで切って潰すべき」
と言われているようで、ものすごく違和感があるんですね。
『青天を衝け』レビューを見ていると『麒麟がくる』で伏線として使われていた漢籍への言及があまりに少なくてショックを受けたのですが、こういう考え方が主流ならそうなるでしょう。
ちなみに、エンタメの海外ファンダムではここまで緩みきっていないということも感じます。
VOD時代に「グチャグチャに潰してくれないと食べられません宣言」をしている日本は、今後、世界レベルで生き残れるのかどうか……。
己の思考回路を他人に握らせるな
このドラマは辛い。
ニュースは裸、下着姿、キスシーン、色気……そういうものに喜ぶものばかり。
何も考えずにダラダラしたい層が、大河という重厚だったはずの歴史劇を見て、今年は楽でエロいからいいと喜んでいる。
そうは思いたくないけれども、その手のニュースばかりでどうしたものでしょうか。
緊張感がまるでない。
斎藤道三が入れたお茶を平気でグイッと飲み干しそうな姿勢ばかりが見えてくる。
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先ほどトールキンを引用しましたが。いくつになろうと、強ければ枯れません。枯れないために何をすべきか?
難しいことはわからない、若い頃楽しんだものを懐古する――そういう逃げに入らず、攻めて、新たなものを見出し、頭を使うことでしょう。
本作が極めて退屈な理由は言わずもがな。
逃げに入って枯れた――そういう層ばかりを狙い撃ちにしているから。
だからこういうとっくの昔に連載が終わった漫画ネタで盛り上がっているのではないでしょうか。
どんなにしょうもない作品であろうが、歴史を学ぶ入口になればよい。ドラマ、漫画、ゲーム、それにソーシャルゲームだってそういうことは言える。
けれども玄関マットを踏んづけた程度で満足させ、「日本史素人のワイはこういうのを待ってたんや」なんて調子で図書館にすら行かない。偏りの激しい本作をアタマから信じてしまう。
その結果、
「明治維新のために大獄やって良かったよね! 水戸学最高じゃんね」
なんて考えだしたら完全に有害です。
トールキンの言葉を思い出しましょう。
強き老人は枯れることはない。この強き老人とは、知識を吸収する。そういう学ぶ意欲が強いってことだと思いますよ。
「大河で流れたことをコロっと信じる。それの何が悪いの?」
と言われたら断言できます。悪いです。このコロナ時代に、陰謀論に弱い脳を持っていては周囲にまで迷惑がかかります。
NHKはニュースで特殊詐欺の注意喚起をする。それなのに、大河で陰謀論に弱い脳を作る。
このマッチポンプのようなシステムは何なのか。
『鬼滅の刃』冨岡義勇の言葉でも借りましょう。
「生殺与奪の権を他人に握らせるな‼︎」
ドラマの感想ひとつとっても、ハッシュタグだのネットニュースだの丸呑みで信じちゃいけない。
ましてや歴史の勉強ともなればそれはそう。
歴史知識があるからといって、常に善悪正邪を判断できるわけでもありません。
自分で考えるクセをつけることが大切です。
◆ 【HBO!】呉座勇一「炎上」事件で考える、歴史家が歴史修正主義者になってしまうということ(→link)
そしてくれぐれも、こんなしょうもない大河を信じるな!!(冨岡義勇顔で)
生殺与奪の権を 他人に握らせるな!!
惨めったらしくうずくまるのはやめろ!! そんなことが通用するならお前の家族は殺されてない
奪うか奪われるかの時に主導権を握れない弱者が 妹を治す? 仇を見つける?
笑止千万!!
弱者には何の権利も選択肢もない 悉く力で強者にねじ伏せられるのみ!!
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【参考】
青天を衝け/公式サイト
















