栄一のような若者も「生まれつき身分がある幕府がおかしい」と言い出します。
そういう感慨を持っている人物は他にもおりました。
例えば福沢諭吉はどう言ったか?
「門閥制度は親の敵(かたき)でござる」
やはり史実の幕末人は語彙力が高い。
「胸がぐるぐるする!」とは言いません。
劇中では、先週亡くなった橋本左内が15歳時に執筆した『啓発録』なんて素晴らしいものがあります。
そういう史実と比較すると、劇中の栄一はちょっと物足りないような……。まぁ『麒麟がくる』みたいに小難しいことを言わせたても、どうせ気付かれないということかもしれません。
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「草莽の志士になる!」
世の中をよりよくしたい!
そんな思いを胸に江戸へ来た栄一は、人々の暮らしが苦しくなったと胸を痛めています。
大橋訥庵は江戸は呪われたと嘆く。幕府が無策だからこんなことになる、と栄一も怒りを抱くばかりです。
そんな栄一は留守を守る千代に惚気ています。
本作は夫婦愛にも注目したいようですね。
江戸での栄一は剣術修行にも取り組みます。その場には尾高長七郎も居合わせている。幕末の青春ここにあり。
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そして栄一は「草莽の志士になる!」と高らかに宣言しました。
国をよくしたいという気持ちですね。
しかし家を守る妻は苦しい。千代は不安そうに胸をおさえて夫を待っています。周囲には優しい姑や舅がいて励まされています。
するとそこへ栄一が帰ってきて、バックハグ!
この夫婦の場面はカットもあったそうですが、例によってメディアでは「キュン死」を煽っておりますね。
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老中の暗殺計画
ここでお楽しみの徳川家康が突然登場。
和宮降嫁について説明してくれます。
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そして渋沢家での懸念事項だった千代の妊娠が判明しました。
おめでとうございます。周りも大喜びでほっこりでしょうか。仲睦まじく夫婦も会話し、生まれてくる子のためにもよい世の中にしたいですよね。
一方江戸では、篤姫もニッコリしながら、和宮が来ることを話しております。
政治的な思惑があっての結婚だと語る。
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でも……訥庵の塾はどこか不穏です。何をする気でしょうか。
尾高長七郎が驚くべき計画を打ち明けました。
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かろうじて一命はとりとめた安藤。
激動の幕末へ時代はどんどん突き進む最中、来週はいよいよ栄一と千代のベイビー誕生でしょうか。
総評
あまりきついことは言いたくありませんが……本作人物の語彙力はどうなったのでしょうか?
「お前が欲しい!」
「胸がぐるぐるする!」
まるで語彙力の低い昭和の小学校低学年ではありませんか。
そんな栄一が賢いと言われたところで、何が何やらサッパリ理解できません。
ついには漢籍引用もやらなくなりました。
『麒麟がくる』は語彙力が高いセリフ回しで、光秀はじめ多くの人物が漢籍や和歌を引用しておりましたが、『青天を衝け』では確実にそのペースが落ちている。
さて、そんな語彙力はさておき。
栄一は言うほど虐げられているかどうか、そこは考えた方がよいかもしれません。
彼は豪農出身で、教養も相当あります。現代で例えたら、私立の名門中高一貫校を経て、名門私大を卒業。
そんな上位数%のエリートなのに、奨学金返済で苦しむ人の前で、ぬけぬけとこう言うような無神経さがある。
「いや、俺、フツーの日本人スから! 俺ら虐げられてますよね!」
あんまりきついことは書きたくないのですが、そうしないとこの先いろいろまずいことになりそうですので、今回はあえて書いておきました。
『八重の桜』の八重と比較してみましょう。
女であるから勉強すらできない中、八重は努力していた。栄一は女のことで胸がぐるぐる。余裕綽々ですね。
同じお札の顔でも、明治の会津出身である野口英世と、関東の豪農出身である渋沢栄一では、階層も環境もまるで違います。
サンデル教授の見解も併せてどうぞ。
◆ サンデル教授が語る「大卒による無意識の差別」 「努力すれば成功できる」という発想の問題点(→link)
そうそう、千代ですが……同じ名前のヒロインが朝ドラ『おちょやん』にもいます。
どちらの千夜も聡明設定だとは思います。
けれども、説得力のある聡明さはどちらが上か? 両方ご覧になっている方は考えてみるのもよろしいかと思います。
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