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【青天を衝け第10回感想あらすじ】
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不潔感と乙女ゲー感漂う下半身大河
さて、先週の場面ですが。
◆ 青天を衝け:烈公・徳川斉昭の最期はキスシーン まさかの“チュー死”?「さすが竹中直人」「記憶に残る退場」(→link)
◆ <青天を衝け>“衝撃キス”シーンに感動の声!「ラストに全部持ってった」(→link)
なにが「まさか」って、この直前に斉昭は吐血していたと思うのです。
瀕死の症状で病気感染の可能性すら無視してキスって、ちょっと正気を疑います。本当に愛がない。相手を思う気持ちがない。自分が気持ちよくなりたい。
このドラマってそういう自我と欲求ばかりですね。
呼吸器系の喀血なら論外。消化器系の吐血でも気持ち悪い。口から血を流してキスって……ゾッとしすぎて忘れられそうにない場面でした。コロナ時代にこの意識ですか。
そんなにキスが大事ですか?
そのうえで指摘しますが。
◆ 青天を衝け:竹中直人“日本を頑なに愛した男”徳川斉昭語る「アナーキーな人物」も「愛はとても深い」(→link)
自分の欲求ばかりを重んじ、最愛の妻を病気感染リスクに晒すような男の愛って何でしょうね。自己愛でしょうか。
そして今週はこれ。
◆モデルプレス - <青天を衝け>吉沢亮“栄一”、橋本愛“千代”をバックハグ!「お前に会いたかった…」(→link)
バックハグを見どころにするあたり、本気で時代劇を潰したい誰かの陰謀としか思えなくなってきた……。
韓流や華流の時代劇では、ヒロインがブランコをこぐ場面が定番です。これは少女漫画由来とかそういうことでなく、伝統。それこそ文学や画材の定番ですね。
こういう場面を見ると、
「ああ、こういう伝統があるんだ。当時の人は風流だなぁ」
と思えるわけです。
『麒麟がくる』では、温石や当時の歌謡を使っていてそこがきっちりできておりました。
それを20世紀以降の少女漫画の影響であるキスシーンをアドリブでぶっこんだりして……風情も何もあったものじゃない。時代劇をぶち壊しています。
そうそう、本作のキスシーンがアドリブであれば、ハラスメント面でも問題がありますよね。
往年のハリウッドでも「役者が戸惑う演技がみたい!」とぶっつけ本番をやらかし、問題視されています。
それを踏まえた対応をしてこそ2020年代なのに、大河が絶望的だと思われかねませんね。
本作関連ニュースって、何なのでしょう?
秘訣にせよ、痔の話である必要が全くない。今週も妊娠を喜ぶ場面がむしろ不気味だった……そういえば『西郷どん』でも妊娠出産描写が気持ち悪かったですね。
なぜこうも不潔感が漂うのか。しかもそれを喜ぶ反応をネットニュースで流すので、もう下劣度が半端ない。
栄一13歳が無意味に褌姿を披露するだの。
栄一と慶喜が並んで排尿だの。
栄一が千代相手に「お前が欲しい!」だの。
死ぬ間際にキスをする斉昭だの。
そして、初夜の場面でオナゴが泡吹くだの。
◆ 橋本愛「土下座」 「青天を衝け」で「キュンキュンを100%背負い込んだセリフ」まさかのカットに謝罪(→link)
橋本は取材で「夫婦になって、初夜のシーンで、栄一さんが『抱いていいか?』みたいなセリフを言う。なんだこりゃ!?と思った。テレビの前のおなごたちが泡を吹いて倒れるんじゃないかという、キュンキュンを100%背負い込んだセリフだと思った」とコメントしていたが、そのシーンはなかった。
これに「まさかまさかの、取材でたくさん取り上げていただいたシーンが、見事にごっそりカットされていましたので、盛大にお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。土下座」と謝罪した。
おかしいとは思っていました。おなご泡吹きタイムですね。橋本さんがあげているセリフがちっとも出てこないと。
気の毒です。こういう放送されるかわからない乙女ゲーじみていて、プロットにさして関係ない、そういう場面を見どころだと話す姿勢にも疑念を感じます。
この薄っぺらさは何でしょう。
『麒麟がくる』での芦田愛菜さんは、演じる細川ガラシャへの思い入れを語っていて、流石だと思いました。そういう役作りを今年求めるのは高望みなのでしょうか。
細川ガラシャの壮絶過ぎる死~父は光秀・夫は細川忠興~非業の女性38年の生涯
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とりあえず、ここまで不潔感が漂ってくると、本作出演者が食品や衛生用品の広告に起用されて欲しくないとすら思ってしまう。
初夜に泡吹きだのなんだの語る女優さんが進める歯磨き粉なんて、子供たちには渡せないですよね……。
長谷川博己さんが宣伝するビールは購買意欲が湧くのに。
こういうニュースを見ている今時の若い女性が、
◆ 1億円のギャラ格差、#MeToo…ハリウッドは女性差別とこう闘ってきた【アカデミー賞】(→link)
初夜だのバックハグだの、そんなしょうもないことで喜ぶわけないでしょ。
老いを知らぬ強い心を持つためには
すべての黄金が光り輝くわけではない
彷徨う者全員が行き先を知らぬわけでもない
強き老人は枯れることはない
深き根に霜は届かない
炎は灰から立ち上がり
影を穿ち光は立ち上がるだろう
折れた刃はまた研がれ
無冠のものこそまた玉座へ登る
J・R・R・トールキン
一体どうしちゃったのでしょう?SDGsという概念は渋沢栄一の時代はおろか、20世紀ですらなかったと思います。トランプ前大統領だって否定していましたよね。
古河市兵衛の足尾銅山開発に出資して支援し、その結果、銅の鉱毒による公害を引き起こした。
池端俊策さんが脚本を手がけた『足尾から来た女』を放送したNHKが知らないはずもない史実です。
あんな公害を引き起こしておいてSDGsですか。
それに、その時代にありえない概念を先取りしていたともっともらしく紐づけることはしてはなりません。
『麒麟がくる』の光秀や駒は、太平の世を望んでいました。
そのことを「現代人みたいに平和とかw」と嘲笑する意見も見かけましたが、文学芸術作品のテーマにおける平和への希求は定番中の定番です。
戦争は人を殺し合うこと。それが嫌だと思うことは、生き物として極めて単純明快、当たり前の感覚です。
とはいえ、光秀が「人権的にも戦争はいけません!」と言ってはおかしい。光秀が人権派戦国武将というキャッチコピーで紹介されてよいはずがない。
当時、儒教の教えとしてあった「麒麟の到来=仁政の実現」で表現したからこそ、あのドラマは成立するのです。
そういう良識がNHKから蒸発しつつあるらしい。何が起きているのでしょうか?
◆ 『青天を衝け』のマニアックな題材に対しての工夫 『あさが来た』のヒットに続くか?(→link)
毎回、渋沢が様々なミッションに挑むことで少しずつ成長していく様はRPG(ロールプレイングゲーム)のようでもある。前作の大河ドラマ『麒麟がくる』もそうだが、RPG的な導入を用意することで、ゲームで言うところのチュートリアル(操作方法の説明)に成功しており、視聴者を置き去りにすることなく、物語の中に誘導できている。
RPGも何も……ああいうゲームには下地になる話がある。神話や伝説でも読んでみましょうか。
そういうファミコンみたいにしないと入り込めないとか、大人が真剣な顔をして言うことではありません。
何でもかんでも台詞で解説されるのは世界観のぶち壊しで見ていて興ざめだが、かといって映像で全てを語る映画的演出が続くのは、テレビを観ている視聴者にとって負荷が強すぎる。特に歴史劇の場合、知らないことが多すぎると物語に入り込めない。
私は昔から歴史ものが好きで、自分で調べるところまで含めて楽しんでいました。
そういう昔のような楽しみ方をどうすれば再現できるか考え、自分にとって未知の時代を扱った歴史ものを鑑賞することを心がけるようにしています。
物語に入り込めるかどうか。それは自分自身で決めることではないでしょうか?
昨年も「忙しいから難しい話は見たくないでしょ?」というレビュー記事を見かけてガッカリしたことを思い出します。
まるで
「ステーキは食べられないからハサミで切って潰すべき」
と言われているようで、ものすごく違和感があるんですね。
『青天を衝け』レビューを見ていると『麒麟がくる』で伏線として使われていた漢籍への言及があまりに少なくてショックを受けたのですが、こういう考え方が主流ならそうなるでしょう。
ちなみに、エンタメの海外ファンダムではここまで緩みきっていないということも感じます。
VOD時代に「グチャグチャに潰してくれないと食べられません宣言」をしている日本は、今後、世界レベルで生き残れるのかどうか……。
己の思考回路を他人に握らせるな
このドラマは辛い。
ニュースは裸、下着姿、キスシーン、色気……そういうものに喜ぶものばかり。
何も考えずにダラダラしたい層が、大河という重厚だったはずの歴史劇を見て、今年は楽でエロいからいいと喜んでいる。
そうは思いたくないけれども、その手のニュースばかりでどうしたものでしょうか。
緊張感がまるでない。
斎藤道三が入れたお茶を平気でグイッと飲み干しそうな姿勢ばかりが見えてくる。
斎藤道三は如何にして成り上がったか? マムシと呼ばれた戦国大名63年の生涯
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先ほどトールキンを引用しましたが。いくつになろうと、強ければ枯れません。枯れないために何をすべきか?
難しいことはわからない、若い頃楽しんだものを懐古する――そういう逃げに入らず、攻めて、新たなものを見出し、頭を使うことでしょう。
本作が極めて退屈な理由は言わずもがな。
逃げに入って枯れた――そういう層ばかりを狙い撃ちにしているから。
だからこういうとっくの昔に連載が終わった漫画ネタで盛り上がっているのではないでしょうか。
どんなにしょうもない作品であろうが、歴史を学ぶ入口になればよい。ドラマ、漫画、ゲーム、それにソーシャルゲームだってそういうことは言える。
けれども玄関マットを踏んづけた程度で満足させ、「日本史素人のワイはこういうのを待ってたんや」なんて調子で図書館にすら行かない。偏りの激しい本作をアタマから信じてしまう。
その結果、
「明治維新のために大獄やって良かったよね! 水戸学最高じゃんね」
なんて考えだしたら完全に有害です。
トールキンの言葉を思い出しましょう。
強き老人は枯れることはない。この強き老人とは、知識を吸収する。そういう学ぶ意欲が強いってことだと思いますよ。
「大河で流れたことをコロっと信じる。それの何が悪いの?」
と言われたら断言できます。悪いです。このコロナ時代に、陰謀論に弱い脳を持っていては周囲にまで迷惑がかかります。
NHKはニュースで特殊詐欺の注意喚起をする。それなのに、大河で陰謀論に弱い脳を作る。
このマッチポンプのようなシステムは何なのか。
『鬼滅の刃』冨岡義勇の言葉でも借りましょう。
「生殺与奪の権を他人に握らせるな‼︎」
ドラマの感想ひとつとっても、ハッシュタグだのネットニュースだの丸呑みで信じちゃいけない。
ましてや歴史の勉強ともなればそれはそう。
歴史知識があるからといって、常に善悪正邪を判断できるわけでもありません。
自分で考えるクセをつけることが大切です。
◆ 【HBO!】呉座勇一「炎上」事件で考える、歴史家が歴史修正主義者になってしまうということ(→link)
そしてくれぐれも、こんなしょうもない大河を信じるな!!(冨岡義勇顔で)
生殺与奪の権を 他人に握らせるな!!
惨めったらしくうずくまるのはやめろ!! そんなことが通用するならお前の家族は殺されてない
奪うか奪われるかの時に主導権を握れない弱者が 妹を治す? 仇を見つける?
笑止千万!!
弱者には何の権利も選択肢もない 悉く力で強者にねじ伏せられるのみ!!
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※著者の関連noteはこちらから!(→link)
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関連記事は以下にございます
◆青天を衝け感想あらすじレビュー
◆青天を衝けキャスト
◆青天を衝け全視聴率
文:武者震之助(note)
絵:小久ヒロ
【参考】
青天を衝け/公式サイト