青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第17回 感想あらすじレビュー「篤太夫、涙の帰京」

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青天を衝け第17回感想あらすじレビュー
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ブーメランは投げられた

さて、今回の【禁門の変】ですが。

作品としては全方位に喧嘩を吹っかけたようなカタチになった気がします。

持ち上げ要員にされた大西郷。何もかも奪われた会津藩。孝明天皇が信頼第一としていたのは会津藩だったのに、その功を慶喜が掠め取ったようにも見えました。

長州藩にも失礼です。慶喜無双のダシにされましたね。

家茂・和宮夫妻にしたって、史実では慶喜の掌返しに疲れ果て嫌気がさしていたのに礼賛一色です。篤姫も本来は慶喜のことが大嫌いなはずです。

実際のところ、慶喜を人間的に許容できた人物って、それこそ渋沢栄一ぐらいではないでしょうか。

その栄一にしたって、自己正当化のため慶喜を持ち上げていた疑惑が濃厚。もしかしたら無責任男同士で気が合った可能性も否定はできませんが。

そんな慶喜は巨大なブーメランを投げました。

彼はこの先【鳥羽・伏見の戦い】後に無断逃走します。あまりに素早すぎて、幕臣も、新選組も、会津藩士も、驚いた。軍艦に妾のお芳まで乗せていたから、ますます呆れられた。

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今回放送の「禁門の変」では、家臣に向かって

「それでも武士か! 戦え!」

と吠えていた慶喜ですが、これほど「お前が言うな!」的セリフもありません。ある種の才能を感じます。

そもそも総大将が無双でOKなのはゲームぐらいのもので、本来でしたら「愚かなり!」となる。

戦国時代の最上義光は、前線で鉄棒をブンブン振り回して、家臣からガッツリ叱り飛ばされていた。

『麒麟がくる』では、信長がズンズン前線に突っ走っていき光秀らが止め、「何をしているんですか!」とばっちり描かれていました。

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しかも円四郎が先週単独行動で暗殺されている。

繰り返しますが、慶喜の行動だけ見れば驚くほど無能です。しかも、かっこつけ無能。このご時世にマスクなしで会食にチャレンジするくらい無茶苦茶でした。

『麒麟がくる』は真っ当に漢籍教養を満たしてくれました。こんな言葉があります。

暴虎馮河――「ぼうこひょうが」と読み、一言で言えば「無謀」となりますが、西郷隆盛と競う時点でまさにコレ。総大将のやることじゃなく、戦争をゲーム感覚で捉えています。

まぁブーメランは投げたけど、この先もシレッと進んでいくでしょう。

今週になって斉昭が呪いですっかり定着していましたが、以前は「快なり!」とかなんとか爽快感を見せていたじゃないですか。

その辺を無視して今さら「尊王攘夷は呪いである」と言われても戸惑うばかり。

ええ、ええ、期待した私が愚かでしたよ。

 


井上馨と伊藤博文が出てきました

井上馨伊藤博文

渋沢栄一との距離感ゆえに登場させたのは理解できます。

これがなかなか凄いチョイスで【司馬遼太郎ですら褒めない長州人】と言えます。

「明治維新までの長州はいい。でも……人材が尽きてしまった」という方向へ持っていかれ、彼らは褒められないんですね。

なぜなら汚職がひどい。

司馬遼太郎もシレッと嘘で誤魔化しますけどね。明治時代や日露戦争くらいまでは、誰もがクリーンに生きていたという誘導をする。

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明治維新当初から政財官の汚い関係はありました。

西郷隆盛は井上馨を「三井の番頭さん」と皮肉ったほど。

そういう汚泥のど真ん中を泳ぎ切るのが渋沢栄一とも言えるのです。『あさが来た』はヒロイン実家と五代様の黒い部分を上手にごまかしましたから、そこを買われての脚本家登用かもしれません。

こうした悪しき状況を描いた書籍もあります。

三好徹氏『政・財 腐蝕の100年』(→amazon)ですね。

実はこの本、中国語圏でも明治史を学ぶ上でかなり読まれていて、当時の暗部が海外に知られています。

 


再評価=イケメン! それでよいのか?

今週は長州藩にまで喧嘩を売るような描写が圧巻でした。

比較しては何ですが『八重の桜』では木戸孝允久坂玄瑞に理解を示す描写で、巧みでした。簡単に善悪正邪を語らない奥深さがありました。

その『八重の桜』ですら、長州ルーツの大物政治家が怒ったというニュースがあります。各自お調べください。そのあたりはサクッと出てきます。

ただ、本作ならば堂々と言いそうだ……。

「井上馨と伊藤博文がイケメンです!」

本作の設定は【イケメンならば再評価】であり、玉木宏さん演じる高島秋帆が唐突に出て、去ってゆきました。

あれは一体なんだったのでしょう。

徳川斉昭がえらく買っていた人物なので、イケメンで出して「どお? こんなイケメンを認めた徳川斉昭様スゴイ」とでも誘導したかったのでしょうか。

さて、史実の伊藤博文です。

幕末関連書籍を読んでいて、その下半身事情を再確認し、私は疲れ果てました。列挙しますと……。

・妾最年少は13歳! 当時から「キメエんだよロリコンが……」と思われていた。

・あだ名は「ほうき」、女を掃いて捨てるから。それ以外にもマントヒヒ侯、淫売国の棟梁等

・お札の顔である津田梅子は、伊藤のもとで働き、そしていろいろと絶望した。むろんセクハラがらみで絶望した

・初めてお座敷にあがる芸妓は一番乗りをしたい。何の一番乗り? ご想像ください

・鹿鳴館で既婚者相手に性的スキャンダルを起こし、鹿鳴館利用が下火になる契機をつくる

明治天皇すら呆れる

・彼がお札の顔になる、顕彰する動きがあると当時から「は? あのエロが? ねえよ……」と引かれる

イケメンだからどうこうではないレベル。

伊藤博文主人公の大河ではないにせよ、イケメンで好意的に描くには常軌を逸した経歴ではないでしょうか。

 

明治は遠くなりにけり

慶喜が一橋家養子となった頃。家臣と打毬(ポロのようなゲーム)で遊びました。

すると慶喜はこっそりと手を使って点数稼ぎをしている。

あまりのせせこましさに呆れた家臣は、

「ならば俺はこうしますんで!」

と言い、ザルにボールを入れて一気にゴールに叩き込んだ。

このエピソードは渋沢栄一が関わった『昔夢会筆記』に残されています。

慶喜は幼少時から、姑息でゲスで無責任。これが栄一含めた当時の共通認識でした。

家康以来の英邁と持ち上げられる評価もありますが、周辺人物の突っ込んだ人物評となると良からぬ話も出てくる。

そんな姑息な君主が「いい人すぎ!」「つよポンが演じるんだから絶対いい人だね!」と受け止められるとなると、【物語だからいいじゃん】では済ませられないですよね。

『麒麟がくる』の池畑俊策さんは、明智光秀と己を重ねて書いているような気がしたとか。ぶれず、不器用で、要らんことも言ってしまう人なのか、と思わされました。

もしも今年の作り手が、慶喜や栄一と己を重ねて作っているとしたら、極めて遺憾であるとしか言いようがありません。

「あの人スゴイ!」と言われたがっていて、無双ネタが本気でウケると勘違いしていて、嘘をつくことに恥を感じない。

物語だからって、歴史を都合よく美辞麗句で飾るのは真摯な姿勢とは思えません。

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