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【青天を衝け第24回感想あらすじレビュー】
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幕臣と死者の名簿
慶喜の情けないやらかしをカットした結果、大勢の犠牲者が存在ごと消えたようです。
前述のように、パリから帰国して戊辰戦争に参戦した者もおりました。
出番が消えた悲しき幕臣リストを作ってみますと……。
◆モブ扱いの幕臣たち
川路聖謨:平岡円四郎の恩人であり、慶喜に推挙した人物でもある。本作でも出番はある。江戸城総攻撃予定日に、無血開城を知らずピストルによる自害を遂げる。己を二君に仕えず餓死した伯夷・叔斉(はくい・しゅくせい)になぞらえた覚悟の死であった。
栗本鋤雲:フランス外交の要。溢れる才智があったものの、新政府には仕えず反骨精神を発揮する。
福沢諭吉:幕府にシラけ切っていたとは本人談。とはいえ、政府には仕えない矜持あり。栗本とは仲間。
◆出なくてよかったよね、と思える幕臣たち
勝海舟:無血開城は実質、彼のハッタリ、交渉、度胸、幻の焦土作戦ゆえに成功したもの。この無血開城MVPすら出てこないとは一体どういうことなのか? 幕末三舟は全員欠場となる。
榎本武揚:「上様ぶっちゃけビビりっすわ!」と言い、海軍を率いて函館まで転戦。土方歳三は出てきても榎本は出てこない。それが今年の大河だ。
◆イベント感覚で来週死ぬイケメンのみなさん
死人が出ることは、このドラマにとって「快なり!」かもしれません。こういう記事を読んでいるとそう思えてきます。
「磯村勇斗くん演じる家茂などの登場人物が亡くなっても、間髪いれずにイケメン俳優が注入されますよね。ロスになる暇がないくらいです」
イケメンが死んでもイケメンがまた投入されるから、ロスにはならない――そんな理屈が平然と語られることに、どうしても眉をひそめてしまいます。まるでフルーツタルトを扱うお店ではありませんか。
この先、亡くなっていく方たちを挙げてみますと……。
渋沢平九郎:死ぬために出て来たような親族枠としか言いようがない。平九郎の意義って、ムズキュンと死ぬことだけだったとしか……。
◆見どころ満載だった五輪前最後の『青天を衝け』 平九郎&ていの恋も進展 (1)(→link)
小栗忠順:東帰した慶喜に対し、徹底抗戦を主張するも、臆病風に吹かれた慶喜から罷免される。権田村に退き暮らしていたにも関わらず、冤罪で捕縛された挙句斬首。小栗の戦略は的確なもので、あの大村益次郎や江藤新平も実行されたら危険だったと思ったとされるほどであった。大隈重信曰く「日本近代化は小栗の模倣に過ぎない」とのこと。そういう死への過程をすっ飛ばし、突如来週斬首される模様。
土方歳三:有名人でイケメン! でも死んじゃう、可哀想〜という枠。成一郎が函館まで行くのでまだしもよいにせよ、天狗党の時といい、成一郎がまるで死神のようでもあり。
功績をことごとく栄一と慶喜のために消されるか吸収され、「号泣!」とツイッターでつぶやかせるために死んでしまう人々。
実際に多くの犠牲者がでた戊辰戦争も、まるでイベントです。
もう忘れ去った歴史だから問題ないという感覚なのでしょうか。
コスプレのような洋装
いよいよ後半戦です。メインビジュアルも発表されました。
◆【青天を衝け】吉沢亮「別の色の熱量がこもっている」 後半メインビジュアル全7種解禁(→link)
ダメ出しばかりで申し訳ありませんが、これは「明治村の宣伝ポスターでは?」という思いが湧いてしまいました。
テーマが伝わって来なくて、この一枚のために考え抜かれた!という構図には見えない。
そして再開後、確信できたことがあります。
洋装の仕立て、着付け、もろもろがお粗末。ネクタイがちょっと浮き上がっていたり、曲がっていたりする。これではイケメンが台無しで、さらには結髪も問題があると思えるのです。
明治当時の髪型を再現するとカッコ悪いからアレンジをしたのでしょうか。それが中途半端で、特に昭武の髪型はいただけない。
そして来週のこの方。
公式Twitterで、土方歳三の洋装を見てギョッとしました。あまりに安っぽい軍服です。ナポレオン3世の周辺にいる士官もなんだかお粗末だとは思いましたが……。
『青天を衝け』第24回の放送は今週の日曜日ですよ。
本日は“鬼の副長”のスペシャル動画。
土方さんの洋装姿、先出ししちゃいます!#青天を衝け #町田啓太#土方歳三#第24回は8月15日放送 pic.twitter.com/KdUbfqM4Dq
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」 (@nhk_seiten) August 12, 2021
ちゃんと体の線にあわせて縫製していない、手抜きなのでは? そもそも布の質が悪い?
コスプレレベルというか、予告で見る限り、結髪も今ひとつ。
洋装のトシさんて、むしろ本人が美形であることもあり、よほどのことがなければ失敗はしないシチュエーションです。
もちろん本作の土方歳三が失敗とは言いませんが、ただ、これがトシさんの本気か?と問われると言葉に詰まってしまいます。
軍服や洋装の比較としてBBC版『戦争と平和』でもご覧ください。
ではなぜ、洋装の質がこうも落ちているのか。
幕末の軍服はナポレオニックものと比較しやすく、手抜きかどうかわかりやすい。
BBCではなく近年の大河枠では、『八重の桜』における会津戦争の山川浩が比較対象としてよろしいかと思います。
山川浩の軍服も新規で作ったと推定でき、縫製から生地の作りまで、今年の土方よりはるかにしっかりしていました。
本当に、今年は一体なにがあったのでしょう?
驚きなのは、それでも以下のような記事が出ることです。
◆“土方歳三”町田啓太の洋装姿が公開「最高すぎて過呼吸」「完全に目が覚めました!」(→link)
どんなにかっこよかろうが、土方の死装束です。
函館まで戦い抜き、近藤への忠義を尽くすため血を流した。土方歳三の生き方に想いを馳せると、どうにも虚しくなってきます。
最近『論語』が出てこない 放送回数も減った
本作は『論語』推しであるはずの渋沢栄一が主役です。
それなのに「おかしれぇ!」は出て来ても漢籍引用がほとんど出て来なくなりました。
パリでも「道ゆく女が楊貴妃や西施のようだ」と、教養を見せつけつつ書き記していたはずです。そのヒントをこの記事から見出しました。
◆渋沢栄一署名の掛け軸発見 漢詩「大学」の一説(→link)
『大学』は漢詩じゃないんだな……大手新聞でこう書かれるほど、日本人の漢籍教養が尽きたとなれば、『青天を衝け』で出ないこともやむを得ないのかもしれません。
昨年は『麒麟がくる』は貴重な漢籍大河でした。
今週、出てこなかった家康は、もういっそこのまま打ち切りで結構ですが、漢籍はたまには出して欲しいと思います。
明治時代まで「ぐるぐるする!」と言いながら商活動に従事していたら、あまりに稚拙ではありませんか。
漢籍のストックすらなく、史実も踏まえない大河ドラマとは一体何事なのでしょう。
やはり本作はギリギリでやっていて、脚本の仕上がりが遅れているからこそ、他の演出がお粗末になってはいませんか?
そう考えると、この報道はグッドニュースですね。
◆大河「青天を衝け」NHKの年内終了発表に「短過ぎるでしょ」「嫌な予感しながら見たらやっぱり…」(→link)
オリンピックにコロナ――そんな状況で短い大河となるのも致し方ないことでしょう。
しかし本作を短い期間で終わらせる理由はそれだけではないかもしれません。
近現代史は、とにかく資料が多い。それを考えると、本作はその読み込みが不十分というか手一杯のように見えます。イケメンのお披露目やムズキュンで尺を稼いでいる場面が毎週あるのはそのせいではありませんか。
小道具や衣装もどこか手抜きなのも、脚本の時点でかなり押していて手一杯だと滲み出ている。
もう限界ではありませんか?
『青天を衝け』は全41回。渋沢栄一の主役説もあった『獅子の時代』は全51回で、かつパリ万博が初回であったことを考えますと、やはりバランスが悪かったのです。
渋沢栄一は、維新後こそが飛躍の時期ですし、実際に功績も圧倒的に多い。
幕末期は、志士としても幕臣としても大物とは言えません。
なんともバランスの悪いドラマです。
今さらそれを言っても、もうどうにもなりませんが。
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