鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー

鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第2回「佐殿の腹」

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第2回「佐殿の腹」

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源頼朝を巡って、北条と伊東が睨み合う――。

時政曰く。

「武士として一度匿うときめたからには、死んでも佐殿を渡すわけにはいかないんじゃ!」

平家を恐れる伊東と、それに抗う北条。

坂東の隅で起きたささやかな諍いで、義時の運命が動き出す。

そんな第二話が始まります。

 

清盛「つまらんことをワシの耳に入れるな」

京では、平家の貴公子である平宗盛が、父・平清盛に伊豆のことを報告していました。

源義朝の子供の話だと伝えると、清盛は「懐かしい名前だ」とふてぶてしく言います。

長男と次男を討ち取ったものの、三男は助けて伊豆に流した。それが頼朝であると。

清盛が、なぜ殺さなかったのか?と宗盛に聞き返すと、父上が助けた、とやや困惑しています。

「忘れた」

清盛は忘れていました。そこまで源氏の牙を抜いたと思っていたのでしょう。

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その頼朝が、伊東祐親の娘に男児を産ませ、逃げられたと宗盛が話しても、清盛はこうだ。

「いちいちそんなつまらんことを、わしの耳に入れるな」

東国の始末は東国の者に片付けさせろ。そう投げやりな態度を取ります。

清盛が愚かとも言い切れないとは思います。

宋との貿易で儲かって儲かってたまらないわけだし、同様の過ちは歴史上にあります。

たとえば『三国志』の曹操。彼は赤壁の戦いで大敗するわけですが、江南の発展を過小評価していたこともあるでしょう。

洛陽周辺の中原が、天下を争う場所として認識されていた。常にアップデートしていなければ、どんな英傑であろうと足元をすくわれるのは今も昔も変わりません。

そうそう、せっかく平氏が出てきたし、今後の期待感を込めて注目したいことがあります。

十年前の2012年『平清盛』は大河の改革を目指していました。

それは惜しいところまでは到達できたけれども、足りない点があったと思えます。宋考証の甘さです。

その反省を踏まえ、今回は日宋関係をより精密にするのではないかと思いたい。源実朝も宋とは関わりが深い人物ですので。

さらには本作と『麒麟がくる』を比較してみたい。同作品では、漢籍由来の言葉が頻繁に使われていました。暴虎馮河などなど。

しかし本作ではそうではない。たとえば北条時政が頼朝をかばったときに、

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さずと言います!」

なんてことは言わないんですね。詳しくは後述しますが、これはなかなか重要です。

 

一触即発の事態にやってきたのは大庭景親

義時と頼朝は追っ手から逃れて、富士の山裾におります。本作は、ちゃんと当時の富士山を再現しているようです。

と、二人の前に、いきなり矢が飛んできました。

坂東、どんだけ治安が悪い!

と思ったら山内首藤経俊(やまのうちすどう つねとし)でした。

「佐殿ぉ!」

なんだか嬉しそうな経俊です。母が頼朝の乳母なので、彼も忠犬というか、すごく嬉しそうに頼朝を頼りにしていますね。

「そちの気持ちはしかと受け取った」

何気なく流しそうになってしまうのですけれども、この時代ってなかなか原始的だと思いますよ。

比較として『麒麟がくる』を挙げてみますと。

若い頃の明智光秀斎藤義龍が信じ合っていた理由って、学友だったわけです。

机を並べて学び合ったし、お互いの性格は理解している。血縁とか、乳母とか、そういった要素とは別の、同じ学問を通しての関係性です。

そもそも坂東武者は、並んで遊んだり弓矢を射たりはしたけれど、勉強仲間は結成できていません。

頭空っぽの方が夢を詰め込める! そんな歌詞を思い出しますが、人間には、教育が大切です。

場面は北条館に戻り、一触即発だった伊東祐親と北条時政・北条宗時親子の前に、大物武士がやってきます。

大庭景親です。

國村隼さんが馬に乗ってくるだけで、何かこう、負けない気がしてきたぞ!

「なにをやってるんだ、お前たちは」

景親は、身内同士の諍いなんざ見ちゃいられねえぞ、と言い出す。

そうそう、この集団は結婚やら何やら身内にすることで結成しているのに、それすら守れないのでは話になりません。

大庭景親は、清盛を後ろ盾に相模の武士団を束ね、その勢力は伊東を上回ります。当時の北条は伊豆の端っこを治めているだけに過ぎません。

それにしても、どうして大庭景親が出てくるのか?

というと、三浦義澄が「北条が頼朝を匿っていることを教えてくれた」とのこと。

このままでは北条と伊東が衝突の危機だ。ぶつかる前にどうにか……というのも義澄の子である三浦義村の策でした。若いのに食えん奴だ。こういう、誰かの影に隠れて己の策を通す奴こそ厄介ですね。

 

北条と伊東の落とし所

かくして北条と伊東が、頼朝をめぐって話し合います。

大庭から頼朝を差し出せと言われても、北条は断る。頼朝を北条に移す気はないかと言われても、伊東も断る。

北条が感情任せのように見えるのに対し、伊東はそうではない。

清盛から直々に預かったからには渡せないという理屈です。

そこですかさず大庭景親が諭します。ならば勝手に頼朝の命を奪っていいわけでもない。殺せば耳に入る。失態となって手に負えないと。

そこで仲裁案が提案されます。

頼朝は北条に預ける。以後、一切伊東の娘とは縁を切る。証文を書かせる。

このあたりが落とし所だというと、北条時政はこうだ。

「悪くねえ」

伊東祐親はこうだ。

「ここはお主の顔を立ててやる」

一件落着、解決だ。大庭景親も顔が立ったし、清盛に報告すれば得点を稼げるし、貸しも作れる。それをカラリと笑って喜んでいます。

こういう人がいると話が進みますね。いい人だなぁ。でもこの作品って、いい人ほど……。

帰り道、伊東祐親は工藤祐経一味に襲われます。

なんでこの人ら、こう、いきなり襲撃してくるんですか? あっさり撃退されますが。

あとこの場面でもはっきりとわかりますが、このドラマは口調に注目ですね。

「首ちょんぱ」とか、現代語を使って親しみやすくするとされていますが、それだけではありません。

時政は語彙力が低く、言い方がぞんざいで荒っぽい。

祐親はそうでもなく、時代劇口調になっています。

これは三谷さんの怖いところですよ。こういうぞんざいな口調にする理由は想像がつきます。

細川重男先生という、鎌倉時代の研究者がおられます。

彼の著書は大胆極まりない意訳が特徴で、坂東武者がチンピラモヒカンのような口調で喋り倒しています。地の文も、坂東武者にツッコミを入れることがしばしばある。それがハマっているんですね。

戦国武士ならこうはならないでしょう。

要は、この時代の柄の悪い坂東武者に、こういう口調が似合う。

しかも、時政は坂東彌十郎さんですからね。あんなチンピラ口調なのに、滑舌がしっかりしている。おまけにかしこまった口調になると威厳があるのです。すごいことですよ。

 

食の好み、結局うるさい

北条宗時と仁田忠常が待っているところへ、義時と頼朝が帰ってきました。

頼朝は着替えて、改めてよろしく頼むとご挨拶。宗時は感激して歓迎。時政は伊東に比べれば住み心地が悪いかもしれないと謙遜する。

そして政子は、食べ物の好みを聞きます。

頼朝は好き嫌いを言える立場ではないと返すのですが、政子がこれを聞くのはただの気遣いかな? 食べ物は大事ですよ。

疲れているのか無言のままの義時には、兄が「小四郎!」と促してきます。

我が家と思ってくつろいでください、と言うと、宗時は満足しているようですが。

このあと、安達盛長が頼朝の好物リストを持って来ました。

素朴なようで、菓子まで要求する。しかも小骨の多い魚は嫌いだってよ。

ふ、ふざけやがって! と言いたくなるけれども、そこは堪えましょう。

個人的な話をしてしまいますが、私は昔、平安時代の食事の再現をみてショックを受けたんですよね。まずそうだなと。

江戸時代や戦国時代よりも、食事の再現難易度が高くなる時代です。注目しましょう。

ゆかりの地のある神奈川では「鎌倉殿のお弁当」といったものもあるそうです。

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ちなみに私は源平時代の酒を再現したものも飲みました。

あれはなんとも言えない味だった。粥を思い切り甘くしたようで、アルコール分は極めて薄い。

今年は大河がらみでこういう再現もあるでしょうから、皆様もぜひ味わってみてください。

政子はやる気満々ですが、義時は無類の女好きだから近づいて欲しくない。何かあったら取り返しがつかないってよ。

父の時政にそう訴えるのに、時政は掃除をして聞いてねえ! しかも頼朝のためではなく、文を送ってきた後妻りくを出迎えるために準備しているとか。富士川まで迎えに行ってくるそうです。

義時はため息をつきます。彼は恋愛とは距離を置く性格のようです。

恋愛だけでなく、激情からも距離を置ける義時。それが次の場面でわかります。

 

大庭を動かしたのは義村だった

義時は三浦義村と話しています。

義時は口止めをしていたにも関わらず、義村が大庭景親に漏らしたとわかっています。約束を破られた、と。

それなのに、義村は丸くおさまったことに礼をしてもらいたいくらいだと言う。いやいや、先に謝りましょうよ。本当にこいつは友達が少なそうな奴だなぁ。

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義時はむっつりと、身内が一人増えたと思うしかないと諦念の様子です。政子のことなんて考えたらそうも言っていられないでしょ。

義村は、その状況を慰めるどころかこうだ。

「首、刎ねちまえよ!」

知略が高くても手段は所詮坂東武者かーい。さらに首を清盛に届けろと言うわけですが、義時は兄上が許さないと戸惑っています。

「ま、がんばってくれ」

そう去っていく義村。もう、こいつはなんなんだ……。

言いたいことはわかります。首を刎ねて届けたら、そりゃ恩賞くらいもらえるでしょう。

大庭景親は殺したらまずいと言っているものの、視聴者ならば正解はわかっています。清盛は頼朝のことなんて気にも留めていない。首を届けられたところで、怒りはしません。

三浦義村という輩は、誰かの気持ちなんて無視して正解にまっすぐたどりつく知略がある。

一方で北条義時は、周囲の気持ちをふまえた行動をする。

三谷脚本の山本耕史さんは進歩が止まりませんね。頭がキレるナンバーツーであるところは、『新選組!』の土方歳三、『真田丸』の石田三成と同じです。

敗者となったこの二人は、時代の流れに逆らったことや不器用さゆえの悲運がある。

しかし今回はなまじ勝利をおさめるから、狡猾さが上回ってくるのです。

いわばこの三浦義村は、狼顧(ろうこ)の相の持ち主だ。

司馬懿がこう呼ばれたことが有名ですが、狼が振り返る姿勢ということです。体は前に向けて、頭は後ろ。そんなふうに二面性のある言動をする様です。

この義村の場合、義時に口止めされておきながら、それを反故にして利を求めているわけでして、しかもそうしたことを誇っていて反省がない。やはり危険な性質なのです。

義時よ……話の通じそうな賢い友がいたと思ったら、狼顧野郎か。

ため息をつく気持ちはわかるぞ。それでも「お前なんかムカつくし信頼できねー!」とならないところが義時の持ち味でしょう。使えるといえば、使える男ですし。

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