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【ずんだ餅と政宗】
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再びの大河はありうるか
戦国武将というのは、誰しも虚実ないまぜになった評価につきまとわれるものです。
藩祖を偉大に見せようとした記録が江戸時代に残され、さらに後世の創作物によってイメージが固まるパターンもあります。
真田信繁(真田幸村)と並び、
戦国三英傑をもしのぐ人気を持つ政宗は、このふくらませた部分が大きい人物でしょう。
特に大河ドラマでイメージが固まったという意味では、彼が一番ではないでしょうか。
『独眼竜政宗』は現在でも、リメイクして欲しい大河ドラマナンバーワンとされています。
しかし実のところ、ずんだ餅と政宗の関係のように、現在では否定されている要素も多いのです。
従来の説を信じておられるファンの皆さまにはお叱りを受けるかもしれませんが、以下に列挙しておきますと……。
こうした劇中で欠かせない要素が、実は後世の創作であり、史実ではない可能性が高い。
むろん、こうしたエンタメ要素を「史実ではない」という理由で排除すれば、ファンからクレームがつく可能性もありましょう。
かといって、そのままドラマにしたところで「いつまで古い説を流すのだ」と指摘される層もいるはず。
また、ゲームや漫画であれば許容できても、より高いクオリティを求められる大河では、そうもいきません。
伊達政宗をもう一度大河にするとしたら、まずこうした通説と戦う必要が生じるはずです。
フィクションとして魅力的な創作を取るか?
それとも史実に近づけるか?
しかし、敢えて史実に近づけることで面白くなる可能性もあります。
例えば彼の隻眼は、片倉小十郎景綱が切り取った説話が有名ですが、発掘された頭蓋骨からは眼球を摘出したという痕跡はなく、実際は白濁していただけだったようです。
この事実を裏付けるように、政宗には眼帯をつけた肖像画や木像はありません。
こうした状態の目を再現するのが難しく、役者の瞼を糊で貼り付けるより眼帯のほうが楽だったため定着したようです。
しかし、現在では白濁したコンタクトレンズにより再現できます。
そうして映像化したら、なかなか面白いのではないでしょうか。
歴史人物が創作物でどのように脚色されるか
こうした伊達政宗の虚実を分析した一冊が、歴史考証学会『伊達政宗と時代劇メディア』です。
なぜ史実ではない伊達政宗のイメージが流布されてしまったか。
結果どのような問題が起こっているか。
そうした事象を丁寧に分析した一冊。
伊達政宗と時代劇メディア(歴史考証学会:今野印刷)(→link)
本書を読むことで、もしかすると政宗ファンの皆様はガッカリするかもしれません。
しかし、フィクションによる後付けを排除したところで、伊達政宗という人物は大変魅力的であることは疑いようがないでしょう。
一般的な書店では販売しておらず、なかなか入手しにくい本書ですが、今野印刷さんのサイトから通信販売を受け付けております。
伊達政宗の虚実についてのみならず、歴史上の人物が創作物においてどのように脚色されていくか。その過程を知るのも面白い。
本書を読みながら、次に伊達政宗が大河ドラマになったらどうなるか、想像してみるのもきっと楽しいことでしょう。
歴史ファンにおすすめの一冊です。
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記:最上義光プロジェクト(http://samidare.jp/mogapro/)
【参照】歴史考証学会『伊達政宗と時代劇メディア』を読む(→link)