病気だという織田信長を見舞うため、城に出向いて謀殺された織田信勝。
父・斎藤道三と兄・斎藤高政の確執から、暗殺されてしまった斎藤孫四郎と斎藤喜平次。
大河ドラマ『麒麟がくる』では、いかにも戦国時代といった物騒な事件が頻発しているが、そうした殺傷沙汰においてはこの人あり――とされる戦国大名がいる。
宇喜多直家――。
斎藤道三や松永久秀らと並び「戦国三大梟雄」の一人として恐れられる人物である。
最近の研究から「この三人を梟雄というのは言い過ぎではないか?」というツッコミもあるにはあるけれど、いくつかの所業を見てみれば、やはり恐ろしいのがその殺し方。
今回の【戦国浮世絵ANARCHY】は宇喜多直家に注目だ!
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元就とは似て非なる者
宇喜多直家は、中国地方の戦国大名。
元は国衆クラスの小領主であったが、同じく中国地方を本拠とする毛利元就と並び、あらゆる手を尽くして成り上がっていった謀将である。
ただし二人は似ているようで実は大きく異なる。
元就が謀(はかりごと)のみならず、【厳島の戦い】や【有田中井手の戦い】など、不利な合戦でも勝利を重ねてきた戦巧者であるのに対し、直家は、やはり謀殺場面での活躍が圧倒的に目立つ。
敵将を暗殺したり。娘婿を攻め殺したり。敵将を毒殺したり。
たとえ親類縁者であっても油断も隙もなく、その最たるケースが妻の実父である中山信正を殺めたときだろう。
和製マキャベリスト
直家は、日頃から妻の父である中山信正と、茶園畑の中にある茶亭で、酒宴を楽しんでいた。
ある夜、盛り上がって深夜になり、直家に宿泊を勧められた信正。
微塵も疑わずに横になろうとしたその刹那、刀が一刀両断のもとに振り下ろされた。
そう。直家が斬殺したのである。
城を得るため、勢力を拡大するため。
目的のためには手段を選ばない宇喜多直家は、和製マキャベリストなどとも呼ばれたりするが、史料を考察すると当然快楽殺人者などではなく「非常に合理的であった」と見る研究者もいる。
それだけに怖い。
暗殺マスカレードへようこそ
いくら骨肉の争い激しい戦国時代といえども、そうそう「親殺し」は実行できないもの。
他ならぬ斎藤義龍が道三を相手にした【長良川の戦い】で行っていたが、著名な戦国武将クラスで殺すまでのケースはほぼない(家督争いから家臣などが殺害したケースならある)。
ましてや自ら刀を振り下ろし、義理とはいえ父親を殺害するなど、相当にプレッシャーのかかる場面である。
宇喜多直家はそれをやってしまった。
まさに目的のためには手段を選ばない所業。
それを一枚の絵にしたらどうなるか?
「鞘ェもん」の手にかかると、こうだ!!
ジャジャーーーン!
不気味としか言いようのない仮面姿の男(左・家臣A)と、袋詰め作業を淡々と進める宇喜多直家(右)。恐ろしいほど場慣れ&死体慣れした様子である。
酒宴+毒殺という設定で絵師・鞘ェもんに作画をお願いしたところ、上記のような仮面舞踏会となった次第だ。
哀れ、口から泡を吐きながらバッグに入れられる男のもとには、こんな案内状でも届いていたのだろうか。
◆仮装パーティー開催のお知らせ◆
別人になって今宵は戦国乱世を忘れよう!
場所:興善寺
日時:永禄9年2月
主催:宇喜多家
会費無料ですのでふるってご参加ください^^
なお、宇喜多直家は、毛利家と織田家の狭間にあって勢力を伸ばし、息子・宇喜多秀家は、父とはまるで違う生涯を送った。
前田利家の娘にして豊臣秀吉の養女という当時の超プリンセス・豪姫を娶り、さらには豊臣政権の五大老に選ばれるなど、戦国末期に華々しい宇喜多家の躍進を得たのである。
すべては直家の努力あってこそ、の話である。
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【参考】
国史大辞典