嘴平伊之助

『鬼滅の刃』7巻/amazonより引用

この歴史漫画が熱い!

嘴平伊之助(鬼滅の刃)の人物像に迫る! 人と獣の境界線上にあるリアリティ

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実在の流派と比較すると……

そんな伊之助ですが、敢えて実在の流派で近いものをあげるとすればジゲン流です。

薩摩藩士が習得していたこの剣術は、横木打ちという練習法が特徴。

「猿叫」という人間離れした絶叫をあげながら、ひたすら敵を何度も何度も何度も上段から殴る。

そんな動きを身につけるのです。

実は、これが理にかなっています。

叫ぶことで相手を威嚇し、上から敵の急所である頭部を狙う。何度も殴ることで攻撃への耐性をつける。

薩摩藩が幕末期に最強の流派として猛威を奮ったのも、こうした修行を欠かさなかったからですね。

ただし、あまりに野蛮であるとされてはいました。

藩主である島津斉興ですら、稽古を見ていられず途中退席したとか。江戸時代の泰平に慣れたヒトからすれば野生的過ぎたのです。

けれども、そういう猛獣になるような動きこそ強い――というのは歴史が証明済です。

伊之助の獣のような戦闘術が猛威を振るうことは当然だったりします。

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入隊によって生存率がむしろ上がっている!

なぜ鬼殺隊のメンバーは鬼と戦うのか?

他の隊士が仇討ちや世界をよく変えるため――そんな理由であるのに対し、伊之助は縄張りに侵入した鬼殺隊士から装備品を奪ったうえで、無理矢理、選別に乱入しました。

結果、生活環境の向上が得られました。他の隊士とは逆転している点もご注目ください。

炭治郎のように、ヒトとして安住できる環境を奪われ、厳しい隊士としての生涯へ……生活環境は厳しくなっていますよね?

一方、伊之助の場合。

入隊により、定期的な食事、雨風をしのぐ住居、そして仲間という生存率UPのための環境の向上を得ています。

親の仇討ちであったことが判明するのは最終盤になってから。

彼はヒトとしての道義ではなく、獣としての安全性と生存率向上のために入隊したともみなせます。

 

時間やルールに無頓着

最終選別でもいきなり来て、帰って行く。

鬼殺隊員であってもルールを平然と破る。

日輪刀を砕くわ、隊服を破くわ、喧嘩はふっかけるわ、無茶苦茶です。

 

食べるタイミングを理解しない

伊之助は食事のマナーが悪い。のみならず、食べるタイミングを破り、盗み食いをしてしまいます。

行儀が悪い子だ!と、なりそうですが、これも獣の本能ですよね。

野生動物は、常にカロリーを摂取できるとは限らない。だからこそ獲物はその場で食べてしまいたい!

貯蔵する知恵がある動物もいるとはいえ、行儀だのなんだの気にしていれば生命の危機に直面します。

伊之助は獣として、行儀作法を考える前に食べに行ってしまうのでしょう。

ただ、そういう場合は叱り飛ばすだけではなく、指導でどうにかなります。

いつでも食べ物はある、これがあなたの分。そうアオイのようにきっちりルールと法則性を教え込めばよいのです。

動物も、自動給餌器のルールを理解すれば焦らなくなる。

伊之助もそうでしょう。気持ち悪がったり、叱り飛ばすだけでなく、ルールを教え込むアオイは伊之助にとって大事で特別な相手です。

 

人見知りする

大勢のヒトを見ると圧倒されてしまい、怯えてしまうようです。

 

ホワホワ

伊之助はホワホワします。

何か心が動かされるとホワホワします。

普段から被り物で表情が隠されているため、「ホワホワ」と描かれなければよくわからないという面もありますよね。

これも善逸と比較するとおもしろい。

善逸の反応はヒトとして大仰なものであり、かつ漫画のルールに沿ったリアクションだと思います。

一方、伊之助のホワホワは、動物が甘える特殊な鳴き方をするとか、犬が尻尾を振るとか、あるいは猫が喉を鳴らすとか、ヒトというより動物的な反応ですね。

野生動物や保護動物と接した方はご理解いただけるかと思いますが、はじめのうち動物はヒトを警戒します。

そして

『このヒトというものはこちらに敵意がないぞ!』

と確認できたとき、ホワホワとした行動を取り始めますが、そこに至るまでには葛藤や確認があります。

伊之助も周囲に対してそうしていました。

伊之助は、獣としての特性が強いキャラクター像です。

彼ほど極端ではありませんが、同じ特質を持ったキャラクターはフィクションで増えています。

出会い頭に怒鳴り散らす。突如、怒り始める。言語によるコミュニケーションが時々通じにくくなる。空気を読むことがない。

怯えると顔面蒼白になったり、震え出して動きが止まる。

仲間そっちのけで買い食いだのつまみ食いだの、グルメを求めている。おとなしくしていれば美形なのに、表情がつくと挙動不審。友達がいないか、極端に少ない……。

冨岡義勇も、特別な個性が出ていますよね。彼は極端に無表情です。

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彼らのようなキャラクターをマンガで認知するのは重要かもしれません。

なぜなら、現実世界にも存在するからです。みなさんも心当たりないでしょうか? 伊之助や義勇のような、ちょっと何考えているんだかよくわからないタイプ。

敬遠してしまうかもしれませんが、もちろん彼らを怖がる必要はありません。

『鬼滅の刃』にはもう一人、人としてのコミュニケーションが取れない重要キャラクターがいます。

禰豆子です。

鬼となった禰豆子は言語による交流ができません。

彼女は人間としての規範全てに従うわけではない。

着物で裾や襟をはだけながら戦う。髪の毛を結うこともなくザンバラにしている。何よりもヒトに噛み付かぬように口枷をされている。

要は、ヒトの形をした獣のように扱われている。

それでも大事な存在であり、かつヒトを守るべきものであるという考えがあり、誰かを傷つけることはない。

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だからこそ鬼滅隊でも仲間として認識していて、そこに高度な問いかけがあるのです。

社会のルールとは何か?

何がヒトをヒトたらしめているのか?

読者は自然とそのテーマを考えさせられている。

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