建武の新政

後醍醐天皇図/Wikipediaより引用

源平・鎌倉・室町

建武の新政は「物狂いの沙汰=クレイジー」と公家からもディスられて

歴史にはツッコミどころが満載。

「なんでこのタイミングでそんなことしたの?」

「ソレやって、周りがどう思うかわからなかったの?」

だからこそ現代の我々も興味を惹かれてしまうのですが、当事者たちは超マジメにやっていたりするのですから、何と反応すべきか困ってしまいます。

今回はそんな出来事の一つ【建武の新政】について見て参りましょう。

「建武の中興」と言うこともありますが、正直、そんな風には感じられず……。

 


そもそも建武の新政とは?

言葉の意味としては次のようになります。

「元弘三年(1333年)に鎌倉幕府が倒された直後から、後醍醐天皇が始めた数々の革新的な政策」

ただし急進的すぎて全く成功しておりません。

後醍醐天皇はこれ以前から独自の政策を始めており、例えば京都の米や酒の値段を決め、商人に米の定価販売をさせようとしておりました。

京都ひいては全国の商業と流通を朝廷の支配下に置こうとしたのです。

※以下は後醍醐天皇の生涯まとめ記事となります

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その頃の鎌倉幕府(というか北条氏)は、元寇に対する恩賞問題に加え、エコヒイキで身内をあっちこっちのお偉いさんに任じて現地で反感を買い、瓦解寸前。

後醍醐天皇が新たな政策をとりやすかったのですね。

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いわば「絶好のチャンス!」です。

しかしこのタイミングで後醍醐天皇と側近が立てた討幕計画

・正中の変
・元弘の乱

は、二回とも天皇方から幕府への密告でポシャっています。

そして隠岐へ流されてしまいますが、後醍醐天皇の皇子である護良親王を中心に、京での討幕の動きは強まっていきました。

 


どうせなら名門出身の尊氏さん、お願いします

幕府のほうでも、足利尊氏新田義貞が幕府に反抗し、他に楠木正成などの悪党も挙兵。

こうして鎌倉幕府は倒されましたが、この時点で武士たちと後醍醐天皇の間に大きな意見の不一致がありました。

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当然ながら後醍醐天皇は、天皇親政を目指して幕府を倒そうとします。

一方の武士たちは

「幕府という形態に文句はなく、北条氏が勝手すぎるので別の人が親分をやってほしい(どうせなら名門出身の尊氏サン!)」

という考えでした。

つまり、多くの武士は後醍醐天皇のために幕府を倒したわけではなかったのです。

しかし、そんなことに気付かず(気にせず?)

「幕府を倒すのに協力したんだから、全国の武士もワシに従うに違いない!」

と早合点して、実情にそぐわない政策を始めてしまいました。

これが【建武の新政】というわけです。

 


天皇親政の理想を目指していたものの

目標は、天皇親政の聖代とされた「延喜・天暦の治」でした。

第一の間違いが「何をするにも、天皇の綸旨がなければならない」というところです。

ちなみに建武の新政では、以下のような役所が設けられていたのですが……

【中央政治】

◆記録所
建武政権における最高機関。荘園の調査と訴訟を扱う。楠木正成などが所属。

◆武者所
後醍醐天皇の親衛隊。新田義貞などが所属。

◆恩賞方
討幕に参加した者への恩賞を決めるため、先例や意見を参考に話し合う部署。

◆雑訴決断所
所領に関する訴訟を担当。二条河原の落書で「役に立たねえ」(超訳)と名指しされたところ。

【地方統治】

◆陸奥将軍府
長官:義良親王
補佐:北畠顕家
現在の宮城県多賀城市にあった

◆鎌倉将軍府
長官:成良親王
補佐:足利直義(尊氏の弟)

これら全ての部署が天皇直属とされ、古来から政治を執り行ってきた太政官とその下の八省の仕事を実質的に否定してしまったのです。

正確には、八省の長官を左大臣や右大臣に兼任させて、天皇が直接八省を支配できるようにという狙いでした。

しかし、そもそもお役所というのは、「政務を専門家によってできるだけ早く処理する」ために作られています。

さらに、業務が円滑に進むよう、先例やノウハウを世襲で伝えてきたのが公家社会です。

つまり、後醍醐天皇はそういった流れをぶった切るに等しいことをやってしまった……ということになります。

手段と目的が入れ違うどころの話ではなく「車輪の再発明」にも似た無駄です。

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