文覚

文覚/wikipediaより引用

源平・鎌倉・室町

史実の文覚は殺人事件の疑惑ある破戒僧~鎌倉殿の13人市川猿之助

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場した、怪しげな僧侶・文覚

市川猿之助さんが演じ、見るからに只者ではない雰囲気をまとっていて、人によっては『三谷幸喜さんが考えたオリキャラ?』と思われてしまうかもしれません。

しかし、文覚は実在します。

一説によれば、かなり事情の酷い殺人事件を犯した後に出家し、その後も独り善がりな行動から流罪に処され、伊豆で頼朝に用いられるようになります。

その後は幕府設立にも関わり、一定の権力も手中に収めるから不思議でなりません。

文覚とは一体何者なのか?

その歴史を振り返ってみましょう。

 

文覚は武士出身 俗名:遠藤盛遠

文覚は没年から逆算して、生まれは推定、保延5年(1139年)。

『鎌倉殿の13人』に登場する治承4年(1180年)においては41歳となります。

父は、摂津渡辺党の武士・遠藤茂遠(もちとお)で、文覚の俗名は遠藤盛遠(えんどうもりとお)。

幼くして両親を失い、丹波国保津荘下司・春木道善が養育したともされます。

やがて北面武士になった文覚は、当初、上西門院(鳥羽天皇の皇女・統子内親王)に仕えておりました。

上西門院は、源頼朝の生母・由良御前の親族と近しい関係にありました。

そんな彼は、17歳から19歳の頃に出家したとされます。

なぜ武士から僧侶になったのか?

理由は、人妻である袈裟御前に横恋慕し、誤って斬ってしまったためとされます。

一言でまとめると「既婚者にストーキング殺人をして出家」ということです。

ここだけ聞くと『ただの極悪犯罪者では?』とも勘繰りたくなりますが、出家に至る経緯が強烈だったため半ば伝説と化しました。

例えば昭和28年(1953年)公開の映画『地獄門』でこの物語が描かれ、第7回カンヌ国際映画祭最高賞グランプリ、第27回アカデミー賞で名誉賞と衣裳デザイン賞など、多くの賞を勝ち取っています。

なぜ文覚は愛する女性を殺してしまったのか?

 

袈裟御前をストーキングの挙げ句

文覚が袈裟御前を殺してしまった経緯。

『平家物語』に書かれた内容はこうなります。

袈裟御前は上西門院に仕える気品のある美女。

そんな彼女を見た北面武士・遠藤盛遠(文覚)は恋焦がれてしまう。

袈裟は、盛遠の同僚である源渡と結ばれた。

夫婦が仲睦まじくしていると、盛遠はますます彼女に思いを募らせる。袈裟が断っても気にしない。あまりにしつこい!

「私には愛する夫がいます。あなたの思いには応えられません」

そうハッキリ断られると、盛遠はますます思いを悪化させてしまう。

「なんでだよ! もういっそ、あんたのお母さんを殺して、俺も切腹するしかない!」

病的な文覚に対し、ついに袈裟はノイローゼにでもなってしまったのか。こんな提案をしてしまう。

「わかりました。夫を殺したら意に添えます」

言質を取った盛遠は、源渡の邸へ赴き、袈裟御前の指示通りに眠っている者を殺した。

やった!

そして月明かりの下で死に顔を確かめると、なんとそれは袈裟の夫ではなく、袈裟本人の首。

夫を裏切れない袈裟は、自らを犠牲にして幕引きを図ったのだった。

盛遠は袈裟の首を抱え鞍馬山を彷徨い歩き、出家する――。

とまぁ、なんとも身勝手な愚行ですよね。

いったん人物関係を整理しておきましょう。

上西門院:職場の上司

袈裟御前:同じ職場の悪質ストーカーに悩まされる悲劇の女性

源渡:袈裟御前の夫

遠藤盛遠:悪質ストーカー(文覚)

戯曲や映画では肉付けや設定変更がありますが、物語の骨子は変わりません。

既婚者に対して悪質なストーキングを繰り返し、被害者を殺した挙句、出家する――この不愉快な話から何を感じろというのか。

「愛する女性を殺してしまい苦しむ男」を描きたかった部分もあるかもしれませんが、ただただ袈裟御前が不憫でなりません。

 

伊豆に流され 頼朝と接触

ともかくも遠藤盛遠は出家して文覚へ。

罪なき女性を殺してしまい、しおらしく反省はしたのか?

仁安3年(1168年)に文覚は、京都高雄山神護寺へ参詣しました。

空海ゆかりの寺だったのに、当時は衰退が著しかった神護寺。ここを再興しよう。勧進を進めよう。

と、思い込みが極端な性格は、出家後も変わらなかったようで……。

承安3年(1173年)、なんと後白河天皇の法住寺御所にまで参上して、神護寺への荘園寄進を強訴するのです。

いくらなんでも度を越した行為は、当然ながら罪に問われ、渡辺党棟梁・源頼政(ドラマでは品川徹さん)の知行国であった伊豆国へ流罪となりました。

『鎌倉殿の13人』に登場するときの文覚は、そうして流刑にされた時の姿です。

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