前田家 週刊武春 合戦

末森城の戦いは漫画『花の慶次』の言う通り前田家の桶狭間だった!

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『北斗の拳』の原哲夫氏が描き、傾奇者として一躍大人気となった『花の慶次』(原作は隆慶一郎)。

主人公の慶次は史実において、ほとんど情報のない武将であるが、金にセコい(と設定されている)叔父・利家とコントのように揉め続けたのは、戦国マンガとしてはもはやお約束となっている。

しかし、冗談では済まされない合戦もあった。

それが「末森城の戦い」、北陸の猛将・佐々成政に攻められた一戦である。

 

末森城の戦い その背景とは

末森城は加賀・能登の最重要拠点である。

金沢寄りの日本海側、能登半島のちょうど付け根の部分に立地。

城の原則として、建てられた位置には必ず理由があるが、では末森は、なぜそこに建てられたのか。

南に行けば前田利家の加賀の国。
北に向かえば能登の国。
東に向かえば佐々成政の越中の国。
末森城の位置する場所は3カ国にまたがる北陸道の交通の要衝であった。

つまり佐々成政は、この末森城さえ陥落させてしまえば、自分の背後を何も心配せず金沢城の攻撃に専念できる状態となるのである。

一方、前田利家にとって末森城は、陥落すると能登の支配権を失うばかりか、一気に金沢まで攻め込まれるリスクを背負う。
よって、この城だけは、前田家の存亡を賭してでも救援に向かわなければならない。

末森城の戦いにはそんな背景があった。

 

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「末森の合戦は前田家の桶狭間なり 慶次」

もちろん、こんな大切な城であるから、史実でも城主には最も信頼でき、なおかつ戦上手な武将が置かれる。
当時の城の重要度は、イコールその城主の信頼度や統率力も比例していたものである。

その城主とは一般的にはマイナーな武将で、『花の慶次』で有名になったと言っても過言ではないイケメン奥村助右衛門であった。

本来は奥村永福(ながとみ)という名前で知られており、マンガのようにイケメンだったかどうかは不明だが、江戸時代を通じて万石級の家老であった。
その辺の小藩よりデカい家老なのだから、さすが加賀100万石。

さて、マンガ『花の慶次』における末森城の攻防から見てみると、当初、利家は、前田慶次率いる僅かな手勢だけを救援に向かわせていた(というか慶次が勝手に動く)。

いくら末森城から援軍の督促がきても「適当にあしらっておけ」と一言。
おまつには「そんなにお金が大事か!」と罵られる始末である。

というより、末森城が落ちるとマジでやばいの分からんのか、とツッコミを入れたくなったが、このとき慶次の書いた利家宛の手紙が実に秀逸である。

「末森の合戦は前田家の桶狭間なり 慶次」

長々と説明した末森城の重要性をマンガ『花の慶次』では一言で表現。
さすが原先生なり。

 

前田家の援軍が来る方向に小便鉄砲をドバ~!!

『花の慶次』では、前田利家の優柔不断ぶりが存分に描かれているが、史実では、迅速に行動を起こしていた。

9月9日14時、佐々成政が末森城から約4.5キロ離れた坪井山に本陣を構える。

翌10日、佐々軍が攻撃開始。
その日の14時頃、金沢城の前田利家へその一報が伝わる。

それを受け、利家が金沢城を出発したのが、それからわずか2時間後の16時だ。
息子の利長軍と津幡城で合流し、出発したのが23時で、明くる9月11日の早朝4時には、末森城から1.5キロ西方に到着し、反撃を開始している。

前田軍は末森城の搦め手から本丸へ入城し、見事24時間以内に電光石火の救援を果たしたのである。
この史実だけでも、末森城が前田家にとっていかに重要な城であったかお分かりであろう。

 

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ボロン、ごしごし、ドバ~の小便鉄砲

ちなみに、もう一つツッコミポイントがあるので触れておきたい。
それは末森城の造り(縄張り)である。

当時の末森城は、戦国時代の一般的な山城と大差はない。
交通の要衝を守る最前線の城であるから、居住性よりも戦闘を意識した造りだったであろう。

この時代、北陸最大の城は「七尾城」で、本丸に僅かに石垣群が残るくらいの規模だった。
北陸最大の城でもその程度なので、末森城は土塁で曲輪を形成し、畝堀を巡らせた城だったと推察している。

しかし漫画では、山間の平山城で、本丸に望楼型の二層天守、総石垣の城として描かれている。
搦め手の長坂口の描写に至っては、断崖絶壁の上に石垣を張り巡らせてしまっている。

ここで有名な場面の登場。
慶次がいちもつを出してボロン、ごしごし、ドバ~の小便鉄砲(原文ママ)。

これがやりたいが為に、断崖絶壁に石垣を配したとしか考えられないが、原先生一流の名場面だけにオールOK!

小便をぶっかけた方向は、前田利家の援軍がやってくる大事な方角なのだが…、やっぱり面白いからオールOK!

傾奇者という存在を広く世に知らしめてくれただけで、もう、このような名作は後にも先にもないのである。

文:お城野郎!




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【参考】
連載「お城野郎!」
『人気「歴史・戦国マンガ」100の真相』武将ジャパン

 



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